立場の違い2A

第8話

◆心、重なるとき

10月6日(火曜日)、ネルフ本部シミュレーションルーム、
レイが一人シミュレーションを続けていた。
一人で両方の使徒を同時に撃破する為に、
『78回目・・・本当に大丈夫?』
通信モニターのマヤが少し心配そうに問い掛けた。
「・・大丈夫・・続けて」
『あ・・うん』
シミュレーションがスタートし、画面上に2体の使徒が現れた。
零号機は使徒の攻撃を次々に避け両方を操り、動きを重ね合わせていく、攻撃を交わし、ビームによる追撃もかわす。
そして、一気に攻撃に転じ、両手に持ったプログソードでコアごと両方の使徒を真っ二つにした。
すぐさま距離を取った。
1秒、2秒、3秒、反応しない、
『レイ、よかったわね。成功よ』
ユイの声にレイは微笑みを浮かべた。
「・・今のうちにパターンを覚えるわ・・再開して」
『駄目ね、休憩しなさい』
ユイの声にレイや司令室のメンバーは驚いた。
「・・どうして?」
『ほら、又、無理をしようとする。駄目だって言ったじゃない』
「・・でも・・」
『レイ、未だ日はあるわ』
レイは軽く頷き、回線を切断した。


一方、特別訓練室では、シンジとアスカのダンスによるユニゾンの特訓が行われていた。
数十分後、ユイとレイがやって来た。
「ユイ博士・・」
ユイはミサトの表情から余り思わしくない事が分かった。
「見せてもらいましょうか」
・・・
・・・
シンジとアスカの動きは、シンジが間違えなければ、上手く合うのだが、良くシンジが間違えたりへまをする為に、なかなか成功しない。
「ほら!どうして其処で間違えんのよ!」
「ご、ごめん」
・・・
・・・
「も〜〜!!どうしてそこで間違えるのよ!!あんたには学習能力ってもんが無いの!!??」
「ご、ごめん」
「そうやって、直ぐ謝って、謝ってれば怒られないとでも思ってるわけ!」
「ご、ごめん」
「きいいい〜〜〜!!」
謝る事しかしないシンジはアスカの神経を逆撫でしていく。
「あのさ〜アスカ、シンジ君が間違えた時にあなたも間違えれば?」
「ええ?」
「シンジ君が間違えても、あなたが合わせれば、それは間違えじゃ無くなるのよ、」
アスカは確かにその通りだと分かった。
「・・・・ふん、もう一度やるわよ!」
そして、今度は、シンジは間違えなかったためにアスカが間違えた事に成った。
「きいいいいい〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「難しいもんね〜」
「レイ、出来る?」
「・・多分・・」
アスカは驚きを表情に浮かべた。
「・・シンジ君、レイと合わせてみて」
「あっ、はい」
アスカは軽く俯き拳を振るわせながら、レイに場所を譲った。
「・・アスカちゃん、レイの動きを良く見ておきない」
二人は踊り始めた。
先ずスタートは綺麗に揃っている。
そして、シンジが間違えた瞬間、レイは敏感にそれを察知し、シンジの動きに合わせて、動きを修正した。
「おお!」
今までのアスカとはまるで違う動きにミサトが思わず声を上げた。
そして、何度かの修正を加え、遂にはシンジ・アスカペアは一度も到達しなかったフィニッシュまでやり遂げた。
「・・・どう?分かった?」
「・・・分かりましたよ!!どうせアタシなんか必要ない!!ファーストがいれば全てそれで良い!!そう言う事でしょ!!」
アスカは涙を浮かばせながら飛び出していった。
「アスカ・・」
「ユイ博士・・」
「・・ふぅ・・・レイ、」
レイは軽く頷き、アスカを追った。


ジオフロント内の橋にアスカはいた。
ぶつぶつと何やら呟いている。
「・・ここにいたのね・・」
「ふん!、笑いに来たわけ!?さぞかし気分が良い事でしょうね!そんなにアタシの居場所を奪って嬉しいの!?」
「・・そう、笑いに来たわ、」
「な!!?」
「・・お母さんの言った意味を全く理解せず、勝手に勘違いをして飛び出していった貴女を」
「ど、どう言う意味よ!?」
「貴方はいったい何にあわせているの?」
「え?」
アスカは少し呆気に取られた。
「・・合わせる対象は、マニュアルではなく、六分儀君よ」
「わ、分かってるわよ、それくらい!」
「・・そう、分かっているのなら良いわ、」
レイは先に一人で戻って行った。
「・・分かってるわよ・・それくらい・・・アタシには・・・それしかないんだから・・・そうするしかないんだから・・・」
「アスカ」
アスカはシンジの声に振り向いた。
「何しに来たのよ?」
「あの、その・・ユイさんに言われて、アスカを迎えに」
「・・・そう・・戻るわよ」


10月7日(水曜日)、ネルフ本部シュミレーションルーム、
零号機は両方の使徒を同時に真っ二つにした。
『おめでとう、凄いわ、もうほとんど行けるように成ったわね』
「上がります」
誉めたのだが、事務的に返され、殆ど喜びを見せないレイに、マヤは少し不満げな表情を浮かべた。


司令室、
「・・マヤちゃん、どうしたの?」
「あ・・いえ、レイちゃん・・嬉しくないんでしょうか?」
「そうね、少しだけでしょうね、これはシミュレーション、実戦ではないのだから・・」
「・・・」
「さて、もう一つの方に行きましょうか」
「・・・ところで、ユイ博士?、レイちゃんがほぼ確実に倒せるんですからそんなに、ユニゾンに拘る必要は・・」
「マヤちゃん、」
「はい」
「使徒戦はこれで終わりではないのよ、エヴァは心理兵器でもあるわ、もっと広い範囲で考えないとね」
マヤは改めてユイの凄さを感じた。
皆目先の使徒の事しか考えていない。目先の使徒に勝つ確率を如何にして上げるか、しかし、ユイは、その後の遥か先の使徒まで含めた全体の勝率を上げる事を考えている。ひょっとしたらその後の事までも・・・


特別室、
アスカはぎこちない動きながらかなりシンジに併せられる様になってきた。
「ふむ、なかなか行けるようになってきたわね」
ユイとレイがやって来た。
「ファースト見てなさい!やるわよ!」
「あ・・うん」
二人は踊り始めた。
2、3度シンジは間違えるが、何とかアスカはそれをカバーし、遂にフィニッシュまで踊り切った。
ユイは軽く拍手をした。
「随分良くなったわね」
ユイに誉められ、アスカはパッと表情を明るくした。
「ほらシンジ次々行くわよ!」
「あ・・うん」


10月9日(金曜日)夜、特別室、
「・・明日、決行されるのよね・・」
「そうだね・・?」
鍍金が剥がれ、恐怖に怯える弱々しいアスカが出ている事に気づいた。
「・・アタシ・・・うまく行かなかったら・・・エヴァを下ろされちゃう・・・」
アスカは自らの肩を抱き小刻みに震えている。
「・・アスカ・・」
シンジは横からそっとアスカを抱き締めた。
「・・・シンジ・・・」
「大丈夫だよ・・」
「・・・シンジ・・・」
「アスカなら大丈夫、」
アスカは何かを請う様にじっとシンジの目を見詰めた。
ややあって、それはキスを求めていると言う事に気付いたシンジはそっと唇を近付けて行った。
そして、後もう少しでと言う時に圧縮空気が抜ける音、扉が開く音がした。
「「え?」」
開かれたドアの所には、レイが立っていた。
二人は真っ赤に染まって固まった。
「・・・・お邪魔だったようね・・・」
ドアが閉まった。
「ちょちょっとファースト待ちなさい!!こ、これは!!」
アスカは慌ててレイを追い掛けた。
「ふぅ・・・」
キスのチャンスを逃してしまったのは残念だが、まあ、結果オーライかと、シンジは軽い笑顔でベッドに潜りこんだ。


10月10日(土曜日)A.M.11:21、ネルフ本部第1発令所
「目標、包囲完了!」
「エヴァ両機作戦位置に付きました。」
「零号機は?」
「後方に待機しています。」
「よし、作戦開始!!」
初号機と弐号機が一気に使徒に接近し、使徒は自己修復を中断し回避行動に入った。
そして、同時にビームを放ち、又それを両機は同時に回避した。
使徒は一気に飛び上がり両機に向かって襲いかかって来た。
「援護攻撃!!」
周囲に配置された部隊から一斉に攻撃が仕掛けられ、使徒の動きを制止させ、その場に叩き落した。
2体のエヴァは大きく跳躍した。
『『であああああああ!!!!』』
二人の叫びとともに2体のエヴァの飛び蹴りが同時に起き上がった使徒のコアに直撃した。
そのままの勢いで使徒は海面を滑っていく。
使徒のコアが破砕し爆発した。
「回線切り替えます。」
高空からの映像になった。
使徒が爆発した後はクレーターになっていてその中心にエヴァ同士が重なり合って倒れていた。
「やった!」
「どうやらその様ね」
リツコも頷いた。
「良くやったわ、二人とも」
「おめでとう」
画面に映った二人の顔は満足そうだった。
『零号機、両機の回収に入ります。』

あとがき
アスカ「きいいいい〜〜〜〜!!!」
アスカ「どうしてそこで邪魔すんのよ〜〜〜〜!!!」
アスカ「アタシとアタシのシンジのキスシーンを邪魔しやがって!!」
YUKI「・・・随分と御冠の様ですね・・・」
アスカ「あったり前でしょうが!!」
YUKI「・・・そんなに、キスシーンを一杯入れたいわけ?」
アスカ「言うまでも無い!!」
YUKI「・・・で、ですか・・・」(汗)
アスカ「まあ、良いわ、今回は6日間と早かったじゃない」
YUKI「いや、あの後、かなり久しぶりに感想が複数来て、
     嬉しかったから2日おきに上げた。まあ、ストックは減ったけどね。
     で、暗黒編、正規連載昇格3話目にして始めて感想来たから」
アスカ「ふ〜ん、アタシは?」
YUKI「・・・はい?」
アスカ「アタシが書く意欲、絞ってあげたでしょ」
YUKI「いや・・・・」(滝汗)
レイ 「・・・これは何?」
YUKI「はい?」
レイ 「・・・最近LRSなシーンが殆ど無いけれど、これはどう言う事?」
YUKI「暗黒編ではありましたが・・・」
レイ 「・・・」(凍れる視線)
YUKI「・・・」(大汗)
アスカ「ふ〜ん、暗黒編を除くとすると・・・リリン14話も少ないし・・・
    3/17のReturnのエピローグね」
レイ 「・・・貴方はLRSではなかったの?」
YUKI「いや・・・あの、その」
アスカ「こいつも、やっとこさアタシの魅力って者に目覚めたって事よ☆」
YUKI「・・・展開上だから仕方が無いだろ・・・」
レイ 「・・・言い訳は無用」
(銃声)×8
アスカ「ファーストって怖い子ねぇ〜」