文明の章

第拾参話

◆瞬間、心、重ねて

10月6日(火曜日)
アスカが同居してユニゾンの特訓をする事になった。方法は曲に合わせて二人でダンスを踊ると言う事である。


P.M.2:04、ミサトのマンション。
二つのエレベーターが同時に開いた。
片方からはヒカリ、他方からはケンスケとトウジが出て来た。
「あっ、3バカトリオの二人」
ヒカリは、二人の存在に驚いた。
「委員ちょーが何でここにおるんや?」
「私はアスカの御見舞い」
「こっちはシンジのや」
そして3人ともミサトの部屋の前で止まった。
「「「何でここで止まるんだ?」」」
3人の声がハモる。
呼び鈴を押すと中から声が帰って来た。
「「はーい」」
シンジとアスカの声が重なって聞こえる。
扉が開くと中からシンジとアスカがお揃いの格好で現われた。
「お、お揃いルックでイヤーンな感じ」
「「こ、これは日本人は先ず形から入るものだってミサトさんが」」
二人が声を合わせて反論しようとしたが、
「不潔よ!二人とも!」
誰も聞く耳を持たなかった。
「あら?どうしたの皆お揃いで」
ミサトがレイを連れて帰って来た。
レイはミサトの右に立っている。


P.M.2:16、
ミサトの説明で皆は納得した。
「何やそんなんやったら言ってくれれば良かったのに」
聞く耳を持たなかったのに・・・
「で?どうなんですか?できは?」
「・・それは・・見てくれたほうが良いとは思うけど・・・」
二人は踊ってはいるのだが、二人とも動きが全然違う。
「題して鶴とサルの小躍り・・・」
トウジが言い、皆溜め息をついた。
滅茶苦茶だが終わり、リツコ特製の測定器で点数が表示された。
得点 00.64点
誤差 16.22秒
因みに合格点は92点、誤差0.22秒以内。しかし、計算上とは言え、誤差16秒とはいったい・・・
余りのシンジのレベルの低さにいらだち、アスカがヘッドホンを床に投げつけた。
「やってらんないわ!こんな愚図に合わせてレベルを下げるだなんて!」
「レイ、やってみて」
ミサトはビールを飲みながらレイに言った。
「・・了解・・」
(私が碇君と一緒に踊れる。私は気分が高揚しているの?)
どこと無く少し嬉しそうなレイは立ち上がって、二人の方に歩いて行った。
「何よ」
アスカがレイを睨んでいる。
レイは床に転がっているヘッドホンを拾って、それをつけてシンジの横に並んだ。
シンジはちょっと顔が赤い。
「シンちゃ〜ん、レイといっしょにするのが嬉しいの?」
ミサトがからかった。
「そ、そ、そんなわけじゃ」
シンジは頬を赤く染めた。
「・・始めましょ・・」
「あ、うん」
レイの一声で二人は踊り始めた。
(あれ?綾波の動きが分かる・・・見てもいないのに)
(碇君の動きが分かる・・・なぜ?)
2人の動きは完全に一致していた。
シンジがへまをした瞬間、レイも同じへまをしている。
「な、なによ・・・これ」
「碇君も綾波さんも完全に揃ってる・・・」
「惣流とは大違いやな」
「売れるぞこれは〜〜」
(なんだろ・・・暖かい)
(何?暖かい、どうして?)
まるで身体が二つあるような感じ、見てもいないのに、相手の動きが完全に伝わってくる。
完全に踊りが一致している。そして、フィニッシュで二人とも同じように躓いてこけた。
得点 00.00点
誤差 00.00秒
得点が桁落ちした。
「・・・リツコに言わせると理論上あり得ない数字よね・・・桁落ちしてるし・・・」
流石に偶然では片付けられない問題なので、誰も口を開かなかった。
「・・・零号機が修理中で無かったら、迷わずレイと組ませる所ね。」
「くっ何よ!!下手糞が動きを揃えたからって!アタシとは比べ物にならないじゃないのよ!!!」
「アスカ、貴女の踊りはほぼ完璧よ、でもね、これはダンスじゃないの、ただ単にマニュアルに合わせて踊るだけならば、二人のレベルが高ければ良い、でもね、これはユニゾン、二人の意思疎通を完璧にしなくては行けない。アイコンタクトが出来るクラスにね。二人の意思疎通が目的であり、ダンスの技術なんかは一切必要無い。」
「それに、やるならば、シュミレーションプラグでやるわよ。シンクロ率が違う貴女達が、生身で綺麗に揃ったならば、エヴァでは確実にずれる。そんな事も分からないの?」
アスカは屈辱に拳を握り締めた。
「アスカはレベルが高い、シンジ君はレベルが低い、貴女の考えはどうせ、レベルの低いシンジ君が悪い、自分のレベルを下げる事なんか許せない、そうでしょ。これは、遊びでやっているわけじゃない、目的は、いかにうまく踊るかじゃない、いかに、相手に合わせるか、仮にシンジ君がレベルが高かったとしたら、そんな事も気付かずに、合格点が出て、本番で死ぬわ、アスカがその考えを改めない限り、ユニゾンは不可能よ」
「きいいい〜〜〜!!!!」
アスカは走って家の外に出ていってしまった。
「鬼の目にも涙か」
目に光るものを見つけたトウジが呟いた。
「碇君!何をしてるの!」
ヒカリは立ち上がって叫んだ。
「女の子を泣かしたのよ!早く追い駆けて!」
ヒカリの迫力が怖かったシンジは慌ててアスカを追い駆けた。
(なぜ?碇君の動きが分かった・・・それに・・・暖かい・・・気持ちが良かった・・・・なぜ?・・・分からない・・・・理論上あり得ない得点・・・どうして出たの?)
(惣流の自業自得だと思うんだが・・・)
ケンスケもヒカリが怖くて言えなかったが、
「・・・碇君のどの行為が弐号機パイロットを泣かせたの?」
レイは素直に疑問を口にした。
「え?え、えあ、あの」
勢いで叫んでしまったヒカリは答えに窮した。
「レイ、弐号機とのシンクロ実験やるわよ」
「・・了解・・」


P.M.2:57、シンジはコンビニの飲料類の前でアスカを発見した。
シンジはアスカに近付いた。
「哀れみの言葉なんか掛けないで」
ガラスに写るシンジの姿を確認したようだ。
アスカはジュースの缶を手に取った。
「口惜しい、優等生に舐められるだなんて・・・」
アスカが手に力を込めると、ジュースの缶は破裂し中身が噴出した。
中身が詰まったチタン缶を握り潰したのを見て、怖くて店員は何も言えなかった。
暫くアスカは考え込んでいた。
結果、自分がレベルを落とすしかないと言う答えを弾き出した。
アスカは立ち上がってシンジの方を真っ直ぐに向いた。
「シンジ、特訓よ。絶対に優等生や、ミサトを見返してやるんだから」
シンジはアスカの意志の強さは敬服に値する物だと思い、軽く微笑みながら頷いた。


P.M.10:22、ネルフ本部、赤木博士研究室、
リツコは今日のシンジとレイのユニゾンを分析していた。
「ふう・・・これは大変ね・・・・まさかここまでとは・・・」
マギから戻ってきた分析結果を見た。
「・・・ひょっとして、副司令への反論と言い・・・まさか・・・もしそうならば」
リツコはシュミレーションをした。
「これで行けるわ!これであの人も私しか見れなくなる」
「ふふふ、シンジ君、利用させてもらうわよ」
リツコは不気味に笑っていた。


10月7日(水曜日)
朝、シンジが起きた時には既にアスカは着替えを済ませていた。時計は既に8時を回っており、どうやら昨日の疲れで寝過ごしてしまった様だ。
二人は台所で朝食を済ませて特訓を開始した。
シンジはアスカのハイペースに全くついていけずに、何度もアスカに殴られたり蹴られたりした。


ネルフ本部、技術棟、
リツコはミサトから話を聞いた。
「でも、ミサトにしては、随分筋の通った話じゃないの」
「・・・後無いのよ・・・これ失敗したら、首よ」
それ以前に死ぬわよとは誰も言わなかった。
「そうね、シンクロうまく行って欲しい?もしアスカの値、超えよう物ならあの子、壊れるわよ」
ミサトは目を閉じ、暫く考え、エヴァの専属制を思い出した。
「そんな事は無いんでしょ」
「ええ、ありえないわ、でも、追いこんで良いの?弐号機にレイも乗れるって事だけでかなり追い込むわよ」
「使徒に勝つためよ」
大義名分を口にした。
「復讐のための間違いでしょ」
ミサトの過去を知るリツコは言葉の影に隠れる本心を指摘した。
「シュミレーションプラグ、マギの制御下に入りました」
「シュミレーションスタート」
グラフが順調に伸びていく。
「どう?」
「際どいですね」
マヤはじっとグラフを見つめている。
「ボーダー突破!シンクロ率16.77%」
「戦闘には耐えないわね」
「最後の手段ね、アスカには伝えた方が良いかしら?」
「私には分からないわ」


夜、ミサトのマンション
アスカが踊り切り、数秒後にシンジが踊り切った。シンジは荒い息をついて座り込んだ。
得点 11.44点
誤差  7.55秒》
ミサトは少し考えた後、言う事にした。
「アスカ、もう良いわ、弐号機を降りなさい」
「なっ!!」
「レイが弐号機とのシンクロに成功したわ、勿論、貴女よりも遥かに低いシンクロ率だわ、でも、確実に失敗するこの組み合わせよりはマシよ」
ミサトはビールの缶を机に置いた。
「冗談じゃ、冗談じゃないわよ!!!」
「じゃあ、さっきまで、20点台が出てたのに、どうして、10点台に下がったの?」
「そんなのこいつがだらしないからに決まってるじゃない!!」
アスカは未だ荒い息をついているシンジをビシッと指差した。
「不正解」
「じゃあ、アタシが悪いっての!!?」
「正解」
「アタシのどこが悪いってのよ!!」
「未だ分からないの?シンジ君に合わせないばかりか、シンジ君が合わせられる限界よりも遥かに早い速さで踊るところよ」
「何よ!」
「私が求めているのは完璧に相手に合わせられる能力、疲労の限界が近付いているシンジ君に誰かの動きに合わせて踊るのは不可能、アスカが全く合わせないから点数が下がったのよ」
「きいいいい〜〜〜!!!」
「ラストチャンスよ、1時間の休憩の後、もう1度だけやるわ、ボーダーは未だ一度も出した事が無い30点、これが無理ならば、レイ、弐号機で行くわ」
アスカは俯いた。
「シンジ君、仮眠してていいわ」
既にシンジは眠りに落ちていた。


本部、技術棟、
シンクロ実験とハーモニクスの実験が微調整の為の休憩を挟んで交互に続けられていた。
マヤはジュースとタオルをレイに手渡した。
「レイちゃん、大丈夫?」
「・・・問題ありません・・・」
「そう、ごめんね、夜までつき合わせちゃって」
「・・・問題ありません・・・」
「ごめんね」
マヤはレイの前を立ち去った。


司令室
調整を続けた結果、シンクロ率は20.33%まで上がっていた。
「・・・これ以上は無理ね、レイ、これで最後よ」
『・・・はい』
・・・
マギによって弾き出された勝率、アスカ、シンジ組、77.6%但し、合格点以上を出す事が前提。シンジ、レイ組、11.2%。


ミサトのマンション、
二人が構えた。
「ラストチャンスよ、シンジ君は、合わせる必要は無いわ、アスカの方を一切見ずに、前だけ見て踊りなさい、アスカがシンジ君に合わせるのよ、分かったわね」
「はい」
「・・・わかった、わよ・・」
「ミュージックスタート」
シンジは、疲労が限界に近いこともありアスカの方は無視して、踊った。
アスカは嫌々ながら、無理にシンジに合わせてぎこちない動きになっている。
ミサトは笑みを浮かべた。
そして、フィニッシュ、シンジの方が1歩早かった。
「さてさて、どうかしら?」
ミサトは既に30点を超えることは確信していた。
得点 38.77点
誤差  2.88秒
「良し!」
アスカが叫んだ。
「これなら文句無いでしょ!」
「ええ、今のところは、でも、決戦前日までに合格点を出せなければ同じよ、分かったわね、シンジ君今日はもう寝て良いわ」
「・・はい・・」
シンジはふらふらしながら部屋に入って行った。


10月8日(木曜日)P.M.10:42、
シンジは今日1日アスカとユニゾンの特訓をし、肉体的にも精神的にも疲れていた。
シンジは布団に潜り込んでウォークマンを聞いていた。
アスカが風呂から上がって来た。
「あれ?ミサトは?」
「本部に用事があるらしいよ」
「そう」
アスカは自分の布団を隣の部屋に持っていった。
「この扉を超えたら銃殺よ」
そう言って襖を閉めた。


P.M.11:43、突然、襖が開いてアスカが部屋に入って来た。
シンジはウォークマンの再生を停止した。
アスカはトイレの方に行った様だ。
シンジはアスカが部屋に戻るまで目を閉じて寝たふりをする事にした。
暫くして、微かに何か良い匂いがしてきた。
気になって目を開けると、アスカがシンジの真横で寝ていた。
驚きのあまりシンジは暫く全く身動きすら出来なかった。
まさに美少女の代表とでも言うべきアスカは、レイの神聖な雰囲気とは全く異なるが、こちらも最高クラスの魅力を持っている。
シンジはアスカの寝顔に魅入ってしまっていた。
心拍数もかなり上がっている。
衝動に駆られシンジはゆっくりと自分の唇をアスカの唇に近付けて行ったが、もう少しの所で、アスカが寝言でママと言ったので、シンジはアスカに餓鬼扱いされた事に腹が立ってキスをするのを止めた。
「自分だって子供なくせに」
シンジは一言愚痴を言ってから別に敷いた布団で寝た。


10月9日(金曜日)朝、ミサトのマンション、リビング、
漸く、シンジがへまをしなければ80近い数字が出るようにはなってきたが、シンジがへまをしてしまえば60前後にまで落ち込んでしまう。
「も〜〜!!どうしてそこで間違えるのよ!!あんたには学習能力ってもんが無いの!!??」
「ご、ごめん」
「そうやって、直ぐ謝って、謝ってれば怒られないとでも思ってるわけ!」
「ご、ごめん」
「きいいい〜〜〜!!」
「アスカ、今日の夕方に試験をするわ、不合格ならば、シンジ君は本部に行って、シュミレーションよ」
ここで、もう一つの組み合わせ、アスカ、レイ・初号機組は、シンジ、レイの極端に異様過ぎる数値に全員が失念していた。
或いは、初めからアスカを煽る事だけが目的だったのかもしれない。
「分かってるわよ、もう一度、最初から通すわよ」
そして、シンジは同じところで同じ間違いを犯した。
「きいいい〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「ご、ごめん」
「あのさ〜アスカ、シンジ君が間違えた時にあなたも間違えれば?」
「どうしてよ!」
「シンジ君が間違えても、あなたが合わせれば、それは間違えじゃ無くなるのよ、レイとのユニゾン見たでしょ、最後なんか二人ともこけたのよ」
アスカはシンジとレイのユニゾンを思いだし不機嫌になったが、確かにその通りだと分かった。
「・・・・ふん、もう一度やるわよ!」
そして、今度は、シンジは間違えなかったためにアスカに張り倒された。
「難しいもんね〜」


ネルフ本部、技術棟、
レイがシュミレーションを行っていた。
シンクロ率が低すぎるため、レイの正確無比の射撃の成績にまで影響が出ている。
「拙いわね」
「ええ、格闘戦はとても耐えられそうにありません」
モニターでは、弐号機が、第参使徒に張り倒されていた。
(・・・これでは、弐号機以降へのダミープラグの搭載は余り期待できないわね・・・)
「弐号機敗北・・・次、どうします?」
「・・・あっちに賭けるしかないわね、後1回全体を通して総合訓練、それが終わったら、ミサトのところに行きましょ」


昼、ミサトのマンション
アスカが漸くシンジに合わせられるようになってきたが、シンジの方が疲労からアスカに合わせる余裕が無くなってきた。
原因の一つに、アスカに受けた暴行の痛みもあるのだが・・・
得点 83.44点
誤差  1.22秒
ミサトが電話を取った。
『ミサト、これから、レイといっしょに行くわ』
「レイは?」
『・・・期待はしないで』
「そう、分かったわ」
ミサトはゆっくりと電話を切った。
1時間後、リツコがレイを連れて参上した。
「調子はどう?」
「・・85点が最高ね」
「二人は?」
「休憩中・・・どっちかって言うと疲れてるのはシンジ君だけね」
「アスカの体力は、常人のそれとは一線を画くわ」
「ええ」
そして、二人がリビングに戻って来た。
「アスカ、中間試験よ、」
二人は定位置に立って構えた。
そして、音楽と共に踊り始め、初めてフィニッシュが揃った。
「どうよ!」
視線がモニターに集中した。
得点 86.55点
誤差  0.88秒
「もうちょっとね」
「今度の問題はシンジ君ね、」
「・・僕ですか」
ほらそうでしょとでも言わんばかりに、アスカが微笑んでいる。
「そう、シンジ君の体力、だから、レイを使うわ、今から、2回、レイと踊って、レイは、シンジ君のパターンを覚えなさい」
「・・了解・・」
「綾波とですか?」
「やってみて」
そして、不思議な気分の高揚と快感の中、2人は2回とも、100点満点を叩き出した。
「シンジ君夕方まで休んでいて、次、レイとアスカで行くわよ、アスカ、レイをシンジ君だと思ってやりなさい、レイはシンジ君のパターンを完璧にトレースするわ」
確かに、レイならばシンジの動きを再現できるだろう。
「・・・分かったわ」
そして、二人は踊り始めた。
得点は、77.77点、
「お〜フォーセブン」
「バカ言ってないで、続けて」
そして、日の光が赤くなってくる頃、
二人のフィニッシュが完璧に揃った。
「これは凄いわ」
得点 93.66点
誤差  0.34秒
「どう言う事?」
「得点は一致率、誤差は、タイミング、評価の対象が違うわ、でも、行けそうね」
そして、シンジが戻ってきて、3回のパート練習の後、試験を行う事になった。
二人は、踊り始め、次々にパートが進んで行き、シンジが間違えた瞬間、アスカがそれに合わせた。
「「おっ」」
ミサトとリツコが同時に声を上げた。
その後シンジが流れを戻した、アスカは直ぐに戻せたが、シンジに合わせてゆっくりと戻した。
そして、最後のフィニッシュ、完璧に揃った。
「これは行ったわね」
「そうね」
得点 95.84点
誤差  0.10秒
「合格よ、おめでとう、後は実践で叩き出すだけよ」
「シンジ、今のうちに、体に叩き込むわよ」
シンジは頷き、再び二人は踊り出した。
「これで半分肩の荷が下りたわ」
「残り半分は明日ね」
「ええ」
ミサトは笑顔でビールを飲んだ。


10月10日(土曜日(地球連邦の日))A.M.11:21、ネルフ本部第1発令所
「目標、強羅絶対防衛線通過!」
「目標0地点に侵入!」
「マギの予想よりも3時間も早いわね・・・エヴァぁは?」
ミサトは視線を主モニターからマヤに移した。
「発進準備完了、射出口へ移動中」
「アスカ、シンジ君、準備は良い?」
『大丈夫よ、シンジ、最初からフル稼働最大戦速で行くわよ』
『分かってる、内部電源が切れるまでの62秒でケリをつける』
「行けそうですね。」
「ええ」
日向の声にミサトは頷いた。
「進路オールグリーン」
「エヴァンゲリオン初号機、弐号機発進!」
ミュージックが流れ、十数秒後、モニターに初号機と弐号機の姿が現われ、空へと舞った。
2体のエヴァは同時に使徒に対し膝蹴りを食らわせた
「パレットガン!」
兵装ビルからパレットガンが出され、同時に放った。
使徒はビームをチャージし始めた。
「弾幕張って!」
兵装ビルから弾幕用のミサイルが放たれ、使徒からエヴァが隠れた。
2体のエヴァは大きく跳躍し、使徒のビームは空を切った。
『『であああああああ!!!!』』
二人の叫びとともに2体のエヴァの飛び蹴りが同時に使徒のコアに着弾した。
そのままの勢いで使徒は地面を滑っていく。
「後11秒、9秒、7秒」
日向がエヴァの内部電源の残り時間を読み上げる。
「5秒、3秒、1秒」
使徒のコアが破砕し爆発した。
「回線切り替えます。」
高空からの映像になった。
使徒が爆発した後はクレーターになっていてその中心にエヴァ同士が重なり合って倒れていた。
「やった!」
「どうやらその様ね」
リツコも頷いた。
「良くやったわ、二人とも」
画面に映った二人の顔は満足そうだった。


あとがき
この話でアスカの心が少しだけ解されます。
レイは弐号機以下のエヴァに乗る事も出来ますが、使い物にならないようです。

次回予告
返って来た連邦統一模試の結果、それは、信じ難い物であった。
アスカに自らの過去の片鱗を話す加持、修学旅行に行けない事で騒ぎ立てるアスカ。
しかし、レイの入れ知恵でパワーアップしたシンジはミサトを容易くやりこむ。
そんな中、浅間山の火口で発見された使徒に対し、発動された使徒捕獲作戦に伴い特令A−17が発令される。
全てが優先された使徒捕獲作戦最中に、司令部を訪れた耕一、D型装備が崩壊する。
失敗した捕獲作戦。作戦会議で出された、アスカの案を修正した作戦が展開される。
果たして、作戦部長の価値はいったいどこへ・・・
次回 第拾四話 マグマダイバー