特別でないただの一日・・・だと思う

其の1

可南子「劇には出たくない、ということです・・・どうしてわざわざ男役なんかをしなくちゃいけないのかー」
そう言った可南子の脳裏に中学時代の記憶がよみがえる。

軽い気持ちで寸劇の男役をやった彼女は、次の日から上下級・先生を問わず大量のラブレターが送られた。
そして昼の食堂では彼女の隣の席を巡って壮絶な争いが繰り広げられ、更には帰り道に思いつめた女生徒が潜む事数十回・・・・・・・

「とにかくっ、男役だけは許して下さい!お願いキネンシス!プリーズ!」
蛇口に負けない涙を流して懇願する可南子だった。




其の2

祐巳「気持ちはよーーーーく分かった。それなら女役ならいい?もしやりたい役があったら言って、祥子さまに直談判してあげる」
祐巳の言葉に可南子はしばらく考えていたが、やがてもじもじと・・・
可南子「・・・・では〜皇女の役を・・・できれば原作にちゅ〜じつに・・・・」
祥子・由乃・瞳子「大却下!」
いつの間にかすぐ後ろにいた3人は可南子を滅多打ちにした
祐巳「え、なになに?原作通りって・・どんな意味?」
志摩子「祐巳さん、こちらへ・・・・・・・・・・・・・やさ〜しく説明してあげるわ」
そして祐巳の手を引いた志摩子はこっそりと温室へ消えていった・・・・・



其の3

由乃「よく考えたら皇女の役って、そんなにおいしくないよね」
温室近くの水道で由乃は汚れた手を洗いながら言った。
瞳子「そうですわね、男姫と仲良くできるのは前半だけですし」
瞳子も木刀のを水で証拠隠滅しながら答える。
祥子「ええ、後半になるとさんざんつれなくされて、いつの間にか出番がなくなるし・・・・」
袋の口をしばりながら祥子さまが言う。
(やはり、この役は・・・・・)
3人は同じ結論に達した。

翌日・・・・
Kさん「えっ、私が皇女の役を!」
由乃「ええ、この役を決める時すぐに顔が浮かんだの!」
瞳子「いつも通りでいるだけで大丈夫、瞳子が保障しますわ・・・」
祥子「その通りよ、あなた以上にこの役にふさわしい人間はいなくてよ」
Kさん「さ、祥子さま!わかりました、やります!頑張って最高の演技をして見せます!」
燃える彼女に「そんなに気負わなくても大丈夫よ」そう言いながら3人は思った。
多分、登場シーンないし・・・



其の4

祐巳たちよりも、先についた瞳子ちゃんは、簡単な片付けの後、薔薇さまたちの為にお茶の用意をはじめた。
内心はイラついていたが、祥子さまに余計に気遣いをさせない為、機嫌よく見せようとこの前みた映画の主題歌を鼻歌で口ずさむ。
(花よ、きれいと〜♪・・・・・・・)
そこで乃梨子と共に祐巳様が現れた、おそらく乃梨子から演劇部の事を聞いたのだろう、まっさきに瞳子に話しかけようとして、当の瞳子が上機嫌な振りをしているを見て、突然、エサを取り上げられたハムスターのようにうろたえている。
(・・・・真っ紅な薔薇にゃボケがいる〜♪)
その様子を見て瞳子は内心おかしくなってきた。
(・・・・♪つっこみたかないが つっこまずにゃおかぬ♪)
「あーだから機嫌がいいんだ」何もしらない令様が言う。
「そう見えます、ふふふ」
ハラハラしている祐巳を見ながら瞳子は本当に微笑んでいる自分に気づいた。
(♪萌える、萌える、萌える瞳子の〜♪)
そんな祐巳さまを見て得られた結論は、やっぱり祐巳様は最高だということだった。

上機嫌な瞳子を見ながら祐巳は、つぶやいた。
「こわいよー乃梨子ちゃん、瞳子ちゃん、女の恨み節みたいな歌詞をあんなに明るく歌っているよ〜」
それを聞いた乃梨子は思った。
(祐巳さま、私には瞳子の鼻歌しか聞こえません!あなたなんで歌詞が分かるんですか!?)



其の5

「ほーら、可南子ちゃんどう?祐巳ちゃんきれいでしょうー」
令さまが笑いながら、可南子ちゃんの前に祐麒を押し出した。

可南子ちゃんは五秒ほどじっと祐麒をみてから、目をそらした。
「この『間違い探し』には、いったいどんなご褒美があるんですか♪」
女装の祐麒から顔を背けてから、男装の祐巳に向かって真顔で尋ねた。
「あ、あの・・・・・・可南子ちゃん?」
深い意味はない、ってば。軽い気持ちでふざけただけだって、
だから、お願い本気モードで迫ってこないで!顔を近づけないで!
そんな反応されたら困っちゃうーーーー!



其の6

由乃「ほーら、可南子ちゃんどう?令ちゃんきれいでしょうー」
由乃ちゃんが笑いながら、可南子ちゃんの前に・・・・
女装した鉄くんを押し出した。

可南子ちゃんは〇.五秒ほど鉄くんをみてから、目をそらした。
可南子「あら、ほんとう、とてもきれいですわ、れ・い・さ・ま☆」
鉄「そうですか、うれしいっす!」
令「いやー、ほんとうだ、まるで双子のよ・・・・うっ」
最初は周りに合わせて微笑んで見せた令様だったが・・・

数分後・・・・
由乃「ねっ、令ちゃん、冗談だから」
可南子「ほんとうに単なる悪ふざけなんです、すみません!」
ズーン
床につっぷしてへこむ令を懸命に慰める二人。
その側では鉄くんが申し訳ありませんと土下座していた。

そして・・・・
令「あのー、ほんとうにいいですから」
高田が無礼をしたお詫びにと、これから部に出る令さまの荷物持ちを買って出た薬師寺兄弟。
二人はそれぞれカバンや剣道具や由乃など令さまの荷物を軽々と持つ。
恐縮する令さまに薬師寺兄弟はニタリと笑って答える。
昌光「気にすることはないね」
朋光「そう、支倉さんはか弱い女性なんだから」
そういって朋光は令さまの頭を撫でる。
30cm近くの身長差に、倍はあるのではないかと思える程のガタイのツインの前では本当に令様は華奢に見える。
昌光「かわいい娘の手助けは、男の誇りだね」
朋光「そうそうフェチ ストの精神なんだね」

そして一行は二人に滅多打ちにされた鉄くんを残して道場へと向かった・・・
鉄「も、もうし・・わ・け・あり・・(ガクっ)」



其の7

志摩子の父とタクヤは学園祭のリリアンを歩いていた。
まるでヤクザのような二人に回りの生徒や招待客らは異様な目を向けるが、二人は気にしない。
なぜなら二人には、いや志摩子の父には迫りくる対決があったのだから・・・
「いよいよですな藤堂さん」
「ああ、今回は負けてたまるかっ!」
「その意気です!私も近くで応援させていただきます!」
「ありがたい!その映えるようなブルーのスーツはきっと助けになります!」
「いえいえ、藤堂さんこそハデハデなアロハに白のスーツとは気合が入っていますな」
「いや、この程度であれに対抗できるとは・・・・」
志摩子の父は気合を入れて学園内にいる筈の敵との遭遇を待ち受けた。

「きましたよ藤堂さん!」
「おお、あれはまさに」
「では頑張って下さい」
志摩子の父は一度サングラスをはずして軽く拭くともう一度かけなおす。
(見ていろ、今日こそ前回の雪辱を!)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・一分後

「いやー!いつ見てもすばらしい額ですなー鳥居江利子さん」
「いいえ、志摩子のお父様の頭こそ・・・・」
「いや、いや、若いものには負けますよ」
「そう言いながら、体育祭より磨きがかかって・・・・」

(輝いているぜ二人とも・・・・)
あまりのまぶしさにサングラスだけではなくパナマ帽で目を覆うタクヤだった。



其の8

舞台本番前の花寺控え室。
着替えを終えた花寺の面々
アリス「ユキチ少し怖い」
祐麒 「さしものアリスも女性の集団の前で劇をするのは緊張するか」
アリス「ええ」
祐麒 「だけど俺たちはまだ6人いるからいいけど、柏木先輩なんかたった一人でリリアンに行ったんだぜ。しかも社交ダンスを・・」
アリス「やっぱりすごいね。柏木先輩は」
祐麒 「ああ、並じゃないよな」
祐麒とアリスの会話を聞きながら他の花寺生徒会の全員が同じことを思った。

(乙女の園で女装して違和感のない、お前らの方がずっとすごいよ・・・・・・)



其の9

あとは、宰相(由乃さん)が姫君(祐麒)の着物の裾を思いっきり踏んでしまい、二人一緒に床の上に這いつくばってしまったり。
祐麒「大丈夫?(ドキ)」
由乃「ええ(ドキッ)」
はからずしも至近距離で見詰め合う形になりドギマキする二人だったが・・・・・・・・

「チェストーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ぎゃわわわわわぁぁぁぁっぁあ・・・・・・・・・」
突然あらわれた令さまが一気合三十打の示現流で祐麒を滅多打ちにした・・・

「すごいよ母さん、剣戟のすさまじさで祐麒が焦げているよ!」
「まあ、祐麒ったら大熱演ね」

どこまでギャグでどこまでがマジかわからないまま
福沢夫婦は娘と息子の晴れ舞台を見ていた。



其の10

舞台後・・・
「ごめんなさいね、レイちゃんが暴走しちゃって」
あやまりながら由乃は祐麒の前にアイスティーを置いた。
「申し訳ありませんでした。つい頭が真っ白になってしまって・・・・」
その側では令さまが平謝りしながら祐麒の体に包帯を巻いている。
「いえ、いいんです。花寺では、これ位の怪我しょっちゅうですから・・・」
少しくぐもった声で祐麒が答える。
その時、そばにいた祐巳が祐麒に学ランをかけようと持ち上げると・・・
ジャラ
祐麒の学ランの中から金属音がした。
「?」
怪訝な顔をする祐巳に気づいた祐麒は学ランを受け取るとそのポッケの中に手をいれる。
「そういえば、舞台が終わった後、3年生の人たちからこんなものを手渡されたんだけど・・・・」
そう言ってポケットから祐麒が取り出したのは・・・・
無数のロザリオだった!
「!」
一斉に息を呑む山百合会。
祐麒は空気に気づかずにノン気に実の姉に尋ねる。
「これって、何の意味?」

「ばっ、バカッ!バカッ!バカッ!バカッ!バカッ!バカッ!バカッ!バカッ!バカッ!バカッ!バカッ!バカッ!バカッ!バカッ!バカッ!アンタバカ〜〜〜っ?!!!」
今度は祐巳が祐麒を滅多打ちにしていた・・・・・・・・・・・・・・



・・・・ファイヤーストームから目を背け祥子さまは言った。
「祐巳、あなた弟を作りなさい・・・今すぐ」


あとがき

すみません・・・・
 毎度毎度、与太話にもならないバカネタのユッケです。
いやー本当はまじめな話を考えていたんですが、一応は・・・
しかしまじめに考えれば、考える程リバースのバカネタが浮かんできて、結局、毎度毎度のバカ話になってしまいました。
それにしても話の半分近くが滅多打ちネタとは、もしかして登場人物の不遇さ(だけ)では隠上荒人様以上かも(謝!
あまりにあまりなので一応断り書きを入れさせていただきます。

「この作品に登場する人物は、すべて不死身です」

黄薔薇放送局 番外編

江利子「今日のゲストは花寺生徒会長の福沢祐麒さんよ」
祐麒 「どうも、こちらでは初めまして」
由乃 「い、いらっしゃい、祐麒さん」
祐麒 「あ、由乃さん、こ、こんにちは……(ドキドキ)」
由乃 「ご、ごきげんよう……(ドキドキ)」
○  「(む〜、むぅぅ〜!)」
祐麒 「あー、そのぉ…… 今日はよい天気ですね」
由乃 「え、ええ、そうですね……」
○  「もがぁ〜!」
二人 「??(ビクッ)」

江利子「あら、失礼。隣の部屋に置いてある携帯が鳴っているようだわ。
	今日は用事もあるし…… 由乃ちゃん、あとはお任せして良いかしら?」
由乃 「は、はい(赤)」
江利子「それは良かった。では祐麒さんお先に失礼しますね」
祐麒 「お、お疲れさまでした。(由乃の方を見た後うつむいたり)」
江利子「ではごきげんよう〜」

二人 「(ドキドキドキドキ)」


……
……


江利子「しかし猿ぐつわまではめておいたのにやるわねぇ、令」
令  「うぅ、由乃ぉ、よしのぉ〜(涙)」
江利子「(令を無視して)初々しい二人をこっそり眺めるってのもまた格別ね」
令  「_| ̄|○」