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第11話

◆母

2016年、第3新東京市跡、
3機のヘリコプターが、広大なクレーターの上空を飛んでいた。
自衛官の一人が何かを見つけたのか、合図をし、ヘリは其処に着陸した。
「おい・・こりゃ・・・」
自衛官は絶句した、其処には、ネルフ侵攻時の最大の目標の一つであった、チルドレンの内の二人、碇シンジと惣流アスカラングレーの遺体が横たわっていた。
「・・どうする?」
「取り敢えず回収しなけりゃ成らんだろう」
「そうだな」
シンジとアスカの遺体は、ヘリに載せられた。


数日後、第2新東京市、国際連合本部ビル、
天城タイゾウの前に、マヤが立っていた。
「伊吹1尉」
「・・はい・・」
「君は、生き残ったネルフ職員の中で唯一真実を知る事ができる者だ。マギを解析し、真実を全て明らかにしたまえ」
「はい」


マヤは、僅か数人でマギのセキュリティーに挑む事に成った。
結果は、3ヶ月ほどで、全ての情報を引き出せるようになった。
レベル7の情報は、天城達だけでなくマヤにも信じられないような情報ばかりであった。
その中で最も、恐怖となるのは、使徒の再来であった。
使徒は殲滅されたのではなく、肉体を失っただけ、近い将来に再び復活する。
この事は、この混乱の極地にある状態では伏せられた。
天城は、各地の国家に相当する組織と協力し、地球連邦を結成する為の準備を始めた。


8月中旬、松代、ネルフ本部付属実験場、地下、伊吹特別研究室、
2つのカプセルの中に二人の胎児が入れられていた。
レイのダミーの破片とアスカの遺体のサンプルそれぞれシンジの遺体のサンプルと組み合わせて造られた子供、ミクとレナである。
チルドレン同士を組み合わせた、エヴァに乗る為に創り出された子供達・・・
「・・ごめんなさい・・」
命、存在をを弄ぶ背徳行為、マヤは二人に謝らずにはいられなかった。


数日後、順調に育ったミクを、カプセルから出し、通常の空間で育てる事にした。
レナは、レイの素体が破片でしかなかった為に、再構成に時間が掛かっていた為、まだ、通常の空間に出す事は出来ない。


10月10日、レナが通常空間に出す事が出きるほどに成長し、マヤは、カプセルから出す準備をしていた。
「・・・ごめんなさい・・」
マヤは涙を零してレナに謝った。
やがて、準備が終わりレナをカプセルから出した。
その時、警報が鳴り響いた。
マヤは何か失敗をしたのかとうろたえたが、違った。
その時、地上の施設が、武装集団によって襲撃されていたのであった。
連絡を受けたマヤは、レナを守る為に、レナを抱いて、地下通路から、第2新東京市に逃げた。ミクは、地上にいた職員が逃がしていてくれる事を祈りつつ、


そして、天城から、直接、ミクが浚われた事。犯人はゼーレの残党と推測されている事を知らされた。
地球連邦が結成されたその日だった。
警備が第2新東京市に集中していた為か、各国の代表が次々にやって来ていた為か、襲撃を許してしまった。


その後、エヴァの再建造計画を初め使徒を倒す為の計画が持ち上がったが、技術面、エネルギー面、人材・・・何もかもが足りず、そして、マヤの使徒の襲来地が予測できないという報告によって、人類は絶望に包まれた。


そんな中、2029年、第2新東京市地球連邦会議
マヤが世界の幹部を相手に説得を試みていた。
レナの為に、レナだけの為に、
「本来ならば、私たちは、サードインパクトで全て滅んでいたはずです。しかし、サードインパクト後に生まれた子供がいます。私達が過ちを犯したことの象徴でもある少女が、ミクが行方知れずなのは残念極まりない事ですが、レナには生きる権利があります。私達が与えた命、そして、それを生きる権利を与える事は我々の責務です。私は、提案します。レナを過去に送ります。2015年、運命の道を踏み外した年です。レナには、歴史を変えてもらいます。そして、レナはその世界で生きる権利と幸福を得る権利が得られます。我々人類には絶滅しか残っていません。残された食料も5年分を切っています。エネルギーも、間も無く、尽きます。しかし、我々には、彼女に希望を残す事が出来ます。それが、私達の最後の仕事なのです。」
「そうだな・・・・サードインパクト以後、新たな生命は誕生しなくなった。全ての問題を乗り切っても、我々人類はもはや40年もせずに自然に消滅する。」
「一つ聞きたいが?我々は戻れないのか?」
マヤは俯き首を振った。
「一つの世界、一つの時代に同じ者は存在できません。綾波レイも心が存在したのは一人だけです。」
「そうか・・・・」
そして、その場にいた者、全員の賛成によって人類最後の計画が始まった。


元第3新東京市、ネルフ本部、
必要な部分が修復された。


10月10日、ネルフ本部、伊吹特別研究室、
レナの誕生日を祝う為に、マヤは、通常の食事を作った。
サードインパクト前であれば通常の家庭料理でしかない。
だが、今の時代、普通の者ならば手に入るはずがない。
マヤは、レナの為に本当はいけないのに、食材を分けてもらったのだ。
レナの方もそれがわかっているので、料理と共にマヤの愛をしっかりと味わっている。
「おいしい」
普段の味気ない食事ではない、美味しい食事。
レナは、その自然に浮かんだ笑みを少しでも良く見せる努力をしている。
マヤの方もそれが分かっているので、嬉しく、そして、どこか哀しかった。
本当の親子以上にお互いを思い遣っていると断言できる。


そして、2030年、発令所、
マヤはマギの最終チェックを済ました。
「異常なし、これで、行けるわね」


数日後、時間転送システム、
レナがカプセルの中に入った。
「マギ演算を開始します。」
「レナ、到着したら、シンジ君とレイを尋ねて」
「・・はい・・」
「注意点として、身の安全が保障されるまで私との接触は控えて」
「・・はい・・」
「行ってらっしゃい、私の愛する娘レナ」
マヤは涙を流した。
「・・行ってきます。お母さん」
笑顔で別れを告げたレナも涙を流している。
そして、レナの姿が消えた。
後には涙の跡が残った。
・・・・
「終わったわね・・・」
「はい」
「先ほど、アメリカ東海岸に使徒が現れました」
「そう、我々人類の最後の仕事が終わったわ、皆、最後の時まで好きな事をして過ごして」
「「「はい・・・・」」」
職員達も泣いている。
マヤは、涙を拭い一人で発令所に向かった。


数ヵ月後、発令所、
マヤは嘗てのマヤの席について思い出に耽っている。
「先輩・・・」
リツコとの思い出に浸っている時に、司令塔に気配を感じた。
「・・・漸く来たわね、第拾七使徒タブリス、そして、フィフスチルドレン、渚カヲル君」
カヲルがマヤを見下ろしていた。
「ここには、アダムもリリスももう存在しないわよ。こんなおばさんに何のよう?」
「そうだね、君には用は無いけど、君の作ったものには用があるってところかな」
マヤはカヲルの意図に気付き、緊急装置に手を伸ばしたが、右肩が切断された。
「くうう!!!」
マヤは、無くなってしまい血が吹き出ている右肩を押さえた。
そして、直ぐに、左手を伸ばしたが、左肩も切断された。
「うううう!!!!!!」
マヤは全ての力を掛けて緊急装置の発動ボタンに頭突きを仕掛けようとした、物凄い力が掛かっている。頭蓋骨が陥没し確実にマヤは死ぬ。
しかし、それすら不可能だった。
ボタンのケースには血飛沫が掛かっただけだった。
カヲルは、司令塔を飛び降り、床に転がっているマヤの首の髪を掴んだ。
「うっ」
マヤはカヲルを睨み付けていた。そして、直ぐに目から光が失われた。
「うわっ!」
カヲルはマヤの首をATフィールドで切り刻んだ。
「リリン、君達の、意志の力は恐ろしいよ」
カヲルは、リリンのたった1っ個の欠片に過ぎない存在でも、ここまで自分に恐怖を与えられるのかと、人類を恐れた。


翌日、
カヲルは、全ての準備を済ました。
「こんな世界にしてしまったリリン、そしてシンジ君に全てを託した僕が馬鹿だったよ。これは復讐さ」
カヲルはカプセルに入り、暫くしてカヲルの姿が消えた。


その後、2037年に、地球人類は絶滅した。


2015年、第3新東京市、
レナは、地図を頼りにミサトのマンションを訪れた。
(鍵が開いてる)
そして中に入ったレナが見たものは、サードインパクト後の世界でも考えられないような地獄絵図だった。
レナは直ちにその場を離脱した。


そして、レイのマンションを訪れたが、既に引っ越した後だった。
その後、レナは、第3新東京市を歩き回り、漸く見つけたマンションで、チャイムを鳴らした後、気絶した。