エピローグ?

終わりの始まり

 入学式も無事終了し、薔薇の館へ戻る。
 いやはや、それにしても驚いた。
 事前に渡されていたプログラムを見たら、見覚えならぬ聞き覚えがある名前にひょっとして……とは思っていたのだけれど。どんぴしゃり。
 新入生を歓迎するかのように雲一つない青空に、市松人形を思わせるおかっぱ頭の少女を思い描く。
「乃梨子ちゃん、複雑だろうなぁ……」
 新入生を代表して挨拶をしたくらいだから成績だって優秀なものに違いない。となると、本命の公立高校で何かあったのだろうか?
 それとも大叔母さまや担任の先生の説得に根負けしてしまったとか。そんな感じの子には見えなかったけど、何があったなんて分からないし。ましてや、それを本人に聞くわけにもいかないだろう。
 とはいえ、立場上、遅くたってマリア祭までには顔を合わせることになるだ。そのときまでまったく気づかなかった、あるいは乃梨子ちゃんのことを忘れていたってふりをするのも違う気がする。
 いっそ事情を多少でも知るものとして少しでもリリアンになじめるように協力するべきなのだろうか?
 ……いやいや、余計なお世話以外の何者でもないような気もする。
 ……それでも、ただでさえ外部入学なのにこの時期に「不本意ながら」とか「罰当たり」と考えていたら、ずいぶんと住み心地の悪い三年間になってしまうかもしれない。
「うーむ……」
 新年度始まってそうそう、なかなか悩ましい問題を抱えてしまったかも。個人的なことだから他の人に相談するわけにもいかないし。
 そうだ。悩ましいといえば、あのよく目立つくるくる縦ロールを久々に見たときもなんとも言えない気分になった。こっちは乃梨子ちゃんと違って確実に入ってくるのが分かっていたとはいえ、だ。
 あの子、今なら私をちゃんと薔薇さまだと思ってくれるのだろうか?
「おっと」
 いつの間にか二階にたどり着いていた。習慣になっているとはいえ、なんにも考えずに館に入り階段を上っていたのはちょっと怖いなあ……。
 こんなことを繰り返していたら、私のことだからいつか階段から転げ落ちる気がする。さすがにこの高さから落ちたらただでは済むまい。
「福沢祐巳、一応白薔薇さま。階段を踏み外して重体」
 うー、しゃれにならない。そんなことを考えながらビスケット扉を開く。


 そこには――


「あ、おかえり」







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