復讐…

◆第壱話

 シンジはゆっくりと目を開いた。
「…ここは?」
 電車の中で目を覚ました…目を車窓の外に向けると見えてくる光景から判断するに、第3新東京市に向かう途中であるようだ。
 手元を見てみると、シンジの鞄がある…第3新東京市に来たときに持っていたあの鞄である。
「どうやら…無事に戻って来れた様だな」
 とりあえず一つホット息を吐く…出来ることは分かっていたが、確信していたと言うほどではなかった。それがうまく行ったと言うことは嬉しいことである。
 これからを上手く切り抜けるには力がいる…それがこの世界でも使えるかどうか試してみなくては行けない。右手にATフィールドを集中させてみる。
 紅い光が掌に集まり、紅い光の球になる。あっさりと出来たことで、シンジは思わずにやり笑いを浮かべた。
 ATフィールドが使えるのならいざと言う時の手として色々と使えるはず。
『特別非常事態宣言発令に付き、次の停車駅で緊急停車します』
(来たか、)
 車内放送が流れてから暫くして列車は駅に到着し、シンジはホームに降り立った。
 もうみんな避難し尽くしてしまったのか、駅の中は無人でただセミの声だけが響いている。
 無人の改札を抜けて駅の外に出る。
『本日12時30分東海地方を中心とした関東中部全域に特別非常事態宣言が発令されました。住民の方々は速やかに指定のシェルターに避難してください。繰り返しお伝えします、本日12時30分東海地方を中心とした関東中部全域に特別非常事態宣言が発令されました。住民の方々は速やかに指定のシェルターに避難してください』
 駅を出ても既に避難をしおわっているのか辺りに人は一人も見当たらない…改めて考えると少し淋しいことなのかも知れない。
「さて…葛城さんが来るまで暫く待つかな」
 あえてミサトへの呼び方を変えた…今までに切りをつける為に、


 やがて、赤いスポーツカーが物凄い速さでこちらに向かってくるのが見えた。
「少し、早い気がするけど…あの走り、間違い無いな、」
 シンジは車を睨み付ける…復讐に駆られた、愚かな女が駆る車を。ただ、かつて迎えに来たときは青色だったのに今は赤色、色が違うのが少々気になるが…
 赤いスポーツカーはシンジの目の前で止まる。ウィンドウ越しにやはりミサトが見える。
(やはりか、)
 ドアを開けてネルフの制服でバシッと決めたミサトは車から降りて来た。
 直接睨み付けるとミサトはこりゃ〜随分と怒っているのね…とでも考えたのか、汗を浮きだたせている。
「…碇シンジ君ね、遅れてごめんなさい」
「いえ、葛城さんですか?」
「ええ、そう、葛城ミサト。ネルフ本部戦術作戦部の部長をしているわ」
「そうですか」
 興味がなさそうに応える。実際、知っていることばかりでありそれを聞くことには興味はないのだが、
「ところで、悪いんだけれど時間が無いの、早速乗ってくれるかしら?」
 取り敢えず、今何か起こすのは得策ではない、従うべきだろう。それに、サキエルが迫っている。下手に巻き込まれて死んでしまっては何もならない。それに使徒を倒すためにはエヴァを使う必要がある。
 短くハイと応えてシンジは助手席に乗り込み、それを確認するとミサトは直ぐに車を走らせた。
 やはり物凄い運転である…ある意味ジェットコースターの方が未だ安心かもしれない。安全だと分かっているのだから…
「これ、資料…本部に着くまでに読んでおいてくれるかしら?貴方にとって相当重要な事項も含まれているから」
 ミサトは極秘と銘打たれたファイルをシンジに渡す。
(どうせ、どうでも良い内容ばかりだろ)
 そんなことを考えながら受け取り適当なページを開いた瞬間、シンジの考えはあっさりと覆された。
 ちょうど初号機が写真入りでしっかり乗っていた。
(…どう言う事だ?機嫌取りか?そうすると、パンフレットを2通用意していたと言うことになるのか?しかし…それだと…う〜ん…)
 悩むシンジの思いを他所に、車はジオフロントへと続くトンネルに入っていった。


 そしてネルフ本部に入り、ケージへと向う。
 前回は、ここで、迷いに迷ったあげくリツコに救出して貰うというようなとんでもないことをしてくれたのだが…まっすぐにケージに向かっている。
(…迷っていないな。ふざけやがって)
 前回迷ったのはわざとだったのか…自分の様子がおかしいので、手を変えたのだろう…そう結論づけると無性に腹が立ってくる。
 ケージへと続く通路でリツコが待っていた。
「リツコ」
「この子が、サードチルドレン?」
「ええ、碇シンジ君よ」
(自分のコンプレックスで、人にまで不幸を振りまいた女)
 シンジはリツコを睨みつける。それが凄かったからか、リツコは少し戸惑ったが、暫くして名乗っていない上に、ミサトに確認を行った。自分の事を頭ごしに進めているのが気に入らなかったのか何かであろうと解釈したようだ。
「初めまして、シンジ君。私は赤木リツコ、ここの技術開発部の部長をしているわ」
「初めまして」
 シンジは軽く頭を下げる。
 暫くして3人はケージへと向けて歩き出した。
「サキエルは?」
「現在、陸上自衛隊の戦車部隊と交戦中、突破されるのは時間の問題ね」
「…そう」
 二人の会話をBGMにしながら歩く、やがて到着しケージの扉が開かれた。
 ケージ中央のアンビリカルブリッジに、見た事の無い男性が立っている。
(…だれだ?)
「司令、碇シンジ君をお連れしました」
 男性は軽く頷く。
(司令??)
「碇シンジ君、我々の召集に応じてくれた事に感謝するよ」
「私は、皇耕一。特務機関ネルフ総司令を務めている」
(………、何??)
 司令はあの男のはずなのだが…それ以前にこの男は何者??
 その後耕一から様々な説明があったが、知っている事でもあったので聞き流しどう言う事なのか考え込んだが結論は出なかった。
「さてシンジ君、初号機に乗ってくれるかどうか、聞きたいんだが」
 初号機に目をやる。
「乗らなかった場合はどうなります?」
「そうだな…先ほど説明したように、放置すれば使徒によってサードインパクトが引き起こされ、人類は滅亡するだろうな」
「まあ、それは結果的には、だ。今回に限ってなら防げる」
 耕一に視線を戻し、軽く首を傾げる…今回限りとはどう言うことなのか?レイを載せると言うことも考えられるが、今回限りという風にはならないだろう。
「我々の最終手段はこの施設の自爆だからな。それによってあの使徒は倒せる。だが次に訪れる使徒にサードインパクトを引き起こされてしまうだろうから、まあ、最終的な結果は同じなのだろうけれどね」
 周りの職員に目を向けると覚悟をしている者としきれていない者が居るようだ。
「それだけだ、」
 シンジは耕一の目をじっと見つめるが、何も読み取れない。
(ここで引かない方が良いのか?)
「…分かりました。」
「そうか、済まない」
 耕一は軽くシンジに向かって頭を下げた。
「リツコ博士、説明を」
「はい、シンジ君、来てくれる?」
 シンジはリツコに連れられケージを出た。


 その後、別室で行われたリツコの色々な説明を聞き流した後、エントリープラグに入った。
『冷却完了、ケイジ内全てドッキング位置』
『パイロット、エントリープラグ内コックピット位置に着きました!』
『了解、エントリープラグ挿入』
『LCL排出開始』
『プラグ固定完了、第一次接続開始!』
『エントリープラグ注水』
 足元からLCLが満たされ始める。
(ああ…そう言えば、驚いておかなきゃ)
「な、なんだこれ!?」
『LCL、説明したでしょ、肺がLCLで満たされれば、直接酸素を取り込んでくれます』
 ……聞いていなかった。
「…気持ち悪いですね…」
『そう、でもLCLは必要なの、我慢して』
 確か、前回は男の子だから何とかで我慢しろと言われたような気もするが…やっぱり態度で変えているのだろうか?何か違うような気もしてちょっと自信はなくなってきた。
『主電源接続、全回路動力伝達、起動スタート、シナプス挿入』
『A−10神経接続異常なし、初期コンタクト全て問題無し』
『全ハーモニクスクリアー、シンクロ率78.11%、暴走、有りません』
 発令所で驚嘆の声が上がる。シンクロ率の次元が違うから当然かもしれない。
 シンジは司令塔にいる3人に気付いた…耕一の後ろに碇と冬月が立っている。
(何々だ!!?)
『エヴァンゲリオン初号機発進準備!』
 ミサトの声が響く。
『第一ロックボルト外せ!』
『解除、続いてアンビリカルブリッジ移動!』
 周りの物体が動いていく。
『第一、第二拘束具除去』
『第3第4拘束具除去』
『1番から15番までの安全装置解除。』
『内部電源充電完了、外部コンセント異常なし。』
『エヴァンゲリオン初号機、射出口へ。』
 エヴァが移動し始め、そして止まった。
『進路クリアー、オールグリーン!発進準備完了。』
『シンジ君、心の準備はできたかしら?』
「…はい」
『宜しいですね。』
『ああ、我々には選択肢は残されていない』
『発進!!!』
 ミサトの声とほぼ同時に強いGが掛かる。
 そして、第3新東京市の郊外に射出された。
『前方3200メートルに第参使徒』
 その通り、結構離れたところにサキエルがいる。
(…ホントに何々だよ…)
 訳が分からないが、シンジは首を振って考えを振り払い、取り敢えず戦う事にした。
『最終安全装置解除!』
 肩の安全装置が外される。
『先に言った通り、エヴァは貴方の考えた通りに動きます、』
 取り敢えず軽く動かしてみた。
『シンジ君、あれ相手に、刀、槍、ナイフ、使うとしたらどれが一番マシ?』
「刀なら剣道で」
(って、竹刀か、)
 自己突っ込みをしている内にアクティブソードが手元に射出された。
『使って』
「…はい」
 初号機はアクティブソードを手に取る。
『距離1000、警戒距離に入りました』
『シンジ君、貴方に任せるわ、方法は問わないから好きに叩きのめして』
「…はい」
 本気で訳が分からないがとにかく撃破する事にした…その結果ものの30秒も掛からずにサキエルのコアを真っ二つにして殲滅した。


 戦闘終了後、リツコでは無く耕一がやって来た。
「御苦労様」
 耕一は手を差し出し握手を求めて来る。
「はあ…有難う御座います」
 手を握り返す。
「さて、これからお父さんのところに行くが一緒に行くかな?」
 少し考えるが…とりあえず付いていった方が良いかもと考え、付いていくことにした。


 そして、総司令執務室に来たと思ったのだが…副司令執務室となったいた。
「私だ」
 無言で重々しい扉が開き二人は副司令執務室に入った。
 ある意味相変わらずなのかこれは変わっていないようで、碇が大きな机につき、冬月がその斜め後ろに立っている。
 シンジは碇を睨み付けるが、碇は表情一つ変えない。
「君のお父さんは、副司令を勤めている。そして、君のお母さんの恩師でもある冬月コウゾウは、総務部の部長を務めている」
(…この人がいるから色々と変化しているのか、)
 順繰りにずれている…その変更の元になった人物であろう耕一をじっと見つめる。
 一体何者なのか…
「…司令、退室願えますでしょうか?」
「そうか、親子二人で話すこともあろうだろうな。冬月君、」
 冬月は頷き、耕一と共に部屋を出ていった。
 この広い部屋にこの親子だけになる。
 全ての想いを込めて愚かな父を睨み付ける。
 それがあまりにも凄かったからなのか、それともシンジが…と言うことなのか、ずれてもいないサングラスのずれを直してしきり直す。
「…、久しぶりだな」
「そうだね」
 機械的に応える。
「さて…今後のことだが、これからも引き続き初号機に乗って貰う事になる」
「その際の待遇は3尉待遇、但し給与は3佐に準じ、各種手当てが付く。住居に関しては後で用意させる。以上だ」
 いきなりそれかよと、流石にちょっと呆れが入った気持ちになってしまった。
「…それが言いたかっただけか?」
「伝えるべき事を伝えただけだ」
「流石に呆れたな…もう少し言うことはないのか」
「何がだ?必要なことは伝えたが、」
「…もう良い、話すことがそれだけなら、こっちも言うことはない。行く」
「そうか、」
 シンジは溜息をつき副司令執務室を出た。


 あの態度はあんまり過ぎたために呆れていたのが、通路を歩いている内にだんだん腹が立ってきた。
「くそっ…とりあえずでもぶん殴ってくれば良かった」
 直ぐに、前回のことにもあわさっていき、憾みがふくれあがってくる。
「殴るじゃなくて殺しておけば良かった」
「…今から殺しに行くか、」
「おやおや、物騒なことを言っているな」
 気付くと耕一が目の前にいた。どうやら…あんな事をぶつぶつと言いながら歩いていたようである。いくらなんでも流石にと辺りを見回すが、耕一以外に人はいない…被害は最小限にとどめられたようだ。最も、それでもどうなるか分からないところもある気もするのだが…
「何かあったのかな?」
「……何もありませんでしたよ」
 ある意味余りにも何もなさ過ぎた。特に何か特別なことがあると思っていたわけではないが、それでも…あそこまでの物とはとても予想だにしなかった。
「そうか…それで、今後の待遇のことは聞いたかな?」
「ええ…」
 …それしか聞いてない。
「その待遇で良いかな?」
「ええ…別に構いませんよ」
「それじゃ、住居のことだが…ちょうど家の娘のところに部屋が空いているから、シンジ君さえよければと思うんだが」
 耕一の娘?
「ま、会ってから決めても良いだろうな、付いてきてくれるかな?」
「あ、はい」


 司令執務室に向かう…碇の副司令執務室よりも一つ下のフロアにあった。
「副司令執務室の方が上にあるんですね」
「ああ、あそこをと言われたんだが趣味じゃなかったのでな、しょうがないから幹部用の執務室を3つぶち抜いて改装したんだが、」
 秘書室に入ると、部屋の中で十数人の秘書が仕事をしていた。
「レイラ、ちょっと良いか?」
 奥の方でパソコンに向かっていた髪の長い女性に声をかける。
 女性がこちらを振り向いたとき、驚きでシンジの目が大きく開かれた。
 髪こそ黒のロングだが…その女性の顔はユイに瓜二つであったからである。
 しかし、ユイではないはずである…ユイはエヴァの中にいる。シンクロに特に違和感はなかった…だから、それは間違いないのだが…
「レイラ、話していたシンジ君だ」
「…あ…、初めまして」
 何を考えていたのかは分からないが、耕一に言われてはっと気付いたように軽い笑みを浮かべて初対面の挨拶を言ってくる。
「あ、は、初めまして…」
「シンジ君、どうかな?レイラは料理もうまいし、色々と気が付くし、なかなか良いと思うんだが…」
「会長、お見合いじゃないんですから」
 耕一がレイラの事を誉める中、長い金色の髪をした秘書官が軽く苦笑しながら言う…そして他の秘書官に目を移すとそれらの者もそれぞれくすくすと笑っている。
「それもそうだな、で、どうだろうか?」
 このレイラがユイに瓜二つだと言うことが余りにも気になる…
 暫く考えたが、結局宜しくお願いしますと頭を下げた。


 レイラは仕事を切り上げ、シンジを連れて帰ることになった。
「宜しくお願いします」
「ええ、こちらこそ」
 二人は幹部専用の駐車場に向かいながら話を始めた。
「…レイラさんは、ネルフの中でどういう立場にいるんですか?」
「司令第2秘書官、階級は1尉だから…葛城3佐の一つ下ね」
「そうですか、」
「シンジ君のことを聞いて良い?」
「ええ、」
 そして、シンジの好きなもの、嫌いなもの、趣味等について話した。
 やがて駐車場に到着するとレイラの水色の車に乗り込む。
 とびっきり凄いというわけではないがなかなか良い車である。
 レイラは車を走らせる…ミサトと比較するのが間違っているのかもしれないが、遙かに良い。
 そして、マンションに到着するまで、今度はレイラのことについて話をしていた。


 レイラが住んでいたマンションは、なかなか良さそうな高級マンションの最上階であった。
 リビングも広く、キッチンやその他も随分ゆったりと作られている。
「ここに一人で?」
「ええ、それでちょっと淋しいの、だから家族が出来て嬉しいわ」
 綺麗な笑みを浮かべる…顔が瓜二つだからなのか、その表情はユイやレイに重なり、それぞれの記憶を掘り起こす切っ掛けになった。


 その後色々と案内され、今はリビングでコーヒーを飲みながらくつろいでいる。
「夜には荷物が届く予定だけれど、どちらの部屋が良い?」
 3つ部屋があり、1つはレイラが使っているため、2つ部屋が余っておりどちらを使うか…
「レイラさんの隣の部屋にします」
「そう、分かったわ」
「…そう言えば、司令は?」
「お父さんは、いそがしいからね」
「そうですか…」
「あ、そろそろ御飯作るわね」
「あ、はい…」
 暫くするとキッチンの方からいい匂いが漂ってくる。
 誰かに家で料理を作ってもらう…そんなのは久しぶりな気がする。
 なんと言っても、ミサトの料理は食べられるようなものではないし、アスカは作ろうなどとはしなかった。
 テーブルの上に美味しそうな料理が並ぶ…肉や魚の姿は見えない。レイラは菜食主義者なのだろうか?
 頂きますと言ってから料理に箸を付けた。どれもみな美味しい。
「美味しいですね」
「そう?そう言ってもらえると嬉しいわ」


 夕食後、届いた荷物を二人で部屋に運び込んだ。
 荷物は結構少なかったため短時間で終わる。
「これで、終りね…何か足りないものはあるかしら?」
「…そうですね」
 部屋を見回してみるが一通り必要な家具は揃っているし、特に必要というようなものはなさそうである。
「いえ、特にはないです」
「そう、明日はどうする?」
「明日ですか?」
「ええ、本部に行って挨拶回りというのもあるけれど」
「あ、それで良いです」
「分かったわ、」


 夜、シンジはベッドに横になってレイラのことを考えていた。
 ユイではない…これだけは間違いないだろう。
 だが、余りにも似すぎている。
 歳の離れたユイの妹…叔母であろうか?いや、それはない、それだと耕一が祖父になってしまう。
 それ以前に二人は親子と言うには歳が近すぎる…養女か?
 おそらく耕一とレイラはそう言う関係だろう…だが、ユイとレイラの関係は??
 シンジは色々な可能性を考えていたが…結局これは答えは出なかった。


 隣の部屋で、レイラがベッドに横になっていた。
 シンジに会ったときのことを思い出す…あの時、何かそれを表現する言葉を持たない特別なものを感じた。あれはいったい何なのだろう?
 同じようなもの、あるいは似たようなものは今までにあっただろうかと記憶を探る…そして、一つ同じように表現することが出来ない特別な何かを感じたことがあったことを発見した。
 そう、去年ネルフに初めてやって来たとき、シンジの父親である碇に会ったときにもそんなことがあった。だが、あの時の物とは異質な物であるきがする。否、異質である。
「…あの人も特別な感じがした。でも、それとは違う…」
 何故、そんなことに自信があるのだろう?その辺りに答えがあるのかも知れない…しかし、それを考えても、まるで答えを得ることは出来なかった。
 明日、本部に行ったときにもっと詳しい資料を見てみて、何かヒントになるような物はないか調べてみる事にして今日はもう寝ることにした。
 部屋の照明を消すと南の空に浮かんだ月の優しい光が部屋の中、そしてレイラを淡い色に照らした。