ギン!

カン・カン!!

ズシャァッ!

ズン!!

ギャァァアア――――

グぁー―

ワァァぁー―――――!

 

いまだ夜明けに数時間はある夜中

舞台は風と波の無い凪ぎの海

 

すでに、アスカの海賊船団はケンスケの商船団最後尾と最前列、さらに中央の船に取りつき

一方商船の方あはその巨体からなかなか接近できずにいる。

盛んにクロスボウや弓で取りつかれた船を援護しつつ、なんとか敵海賊船に取りつこうとするものの

かなり時間がかかっている。

 

ワァァァァァァァァー――――――――っ!!!!!

 

ズシャァー――っ!!

ザス!

 

「怯むな、切り込み隊一番、二番!! アタシの攻撃の後、敵陣に一挙に突っ込みなさい」

 

最後尾の船に取りついたアスカは日ノ本の業物・二振りの小太刀で次々と敵を切って捨て

そうしながら、見方の指揮をとっていた。

今のところ見方が圧倒的に押しているが、敵もかなりの手錬れらしく、なかなか勝敗が決まらない。

未だ船内に飛びこめないとなると、時間がかかりすぎ敵増援がくれば不利になる。

アスカは乱戦から抜け出し、周りを3人の部下に護衛させて、目を閉じ、精神を集中し始めた。

 

「全ての力の源よ、空を駆ける猛き風よ、我が手に集いて全てを薙ぎ倒せ!!」

 

掲げた両の手の間を中心に風が舞う!

 

「ディム・ウィン!!」

 

両の手を向いた方向に、疾風が走り、そこにいた敵を吹き飛ばす。

 

「行きなさい。私は船内に向かう!!」

「御供します!」

「付いて来れればね!」

 

一挙に船内いへの扉までの道が空き

アスカは四人の部下と供に船内に飛び込んだ。

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁー――――」

「うるさいぃ!!」

 

ズシャァッ!

 

これで何人目か?

通路の角

交わるところ

さらに部屋を確認していく過程で、何人もの待ち伏せに襲われては一撃のもとに切り伏せる。

アスカの背後はついてきた部下たちが固めており、今のところ全員無事である。

 

一応加減はしているらしく、そのうちの幾人かは意識あり

傷口を思いっきり踏みながら詰問するアスカ

 

「ちょっと、アンタ達、この船の船長はどこよ」

「グァァァァアアアアあー―――話す!話すから脚をどけてくれっ!!」

「さっさと言いなさい!!」

「こ、この奥の船長室ですぅぅ!」

「あ、そ」

 

バキ

 

「ェグヘェっ」

 

そして聞きたいことを聞き出すと、股間を殴って昏倒させる。

 

「行くわよ」

 

そしてすぐさ目的地に走るのだった。

なにやら相手が丸くなってピクピクしていたり

その股間からアンモニア臭のする・・・・・しかも赤黒いものの混じった液体が流れているが

アスカの護衛達は賢明にも何も見なかった事にした。

 

 

 

 


 

 

狼精日記

第四話

『全ては手のひらの上で』

 

 

 


 

 

 

 

 

 

海賊船のアーバレストから最初の大型クオレルが打ちこまれてから一時間

すでに海賊船団は最初の獲物の船から次の獲物に移っている。

一方商船団も混乱の中、迎撃体制をととのえつつあり、数の少ない海賊船達を包囲しようとしている。

が、商船団が基本的に弓矢、クロスボウを主な間接攻撃武装として攻撃しているのに対して

海賊船は取りつけられた巨大なアーバレスト、小型のカタパルト

さらには幾人かが魔法をつかって攻撃を仕掛ける。

この世界で魔法が使いこなせるのは少なく、しかも実戦で使える魔法使いとなると更に限られる。

魔道士と名乗れるものなど1万人に一人と言って良い

そんなものが幾人も集まっていること

それが、自分も剣士であると供に魔道士である惣流・アスカ・ラングレーの海賊団

“紅の風”の強みであった。

魔法とアーバレストから放たれた通常より大きなクォレルとカタパルトから飛んでくる礫の雨に阻まれ

商船団は戦力を集中できずにいる。

戦いは海賊の優位に進んでいた。

 

 

 

 

 

「ほぉ!相変わらず見事だな」

 

エニシアン島の場内

周囲に夜空を、床に海原を映し出し黒曜の間

向かい正面の席でチェスの次の手を考えて唸っているマナを微笑みつつ

レンは繰り広げられる海戦を観戦していた。

 

「・・・・・・・レン、レンは何もしないの?」

 

先ほどから、天井、壁、床に映し出される夜空と海

そして周囲の空間に映し出される状況を示す様々な幻像を興味深げに眺めていたレイが

レンの肩に甘えるように顎を乗せつつ聞く。

 

「すでに、手は打ってあるんだよ。ほら・・・・」

 

レンが軽く手をかざすと、レンとレイの正面に新たに幾つかの幻像が浮かぶ。

それは、遥か上空から商船団と海賊船達を写したもの、その周囲を遠く囲むように二十隻の軍船

さらにその軍船を大写しにしたもの

帝国皇太子シンジがレンとして目覚めてから急激に陣容を整えたエニシアン総督府所属の警備船団

レンがマナの霧島家の権力と己の力を利用して取りこみ、指揮系統を一本化して強化した独自の海軍

すでにその戦力は、ネルフ皇国の海軍に匹敵していた。

 

「でも、どうしてあそこで戦っている人達は、気づかないの?見えていないの?」

「おお、いいところに気づいたね」

 

レンの頬に自分の頬を摺り寄せるレイに説明しながら、レンはレイの頭をなでる。

すると、レイの蒼銀の髪から飛び出した二つの犬耳がぴくぴく動き

“じーぱん”から出ている大きなふさふさの尻尾が嬉しそうに左右に降られる。

 

「あれはずでにボクの魔法がかけてあって、周りからは見えないんだよ」

「魔法?」

「それを解かないと攻撃も出来ないんだけどね」

「・・・・・ん、そう・・・・・・・・・・・・」

「あ!レン様、決まりましたよ、こうです・・・・て!?アンタ何やってるの!?」

「何?」

 

ようやくチェスの次の手が決まったマナが嬉しそうにチェスの駒を進め

顔を上げればレイがレンに抱き着いている。

当然マナは思い切り怒鳴り引き剥がさんと立ちあがる。

 

「何? じゃ、ないわよ!! すぐにレン様から離れなさい!」

「イヤ」

「離れなさいったれらはなれ・・・・・!?」

「チェック・メイト♪」

「ホェェェェェェェェェ〜〜〜〜〜〜〜〜!!??」

 

怒鳴ってさらにレイに詰め寄るマナを余所にレンは机に手を伸ばす。

そしてさっと駒を動かす。

あっさりマナは負けてしまった。

 

「レン様ァ、その手待った!」

「待った無し」

「ホェェ〜〜ぇ」

 

何時ものことだがまたしても負けてしまったマナはレイに飛びかかるの忘れてがっくりくる。

メイドのエプロンドレスを着た、美少女にしか見えない少年が女の子座りしてうなだれている

そんなマナの様子はなんだかレンのサドな部分を大いに刺激した。

が、その衝動を押さえるとゆっくりと笑ってマナに声をかける。

 

「ほら、おいで」

「レン様ァ〜〜〜っ!」

 

両手を広げて迎え入れるような仕草をするレンに、マナは思い切り飛びついた。

そしてその豊かな胸に顔をうずめる。

涙目になっていたマナの顔が和らぎ力が抜けていくのを眺めつつ

嫉妬するレイの頭をなでつつ、レンは再び目の前に映し出した幻影に目をやる。

すでに軍船はかなり近づいていた。

 

(そろそろいいか)

「潜みしものよ、その姿をあらわせ」

 

呟くように唱えると、商船団と海賊船たちがほとんどいっしょくたんに固まってしまったのを囲むように

二十隻の軍船が忽然とその姿をあらわした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「げ!もう来たの!?」

 

戦いが始まって二時間

すでに三隻の商船を制圧し、四隻目に移っていたアスカは忽然と現れた船団に青ざめる。

アスカには最初から敵だとわかるようだ。

それに体制がものすごくマズイ

商船とともに団子になってしまった自分達の周囲を囲むように敵船団は現れたのだ。

アスカはすぐに決断した。

 

「伝令、直ちに各船に撤退に移るよう指示! あの変態の軍隊が来たわ!!」

「はっ!」

「各員、退却! 余計な欲かくんじゃないよっ!!」

「「「「YES SIR!!」」」」

 

船の上で大立ち回りをしていたアスカと連携しながら効果的に戦っていた海賊達は傭兵団を牽制しつつ下がり始める。

しかし、そこは相手もプロ

相手が下がり始めたと同時に猛然と襲いかかってきた。

 

「ったく、うっとうしいわね。もうこの船燃えようがどうしようが関係無いんだから・・・・!!ファイアー・ボール!!

 

さすがに取るものも取らず捨てていく船となるとどうでも良くなるらしく、

アスカはこれまで控えていた炎の魔法を思い切り解き放つ。

爆発と供に吹き飛ばされる商船の傭兵達

 

指令を受けた伝令によって各船にも伝わったらしく、商船と海賊船を固定していたクオレルのロープを切り、撤退を始める。

しかし、すでに海軍は攻撃準備を完全に整えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「各船に連絡、魔法戦闘用意!!」

「はっ!」

 

実際に戦場に軍船が透過の呪文を解かれ、その姿をあらわす少し前

各船で着々と戦闘準備が整いつつあった。

各艦長の指示のもと、海賊船や商船団に向いている船頭に魔法の発動体たるロッドを握った兵士が集まる。

すでに兵士達が打てる簡単な魔法攻撃でも届く距離まで近づいている。

そいて、遠く離れたレンが船団にかけていた魔法を解く

警備船団がその姿を海上にあらわす。

 

「魔法兵、一斉者」

「「「「「「「「「「フレア・アロー!!」」」」」」」」」

 

叫びと供に発動体たるロッドを通して兵士達の魔力が集まり、炎の矢が敵船を襲う。

それぞれの船で十人の魔法兵が交代で打ち続けてしばらく、限界がきて攻撃がやむ。

すでに各海賊船、そして商船にも火が燃え移り

海賊や傭兵の幾人かは炎の矢の直撃を受けて焼け焦げている。

 

「クロスボウ隊前に! 準備出来次第、3段階で連続射撃! 船はそのまま前身!」

「ラムで接触後、橋げたを渡し白兵戦に移る。突撃隊用意!!」

 

指示が飛び交い、一糸乱れる事無く海軍の船団は獲物を追い詰めていく。

 

「魔法兵の次の攻撃までの時間は?」

「およそ、二十分です」

「最後の留めは魔法兵の一斉法撃で決める! それまでに相手を止めろ!」

「はっ!」

 

装備

錬度

全て優位に立ったレン指揮下の船団は、さらに先制攻撃で戦闘を優位に進めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「一斑、二班は船体の応急修理、とりあえず出発に必要なのを最優先に」

「わかりましたっ!」

「三班は一刻も早く撤退の準備!急ぎなさい!!」

「はっ!」

「切り込み隊、名前に悪いけど船に取りつく傭兵達を叩きなさい。アーバンレストは全て接近してくる変態の船団に向けて!!」

「「「「「YES SIR!」」」」

「急ぎなさい!! 敵が取りつく前になんとしても逃げ出すのよっ」

 

一方、海賊船のほうでは比較的混乱も無く、船員達がアスカや各船長の指示のもと

次々と必要な作業をこなしていく。

すでに海賊達は自分達の船に戻っており

今は傭兵達を打ち払いつつ一刻も早く逃げ出す準備をしている。

さすがに自分達も魔法を使い攻撃をするだけあって対処耐性は充分で混乱する事無く仕事をこなす。

 

「汝焔に舞う蝶よ、その力もて猛り狂う炎を静めたまえ・・・・・・モス・バリム!!」

 

アスカの詠唱と供に発動体幾つもの指輪が光り輝き、凄まじい数の光の蝶が船を舞う。

 

「私達の船の炎だけ消して!!」

 

呼び出した主の指示のもと、海賊船のみを選んで炎を打ち消していく蝶達

発動している魔法に集中しつつ、一方意識の端を海軍の船に向ける。

 

(海軍の魔法攻撃がこれだけのはずが無い! かならず第二撃が来るはずっ!)

「撤退急いで!!」

(エイジ・ハミル・クロスタ・エイダ! 次大きいの行くわよ)

((((了解!!))))

 

炎の消えた船の上で、アスカはあらん限りの声で指示を飛ばしていた。

一方、心話で遥か離れた魔法の使える部下達に命令を出す。

すでに新たな敵船団からクロスボウから放たれたクオレルが飛び込むでくるようになっていた。

アスカ、そして各海賊船の魔法の使い手はさらに次の魔法に備えるべく精神を集中し始めた。

そしてそんなアスカを船員達は囲み、矢などから護のだった。

 

 

 

 

 

 

 

一方商船団は混乱の渦の中にいた。

海賊の手際の良さに翻弄され、時折発動する魔法に恐れおののいていたとき

いきなり周囲に二十隻の船団が現れ、炎の矢で攻撃を受けたのだ。

燃えさかる炎を必死に消火しつつ、一分がすでに退いた海賊たちに追い討ちをかける。

しかしすでに統制が取れていない彼らの散発的な攻撃は見事に退けられ、効果を上げない。

 

「ちっ!高い金を出して雇っているのになんて体たらくだ!! 」

「しかもあれはエニシアン島統括の警備軍じゃないかっ!! あの悪魔これを機会に俺を船団ごと始末する気か!?」

 

船団の主、大商人のケンスケは忌々しげに呟く

すでにこの船にも火は燃え移っているのだが

しかしたいしたこともなく消し止められそうで、すでにケンスケは落ち着きを取り戻していた。

あくまで表面上は

 

船尾の一室から他の船の様子を見ていると海賊船が商船団の塊の中からそれぞれ抜け出し始めている。

そして、海軍も一応それを追う構えだ。

 

「しかし、あの悪名高い“紅の風”に鉢合うなんて、この航路どこから知ったんだあいつ等?」

 

悔しそうに爪を噛みながら、頭の中で今回の損害について頭を悩ませていた。

窓の向こう

海軍の突出した軍船のラムによる突撃を交わした海賊船は、そのまま逃走に移っている。

大きさの割りにとんでもない小回りの良さと早さである。

一方攻撃をかわされた海軍にも動きがある。

海軍の船団の船頭に再び魔法兵達が並び、ロッドが光る。

明らかに何か魔法を発動させようとしていることがわかる動きだ。

 

(警備軍のあの魔法の使い手の多さはなんだ?なんであんなに用意できる?)

 

滅多にその資質をもつものがおらず、しかも訓練にはかなり専門的な知識の必要な魔法使い

その数が余りにも多いことが、ケンスケには気にかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔法兵、発動用意!!」

 

ラムによる突撃と突撃兵を乗りこませての白兵戦を見事に交わされてしまった海軍

しかし、それに動揺する事無くすぐに痴愚の攻撃に移っていた。

海賊船に交わされた軍船では、魔法兵達は近くの海賊船に面した船べりに集まる。

おしてロッドを前に構え、目を閉じ精神を集中し始める。

 

「クロスボウ隊、打ちつづけろ、突撃隊は盾を持って魔法兵を庇え」

「魔法兵!詠唱開始」

 

そして、指示のもと再び魔法がつむがれ始める

 

「「「「「「全ての力の源よ」」」」」」

「「「「「「輝き燃える赤き炎よ」」」」」」」」」

「「「「「「「我が手に集いて破壊の爆炎となれ!!!」」」」」」」

 

魔法兵が眉間の前にかざし集中していたロッドを持たぬ左手を突き出し、そこに炎が集まる。

 

「「「「「「「「「「「「ファイアー・ボール!!!!」」」」」」」」」」」」

 

幾多の炎の塊が次々と海賊船い向かう!!

 

 

 

 

 

 

 

魔法攻撃の開始直前、アスカはカッと目を見開く。

そして各船にいる魔法の使い手たちも各々の発動対を構える。

 

「来たッ! 詠唱行くわよ」

「「「「了解」」」」

「大気に踊り吹きすさぶ風よ」

 

アスカは両手を頭上に掲げ、詠唱を始める。

何時とも違う、静かにしいかし響き渡る声

 

「「満ちる海原に踊る水の力よ」」

 

エイジ達海賊の魔法使いが追従する。

 

「「「その力を我等に見せよ!!」」」

「「「「吹荒れ、舞い踊りて爆炎を阻む壁となり、我等を守り給え」」」」

「「「「「グレート・ウォール!!!!!」」」」」

 

発動と同時に海賊船各々の周囲を風が舞い、さらにそれに巻き上げられるように水の壁が生まれる。

海軍より放たれた膨大な量のファイアー・ボールがその壁に阻まれ打ち消される。

 

「風よ、我等を運び給え」

 

そしてアスカが小さく呪文をつむぎ

別の風が海賊船を運び始める。

船員達は、未だ海軍の様子を注意深く見ていた。

が、特に追う様子も無く商船団に向かい始めたのをみるとほとんどのものがその場に崩れ落ちる。

力が抜け、座りこみながら多が印無事を祝う船員達の中、アスカは空を見上げていた。

すると、一話の鷲が何かを落としてきた。

落ちてきたのは小さな宝石で、床に転がり、そして止まると光だす。

光は上を照らし、そして一つの幻影をつむぐ。

現れたのは、椅子に座ったレンとそれにすがり付きじゃれているレイとマナだった。

 

 

 

 

 

 

 

「フッ! どうやら逃げ延びたようで」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「疲れて声も出ないか、どうだったかな?余の嗜好は」

 

結局二人してレンの豊かな胸を枕にとろける笑顔を浮かべているマナとレイの頭をなでながら

レンはこの幻影をつかった対談した。

あえて嘗てシンジであった頃の幼馴染の一人。

そのアスカに“余”という一人称を使って話し掛ける。

しかしマナとレイが安心しきってふやけていて

だらけていて

とろけていて

レンにしがみ付いていて

しかもレンも何時もの鮮血の玉座でなくゆり椅子椅子に座って微笑んでいるようでは威圧感など無い。

 

『あんた、馬鹿にしてるのっ!?』

「さぁ、どんだろう?」

『むかつくわねぇ、毎度毎度! いい加減鬱陶しいのよ! 余裕のつもり!?』

「確かに、余裕はたっぷりあるな」

『ムキぃー――――――っ!!』

「まぁ、そういきり立つな」

『だいたい、その格好はなによ、それが人と話すときの態度?』

「別に変ではないだろう?それとも交ざりたいのか?」

『バ、馬鹿言わないでよっ!! 誰がアンタなんかとっ!!!!』

「そっ」

『ウウウウウウウウウウー―――――――――――――――っ!!!!』

 

悔しげに睨みつけながら、唸るアスカ

レンはアスカの海賊行為を邪魔した後

何時も必ずこうやって鷲にオーブを落とさせ、アスカと会話している。

結局のところ、鷲・ピロテースとディードの仕事はレンの力の媒介以上に

こうやってはっきり相互通信するためのオーブを落とすためなのである。

それが、アスカから見れば余裕そのものに見えて極めて苛苛する。

何時ものように血管切れそうなアスカ

そのとき

 

「・・・・・・・ん、うるさい・・・・・・・・・・・・」

『「へ?」』

 

しばらく嘗ての幼馴染の気安さで話していたレンとアスカに突然別の者が割りこむ。

 

「うるさいの・・・・あれ・・・・・・レン、あれ何?」

「ああ、アレは惣流・アスカ・ラングレーといって幼馴染。今は海賊の女棟梁だよ」

「そ、でもさっきからキーキー言って五月蝿いの」

『なんですってぇ!?』

「ホラ」

「まぁ、静かじゃないね」

『ウルサイウルサイウルサ〜〜〜〜イ!!!!』

 

見知らぬ獣耳付きの美少女(?)のレイに淡々と批評され、それが極めて馬鹿にされているようで

アスカはまた怒鳴り出す。

 

「やっぱりキーキー五月蝿いの、サル?」

『ムキぃー―――――っ!!誰がサルよ、誰が!?』

「あ、綾波さん・・・・?それはちょっとマズイかも・・・・・・・・」

「そうだよ、一応あれでも大貴族の麗嬢で、つまり御姫さまなんだよ」

「皇国の貴族って終わってるのね」

「ちょっとそれどういう意味よ」

「まぁまぁ」

 

もう一人の幼馴染たるマナがさすがに顔を起こし床に降り立ち、レイと幻影の中のアスカを見比べ

そして何やら雲行き怪しくなってきてオロオロし出すが、レイの口調はまったく容赦無く

さらにその内容にカチンと来たマナがじろりと睨む。

しかし、レイの注意はひたすら幻影の向こう、大海原のサル・アスカに向けられている。

 

『だいたい、コイツなによ!? またアンタの変態仲間』

「失礼なサルね」

『だから、誰がサルだ誰が!?』

「アナタ」

『私はサルじゃなぁ〜〜いっ!』

「そう、よかったわね」

(なんか、面白いわ、このサル。もっとからかいたい・・・・・・・)

 

マナの様子を珍しく無視していたレイはなにやら不穏当なことを考えながら

見せ付けるようにレンにしがみ付き、ニヤリと笑う。

それは美しくも極めて皮肉な様子の、意地悪そうなものだった。

 

「あ、綾波さん?」

「レイ?」

『なにがイイのよ、何が!?』

 

マナとレンが驚くほど、普段のレイの透き通った微笑みからはかけ離れていて

そして案の上アスカはそこに含まれた嘲りに反応して爆発する。

しかし、レイは追撃の手を緩めなかった。

 

「サルなアナタにはわからないわ」

『サルて言うなぁ〜〜〜〜!!』

「クスクスクス・・・・・・・・・・・・・・・赤毛ザルは用済み・・・・・・・クスクスクス」

『ムキぃー―――――――――』

 

気がついてないがアスカの奇声はサルにふさわしい

ついでに顔も真っ赤だ。

 

「あ、アスカ君、それでは余は失礼するよ、また楽しませてくれ」

『あ、ちょっとアンタ待ちなさい!!ちょ・・』

 

ブツ!

 

なんだか妙な方向に向かい出した会話を止めるため、レンは無理やり通信を切り上げた。

すると、襟が引っ張られる。

見ると、レイが珍しく極めて不満といった様子でレンを見上げていた。

 

(どうして?どうしてやめちゃうの?面白かったのに・・・・・)

 

レンとマナはレイの新たな一面にすこし頭痛がした。

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、返事しなさいよ!ちょっと!?」

 

一方海賊船では、アスカが通信に使われたオーブを取り上げて、怒鳴りつづけていた。

 

「コンチクショー――――、あの獣耳女絶対許さない!!!!」

 

思い切りオーブを海に向かって投げる。

きらめきと供に遥か向こうに消えていく蒼いオーブ

どうも怒りの対象がレンからレイに移りそうなアスカであった。

 

 

 

 

 

 

一方

散々な被害を受けた商船団は、警備の船団が手早く消火作業に辺り

そして傷ついた傭兵達を治療し、遺体を収容し

そして応急修理が行われ、着々と作業が進んでいた。

そんな中、商人・ケンスケは自分達の被害を報告し、事情を話すため

警備団が自分の船団を海賊船と纏めて攻撃したことを抗議するために海軍の司令官室にいた。

 

「まったく、アナタ方は何を考えているんですか!?我々を海賊と一緒に攻撃するなんて」

 

鬼の首を取ったかのごとく付け入ろうと捲し立てるケンスケ

しかし、海軍の司令官もその部下達も一向に悪びれた様子も慌てた様子も無く、落ち着いている。

それが気になり、ケンスケはさらに捲し立てる。

 

「黙ってないでなんとかいったらどうです!?保証はしてもらえるんでしょうね?」

「保証はありません」

「へ?」

 

いきなりきっぱり否定されて面食らうケンスケ

 

「それだけでなく、アナタには数々の密輸の疑いがかかっています」

「な、なにを根拠に・・・・・・・」

「商船を調べれば判ることです。私の部下達は優秀でね」

 

司令官は余裕綽々といった様子で笑みさえ浮かべて話す。

 

「保証を得るどころか・・・保釈金が必要じゃないんですか?ケンスケ殿?しかも多額の・・・・・・」

「くっ!」

 

ケンスケは悔しげにうめいた。



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