ユウキの受難

◆第3話

ユウキは目を覚ました。
「朝?かな?」
ユウキは起きる事にし、ベッドから抜け出した。
そのまま廊下に出た。
「・・目、覚めたのね・・」
「あ、綾波、あ、あの、看病してくれて有り難う」
「・・・そう・・・食事はコンビニのお弁当が冷蔵庫に入っているわ」
「あ、うん、ありがとう」
ユウキはキッチンへレイはユウキの隣の部屋に入った。
「・・・ん?・・・・・なにぃいいいい〜〜〜〜!!!!!」


ネルフ本部、総司令執務室、
ユウキが大慌てで入って来た。
「おや、ユウキ君、どうかしたのかね?」
「お、おじいちゃん!!どうして母さんと同じ家なんだよ!!」
言葉だけを見ると全く当然の事のように思える。
碇はにやりと笑った。
「何か問題でもあるのか?」
「大有りだよ!」
「ふん、全てシナリオ通りだ」
「何がだよ!!」
「ユウキ、私はこれから第2新東京市に向かう、話は又後でゆっくりと聞こう」
碇は立ちあがった。
「おじいちゃん!」
結局追い出された。


夜、ユウキはリビングでテレビを見ていた。
「はぁ〜〜・・・・僕これからどうなるんだろう・・・」
シャワーを浴びたレイがバスタオル一枚でリビングに入って来た。
「・・シャワー、浴びたわ・・」
「あ、うん、次、僕が・・・」
レイの裸体を見たユウキは言葉に詰まった。
「な、な、なんで、は、裸なの?」
「・・赤木博士に外出時には衣服を着用するようにとは言われたわ・・」
「い、家の中でもふ、服来てよ」
「・・それでは、入浴できないわ・・」
ユウキは頭を抱えた。
その後、ユウキは色々と衣服に関する常識を教えた。
「・・・分かったわ、服を着れば良いのね・・」
ユウキは頷いた。
レイはリビングを出て行った。
ユウキは大きな溜め息をついた後、レイの裸体を思い出した。
レナとそっくりだが、それ以上に白く美しい滑らかな肌・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
「・・最低だ・・俺って・・・」
ユウキに何があったのだろうか?


翌日、早朝、ユウキは、朝食と弁当を作っていた。
流石はシンジの息子、かなりの腕前である。
作り終わる頃に、レイが起きてきた。
「あっ、おはよう」
「・・・おはよう・・・」
その後、朝食を取り、学校に向かった。


学校でケンスケに土下座され、トウジを思いっきり殴り飛ばして、和解し、其処までは順調に行っていた。
昼までは、


昼休み、屋上、
ヒカリを加えた5人で食事を取る事にした。
レイの肉嫌いが遺伝したのか、ユウキも肉や魚が苦手だった為、高級精進料理のような構成になっている。
ヒカリが驚いている。
「す・・凄い・・」
「そうかな?」
「碇君のお母さん、凄いのね・・」
ヒカリの言葉はかなり複雑だった。
未来では、レイの料理の腕はシンジと同ランクで、一流レストランにも匹敵する。
だが、現時点ではまともに料理などした事は無い。
ユウキの複雑な表情を見てヒカリは拙い事を言ったと思った。
「・・ご、ごめんなさい」
「いや、そうじゃないんだけど・・・只、これは僕が作ったんだけど」
「「「えええ〜〜〜!!!」」」
14歳のそれも男の業ではない。
「す・・凄い・・・」
ヒカリは自分の弁当と見比べた。
(・・・男の子に・・・負けた・・・)
そんな中ヒカリは、二人の弁当の中身が全く同じである事に気付いた。
「ねぇ、どうして二人の弁当の中身が同じなの?」
「・・一緒に住んでるから・・」
「「なにぃいいいいいいい〜〜!!!!!!」」
「ふ、ふ、ふ、ふけつよおおおお〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
3人の叫び声が学校中に木霊した。
「この裏切り者があああ〜〜〜!!!」
ケンスケが突然食って掛かって来た。
「・・・問題無いわ・・許婚だもの・・」
レイが爆弾発言をしユウキは吹き出した。
「「「い、許婚ぇえええ〜〜〜〜!!!!!!」」」


その後、あの叫び声で学校中に知れ渡ってしまい、ユウキはその後ずっと針の莚に座らされているような心地だった。
(母さん・・僕になんか恨みでもあるの?)
ユウキはさめざめと涙を流した。


その後、数日間、ユウキは学校を休んだ。


ネルフ本部、
早朝からユウキは呼び出しを受けてネルフ本部にやって来た。
そして、ジオフロントゲートでミサトに掴まった。
「だめよん、登校拒否なんかしちゃ」
(嵌められた)


車で重役出勤、しかも、見掛けだけは美人のミサトに送られて、登校したユウキは数日前以上に居辛かった。
クラス中の男子が敵意の視線を浴びせ掛けてくる。
(・・・父さん・・・貴方は偉大な人です・・・)
ユウキはシンジを改めて尊敬し涙を流した。
かなり違うのだが・・・


そんなある日、ネルフ本部で零号機の再起動実験が行われていた。
零号機が実験場内に配置されレイが乗り込んだ。
「これより、零号機再起動実験を行う。」
碇の言葉で実験が始まった。
「レイ、準備は良いか?」
『・・はい・・』
ユウキはガラス越しに零号機を見ている。
「・・ユウキ何かレイに言う言葉は無いのか?」
「・・綾波、頑張って・・」
モニターのレイは笑みを浮かべて頷いた。
碇はにやりと笑みを浮かべた。
(くっ、た、楽しんでる)
「第1次接続開始、主電源接続」
「稼動電圧臨界点を突破」
「フェイズ2に移行」
「パイロット零号機と接続開始、パルス及びハーモニクス正常、シンクロ問題無し。」
「オールナーブリンク終了。」
「絶対境界線まで後2.5」
「1.7」
「1.2」
「1.0」
「0.7」
「0.4」
「0.2」
「絶対境界線突破します。」
「零号機起動しました。」
「引き続き連動試験に入ります。」
冬月が電話を取った。
「そうか、分かった。」
冬月は電話を置いた。
「未確認飛行物体がここに接近中だ」
「恐らくは使徒だな」
「テスト中断、総員第一種警戒体制」
「零号機はこのまま使わないのか?」
「未だ、戦闘にはたえん。初号機は?」
「380秒で出撃できます。」
「良し、出撃だ」
ユウキはケージに向かった。


初号機内。
『エヴァぁ初号機発進!』
「ちょっと待てぇええ!!」
『何よ!?』
決め損ねて思いきり不機嫌なミサトは青筋を浮かべガンを飛ばして来た。
「敵生態の調査くらいしてから出撃でしょうが!なんで最初から決戦兵器を出すんですか!!?」
『第四使徒には無視されたのよ!以上!発進!!』
射出された。
地上に出た。
『ダメッ!ユウキ君避けて!!』
「え?」
次の瞬間、前のビルの中程が光り、何かが、胸部に直撃し、激痛が走った。
「わああああああ!!!!!!!」
「あああああああああああああ!!!!!!」
「あうううぅぅぅぅ・・・」
ユウキは意識を失った。


発令所、
凄まじい視線がミサトに集まっていた。
「ケ、ケージに行くわ、あ、後、宜しく」
「・・葛城3尉、次に期待する」
出口ではレイが降格の宣告を受けたミサトに凍れる視線を向けていた。


ネルフ中央病院第2特別病室、
「・・・母さん・・・」
「・・え?・・・」
ユウキが目を開けるとレイがベッドの脇に立っていた。
「・・綾波・・・」
ユウキは言い直した。
レイは食事が乗せられたトレイを台の上に置いた。
「・・・食事・・」
「・・・・・・何も食べたくないよ」
「・・食べた方が良いと思うわ。61分後には出発だから・・」
「え?」
レイは手帳を取り出して読み始めた。
「・・碇・綾波両パイロットは本日17時30分ケージに集合、18時エヴァンゲリオン初号機及び零号機起動18時5分出動、同30分双子山仮設基地到着、以降は別命あるまで待機・・」
レイは手帳を閉じた。
「・・明朝、日付変更と同時に作戦行動開始・・」
「・・・ミサトさん殴って良いかな?」
「・・申請してみるわ・・」
レイは部屋を出て行った。


流石にその許可は下りなかった。


双子山山頂仮設基地
ミサトとリツコに向き合ってユウキとレイが立っている。
ユウキはポジトロンスナイパーライフルを見た。
急造だけに様々なパーツが剥き出しになっており、素人目にもとても野戦に向くとは思えない。
「・・・野戦に向きませんね」
「仕方ないわよ、間に合わせなんだから、理論上は、これだけの大出力にも耐えられるわ、ただし、実際に撃って見ない限り、銃身や加速器が持つかどうかは分からないわ、こんな大出力で試射できるはず無いもの」
「・・そうですね、どこかの誰かの愚かな指揮が無ければ改造する余裕はあったでしょうがね」
ミサトは顔を顰めた。
「・・本作戦における担当を通告します。」
ミサトがライトの前に立って言った。
演出のつもりかあるいは顔を見られたくないのか、逆光でミサトの姿が見難い。
「ユウキ君は初号機で砲手を担当、レイは零号機で防御を担当」
「これはユウキ君と初号機とのシンクロ率の方が高いからよ。今回はより精度の高いオペレーションが必要なの。」
リツコが理由を付け加える。
「ユウキ君、陽電子は地球の自転・磁場・重力の影響を受け直進しません。その誤差を修正するのを忘れないでね。」
「・・・ちょっときついですけどやってみます」
「それは大丈夫、貴方はテキスト通りにやって、真ん中にマークが揃ったら撃てば良いのよ。後は機械がやってくれるわ。」
「・・・演算は、マギが?」
「いいえ、ポジトロンスナイパーライフルの付属コンピューターよ」
「・・・少し不安なのですが、」
「・・・問題無いとは思うけど、万が一の場合は手動と併用して」
「分かりました。発射予定に関するデータを下さい」
「分かったわ、」
「・・私は・・・碇君を守ればいいのね」
「そうよ、御願い」
「時間よ、二人とも準備して」
「「はい」」


初号機、
『ユウキ君、日本中のエネルギー貴方に預けるわ。』
「はい」
『第1次接続開始。第1から第6520区まで送電開始』
『ヤシマ作戦スタート!!』
ミサトが作戦の開始を告げた。
『電圧上昇中、加圧水系へ。』
『全冷却機出力最大へ』
『陽電子流入順調なり』
『温度安定依然問題無し』
『第2次接続!』
『全加速器運転開始、強制収束機作動!』
エネルギーを示すメーターが順調に上がっている。
・・・・
・・・・
『最終安全装置解除!』
『撃鉄起こせ』
初号機は撃鉄を起こした。
『第6次接続』
マークが真ん中に集まり始めた。
『誤差修正プラス0.0009』
『第7次最終接続、全エネルギーポジトロンライフルへ』
『カウントダウン開始10、9、!、目標内部に高エネルギー反応!!』
『まだ、先に撃てれば勝機はある』
マークが中心に集まった。
『撃てぇ!』
ユウキは発射しなかった。
『撃てって言ってんでしょうが!!!』
使徒が加粒子砲を発射した。
零号機が間に割って入り盾で加粒子砲を防いだ。
ユウキは手動に切り替え、猛烈な早さで計算を行った。
計算終了と同じに陽電子が発射され使徒を貫いた。


1時間後、ネルフ本部、監禁室、
命令違反の罪によってユウキは又ぶち込まれた。
翌朝には、ユウキの行動は、マギによって支持され、釈放となった。


そして、ユウキが家に帰ると、レイが三つ指をついて迎えた。
「お帰りなさいませ」
「・・・あのさ・・・何してるの?」
レイは小首を傾げた。
「・・葛城3尉が、こうやって出迎えるべきものだって」
ユウキは大きな溜め息をついた。
その後、裸エプロン、お風呂を御一緒、添い寝等、と続き、ユウキはその度に色々と説明する羽目になった。
(あのアマ〜!!こう言う方法で仕返しするか〜〜!!)
どうやらこちらに来てからユウキの言葉遣いが悪くなってきているようだ。
だが、そのミサトの行為を知りながら、敢えて放っておき、監視カメラで覗いている人物の存在を、ユウキはまだ知らない。
そして、もうひとつ、今、インド洋を航行中の艦隊に同乗している人物の存在も