レイ 想いの向こうに



波乱に(?)満ちたクリスマスも終わっていよいよ次の年への準備が始まっている今日この頃、平穏な日々を送っていた僕とレイにある試練が訪れる。
そう、それは2018年の大晦日のこと・・・・・




第拾五話 亀裂



朝、すでに冬休みに入っていた僕達は、次の年への準備に追われていた。
大掃除、おせち料理の準備など、ほとんどの仕事を僕に押し付けたが、お約束通り、レイが手伝ってくれて、何とか昼前にすべての作業を終えることが出来た。

午後になりミサトさんとアスカは二人で出かけて行った。
家の中には僕とレイの二人しかいない。
発端はここから始まるのだった。
突然出てくるレイの言葉に僕らの仲が悪くなる。


「シンジ、人間の気持ちってどういうものなのかな?」
「ど、どうしたの急に?」
いきなりの言葉に僕は戸惑った。「人間の気持ち」って・・・・・レイは人間じゃないの?
「今まで黙っていてごめんなさい、じつは、あたしは人間じゃないの」
人間じゃない?だとしたら・・・・・

「あたしは作られた存在、合成されて、しかも失敗したものなの・・・・」
「けど、レイは人としての心を持っているよ」

「嫌・・・・・何もわからないくせに、そんな事言わないで・・・・」
慰めるために言ったことも逆に重荷に取られてしまった。その言葉を聞いて僕も熱くなる。
「わからないって、僕はそんなつもりで言ったわけじゃ・・・・!」
「もう放って置いて!」
レイは捨て台詞を残すと、一人自分の部屋に駆け込む。リビングには僕ひとりとなってしまった。



「「ただいま〜」」
夕暮れ時にアスカとミサトさんが帰ってきた。もちろん、僕とレイの現状は知らない。
「・・・・・って、シンちゃん、レイは?」
「自分の部屋に閉じこもっているよ」

無表情のまま、僕は答える。僕も自分の部屋に入り込む。



「ふぅ、大変なことになったなぁ・・・・・」

この出来事がきっかけで別れを告げられたらどうしようと思っている。今までこんなことをしたことが無かったから余計に不安が募る。

思えば僕にとってのレイとは一体なんだったのだろう?
ただ付き合って、同じ家に住んでいるだけの存在?
そんなはずは無い。

僕がレイを守らなければいけない。けど、いつも僕は守られていてばかりだ。
その代表例が交通事故だ。レイは僕を助ける代わりに、自分が死の危険にさらされてしまった。

僕にとってのレイ、それは、
どんな時でも思っていることをはっきりと告白して、長いようで短い、楽しいときを過ごせる人。
それがレイだ。

作られたとかそういうことは僕には関係ない。レイはレイなんだ。僕にとっては人間なんだ。その証拠に泣いたり、笑ったりする人間の心じゃないと出来ないことをやっているんだ。

レイは認めてくれないとしても、僕はレイのことを一人の人間の少女としてみたいと思っている。



一方・・・・・(レイ一人称突入)



どうしよう・・・・・あたし、何をやっていたの?
ほんの些細なことで、シンジを怒らせてしまった・・・・

思えばいつもシンジはあたしのわがままを聞いてくれている。
シンジにとっては迷惑じゃないの?疲れさせていることってないの?


あたしは人形じゃない。けど・・・・・
人間・・・・なのかな?シンジはそう言ってくれるけど、あたしって本当に人間なの?
さっきのシンジの言葉には絶対に嘘は無い。それなのに、突き放したりして・・・本当に・・・悪いことをしたのね・・・あたしは・・・

あたしにとってのシンジ・・・・・
いつも笑顔を絶やさずに、一緒にいて楽しい時を過ごせるような、そんなシンジがあたしは好き。

けど、今は楽しくない。あたしに責任があるのかもしれない・・・
だったら、素直に謝る必要があるわ。けど、謝り難いわ・・・・

どうすればいいの?このまま、年明けを迎えてしまうの?
そんな事、嫌・・・・・絶対に笑顔で2019年を迎えたい・・・・

「シンジ、許してくれるかな・・・・・?」

あたしは、決心したように、シンジの部屋に向かう・・・・・


(シンジ一人称に戻る)



僕は、必死で今後どうしようか考えていた。
年を明ける前には、レイと仲直りしたい。今のまま年を明けるなんて、僕は絶対にいやだから・・・・・



――――コンコン



ドアをノックする音が聞こえた。

「・・・・・シンジ、いる?」

ドアの向こうからレイの声が聞こえた。僕はドアを開けてレイを自分の部屋に入れる。

「・・・・・何?」
僕はそっけない態度をしていた。自分ではそのような事をしたつもりは無いのに、自然とそうなってしまった。

「シンジ、あたしって人間だと思う?」
「もちろんだよ・・・たとえほかの誰からも認められなくても、僕はレイのことを一人の人間の少女として見続ける。そう決めたんだ」
僕は、今さっきまで思っていたことをありのままに話した。

「シンジ・・・・ねぇシンジ、あたしにとってのシンジってどんな人かわかる?」
「え・・・・・わからないな・・・言ってくれるかな?レイにとっての僕を・・・・」

僕はわざと「わからない」と答えた。レイにとっての僕を素直に聞こうと思ったからだ。
「うん・・・・・・あたしにとってのシンジ、それは、いつも笑顔を絶やさずに、一緒にいて楽しい時を過ごす事が出来る。それがあたしにとってのシンジよ・・・・・・ねぇ、シンジにとってのあたしって何か聞かせてくれる?」

「うん、僕にとってのレイは、どんな時でも思っていることをはっきりと告白して、長いようで短い、楽しいときを過ごせる人・・・・なんか、最後のほうが同じだね。けど、僕はそんなレイが好きなんだ」

僕にとってのレイ、レイにとっての僕、互いに話していくうちに、だんだん僕達の中が戻っていく。自然と笑顔があふれる。

「レイ、ごめん・・・・・」
「謝らなきゃいけないのはあたしのほうなのに・・・・あたしの方こそごめんなさい」

最後にお互いのしたことについて謝り合う。6畳の部屋に響く笑い声がとても印象的だった。

気がつくと、2019年が始まるまで2分をきっていた。時間が経つのを忘れて僕達はずっと話をしていた。

「そろそろ向こうの部屋に行こうか?」
「ええ」

僕とレイはアスカとミサトさんのいる部屋に行く。みんなで2019年を迎えたかった。

そして、2分が経ち、2019年を迎えた。

「「「「あけましておめでとう!」」」」



続く



あとがき

作者です。

短かった拾四話に続いてあまり長くは無かった拾五話の「亀裂」をお届けしました。

今回はレイとシンジが口喧嘩(までは行きませんが)なるものをして塞ぎこんでいました。
そこでお互いに考えた「○○にとっての○○」を入れてみて、さらに名台詞をさりげなく挿入しました。
書いている途中、感情を込めて読んでみたら涙もろい作者は泣きました(本当です)

互いに思っていた「年中での仲直り」も無事に叶い、仲良く、笑顔で2018年をあけて、2019年を迎えました。


当初はこの話で終了する予定だったのですが、「終わりたくない!」と言う声がどこからとも無く聞こえてきて続行することに決定。



では、また次回の話を読んでいることを想定して、

またお会いしましょう。