よし・の?

 金曜日放課後
薔薇の館で由乃が楽しそうハミングしていた。
「楽しそうだね由乃さん」
祐巳が声をかける。
「え、あっ」
由乃は浮かれている自分に気づき、ちょっとうろたえた。
そんな由乃さんをかわいいと思いながら、祐巳はふと思いついた事を言ってみる。
「もしかして、明日令さまとデート?」
問いかけの反応は由乃とは別の方向から起こった。
「あくっ!そっ、そんなデートだなんて・・・・」
立ち上がって叫んだのは令さまだった。
「もう令ちゃんたら・・・」
思わず照れる由乃。
「いいなー」
祐巳は素直に言う。
「・・・いやー、いつも一緒にいるから今更デートなんてねー。
だけど、たまには祐巳さんや志摩子さんみたいなのもいいかな〜なんて。」
うれしそうに語る由乃に祐巳は身を乗り出さんばかりにして聞く
「でっ、でっ、どこに行くの?」
「ずばり本所よ!本所深川から江戸城・・じゃない皇居までぶらりとね。」
「うわ、すごく歩きそう。」
「何言ってんの、こんなの盗賊改めなら一足よっ!」
鼻息荒く話す由乃に祐巳は
(由乃さんらしい)と思った。
「でも、昔と違って今は街ができちゃって、風情はいまいちなのよね・・・・」
不満そうに由乃が言った。すると、今まで黙っていた席から声が上がった。
「それならいっそ電車でU駅に行ってみたらどうです?ボートで花が眺められますよ。」
突然乃梨子ちゃんが言う。
「えっ、舟で?」
由乃の問い返しに乃梨子は続ける。
「はい、墨田川ラインで屋形船の雰囲気もいいですが猪牙の雰囲気ならそちらの方がいいかと。」
「うーん屋形船だけでなく猪牙もでるとは、さすが乃梨子ちゃん!」
感心する由乃。
「ええ、昔は千手観音を詣でた後、猪牙で桜を見て船宿で舌鼓を打ったってタクヤくんから聞きましたから」
由乃の言葉に気を良くしたのかやや嬉しげな声で乃梨子は言った。
「千住観音ていうと清水寺?」
「ええ!それとU駅ならやっぱり寛永寺も行かないと・・・」
「うーん、寛永寺なら私は五重塔のある方が・・・・」
意外なところで話が合った由乃と乃梨子は、その後も会話を弾ませるが、傍で聞いている祐巳たちには内容がマニアックすぎてついて行けなかった・・・・

・・・その夜
「志摩子!!」
「あ、令さま!?」
M駅から離れたK駅の大型書店の時代小説コーナーで黄薔薇様と白薔薇様は偶然出くわした。
「志摩子も、お買い物?」
「え、ええ、たまにはこんなのも・・・令さまも?」
「あえ?ええ、私もたまには時代モノもいいかなー、なんて・・・」
二人はお互いに気まずそうな顔をしながら「鬼○犯科帳の世界」や「江戸アルキ帳」等を手にし、別々のレジに並んだ・・・・




 志摩子は夢を見た。
舞台は前の薔薇様、お姉さまの送別会。
自分がピアニカを吹いて由乃さんが手品をしている。
悪戯っぽい目で次々とピンポン玉を出す由乃さん
ピアニカを吹きながらも志摩子は何かおかしいと思っていた。
(なにかがちがう・・・・・)
あの時由乃さんは「あっぱれ」と書かれた扇子を持っていた筈なのに、今は持っていない・・・
それにあの時はぬいぐるみの鳩をだした筈なのに今は本物の鳩を出している・・・・
なによりも・・・・
(なんでここに乃梨子がいるの?)
今はまだいない筈のおかっぱ頭が薔薇様の間にちょんと座っていた。
するとその乃梨子に由乃さんが歩み寄る
(由乃さん・・・そこは江利子様に行く筈なのに・・・)
疑問に思いながらも志摩子はピアニカを吹いている為何も言えない。
ふと由乃さんが乃梨子に手を出し、彼女の首筋をなでたと思うとその手に自分の渡したロザリオが・・
(なっ、何をするの!)
あわてる志摩子、しかし手はピアニカから離れない。
まるでピアニカの方が、由乃の邪魔をしないように彼女を操っているようだ。
その間に由乃は乃梨子のポケットに手をやる。
とそこに新しいロザリオが・・・
そして乃梨子と由乃は正面から向き合う
まるで、これから姉妹の儀式を始めるかのように
(・・・やめて・・)
心の中で叫びながら、ピアニカを離せない志摩子
いつの間にか曲は本来吹く筈のオリーブの首飾りとは違う曲になっている。
(そうだあの時、私はオリーブの首飾りを演奏していた筈、きちんとオリーブの首飾りを演奏すれば)
そう思うが、オリーブの首飾りがどんな曲だったか思い出せない。
そして志摩子の前で由乃のロザリオが・・・・
(だめーっ!)
叫ぼうとした所で目覚めた彼女は、汗をかいている首筋をぬぐうと荒くため息をついてつぶやいた。
「なんて夢を見てるのよ、わたし・・・・」



 悪い夢に悩まされ続けた週明けの気分は最悪だった。
授業にも集中できずにふさいでいた志摩子に同級生が声をかける。
「アンニュイだね志摩子さん」
「桂さん!」
ショートカットに祐巳さんを思わせるくりっとした目の少女が志摩子の前に立つ。
「もしかして山百合会の仕事が忙しいの?なんなら私手伝おうか?」
「そんな」
戸惑う志摩子に桂さんはやや、からかい気味に言った。
「そうだよね、志摩子さんにはしっかりした妹さんがいたんだ。
私なんかの出番はないか。」
「そ、そんな乃梨子は・・・・」
その乃梨子の事が憂鬱のタネなのだが、それを今いってもどうしようもない。
第一夢で見ただけで、別段由乃さんと乃梨子との間に何か起こっている訳がない。
(そう、そんな筈ないじゃない)
再びアンニュイになる志摩子に桂さんは朗らかに声をかける。
「まあ、何かあるなら遠慮なく言ってよ。
久しぶりに祐巳さんとゆっくり話もしたいし、それに志摩子さんの為なら、いつだって無料奉仕するよ♪」
じゃあねと言って自分の席に戻る桂さんに志摩子は、ありがとうと声をかける。

昼休み志摩子の足は一年椿組に向いていた。
別に乃梨子に用事があった訳ではない。
ただ顔が見たかったのだ。
そんな理由で乃梨子に会いにいく事に多少の抵抗はあったのだが、桂さんとの会話が志摩子の気をが軽くした。
(乃梨子の顔を見て、少し話しをすればこんな要らない不安もなくなるはず・・・・)
そう思って階段を降りる彼女の耳に突然よく知った声が聞こえた。
「・・・・そこまで喜んでくれると、私も本望よ」
(由乃さん!?)
突然、思いがけない人物の声に志摩子は反射的に階段の影に身を隠した。
その彼女の耳に再び知った声が入る。
「だって、本当にそう思うのですから・・・・」
(乃梨子!?)
由乃と話している相手はよりにもよって乃梨子だった。
(何なの?なぜ二人が?)
混乱する志摩子に昨晩の夢が重なる。
懸命に否定する志摩子
(まさか幾ら由乃さんだって、そんな事)
その間にも二人の会話がとぎれとぎれで志摩子の耳に入ってきた。
「・・・乃梨子ちゃんの口から志摩子さんに直接言えば?」
「おぁっ!そっ、そんな事言えないよ!」
「じゃあ私が・・・」
「だめっ!志摩子さんには言わないで!」
「あらら、じゃあ、二人だけの秘密だね。」
(な、なんなの?)
隠れた志摩子が二人の会話にヤキモキしていると突然上の方から声がした。
「どうしたの志摩子さん?」
「!?、♯♪▲$%&・・・桂さん!」
懸命にあげかかった悲鳴を押し殺した志摩子は目の前にいる同級生の名を呼んだ。
呼ばれた当人はきょとんとしながら言った。
「どうしたの?、まるで祐巳さんみたいな顔をして・・・」
「い、いえ、なんでもないの!さっ教室に戻りましょ!」
「てっ、志摩子さん?」
いぶかる桂を余所に志摩子は逃げるように階段を駆け上がって行った。
(な、なんなの?)
彼女の頭は完全に混乱していた。



 放課後、志摩子は薔薇の館に向かった。
その日は特に会議も仕事もなく、他の誰もいない筈だったが、とにかく彼女は一人で落ち着ける場所に行きたかった。
(薔薇の館でなにか飲もう・・・そうコーヒーでも・・お砂糖とミルクを傍らにおいて、だけど何も入れないブルマンを・・・
それを飲めば、きっと頭も正常に働いてくれるわ)
そして足早に向かったその先で彼女は再び聞きたくない二人の声を聞いたのだった。



「・・・深く考えないで、たいした事じゃないんだから気持ちよく受け取ればいいの。」
「そこまで言うのなら・・・」

もう我慢できなかった。
「だめー!」
バンッ ⇒/
彼女はビスケットの引き戸を押しのけて中に飛び込む。
「志摩子さん?」
突然の乱入に硬直する由乃と乃梨子
「だめー!いくら由乃さんでも、乃梨子はわたさない!」
そして乃梨子にしがみついた志摩子はまるで威嚇するかの様に由乃を睨み付けた。
「私には乃梨子が必要なの!乃梨子が側にいてくれないと、私リリアンにいられないっ!」
突然、志摩子に抱きつかれた乃梨子は驚愕していた。
「し、志摩子さん」
その乃梨子に志摩子は懇願する。
「乃梨子!私から離れないで!私乃梨子じゃないと駄目なの!お願いだから卒業まで側にいて!」
「あえっ・・・・がっ?・・・」


しばらく唖然としていた由乃だったが、思いついた事があるのか平然とした顔に戻って言った。
「姉妹の絆を極めている所悪いけど、一先ず、放してあげたら?
このままじゃ乃梨子ちゃん落ちちゃうよ。」
由乃に言われた志摩子は乃梨子が、彼女のあつい感触と、体力測定器の数値をはるかに上回る力にかなり呼吸困難気味になっている事に気づいた。
「・・し・しまこ・さ・ん・・・」
「あーん、のりこー!」
ぐったりとした乃梨子を慌てて介抱する志摩子に由乃は聞いた。
「志摩子さん、まさか私が乃梨子ちゃんを妹に狙っているなんて思わなかった?」
「由乃さん・・・」
志摩子は罰がわるそうに顔を背ける。
「やっぱり」
ちょっとひどいんじゃない、と言う由乃に志摩子は頭をたれる。
「ごめんなさい、いくら何でも、そんな事ないわよね・・・・」
「いくら、なんでもねー・・・私そんなに切羽つまっているように見えているのかしら?」
「いいえ・・・・・ごめんなさぃ・・」
うつむく志摩子に由乃は逆に慰めるように言った。
「まあ、私だって令ちゃんが他の誰かを妹にするかもなんて思ったら、ただじゃあ済まさないもの!」
最後の言葉に妙に力を込めて言う由乃は言いいきる。
「ごめんなさい由乃さん」
「いいって、聖さまの時はあんなにあっさりしていた志摩子さんがスールに取り乱す姿を拝めるなんて、ちょっと得しちゃったかも♪」
そうして少し笑みを浮かべる由乃に志摩子は更に頭を下げた。
「ごめんなさい・・扉の外で由乃さんが、乃梨子に受け取ってと言っていたを聞いた途端、押さえが利かなくなっちゃって・・・・」
「受け取って?、ああ、根付けの事ね」
「ネヅケ?」
「和服を着慣れている志摩子さんが知らないなんて意外ねー
着物の帯とかにいれた財布や印籠が落ちないようにする為のアクセサリー
乃梨子ちゃんが携帯用のストラップに仏像のが欲しいのにどこにもみつからないよーって言っていたから、以前ボロ市で買って貰った菩薩の根付を譲ってあげたんだ。」
「そ、そんな」
「ところが根付けの説明で江戸時代のキーホルダーって言ったのがまずかったのよ。
乃梨子ちゃん、お友達から江戸時代の根付けなら安くても数万円、場合によっては数千万で取引される事もあるますわって言われたらしくて、突然こんな高価な物タダでいただけませんって言って来たの。
私のは現代物でそれこそ五百円玉でお釣りが来るものなのに、乃梨子ちゃんたら真剣な顔して一生かけても払いますとか言い出すし・・・」
予想外の事に弱いのはお姉さまゆずりかしらね・・・と由乃は小さく微笑んだ。
「いやー、それにしてもさっきの志摩子さんは怖かったなー、まるで子供を守る母ライオンみたいだったよ。」
やや意地悪そうに微笑む由乃に、結局は早合点で暴走した自分に、志摩子は崩れ落ちそうになる。

その時
「一体これは何事!」
館に厳しい声が響く。
はっと視線を向けた先には令さまと祥子さまがいた。
そして祥子さまは、部屋の入り口で仁王立ちしてきつい声で言う。
「一体この惨状は何?説明しなさいっ!」
祥子に詰問された志摩子はへなへなと床に座り込むと、消え入るような声で言った。
「自爆してしまいました・・・・」


その後全てを説明した志摩子に祥子さまは部屋の片付けを命じた。
由乃が、自分も原因の一端だからと手伝いを名乗り出たが、祥子さまの「野暮はしないの」の一言に「はい」と素直にうなづくき、令と手をつないで帰って行った。
そして館に白薔薇姉妹だけが残った・・・・


扉や倒れたテーブルそれに色々な物を片付けながら志摩子はしばらくチラチラと乃梨子を覗き見ていたが、やがて意を決して言った。
「乃梨子」
「何?志摩子さん」
まっすぐ乃梨子に見つめられ少しうつむき加減になりながらも志摩子は聞いた。
「その・・今日のお昼休みなんだけど・・・その、由乃さんと話していたでしょう」
「えっ、志摩子さん、いたの?」
驚く乃梨子に、ますますうつむく志摩子はそれでも聞かずにはおれずに言葉を続ける。
「そ・・・その時の私には言えないって・・・由乃さんと二人だけの秘密って・・・・」
「ああ、あれ!」
すると今度は乃梨子の顔も紅くなった。
彼女は恥ずかしそうに、それでもしっかりと答えた。
「由乃さまとたまたま出会ったので、根付けの話をして・・・
その時、菩薩さまの顔が志摩子さんみたいで・・・・とてもきれいだって!!」
真っ赤な顔でいう乃梨子に志摩子も顔を紅くする。
「・・・・まっ」
お互い手を止めた二人はしばしお互いの顔が見れずにうつむき加減になる。
なんとも言えない気分の後、乃梨子が堰を切るように喋った。
「そ、そしたらねっ、由乃さまが『その言葉、乃梨子ちゃんの口から志摩子さんに直接言えば?』ってからかわれて、それで『そんな事言えませんっ!』って、だって、携帯のストラップ代わりだしっ・・・携帯持ってくるのはいけないことだし・・・、それにっ・・・!」
懸命に言葉をつなげようとする乃梨子を志摩子の腕が包み込む。
「ごめんなさい乃梨子」
本日二度目の感触にのぼせそうになりながら乃梨子は答えた。
「いいんだよ志摩子さん」
「ごめんなさい・・・」
「・・・いいんだよ」

あとがき

 時代物ファンの由乃さんと仏像マニアの乃梨子ちゃんなら意外と話があうのではないかなと・・・・
 もし「チェリーブロッサム」の冒頭で乃梨子ちゃんが時間つぶしに桜を見に行かずに図書館に行き、そこで江戸風俗の本を読んでいる由乃さんに会っていたら・・・・・
まあ実際には由乃と乃梨子のカップリングは、古典にも興味を持てる乃梨子ちゃんとチャンバラ好きの由乃さんというように少しベクトルが違うようですが、たまには乃梨子ちゃんに振り回される志摩子さんもいいかなと思って書きました。
 ついでですがオマケとして令さま編をつけておきます。


よし・の〜(令さま編)

 「おっ、江戸の神社仏閣か」
その晩、令が江戸時代の本を読んでいると剣一筋の父が珍しく口を出してきた。
興味深げに本を覗き込む様子に、令はふと何事も和風好みの父なら江戸の風俗にも詳しいのではないかと思い、聞いてみた。
「お父さんは江戸の習慣とかには詳しい?」
すると父はしばらく考えた後
「そうだな、剣士のライフスタイルとかは詳しいぞ。」
その答えに令は考える。
(剣士かー、チャンバラ好きの由乃ならお寺や仏像よりも興味ある筈っ)
彼女の頭の中に、自分の話に『さすが令ちゃん!』と言って抱きついてくる由乃の姿が浮かぶ。
思わずにや〜とした令は言った。
「それを教えてくれない?とても興味があるの!」
久しぶりの愛娘からのお願いに父は即答した。
「わかった!取り合えず平山行蔵のライフスタイルから教えてあげよう。」
そして剣には妥協なしの父はニヤリと笑った・・・・・

*平山行蔵(子龍)
11代将軍家斉の時代の幕臣。 
毎朝四時に起床し、真冬でも水ごおりの後、一日数千回もの素振りを初めとする激しい鍛錬を日課とし、食時は水でふやかした玄米と雑草、衣は厳寒でも袷一枚、寝る時は甲冑を身につけて土間で寝ると言った、常在戦場を旨とする非常に過酷なライフスタイルを送った人

黄薔薇放送局 番外編

○  「みなさん、ごきげよう! そこのあなたもごきげんよう!
	いつもお世話になっております! あっ、そこの人もおひとつごきげんよう!」
(誰彼構わずそこら中に挨拶している人が近くにいる)
令  「(指さしながら)……アレ、何? って由乃、見えないってば」
由乃 「(令の目を両手で覆う)武士の情け。見ちゃだめよ、令ちゃん!」
○  「由乃さん!」
由乃 「ひあっっ!(令を突き飛ばしてしまう) あ、か……桂さん、ごきげんよう」
桂  「ごきげんよう♪」
由乃 「そ、そ、その今日はすごく機嫌が良いみたいねぇ…… ハハハ……」
桂  「ええ! やっぱり出番って素晴らしいわね!
	思わず、そこら中の方に声を掛けてしまったわ!」
由乃 「そ、それは大変だったわねぇ……(まわりの人が)」
桂  「ええ、でも皆微笑んでくださったり、『苦労したのね……』と声を掛けてくれたり。
	嬉しかったわ。(横を通る人を見て)あ、そこの方も。桂でございます、ごきげんよう!」
由乃 「(不審そうな目を由乃に向ける人に必死で頭を下げる)」
桂  「あら、由乃さん何をしているの?」
由乃 「え……あ、その…… そう! 靴ひもを結んでいたのよ!」
桂  「にしては頭だけ下げていたような…… そんな格好で結ぶのつらくない?」
由乃 「そ、そうよね。 わ、私なんでこんな格好していたのかしら……(トホホ)」
桂  「ま、いいか。 それでね、それでね。でられたシーンなんだけど……」

……
……

由乃 「……令ちゃん」
令  「……なに、由乃?」
由乃 「……ヒトは出番が無くなるとあぁまでなっちゃうのかな?」
令  「……」
由乃 「私たちもここすら無かったらあぁなっていたのかしら?(寂しそうな笑顔)」
令  「(思わず抱きしめる)ちがう!! そんなことない!
	きっと私たちならでられなくたって二人でやっていけたわ!」
由乃 「……そうかな?」
令  「そうよ!」
由乃 「(頬を染めながら上目遣いで)令ちゃん……」
令  「由乃……」