とある廃屋に三人の男と一人の女がいた。ボロすぎるその廃屋は地震でもきたらまず第一に壊れそうなほどだった。ここは昔、家を建てている時に建設会社が倒産したため放置された場所で、四人はここで集まるようにしていた。男の一人が苛立たしげに口を開いた。 「警察とのパイプ役だった『雷』を失ったのは痛えな」 「あんたが殺したんだろよ、『炎』」もう一人の男が言った。 「うるせぇ『土』。『氷』が早まって『雷』の娘を殺したのがもとだろ」『炎』が掴み掛かりそうな勢いで言う。「他に選択の余地があったのかよ？」 「『氷』も殺しといて何を言う」『土』は冷静に言い放った。 「やめなさい。」ただ一人の女が言った。「あなた達が喧嘩したらここは９９．９％の確率で粉々になります」 「そうそう。『草』の言う通りだよ？」三人目の男が言った。「確かに『雷』も『氷』も失ったのは痛い。二人とも必要だったからね。でも仕方がない。『雷』は自分の娘を殺されて、あろうことか、俺たちのせいだと誤解した。裏切りを企んでいたからね。『氷』は遊びすぎだね。警察に捕まった。あいつは俺たちみたいに特殊じゃなかったから、拷問でもされたら俺たちの事を言ってただろう。その芽を摘んだだけだよ、『土』ならわかるでしょ？」 「けど、『光』…」 「うん、わかってるよ。『炎』はもうちょっと俺たちにも行動を伝えてね？」 「…あぁ」あっさりと謝った。 「『光』。『雷』の娘には何か力があったのですか？」『草』が聞いた。 「少しはあったかもね」 「特殊な人間と、普通の人間が接触して覚醒する確率は０．４９％程ですが…」眼鏡をかけ直しながら言った。 「うん…あの子だけは先が見えないんだ」 「危険だね」 「どうする気だい、『土』？」 「決まってる。俺があの女につく」 「接触する回数によって覚醒する確率も約０．００１％ずつ上がります」 「俺は平気だ」 「ぬかるんじゃねぇぞ」『炎』が顔を見ないで言う。この仕草がこの男の心配の仕方だと『土』は知っていた。 「わかってるよ」 「じゃ『土』、キミに頼んだよ？…全てをね」『光』が念を押すように言った。 「ああ」 「分かっているだろうけど、万が一覚醒した場合の始末も、ってことだよ。くれぐれも無駄な感情をもたないように」 「平気だよ」 「それから…試そうと思う。二人の頭脳という能力を」 「何をする気だ？」『炎』が訝しげに聞く。 「推理でもしてもらおうかな」 「はぁ？」 『光』は立ち上がり、出口に向かった。そこは入口とも言えるがドアも何もないのでどっちでもある。 「『土』は俺からの連絡を待って。その間に…島津由乃と支倉令に近づく準備でもしてて。じゃ解散」 『光』が解散、と言うと半強制終了である。Ａｌｔ，Ｃｔｒｌ，Ｄｅｌｅｔｅみたいだ。そして四人はボロい廃屋を出た。 （さぁて、どんな手を使おうか…） 『土』は一人口元を上げながら２９通り全てを頭の中で試した。その中で一番確実かつ安全で、いつもそばにいられるという素晴らしい一通りを、仕方なく選んだ。仕方なく、である。 そうして、秋も終わりを迎え始めた頃、由乃と令は『土』と出会う事になる。 由乃達の日常はまだ狂い始めたばかりであった。
黄薔薇放送局 番外編 これまでのあらすじ ついに秘密結社邪馬百合会の大幹部「黒薔薇の歌姫」こと蟹名静を追いつめた祐巳たち。 進退きわまった静のとった手段とは!? 由乃 「これまでよ！ 蟹名静!! おとなしくお縄にかかりなさい！」 令 「その通り、すでにあなたは完全に包囲されているわ。潔く投降しなさい！」 静 「……」 蔦子 「祐巳さん、やったね（写真を撮りながら）」 祐巳 「……あの『黒薔薇の歌姫』がそうやすやすと捕まってくれるかな？」 静 「フフフその通り。さすがは私の好敵手。 この静の首はあなた達やまして官憲などに渡してなるものですか」 由乃 「この期に及んでなにをするっていうの！」 令 「ま、まさか……!?」 静 「おやおや支倉警部は気づいたようね。 由乃さん、あなたはまだ修行が足りないわね」 由乃 「な、何ですって！」 令 「言い争っている場合じゃない。静は自爆する気よ！」 静 「その通り。今までなかなか楽しませてもらったわ。あの世で再会しましょう」 由乃 「祐巳さん、急いで！」 祐巳 「（一瞥して走り去る）」 静 「邪馬百合会に栄光あれ！」 （閃光） 一方そのころ ？ 「静がやられたね……」 ？？ 「彼女は私たち邪馬百合四天王の中でも一番の小者。 失態に対する責任からいっても今回の件は必然と言えるわね」 ？？？「左様。あそびの過ぎた黒には良い薬だよ」 ？ 「（この凸、何のノリだ……） しかしこのままあの私立探偵とやらを放置するわけにもいかないでしょ」 ？？ 「確かにそのとおり。 邪馬百合会を敵に回した代償は支払ってもらわないと」 ？？？「くっくっくお二方、ここは私に任せていただけないかしら？」 ？ 「……へぇ。『栄光の黄薔薇』には何か策があるわけ？」 黄薔薇「ええ、妙案がね。 それにこんなおもしろそ……ゆゆしき事態を放置する訳にはいかないわ」 ？？ 「江利子、失敗は許されないわよ」 江利子「分かってるわ。……あぁおもしろそう（ニヤリ）」 「栄光の黄薔薇」鳥居江利子は一体なにをたくらんでいるのか？ そして祐巳たちは襲いかかる魔の手をどうくぐり抜けるのか!? 次回「黄薔薇の罠」お楽しみに!!（つづかない）