歓楽街は相変わらずの賑わいを見せているが

 それ以外はすでに静まり返り、いくつかの部屋では灯が落とされてきた、そんな夜更け

 逃げ出した銀狼が城に入ったことを早々に突き止めた眼鏡の商人は、いきなり謁見を申し込んできた。

 自分の商会がかなりの利益をあげ、影響力を持っていることを鼻にかけていたこのものは

 いきなりこのような時間に予約もなしに謁見を申し込んだのだった。

 そして、このことがレンをいたく刺激した。

 

 フロアを三階はぶち抜いた馬鹿馬鹿しいほど高い天井は10メートルはあり

 現在の実力者の、相手を怯えさせ、楽しみたいだけの目的から作り変えられた場所

 実際にはまったく別の有意義な使い方があるのだが、対外的には前者の用途しか伝わっていない

 かなり問題がある趣味であるが効果は抜群である。

 極力無駄な意匠のはぶかれた光沢のある漆黒の壁が周りを覆い

 遠くキリシアの神殿の思わせる円柱の柱は、やはり闇色の石で統一され

 まるで玉座のようにしつらえた、三段のぼった位置の豪奢な椅子は、鮮血のごとき緋色であった。

 なにより、その座の主、レンの放つ圧倒的な威圧感が、勘違いをした豚の心臓をわしづかみにしていた。

 

 そして、主は謁見者を文字通り見下し、その怯える様を楽しんでいる。

 

 松明の炎が赤く照らす中、逃げ出した銀狼を追ってきた件の商人・相田ケンスケは

 傲慢な態度はどこへやら、そのあまりの威圧感に縮こまっていた。

 

「――――――――それで、そなたの船から逃げ出した銀狼が、この城に入ったというのだな? 」

「は、はい! そうでございます。あれはう、うちどもの大事な商品。しかも、かなり強暴で危険でございまして・・・その」

「ほう・・・・・・・」

「な、なにしろあの銀狼は身の丈5メートルはありまして、その巨大な口と鋭い牙たるや・・・・・・」

「まぁ、待て、そう慌てるな」

「は、はは! 」

 

 しどろもどろに説明するケンスケに、レンは右手を上げ話を止め

 ご機嫌を損ねたかと、ケンスケは平身低頭する。

 ケンスケはレンの一挙一動に面白いように反応している。

 部屋の異様な雰囲気と合わせて、眼下の無様な眼鏡に思いきり視線の重圧をかけながら

 レンは口元に嘲笑の笑みを微かに浮かべ、冷たく見下していた

 が、内心ではそのうろたえぶりを猫がねずみでもいたぶるように意地悪で楽しんでいた。

 しかし、商人ケンスケにそんなことに気づく余裕など無い。

 

「ようするに、そなたはその危険極まりない銀狼をこともあろうにこの港で逃がしてしまい、しかもこの城に追い込んだというのだな」

「い、いえ! そのようなことは・・・・ただ、その・・・あのものはとても俊敏で・・・・・・」

「街のほうからもさまざまな報告が入っている」

 

 ケンスケの不安をあおるように、そこで一度間を置くと

 優雅に足を組替えて、嘲笑う。

 

「手負いの巨大な狼が夜中に繁華街を荒らしたと・・・・・、死者は出なかったが人が数十人なぎ倒され、馬車が一つ跳ね飛ばされた」

「も、申し訳ありません!!! そちらの保証はすべてわが商会が持ちますので、どうか・・・・・・・・・」

「ふむ、通称手形と入航権が惜しいか? 」

「で、殿下っ!? ど、どうかお許しを・・・・・・・」

 

 エニシアン港はこの辺りで唯一のまとな港であり、東西大陸を結ぶ海路の要である。

 ここを抜かして大陸間を行き来するのは非常に困難で、おまけに通商手形まで取られては間違い無く商売ができなくなる。

 ケンスケは自分が築き上げた商会の危機にただただ慌てる。

 

「その銀狼だが、実はすでに捕獲してある」

「ま、まことですか? 」

「余が嘘を言っているとでも? 」

「い、いえそのようなことは決して・・・・・・・・・・」

「まぁ、よい。なかなか見事なので余が飼うことにした」

「そ、それはありがとうございます! つきましては料金のほうを・・・・・」

 

 件の銀狼がすでに捕らええられており、しかもレンが気に入っている。

 あれには一応予約があるのだが、通商手形と入航権には変えられないと、さっそくレンに売る算段をはじめるケンスケ

 しかし

 

「なにを言っている? 料金は貴様の管理不行き届きと繁華街の被害、さらには城にあのようなものを入れた罪で差し引く」

「そ、そんな!? あれは金4万で売却の予定だったのですよ! 費用だって軽く1万はかかっています。それを・・・・・・・」

 

 レンは最初から払う気など無く、取り上げようと思っていたのだが

 ケンスケは銀狼にかかった費用を思い、その損害に思わず反論する。

 ちなみに、金四万とはケンスケの商会が一回の東西交易で得る利益の五分の一にあたり

 ついでにかなり豊かで物価の安定したエニシアン島の平均的住民家族の一週間の生活費が金10枚で賄える。

 

「通商手形と入航権の変わりと思えば安いものだろう? 」

「―――――――――そ、それは・・・・・・・・・・・・・・」

「商売を続けたくは無いのか? 牢屋のほうがお好みか? 」

「ま、まさか・・・・・・・」

 

 ケンスケは冗談を言っていると信じたかったが

 笑みを形作るレンの表情の、その赤い瞳だけがまるで笑っておらず、血の気が引いてしまう。

 ケンスケは諦めるしかなかった。

 

「わ、わかりました。繁華街の保障のほうも私が処理させていただきます」

「うむ」

「それでは、私は失礼させていただきます。今日中には出航しなければならないので」

「ああ、よい航海を」

「ありがとうございます」

(見てろ、貴様すでに皇国にもその他の国にもマークされているんだ。ただで済まさないからな)

 

 ちなみに、レンは今でこそ女性の姿だが、一応嘗てはネルフ皇国の第一皇子であるのだが・・・・・・・・

 その立場はかなり微妙で、昨今のエニシアン島と港、さらに航路への干渉に他国からも目をつけられていた。

 

 内心煮え繰り返る思いでケンスケは退出した。

 そのうちに、黒い策謀を渦巻かせて

 

 その思いも行動も、すべて、レンの計算通りとも知らずに

 

 

 

 


 

狼精日記

第二話

 『レンの説明』 

 


 

 

「と、言うわけで、綾波はとりあえずボクが買い取ったことになっているわけだ」

 

 朝の客室での簡単な自己紹介の後

 レンとレイとマナは取り合えず食事をともにしていた。

 さすがに食事の上げ下げなどはマナは手伝っておらず、食事はたいていレンと共にとる。

 食堂の馬鹿馬鹿しいほど長いテーブルであるが、端と端で食事を取っては話もできぬので

 3人は上座にレンが座り、その両サイドをレイとマナがいる。

 レイは肉や卵類には一行に手をつけず、サラダや果物、食前酒ばかりに手をつけている。

 今の体ならまだわかるのだが、蒼き銀狼のあの体躯を思うと、どうしてこれだけで足りるのか?

 マナは反対側の席で、上品に、しかしものすごい勢いでほかの二人に倍する料理を平らげながら、不思議に思っていた。

 

「なら、アナタはワタシを買ったのではなく脅し取ったということになるのね」

「ん、そうとも言う。まぁ、綾波が戻りたいのなら止めないけど・・・・・・ああ! すでに船は出た後だね」

「問題無いわ・・・、戻るつもり、ないから」

「そうか、ではこの城に滞在する? 」

「――――――いいの・・・・・・・・・? 」

「ああ」

「――――これも絆・・・・・? 」

「へ? 」

 

 

 レイはもはや食事に一切手をつけず、目を微かに潤ませながらレンを見ている。

 レンもまた、多少戸惑いながらも静かに笑みを浮かべてレイを見守っている。

 

「あら、気が進まないなら別にいいのよ。わざわざとどまらなくても。それとも行きたいところまでの船も用意しましょうか? 」

 

 なんとなく良い雰囲気で

 そしてレンの残留の呼びかけにレイも嬉しそうで、「絆」とまで言っている。

 おまけにレンがレイを随分と気に入っているようなのが気に食わないマナが会話に割って入る。

 先ほどまで、すさまじい速さで、しかし美しく口に運んでいた料理は、すでに無い。

 ちなみに直前まで紅茶を飲んで、口を落ち着けていたりする。

 

「別に、留まるのが嫌なわけではないわ。ワタシはレンといっしょにいたい」

(そう・・・・・・・・ワタシ、レンの傍にいたいのね。ウレシイ・・・・・? そうこれがウレシイという気持ち・・・・・・)

 

尻尾が左右にせわしなくゆれる。嬉しそうだ。

 

「まっ、!? そんなこと出来るわけ無いでしょ、」

(なによ、この子! 図々しいィ!! レン様に慣れなれしすぎるゥ)

 

そんな様子にマナは上辺だけの笑みをさっそく切り捨てる。

 

「―――――どうしてそういうこと言うの? 」

(なぜ、どうして邪魔するの? )

「それは、ここは私の家だからよ」

(わけわかんない子ね。片言しかしゃべれないのかしら!? )

「そう・・・・・・、良かったわね」

(ワタシ、イライラしてる・・・・・・・・、そう、嫌い・・・、嫌いなのね、レンとの絆を断とうとするこの人のことを・・・・ワタシは)

「何がいいのよ!? 」

(やっぱりわけわかんないィ!? ああ! もう如何にかして! )

「わからないの? 」

(アナタ、邪魔)

「わからないから聞いてるのよ!! アナタ何様のつもり? 」

(とにかく追い出すのよ、この子を! )

「さぁ? 」

(爪で引き裂く、首を食いちぎる? いえ、小さすぎるわ。肉は嫌いだけど頭を噛み砕く・・・・・・マズそう・・・・・・・)

「いい加減にしなさいよ!! 私を誰だと思ってるの!? 」

(もう、勘弁できないィ! )

「アナタ・・・・誰? 」

(でも・・・・・・・・・・・・殺すわ。アナタ)

 

 会話を交わすうちに、お互いへの勘定は加速的に悪くなっていき

 マナのほうはつばが飛びそうなほどヒートアップし

 レイは表面上落ち着いているものの、動きやすそうな服に身を包んだ体をすぐに飛び出せるよう、身構えている。

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

 そして、しばしの沈黙がその場を支配した。

 マナが食堂の脇に並べられた甲冑の掲げた、鈍く光る巨大なハルバードに目をやり

 レイの紅の瞳に明確な殺意が宿る・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 帯電したような、ピリピリした空気

 まさに弾けようとする

 その時・・・・・・・

 

パンパンパンパンパン

「ハイハイ、二人ともそこまで」

「「え? 」」

 

 広い食堂にこぎ見よく響いた、レンの手拍子と、良く通るハスキーな声に

 緊張した雰囲気と充満した殺気が霧散していく。

 

「それで、マナ。とりあえずレイの生活に必要なもの、今日、明日にも揃えるよう手配して」

「れ、レン様!? 」

「嫌なの? 」

「え、それは・・・・・・その・・・・しかし・・・・・・・・・・・・」

「問題無いね」

「は、はい・・・・・・・・・」

(キィー―――――――!!! そんなに気に入ったっていうの、この子を!? 私というものがありながら)

 

 なんだかその容貌、服装、所作

 どれを見ても女の子にしか見えないマナは

 思考まで“嫉妬する女”であった。

 さすがにレンが面と向かってはっきり下した指示に逆らうわけにもいかず

 唇をかみ締めながら承諾するマナ

 何度も言うようだが名門中の名門、このエニシアン島の総監兼領主たる霧島家の“嫡男”である。

 

 しかし、レンはそんな様子を一向に気に留めた様子も無く

 急展開、しかも本人の意思を確認もしないで進む話を呆然と見ているレイに向き直る。

 

「さてと、それで綾波、服とかだけど、どっちがイイ?男物? 女物? どっちでも似合いそうだが」

「・・・・わ、ワタシはどちらでもかまなわいわ・・・・・・」

「言葉使いは完全に女の子だ、体の線もそちらに近いし・・・・・・・」

「そ、そう? 」

「そう! だから女物にしない? 」

「・・・・・・・・レン様がそう言うなら・・・・・・・・・」

(・・・・・なぜ、レンの顔をまともに見られないの・・・・・頬がアツイ・・・・・どうして・・・・? )

 

 こちらに向いた瞬間から最上級の笑みを浮かべているレンにレイはしょっぱなからまともに離すことができない。

 

「・・・・・・・・む、綾波はどうしたいの? そもそも綾波はどちらなのかな? 」

「・・・・・・・・・・・・・・・・それは・・・・・・・・・」

「ね、綾波も自分がいい方がいいだろう、ボクが決めるより」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 一方のレンは、それまで勝手に話を進めていたくせに

 何が気に食わないのか、消極的賛成しか口にしない綾波にいらだち出す。

 レイは返答に困り、フォークで赤くて丸いアピラの実を皿の上で転がしながらうつむく。

 

「そう・・・・・・・・、綾波がどちらかで服も内装も考えないといけないからね。できればちゃんと答えてほしいな」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ホント、“お客様”のことを正しく知っておくのも大切なことですからぁ〜、ぜひとも教えていただきたいですわぁ」

 

 レンとレイが離している間に精神的再建を果たしたマナが、意地悪に参加する。

 ちなみに“お客様”に随分と力が入っているようなのは気のせいではない。

 

「ワ、ワタシは・・・・・・・・・・・・・・・・・前も言ったように、どちらでもないわ」

「でも、少なくともその年齢・・・・て、ホントは幾つか知らないけど、の割には胸無いし、男の子のモノ、ついてるよねェ」

(・・・・・・・・は! もしかして私より大きいかしら? それとも形がイイ? だからなの!? )

(なんかマナから妙な視線を感じるが、ハテ? )

 

 マナはレイに意地悪しているうちに無視できないことに気付き、思わずレンを凝視し

 レンはといえば、マナから何故そのような目で見られるのか、持ち前の鈍さゆえに気付かない。

 今度はレンとマナの間に、妙な空気が漂い出すかに見えたが・・・・・

 

「・・・・・・・それは・・・・・・・そういう時期だから・・・・・・・・・・」

「「あ、なに?」」

 

 レイの言葉に、思わず反応して、こちらもまた事無きを得る。

 

「・・・ワタシが、いまそんな時期だから、だから相手にあわせて性別と、多少容貌が変化する・・・・だから」

(そう、だからワタシ、今、オスなのね・・・・・・・・でも、他のところは随分メスみたい・・・・どうして?)

(なるほど、そうよね、レン様女の子みたいな美少年が大好きだものね・・・・)

「そうなんだぁ〜、便利だねェ〜〜〜〜」

「「???」」

 

 レンはといえば相変わらずわかっていなかったし、レイはいまいち納得でかねるものもあったが

 レンの性癖(この1年でついたもの)を良く知るマナは大いに頷けた。

 しばらくしきりに頷きながら己の考えに浸りきる。

 

「そうなんだ、だから女の子みたいな男の子なんだぁ―――ふぅ〜〜ん、ん!? 」

(て、てことはこの子最初からレン様目当てってことじゃない!!?? )

 

 ようやく気付いた、とても大切で(マナにとって)しかも許せそうも無い(あくまでマナにとって)結論に

 般若の表情でレイに食って掛かろうとするが・・・・・・・・・・

 

「そう、だったら男物でも着てみると良い。似合うだろう」

「そう? 」

「うん、ついでに女物も用意しよう」

「・・・・・ええ」

(何故、レンに見られたら顔がまた熱くなる)

「そう、部屋の内装はどんなものが良い? 」

「・・・・別に、気にしないわ」

(・・・・前より、いっそうアツイ・・・ワタシ、熱があるの? )

「ふむ、せめて色だけでも考えてくれないか? 」

「・・・・・・・・・・・・・・青と水色と白くぉ主体にしたのがイイ」

(ナゼ? レンの瞳から目が離せない・・・・・・・・・・・どうして? )

「わかった、青と水色だね、とりあえずそれで手配しよう・・・・・・・と、いうことで、マナ、頼む」

「へ? 」

「だから、レイの部屋の準備と服などをそろえる手配」

「へ??? 」

 

 自分が浸ってる間に、しっかり話を進めていた二人(主にレン)にマナは呆然とする。

 いつの間にやら二人もまた食事を終えて、紅茶片手に談笑していたのだ。

 いや、ある意味レンが口説いていたといっても良い。

 なにせ、日ごろ見せる、透き通ったような、そして陽光のように暖かな微笑ではなく、どこか艶然とした笑みを浮かべ

 その魔力のある瞳に見入られたレイは、今度こそ真っ赤になっている。

 

「頼むぞ・・・・・・・・さて、マナ、行くぞ」

「は、はい」

(チクショー――――、結局あの子いつくことになっちゃったじゃい、見てなさい。レン様は“私だけ”のご主人様なんだからぁ)

 

 そして、二人は食堂を後にした。

 内心とても穏やかではなかったが、あくまでレンには忠実なマナである。

 結局、任された仕事は、よほど理不尽でない限り(マナにとってはけっこうこれも理不尽だが)かなえてしまうのだ。

 

 

(結局・・・・・・・・私はこの人に逆らえない)

 

 廊下でレンの一歩後ろに付いて歩きながら、マナは自分を省みる。

 その位置は、五年前レン・・・・いやシンジがこの島に送られてきてから、ずっと変わらない。

 ずっとその背中を見ていたのだ。

 ついでに、そのころからマナはその気があったのだ。

 幼い頃、初めてあったシンジに一目惚れするくらいに

 

(私は、この人についていく・・・・・・・・・)

 

 その女性にしては高く広い背中を見つめながら、マナは改めて決心する。

 

(だから!! 絶対あの子には負けないんだから!!!! )

 

――――――――――ついでに戦いの決意も固めたりもしていたが・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「・・・・・・・・ワタシは、ここに残ればイイのね・・・・・・・」

 

 一方、決意の対象のレイは、一人ぽつんと残されて(マナもレンも彼女のケアを忘れている)

 その場に控えていた給仕のメイドに、いれてもらった紅茶を眺めながら考えていた。

 

(レン・・・・・・とても不思議なヒト、多分、多分、ワタシが始めて反応したヒト)

 

 レンのことを思い浮かべ、そのやわらかな微笑と美貌

 そして、妖艶な笑みを思い浮かべ赤面する。

 

(邪魔するのは、あの変態・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう邪魔なの、アナタ、だから負けない・・・・・・)

「・・・・レンのところに案内して」

「は、ハイ(どうしようぅ・・・・・・マナ様のことを考えると、今案内するのは、でもなんかこの子怖いしぃ・・・・・・)」

 

 哀れ給仕のメイド(もちろん彼女は本物の女の子だ)は、後継ぎ(あれでも)と目の前の少女の板ばさみになって困り果てていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザーーーーーーーー、ザーーーーーーーー、ザーーーーーーーーー

 

 地平線を遥かにみゆる大海原

 波が高いせいか

 船体に打ち付けるその音が妙に響く。

 三本のマストに風をめいっぱい受けたその船は、あれた海をすべるように進んでいく。

 かなり大きい帆船の甲板前部

 少し赤みのかかった見事な金髪をその強風になびかせながら、険しい顔つきで舵を握り船を操るものがいる。

 晴れ渡りながらも、なぜか風が妙に強いそんな天気の中

 真っ赤な船長服に身を包んだその人物は、船を見事に操舵していた。

 

(まってなさいよ!! 変態シンジ、今度こそ目にモノ見せてくれるんだから!!! )

 

 その船の後方には、さらに四隻の、一回り小さな帆船が必死に付いて来ており

 様様な種類の武器、備え付けのボウガンや、矢よけを装備し、ハリネズミのように武装したそれは

 軍のように規格も統一されておらず、真っ当な所属にはどうにも見えない。

 

(今度こそ、あの変態の守る船団襲って、あいつに赤っ恥掻かせてやる)

 

 先頭の船を操る男装の麗人

 海賊“赤き風”の女頭領・惣流・アスカ・ラングレーの目には、獲物よりも憎い変態シンジ(レン)の怪しく笑う顔しか入っていなかった。

 

 はたして、レンにどんなめにあわされたのか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 



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