「ミサト、おまえは生きるんだ。」
救命カプセルに娘を乗せると、男は言った。

「母さんを頼む」
そう言うと、男はカプセルのハッチを閉めた。
それが、その男の最後の言葉となった。

少女、ミサトは全身に傷を負っており、いっとき気を失ってしまった。

どのくらい、そうしていただろう。
ゴゴ〜ン・・・
遠くで、何かが爆発する様な音で彼女は目を覚ました。
救命カプセルのハッチを開けると、立ち上がった。
上半身を、カプセルの外に出すと、四方は海であった。

南極の冷気が、身を包んだ。
だがそれよりも、ミサトの目を奪ったのは、羽のように天空に伸びる四筋の光だった。
下方に目を移すと、その光は南極の大地から発していた。
そこは、彼女の父たちの・・・葛城調査隊の、基地があるべき場所であった。

そこに、基地はなかった。

研究施設は原形を留めておらず、光の巨人がその施設の残骸を蹂躙していた。
四筋の光は、その巨人の背中から発しているようだった。
遠目にも、巨人が歩むたびに、大地はわななき、大量の氷が海面に落下していた。

不意に、巨人がひとまわり大きくなった。
『ヴォォォォォォォォォォォ・・・』
天を見上げる様にして、吼えた。
その体から発せられる光と熱量が一瞬強まり、大地をさらに傷つけ、氷山を崩壊させていた。
そして、海面がみるみる赤く染まっていく。

「やめて・・・。」
ミサトは、思わすつぶやいた。
「やめてよう、お父さんたちが、何をしたっていうのよ。」

『グルルルルルルルル・・・』
巨人の咆哮は続き、それに伴う破壊は留まらない。

「あなたの眠りを妨げたから?
だからと言って、そんなことしなくたっていいでしょう!
お父さんを返して、返してよう!!」

ミサトは叫ぶが、距離がありすぎて、その声は届かない。
いや、そもそも光の巨人は人語を解するのであろうか。

『ヴォォォォォォォォォォォ・・・』
巨人の立つ大地の、周囲の海面はどんどん赤く染まっていき、それはついにミサトの乗る救命カプセルにまで到達していた。

ミサトは恐怖よりも、言い知れぬ怒りを覚えた。

「やめてぇぇぇぇぇ!!」
声をかぎりに叫んだ。 その絶叫が南極の空全体に、反響するかのように広がった。
そして、彼女は意識を失い、救命カプセルの中に倒れこんだ。



--- 人 身 御 供  第三話---   110万Hit記念投稿(その二)



「・・・救命カプセルが記録していた映像は、ここまでね。」
ユイは、プロジェクターからカードを抜き出すと、別のカードをかわりに挿入した。

「そして、私たちが到着したときに、見た光景がこれよ。」

プロジェクターから、スクリーンに投影されているのは、虚空を見上げたまま、完全に停止している『光の巨人』の映像だった。

「人の意識が、アダムを制御した、記念すべき瞬間ね。」
ユイは机の上からコーヒーの入ったマグカップを取り上げると、最後の一口を飲んでおいた。

「救命カプセルから、よくあの映像が撮れましたね。」
リツコは2杯目のコーヒーをユイのマグカップに注ぎながら応じた。

ユイはありがとう、と言うと、
「幸運だったわね。 たまたま、救命カプセルの外部カメラが、基地の方を向いていたのよ。
でもそのおかげで、アダムのコピーからエヴァを造り、『適格者の魂』でもってコントロールできるようになったわけね。」

スクリーンの映像は、先程までの連続した動画ではなく、静止画像が順次切り替わるスライド表示になっていた。

そこには、コアに何かを接続されたアダムの映像が映されていたが、画面が切り替わる度にそのサイズは小さくなっていく様だった。
作業を行っているのは、旧ゲヒルンのメンバーのようである。
スライドの表示内容の中には、図面を見ながら何事かを指示するゲンドウの姿や、試験管の中身を凝視しているユイの姿もあった。

最後に、厳重に封印されたトランクを受け取るドイツ人らしき技師の姿と、その背後でそれを見守るキール・ローレンツの姿が映し出されると、スライド表示は終了した。

「その貴重なデータとひきかえに、ミサトは失語症に陥ったんです。軽い記憶障害とともに。」
リツコは、部屋の電灯をつけながら言った。

実際、ミサトは南極での絶叫以後、数年間は言葉を発することができなかった。
また、光の巨人のことも覚えていなかった。 彼女にとっては、それほどの衝撃だったのだろう。
ミサトが憶えているのは、天空に伸びる四筋の光までであった。

「そうね、それがなかったら、彼女が最初のチルドレンだったかも知れないわね。エヴァがもっと早く完成していればの話だけど。」

「そうでしょうか。ミサトを保護してから、ゲヒルンが治療を兼ねていろいろと調べたようですけど、チルドレンの適性については発見できなかった、と記録にありますが。」

「その、能力を一気に放出したからでしょうね。
アダムが緊急停止する際に、放出されたエネルギーの余波がセカンドインパクトと呼ばれる衝撃波を生んだほどに。」

「では、センカンドインパクトは、アダムを胎児に還元するときに生じたのではなく、ミサトが引き起こしたということですか。」

「・・・そうね。でも、彼女に責任はないと思うわ。 それだけアダムの内蔵するエネルギーが大きかったということね。それ以後の使徒など、比べ物にならないほどに。
だから、彼女が止めてくれなかったら、世界は確実に破滅していたわ。」

ユイは、リツコに椅子を指し示して、彼女の正面に座るように言った。

「ここから先は、そのアダムのコピーであるエヴァの・・・初号機の話になるけれど、初号機も同様に『緊急停止』されたことがあるのは知っている?」

「いえ。」

「ゼルエルから、S2機関をとりこんだときよ。」

リツコは、はっとした。
初号機が、第15使徒ゼルエルを倒した上でむさぼり喰い、永久機関とも言うべきS2機関をとりこんだときのことだ。
初号機は先ほどの映像のアダムと同じ様に、天を見上げながら咆哮していた。
それを見ながらリツコは、
『私たちには、もうエヴァを止めることができない』
と言った。
しかし、その後で初号機は停止したのだ。 シンジは既にエヴァ取り込まれており、制御できる筈がない。
だれかが、止めたのだ、暴走状態の初号機を。

「いったい、だれが・・・」
思わず、ついて出た言葉に、
「レイよ。」
ユイは答えた。
                    ・
                    ・
                    ・
『レイ!?』
『ライフルも持たずに・・・』
そのとき、ミサトと、リツコがつぶやく中、レイの乗る零号機は使徒ゼルエルに向かって走った。
その手には、ライフルのかわりに、円筒形のものが握られていた。

『N2爆弾!? まさか・・・』
『自爆する気?』
『やめなさい、レイ!!』
二人の制止を無視するように、零号機は手に持ったN2爆弾をゼルエルに叩き付けようとした。

カキーーーーーーーーーーーン

ゼルエルのATフィールドが、それを阻む。

「ATフィールド全開!」
ビキビキビキ、 レイの声とともに、N2爆弾を持った零号機の手が、使徒のATフィールドを侵食していく。

N2爆弾が使徒に接触する寸前__。
使徒のコアは膜状のものに包まれた。
ズドドドドドドド ズズズズズ・・・

零号機は腕を失ったが、使徒ゼルエルは無傷だった。
直後に、零号機の頭部はゼルエルの触手に断ち割られ、レイは気を失った。

次にレイが気づいたとき、
『ヴォォォォォォォォォォォ・・・』
初号機の雄たけびが聞こえていた。

レイの救出作業は遅れており、彼女はまだ、大破した零号機のコクピットにいた。
軽く頭をふると、エントリープラグのエジェクトを試みる。
うまくいった。 ハッチをあけて、外に出ると、虚空を見上げる初号機の背中が見えた。
『碇くん・・・』
どうやら、初号機が使徒を殲滅した様だったが、どこか様子がおかしかった。
『私たちを、助けに来てくれたの?』

あれだけの強敵である。 初号機はおそらく、暴走した上で使徒を殲滅したのであろう。
そこまで考えて、レイは違和感の理由に気づいた。
暴走したエヴァは、電源の供給を止めることで活動を停止させる。
ところが今回の初号機は、アンビリカブルケーブルが接続されていないのに、いつまでたっても活動を停止しないのだ。

ガシャン!

突然、初号機の装甲が、弾けとんだ。
『碇くん?』

『フォォォォォォォォォォォ・・・』
再び、初号機が吼えた。

ガシャン! ガシャン!
装甲のいくつかが、また弾けとんだ。 そして、本部施設を目指して、初号機はゆっくりと歩み始めた。

『どうしたの、碇くん。』
レイは、信じられないものを見た思いだった。
本部施設を挟んだ反対側で、リツコが、私たちにはもうエヴァを止めることができない、と言ったのは、まさにこのときだった。

シュバッ、 シュバッ、 シュバッ!
本部の防護機能がはたらき、無数のチタン鋼の糸が、初号機に向かって射出された。
それは蜘蛛の糸のように巻きつき、自由を奪おうとする。 が、初号機は、無造作にそれを引きちぎり、何事もなかったかの様に歩み続ける。

『どうしたっていうの、 やめて!』

初号機は尚も歩み続ける。 ひたすら、本部施設を目指して。
そしてついに、ピラミッド型の本部施設の外壁に手をかけようとした。

『ヴォォォォォォォォォォォ・・・』
『碇くん、やめてぇぇぇぇ!』

初号機の咆哮と、レイの叫びが重なった。
                    ・
                    ・
                    ・
「・・・知りませんでした。」
リツコは俯くと、唇をかみしめた。
完全に思い違いをしていた、自分が腹立たしかった。
あのとき、初号機が突然停止したのは、コアの中にいたユイの意志だと思っていたのだ。

「暴走状態にあるエヴァは、私にも止められないわ。多分、だけどね。」
ユイはわずかに微笑みながら言った。 自嘲を含んだ笑みだった。
「暴走するときは、たいていコアの中の私がパニックに陥っているとき。
シンジを守らなきゃと思って、後先を考えられなくなったときに、エヴァが呼応したのが暴走状態なのよ。とても、冷静な判断などできはしない。
そんなときに、エヴァを止めるには、エネルギーの供給をとめるか、チルドレンから『強い指示』を受けるしかないのよ。」

「そんな、ユイさんがパニックに陥るなんて。」

「あら、これでもシンジの母親ですよ。我が子のことなら、冷静でいられないこともあるわ。」

「そう、ですか。」
リツコは、なんだかほっとした。
とても頭があがらない人だと思っていたが、ふつうの人らしいところもあったのだ。

「初号機のことに話を戻すけれど、S2機関を取り込んだからには、エネルギーは無限にあると考えなくてはならない。そうなると、暴走状態の初号機を制御するには、強い意志を持ったチルドレンが必要になるわ。」

「それで、シンジ君ですか。
難しいと思いますが。レイではだめなのですか。」

「正直、わからないわ。対ゼルエル戦のとき、レイは初号機とシンクロできなかった。
当時と今とでは、事情がちがうから、今ならシンクロできるかも知れない。
でも、私はシンジに乗ってほしいの。」

「・・・・・・・・・・・。」
リツコは少しあきれた。それは、私情ではないか。
使徒が現れたときは、そうも言っていられないだろうと思ったが、そのことには触れずに、
「さっき、暴走状態の初号機の制御、と言われましたが、やはり暴走はあるのでしょうか。」

「おおいに、あるわね。 今ごろ、あの人はパニックに陥っている筈よ。そんな状態から起動すれば確実に暴走するわ。そのためのケアも、初号機の調整のひとつなのよ。」

「調整、ですか。」
そう言いながらリツコは、あのゲンドウがパニックに陥るほどのこととは何なのだろうと思った。




レイは、初号機の格納庫に向かって歩いていた。

途中、何度かネルフの職員とすれ違ったが、とくに呼び止められることもなかった。
これまでも、極秘実験のために呼び出され、一人でターミナルドグマまで降りたこともあり、チルドレンの中でも重要施設への出入りに関して、レイだけは別格であった。

ただ、今回については、レイは誰に呼び出されたわけでもなかった。
あくまでもレイの意思である。そうでないにしても、「誰か」ではなく「何か」に呼び出されての行動だった。
『行かなくちゃいけない。』
ふと、思い立った、それが動機だった。

二人目のレイが対アルミサエル戦で使徒を道連れに自爆し、自分は「三人目」として生を受けてから、ようやく三週間がたとうとしている。失われていた記憶の大半は、その間に取り戻していた。
その間に思い出したものは・・・シンジへの想い、ゲンドウへの愛憎、使徒との戦闘の記憶、そして『涙』_。
それらはすべて、「二人目」であったときの自分と、「三人目」である今の自分との間で共有できている。
今、唯一共有できていないもの、それは『未来の記憶』だった。

かって零号機の起動実験で二人目のレイが「珍しく取り乱し」、零号機の暴走を招いたのはこの、予知夢に似た『これから起きること』の記憶が原因だった。
記憶を呼び覚ますときは断片的な映像でしかなく、後で思い出そうとしても、当時ですらはっきりとは思い出せなかった。
ただ、「サードインパクトを、自分が引き起こす」というショッキングな映像を見たような気がしていた。

しかもそれは、「二人目のレイ」であったときには、起動実験のときだけでなく、何度となく夢に見た映像だった。
その度に汗びっしょりで夜中に飛び起きたものだったが、それが今はまったくと言っていいほどない。
そのかわり、深層にあった無意識のもの、ある種の記憶が失われたような空虚さを感じていた。

三人目になって、自分の役割、存在意義が変わったのだろうか、とレイは自問する。
自分の宿命は何なのか、レイは知りたくなった。
そして、その答えは初号機にある様な気がしていた。
そう、ユイを解放し、かわりにゲンドウを人身御供とした、アダムのコピーである初号機に。

そんなことを考えているうちに、初号機の格納庫に着いた。
周囲には、誰もいない。
レイは、アンビリカブル・ブリッジの上に立ち、初号機に向かい合った。



ゲンドウは、錯乱しかけていた。
そいつが現れては消えるのは、もう何度目になるだろうか。

それは、確かに、いる。
しかも、ゲンドウに対して好奇心を持っているのを感じる。

今のところ、悪意はないようである。
とくに、悪さをするわけではない。
しかし最初の遭遇では、ゲンドウが感じた恐怖を、そのまま視覚的イメージでフィードバックしてきた。
それは、ゲンドウを赤い目で見上げる子供のイメージであった。

悪夢のようであった。
幸いなことに、視覚的なイメージで現れたのは、その一回きりである。
あと何度かは、そこにいるという「気配」のみを感じた。

「だれか、いるのか」
ゲンドウが問うと、すぐにその気配はかき消える。
だが、しばらくするとまた、ゲンドウを興味深く見つめる視線のようなものを感じるのだった。

「いいかげんにしてくれ・・・」
ゲンドウは、消耗しきっていた。
「だれか、なんとかしてくれ。」
さすがに弱気になっていた。

突然、外部への視界が開けた。前回と同様、まったく唐突だった。
そして、そこにレイがいた。

「レイか。」
ゲンドウは、少しほっとした。
レイは、何を思ってか、初号機を見上げていた。
何かを問いかける様な眼差しで。

「どうした、この初号機に何か用か。」

そのときだった。

突然、レイの想いが奔流となってゲンドウの心に流れこんできた。

『な、なんだ。』
それは、無限に続くかと思われた。

『おまえの存在意義? 役割? 今さら、何を言っているのだ。』
『そうか、自我に目覚めたのか。それで、私を拒絶するというのか。』
『いや、ちがうな。私への想いは残っているのか。
そうか、シンジか。シンジがおまえの心を開いたというのか。
おれがおまえにやさしく接しようとしたのは、ユイのかわりでしかないということを、おまえは知っていたのか。』

そこまで感じ取って、ゲンドウは気づいた。
『なぜ、オレはレイの心がわかるのだ? これは、初号機の力か。』

「碇司令。」
レイが初号機を見上げながら言った。
「司令がエヴァに取り込まれた今、私はどうすればいいのですか。」
『う、うむ。』
あらためて、言葉に出されると、ゲンドウには返す言葉がなかった。

「私は、二人目が手に入れた【人の心】を受け継いだまま転生しました。この心、碇君への想いは失いたくありません。もう、人形には戻りたくありません。
ですが、司令が命令だと言われるなら、運命に従うつもりでいました。」

紅い眼で見上げながら、淡々と話すレイ。外見上は無表情に見えるレイであるが、今のゲンドウにはレイの苦悩、寂しさがダイレクトに伝わってきた。

『レイ・・・』
それほどに、シンジのことを、とゲンドウは思った。いや、なんとなく、気がついてはいた。

初めてシンジを初号機に乗せるときに、重傷を負っているレイを利用したのは、他ならぬ自分である。
レイをかばうことで、シンジは初号機に乗る決心をした。
その後、ヤシマ作戦を初めとする対使徒戦や日常生活の中で、シンジがレイのことをたびたび気遣うことにより、レイがシンジを見る眼が変わっていったことを自分は知っている。

だが、気づかぬふりをしていた。 レイを通してユイを見ているゲンドウは、それを認めたくなかった。
表面上は、レイは相変わらずゲンドウに従順であった。
当時のゲンドウはそれで満足し、ダミープラグの開発実験など、レイにとってはつらい命令を与え続けた。
頼れるものは自分しかいまいと、ゲンドウはたかをくくっていたのだ。

『すまなかった、レイ。』
だが、謝罪の言葉はレイには伝わらない。初号機の前に立つ者の思念が、一方的に流れ込むばかりだ。

「司令がいなくなった今、私には道を指し示してくれる人はいません。
使命を果たして無に帰ることもできません。」

レイの瞳から、一筋の涙が流れた。
「私は、どうすればいいのでしょうか。」

『レイ!』
ゲンドウは、何かを伝えねばと思った。 しかし、どうすればいいのか。
『そうだ、初号機に乗れ、レイ。 』
レイを初号機に乗せて、シンクロすれば、双方向の【会話】が成り立つのではないか。
そう考えたとき、初号機の眼が妖しく光った。


その少し前、ユイはリツコを連れて、初号機の格納庫に来たところだった。
見ると、アンビリカブル・ブリッジの上に、レイがいた。

「レイ? どうしてここに。」
そして、ユイはレイが初号機を見上げて、涙を流しているのを見て、はっとした。

いけない、レイの本心を知ったら、あの人は・・・初号機は!!

「離れなさい! レイ!!」
ユイは、叫びながら、レイに駆け寄ろうとする。
「どうしたんです、ユイさん!」 
リツコは、格納庫の入り口に、一人取り残された。
白衣をはためかせて、レイに向かって走っていくユイの後ろ姿を見送ることとなる。
まさにそのとき、初号機の眼が妖しく光った。

『ウォォォォォォォォォォォ・・・』
初号機の咆哮が響き渡り、身じろぎしようとする。
「まさか、暴走!?」
リツコは呆然とつぶやく。 尚も、レイに向かって走り続けるユイ。 そして、突然のことに眼を見開いたまま一歩も動けないレイ。

『ヴォォォォォォォォォォォ・・・』
  ピシッ、ピシッ、ピシッ、
初号機は両肩の拘束具のために、動けない。 だが、身じろぎするたびに、その拘束具に亀裂が入っていくようだった。

「レイ! 逃げて!!」
駆け寄ってきたユイに、一瞬レイの意識が向いた瞬間、

ビシッ!!

ひび割れた初号機の拘束具から、こぶし大の破片が弾けとんだ。
それが、レイの左肩を直撃する。

「レイ!!」
ユイが叫ぶ中、ゆっくりと蹲るレイ。
右手で抑えた制服の左肩から、じわじわと赤いものが広がっていった。





あとがき

 えーと、全国一千万のアヤナミストの皆様、ごめんなさい。
レイの傷の具合は、大丈夫なんでしょうか。 (ってオマエが言うな!)

続きが少しでも気になる方は、感想をいただけると幸いです。

次回は、記念Hitとせずに、もう少し早くリリースしたいと思っております。