第8話

見る前に跳ぶべきではないということ

それは只の皮のノートに過ぎない。
 パラパラとめくっても見えるのは退屈な数字と建設会社と人名と料亭とかの名前と時間だ。それは一般の大学生の生活には何の役にも立たない情報に過ぎなかった。
 私はそのノートを置くのに適切な場所をしばらく考えて、テレビの上に置く。
テレビの上には皮のノートが置かれていた…悪くない。
 しかし、さっきノートを読んで分かったのは、人間はそれが何かを知っている方が物事を理解しやすいということだった。
 何も知らなければ建設会社名と数字ぐらいしか印象に残らないが、今なら人名と時間と料亭名までわかる、たいした進歩じゃないか?
 私はテレビの上のノートに満足して眠った。

翌朝の大学はいつものように退屈だった。
 私はせっかく完全にピタリとテレビの上に納まったノートを鞄に入れ、本当にサワラに渡すべきか考えながら頬杖をついた。
 授業も退屈だったのだ。
そもそも、何故私の部屋にあれは置いてあったのだろうか。そんな答えが出そうもない問題を考えても仕方がない。しかし、私は少し、答えの出ない問題を抱えすぎではないだろうか。
 正直、もう一杯一杯なのだ。
そんな私にもう一つ答えの出ない問題が、ラッピングされたケーキみたいにプレゼントされた。
 授業中に手紙を回した経験のある人は多いと思うんだけど、どうだろうか?
、大学にもなるとなかなかそういう事はないけれど、この講義は気心の知れた仲間が多いのでそういうことが可能だ。
 つまりは、アカネからとても厳重に折りたたまれた手紙が回ってきたという事を言いたい。
サトウさん、実はサトウさんにだけこっそりと打ち明けたいことが、私にはあります。それはサワラさんのことです。薄々感づいてるどころか、もう充分分かってるかも知れないんだけど、私は、サワラさんのことが好きです。とってもとっても好きです。あ、サトウさんはつり橋の上の恋みたいなものと思っているでしょう?でも、私のこの想いがつり橋の上の恋なら、私は一生、つり橋の上で恋し続けても構わない。それに、世の中の恋って、大小の差はあれ、つり橋の上の恋みたいなところ、ない?私は、恋ってそういうものだと思うけどな。でも、とにかく私は、凄くサワラさんのことが好きになりました。その想いは減らないどころか、どんどん私の中で大きくなっているのが分かります。彼のことを考えていない時間の方が少ないくらいです。今までの人生で、一度だってこんなことはありませんでした。もしかしたら、私が今まで恋だと思ってきたものは、恋ではなかったのかも知れませんね……
 延々と、サワラへの想いがつづられ、告白したいけど、どうしたらいいでしょう、とその手紙は締めくくられていた。
 彼女は栞を私が愛したみたいに、サワラに夢中になっている。しかし思うのだが、私はサワラとアカネがピッタリと寄り添っている姿をどうしてもイメージできないのだ。それはつまり、この恋が上手くいく見込みがとても低いということではないだろうか?
 だからといって私は彼女に、サワラを愛するのを止めた方がいいなどとはとても言えない。それでは何も問題は解決しないのだ。
 だから私は返信の手紙に頑張って告白して、そうしないと後悔するよ≠ニだけ書いて厳重に折って彼女に回すのだ。それ以外にどんな手段がある?サワラはやめておけ、と忠告するのか?だがそれは彼女をどこにもたどり着かせることはできない。
 だから、これでいいと私は信じる。そして、私はいったいどこにたどり着くのだろう。

私はケイの家に電話してみた、今日も大学に来ていなかったからだ。
 電話をかけるのはとても勇気が必要だった、マクドナルドでスマイル一つと言う時だって、こんなに勇気は要らない。
 その呼び出し音が鳴っている間、私はレンズ磨き職人になった哲学者のことを想った。彼の作ったレンズも哲学的だったのだろうか?
 呼び出し音はなり続ける、応答はない。
私は諦めて電話を切った。また後でかけなおそう。そうするしかない。
 午後の授業が始まりそうだった。

私はノートを持って早足でサワラの待つ生協へ急いだ。
 泣いているアカネを見かけたという話を聞いたのは、わずか五分ほど前だ。
アカネを知っている友達は、あのアカネとは思えないぐらい暗い顔をしていたと言っている。
 何があったかはすぐに分かった。
私はただ、サワラがどうやって彼女を傷つけたのか知りたかっただけだった。
 生協の扉を開ける。
「どうしてアカネを拒絶したの」
サワラは私の言葉に目を細めて、面倒くさそうに言った。
「ねえ、僕は思うんだけどね、それは僕と彼女の問題であって、サトウさんには関係ないんじゃないかな?」
そう、確かにその通りだった、否定はしない、まったく、サワラは正しい。しかし。
「それは、あんたは答えたくないってこと?」
「いや、面倒なだけさ」
「面倒?私に説明するのが?いつも無駄な話を垂れ流すあんたが?」
サワラはため息をついた。
「あのさ、サトウさん、愛情に、そんなに価値があるのかな?」
愛情に価値がある、と私は断言したかった。しかし私はいま、その愛情の狭間でもがく醜い存在に過ぎなかった、そんな人間に、一体何が断言できるだろう?
 サワラは言う。
「サトウさんは知らないと思うけどね、精神科医は異性の患者を治療すると高い確率で恋愛感情を抱かれる、それはとても高い可能性で惚れられるんだ、本当にね。そういう現象を転移って言う。でも、それで精神科医は患者に手を出してはいけないし惚れてはいけない、医者が惚れるのは逆転移って言ったりする。逆転移は絶対に防がなければいけないことだから、精神科医には教育分析と呼ばれる『相手に惚れない為のカリキュラム』があるんだよ。ねえ、サトウさん、世の中には『毎日相手に惚れられて、それを断わる職業』だってあるんだ」
「でも、お前精神科医じゃないじゃん」
「僕が言いたいのはね、毎日好きになられて断わられる世界では、人を好きになるなんて、たいしたことじゃない、ということなんだ。恋愛感情なんて、たいしたものではない。そして、人に好きになられて断わるのも大したことではないし、人が人を好きになること自体、大したことじゃあないんだよ」
「ふざけんな、お前は、そんなことをアカネに言ったのか、お前は!…」
「落ち着けよ、僕は精神科医ではないけど、人の好意に応えられる立場にない、それは職業的倫理だ。僕の仕事は危険過ぎる、分かるだろう?」
「そんなの理由じゃない。ほんとに好きなら、そんなの理由にならない」
「ほんとに好きって、どんなものかよく分からないけどね」
サワラはため息をつきながらもう一度、その言葉を言った。
「人を好きになるなんて、大したことじゃないよ」
「じゃあ、お前は何で生きてるんだよ、誰も好きじゃないのに、何で」
「僕は、ほんの些細な僕の利益のために生きているだけだよ」
救いようがない。
 絶句した。
こいつは、本当に救いようがない。
「お前は、そんな理由で、アカネの、あの純粋な気持ちを踏みにじったって言うの?別に怒ってる訳じゃない。でも、納得できない」
「君に納得してもらう必要はないんだけどね。僕は、繊細さや純粋さを、全く評価しない。純粋であろうとすれば人は無力になる。そして純粋さ故に無力な人間は、自分の純粋さを愛しているからいつまでも強くならず、いつまでも他人に迷惑をかける。違うかな?」
「お前は、アカネをそんな風に思っていたって言うの?」
「いや、一般的な話さ」
私はノートをサワラに投げつけた。
「それ持って消えろ」
私は、実を言えば怒っていた。
 こいつは、やはり間違っている。
背を向けた私にサワラの声が届いた。
「ああ、これがあれば仕事が終われる」
一度も振り返らなかった。

帰ると、エリコから電話があった。
 それはとてもシンプルな電話だった。
エリコは電話口で言った。
「ヨーコが失踪したわ」
私は煙草を探した。


電話をかけて、ケイもずっと帰っていないことが分かった。
 ヨーコも、ケイも、行方不明。
理解できない。
 煙草を吸う。
私のせいなのか?
 私のせい?
そう言われたとしても、私は反論できない。
 全く、反論できない。
何故、二人はいなくなってしまったのだろうか。
 何故。
上手く頭が働かない。立ち上る煙は決して私を賢くはしなかった。
 部屋の電話が鳴る。
モリムラ教授だった。
「君は、会うべきだろう、私に。二人のことが知りたいならば」
「教授?」
「待ち合わせは行われるべきだ、研究室に来るといい」
それだけで電話が切れた。私は夜の大学に向って車を飛ばす。車はFMラジオを流し、ダニー・ボーイが流れる。切羽つまって夜の大学に向うときに相応しい曲ではないが、気にしていられない、暖炉が絵になるときに、常に暖炉がある訳ではないのだ。
 大学の駐車場に車を乗り捨て、研究室へ走った。嫌な予感がした。
研究室のドアを開けると、教授がうつむいて椅子に座っていた。
「君も座りたまえ」
「教授、私は急いでいます、座りたかったら座るから、早く二人の話をして下さい」
「じゃあ、フジムラとヒシギの話をしよう」
動揺した。ヨーコとケイの話だと勝手に思っていた。
「先入観は、人間の悪い性質だ。天才は先入観に縛られない。ヒシギはフジムラに殺された。ところで、君は質問に答えられるかどうか、今から試される。三つの扉があり、一つだけが正解の扉だ。A、B、Cと便宜的に名づけられる。君はどれを選ぶ?」
「教授、試験はテストの時だけにして下さい」
「テストの為の試験は下らないものだ。選びなさい」
「C」
「君がCを選んだことによって、Aの扉は私によって開かれる。Aは外れの扉だった。その向こうに宝箱はない。ところで、君はここでもう一度選択権を持つ、最初に選んだCを続けるか、変更してBを選ぶか、だ。この選択によって、確率は変わると思うかね?つまりは、正解率が」
「教授、私は暇ではありません」
「私もだ。答えなさい」
「わかりません」
「考えなさい、これは、ポール・エルデシュも理解できなかった問題だ。答えは簡単だが、真理は遠い」
「それなら、最初に選んだものを貫きます」
「残念ながら、それは愚かな答えだ。選択を変更した方が正解率は高まる。これがエルデシュを憤慨させた。何故なら、最初からAが開いた状態で、BかCどちらかを選ぶ場合と、一旦Bを選び、Aを私が開いたあとで選択しなおす場合で、確率が変わるのはおかしいからだ。何故なら、それでは人間が持っている情報によって確率が変わってしまうことになる。確率は、人間の知識などに左右されない数学的対象の筈だ、とエルデシュは怒ったのだ。だが事実、選択を変えた方が正解率は高まる。理由は宿題だ」
「その宿題を出すために呼んだのですか」
「もちろん違う。君に知らされるべき点が二つある。一つは、ミステリ研は実験場であり、実験は恙無く終了したものの、不安定要素を一つ残した点、もう一点は、ミズノ・ヨーコとカトウ・ケイの行方の点だ」
「どういうことです」
「心理学的実験の一貫として、どの程度集団の精神をコントロールし、殺人をさせることが出来るかの実験が行われたと仮にする。だが集団の外から不確定要素が現れ、特に一つの不確定要素は実験を崩壊させる可能性があった。君はその不確定要素、サワラ・サロウから何か聞いているかね」
「いいえ、何も、どういうことです。それはあなたが心理学の実験として、フジムラさんにヒシギさんを殺させたということですか」
「仮の話だ。だが、ミステリ研が選ばれたのは偶然ではない。いま、ミステリの多くでは、結末で犯人は捕まらない。犯人が天才であれば、なおさら捕まらない。これは極めて素晴らしいことだと言われる。天才は、先入観には縛られない。人を殺してはいけないという先入観が取り払われ、天才の権利が認められている。早く走ることのできる人間は、ゆっくり歩くこともできる。天才は自分より愚かな人間の思考が全て分かる。それは、全ての人間の思考が分かるということだ。この世界で価値があるのは天才だけだ。誰も天才の代わりはできない。ようやく、この世界も天才を基準に社会を構築すべきだとわかってきたのだろう。その方が無駄がない」
「あなたの話に興味はないが、あなたがヒシギさんを殺したってことか」
「ヒシギを殺したのはフジムラだ。心理学的処理はフジムラに施されていたが、法廷で証明できるようなものは何もない。催眠術で殺させたというようなものだ」
「それでも、それはあなたが殺したんだ」
「殺した、の定義が違うようだ」
「あなたは最低だ」
「その感情は、種の保存本能や、エゴに過ぎない。人が人を殺すのを憎むのは、自分が殺されたくないエゴだ。それが分かれば、天才の行動を止めるのがいかに愚かなことか分かる」
「あなたは、自分が天才だと思っているのか、本気で」
「私によっては謙遜は行われない。無駄だからだ」
「下らない。天才に価値がある?あんたなんかにどれほどの価値があるんだ?証明してみせろよ。あんたが、フジムラさんよりどれだけ価値があるって言うんだ!証明してみせろ!」
「証明は行われた。私によってゴールドバッハの予想は証明された。それは天才の証だ」
「下らない!」
こいつは、腐っている。間違いなく人間として大切なものを失っている。
「そんなもんを何個証明しようが百個証明しようが、人間としての価値とは何の関係もないんだ!何故それが分からない!あんたは、ただの人殺しだ」
「天才の行動は君には理解できない。そして、次の話だが、ミズノ・ヨーコとカトウ・ケイは預かられている。君は来るかね?」
「どこへなりとも行ってやるよ」
「そうか」
いきなりモリムラ教授は私にスタンガンを押し付けた。痛み。意識が…
 私の意識は全くの突然に切断されることになった、まるで調子の悪いADSLみたいに。

目覚めたら、そこは事務所のようなところだった。
 私は後ろ手に縛られ、そこには同じように縛られたケイとヨーコと、ヤクザのような男達が居た。
 モリムラ教授は椅子に座ってコーヒーを飲んでいた。
「私は、通常できないような心理学的実験をいくつか行ってきた。親と強制的に性行為をさせられた人間の精神の変化は、フロイト的な思想で捕らえても、極めて有意義だと思われる」
「あんたは…」
「ただ、私も無報酬でそのような実験はできない、客のニーズというものがある。それが合致したとき、有意義な実験は行われる。邪魔しそうな者は追い払われた。実験準備は整備されたのだ」
 私も、ケイも、ヨーコも、銃を突きつけられている。
「君には、さっきよりも、よりシンプルな選択問題が与えられる。それは客のニーズでもある」
モリムラはコーヒーを一口飲んだ。
「君は、ミズノ・ヨーコか、カトウ・ケイ、どちらかを選ばなければならない」
「なんだと」
「選ばれなかった方は、ここで極めて野蛮な方法でゆっくりと君たちの眼前で殺される。選ばれた方には、死にはしないものの、ここでゆっくりと無数の人間によって性行為が行われる。君はそれを眺めるだけだ。私としては、その後の君たちの精神のあり方に、心理学的興味がある」
私はその一瞬、モリムラの目に宿った愉悦の表情を見逃さなかった。
「それでおったてて○○○○してるのか変態が」
「あくまで、実験だ」
こいつは本気で自分が実験のためだけにそれをしていると信じ込んでいる。自分にそういう欲望があることに気づけないでいるのだ。心理学者の肩書きも大したことはない。
 そして何よりたちの悪い奴だ。
縛られ猿轡をはめられた二人は涙目だった。
 最悪の状況、これ以上悪い状況は考えられなかった。
「選ばれなかった方は、まず、両足と腹を撃たれる、死なないように、あとは器具を使って生きたまま分解する予定だ」
 銃はしっかりと私達を狙っていた。
「さて、君はミズノ・ヨーコとカトウ・ケイ、どちらを選ぶかね」
まさかこんな形で、まるで堂堂巡りのようにこの選択が回ってくるとは思わなかった。
 これはハッキリと選ぶのを拒否してきた私への罰なのか。
私はどうあってもどちらか選ばなければならないというのか。
 そんなことはできない。
どちらも選べない。
 混乱した。
動悸が激しくなった。
 無理だ。
耐えられない。
 煙草が吸いたい。
ヨーコの髪。
 ケイの吐息。
私は。
 私は!!
銃声が響いた。

 
黄薔薇放送局 番外編

江利子「セイも存外お馬鹿さんよね。
	恋愛はともかく頭は悪くないと思ったのだけど」
セイ 「ちょっと、何が言いたいのよ」
江利子「『モンティ・ホール・ジレンマ』有名よ?」
セイ 「なにそれ」
江利子「はぁ……(ぽく、ポク、歩区、チーン)
	そうだわ! 実体験してみるのが一番よねぇ♪」
セイ 「ちょっと、あなたまた何かす(ぼわん)」
江利子「え〜っと、場所も変更するか、そりゃ!(消える江利子)」
残り 「(付き合わされなくて良かった……)」

……
……

(何かの台の上に放り投げ出されるセイ)
セイ 「アイタタタタ…… ここどこよ?」
(突如一斉に照明がつく)
江利子「レディ〜スあんどジェントルメン!
	今日もやって参りましたこの時間。司会はエリコ・トリイがお送りします!」
セイ 「ちょ、ちょっと何をするつもり……」
江利子「さて、セイさん。あなたの目の前には三つの扉があります。
	一つはどぶへ落ちる扉。一つは可愛い妹さんが出迎えてくれる扉。
	……そして最後のひとつはあなたの大学での振る舞いを知ってしまった
	カノジョが待つ扉♪ さて、どの扉を選びますか?(笑) あ、ちなみに
	逃げると問答無用でカノジョの元へご招待。言い訳の暇もないわよぉ〜♪」
セイ 「(いつか絶対に復讐してやる)じゃA!」
江利子「おぉ、Aを選んでしまいましたか。では外れの扉であるCを見せてあげましょう」

(江利子が蹴破るとどぶが出てくる)

江利子「さぁ、ここでセイさんに変更の権利をあげようじゃありませんか。
	最初に選んだAに固執するも良し、はたまたBに変更しちゃうも良し。
	さぁ、どうするのかな?」
セイ 「(さっきの私の行動を馬鹿にしたのだからBの方が確率が良い気がするけど、
	あの凸のことだから裏をかいてAに志摩子を持ってきているかも……)」
江利子「さぁ、時間はあります。じっくり考えてください♪」
セイ 「(確率より勘さ)A!」
江利子「おぉ、Aのまま。 ……ファイナルアンサー?」
セイ 「FA! ていうかさっさと開け!(Aを蹴破る)」
ヨーコ「フフ、セイ元気そうね……」
セイ 「よ、ヨーコ…… 江利子! 図ったな!!」
江利子「やれやれ、まだセイは確率が分かっていないようね?(大げさなため息)
	まぁ、せいぜいしっかりお灸を据えられなさいな。がんばってねぇ〜♪」
ヨーコ「セイ? 人が話している時に余所を向くべきじゃないと思うの」
(思いっきり耳を引っ張られる)
セイ 「痛い、痛いってばヨーコ! ゴメン、悪かったって、許してー」

……
……

○○○「……あのぅ」
江利子「(あちらをくすくす笑いながら)あら志摩子、どうしたの?」
志摩子「私、ずっとここにいて良かったんですか?(控え室)」
江利子「いいのいいの。昔から『押すなよ!』と言ったら『押せ!』
	『当たりか外れか』と言われたら『必ず外れ』になるのよ♪」
志摩子「はぁ……」
江利子「他人様の色恋沙汰ってやっぱり蜜の味よねぇ〜♪」