鋼鉄の巨人

第六章 大人たちの楽園

【ネルフ本部・中央作戦発令所】
 突然の警報。
 騒然としている発令所ではオペレーターからの報告が飛び交っている。
 「太平洋上から接近する物体有り。」
 「MAGIによる解析を実行中。」
 「警戒モードCに切り換えます。」
 モニター上に海面を航行するガギエルと並行飛行するシャムシエルが映る。

【ネルフ本部・中央作戦発令所・司令席】
 ゲンドウと冬月が、発令所のモニターを見上げている。
 「やれやれ、やっと我々の出番か。」
 *「誰に言ってんだよ!」
 「最終章のお膳立てに過ぎんからな。」
 *「楽屋オチか!」
【ネルフ本部・中央作戦発令所】  オペレーター席にはマヤ、日向、青葉。その後ろでミサトとリツコが解析結果を待っている。  「解析の結果はどう?」  「MAGIは解析不能を提示しています。」  「衛星軌道上の物体はどう?」  「衛星の映像を主モニターに回します。」  衛星軌道上にアラエルがゆらゆらと漂っている。  「海から2体、宇宙から1体か……。」  「タスクのプライオリティ変更。」  「第17タスクを3から7に変更。」  コンソールを操作するマヤ。  「解析実行。」  「足柄山の光学観測所より入電。旧関東方面に移動物体。」  モニターが捉えたのはサキエル、イスラフェル、バルディエル(素体?)、ゼルエルの進撃している姿。  「全部で4体です。」  「地上に4体か……多すぎる。」  「合計7体が移動中、軸線上に交わる点は第三新東京市。」 【ネルフ本部・中央作戦発令所・司令席】   「逢引にしては人数が多すぎる。力ずくで襲うつもりか。」
 *「冗談言ってる場合か?」
 「時間が足りなくて、まとめて来たようだな。」
 *「また、楽屋オチ!」
 「晩餐の準備はできている。そう易々と美女には合わせんよ。」 【ネルフ本部・中央作戦発令所】  「しかし、あれらの物体はいったいどこから現われたのかしら?」 【異次元空間】  「グハハハハ、あの[使徒]達がどこから来たのかわかるまい。愚かな地球人にわかる筈がないのだ。」  異次元空間から第三新東京市を見ている生命体は笑った。  「私の名はブラックゴッド。愚かな地球人どもよ。我配下の[使徒]を使って皆殺しにしてやる。」 【初号機・操縦席】  「いきなり怪物の前に放り出されても……。全部消えちゃえばいいのに。」  『太平洋上の2体、御蔵島沖で消えました!』  『旧関東方面の4体も消失、衛星軌道上の1体も確認できません!』  『ほぼ同時に、全ての移動軌跡が消えました!』
 *「ハイ消えた!:愛川欽也」
【ネルフ本部・待機用小室】  待機を命じられたシンジ達。待機用小室で暇を持て余している。  「これからずっと待機なのかしら?」  「待ち時間が長いなあ。」  「いっそ逃げてしまいたい、なんて……。」  「ならば、僕がシンジ君のお供をするよ。」  「私も行く。」  シンジのちょっとしたジョークにカヲルも便乗する。が、レイも便乗した時、アスカが反応した。  「アンタね、最近シンジに興味があるようだけれど、近づかないでちょうだい。」  「どうしてそんな事言うの?」  「ちょっと、喧嘩はやめようよ、こんな時に。」
 *「♪喧嘩をやめて〜、二人を止めて〜。」
 「……シンジ、話があるの。ちょっと来てくれる?」  「何?」  「来てくれるよね?」  “どうしよう……。”  だが、シンジは少々考えて答えを出した。  「待機中なんだよ。」  「もういい!外の空気吸ってくる!」  「ワシも着替えてくるかなぁ。」  「あ、俺も。」  「警報解除かもしれない、様子を見てくるよ。」  「みんな行っちゃったね。」  「アスカを刺激しないでよ。」  「碇くんの態度に反応したのよ。」  「僕の態度?」 【井の頭公園・水辺のベンチ】  散歩に出たシンジの前に、お腹を出したTシャツ姿で現われたレイ。  「碇くん、見て!」  「綾波さん、おへそ見えてるよ。」  「思い切ってお腹出してみたの。」  “綾波さんって時々大胆になるな……。”  「最後の記念だから、感謝してほしい。」  「感謝する。でも、最後じゃないよ。未来の希望はある。」  「戦いは嫌い。多くの人が傷つくもの。」  「人類を救う為なんだ。多少の犠牲は仕方ないよ。僕は間違っている?」  「人は愛し合って子供を慈しむ。碇くんもそうやって生まれてきたのよ。」  「あの父さんから命を授かったかと思うと、おぞましくもあるけどね。」  「碇くんは男の子だもんね。」  「綾波さんは女の子だからな。」  「そうね……。」  「綾波さんは僕の事、どう思うの?」  「いいと思う……。」
 *「いいともー!」