鋼鉄の処女

第2章 シンジと仲間たちの冒険

【第壱中学校・廊下】
 ぼんやりと廊下をうろつくシンジ。
 「さて、次の授業は何だったかな?」
 *「呆れてものも言えんわい。」  ※「って言ってるじゃないですか。」
【第壱中学校・テニスコート裏】  テニスコート裏に行くと、そこにはケンスケがいた。  「今日の体育はランニングだ。早く着替えてこいよ。」 【第壱中学校・校庭】  シンジが着替えて校庭に出ると、体操服に着替えた生徒達が準備運動を済ませていた。その中で、レイは新しい体操服がしっくりこないようだった。  「胸の辺りがキツイかな。」  「幼い顔してサイズだけは生意気なんだから。見て、このアスカ様には宝石のようなおみ足があるの。カラダはバランスが重要なのよ。」  「私には天から授かった才能があるもの。」  「アクションは私が一番よ!やるか、シュッ、シュッ、シュッ。」  アスカがシャドー・ボクシングをする。  「気を付けないと、男子が見ているわよ。」  ヒカリが注意するが。  「そうね、シンジは色ボケだし、鈴原も野獣むき出しって感じだしィ。」  「アスカの体操服なんか、何にも感じないよ。見慣れちゃってるからね。」  「そやそや、言うたれシンジ。誰がアスカなんぞ見るか、ボケ!」  「何ですって!」  激怒したアスカは反転、後ろ回し蹴りをシンジとトウジに見舞った。すっ飛ぶ男二人。  「碇君も鈴原も欲望の虜だわ!」  倒れたシンジの傍に、ここぞとばかりにカヲルが薔薇を背負って駆けつけた。
 *「♪薔薇が咲いた、薔薇が咲いた、真っ赤な薔薇が〜。」  ※「♪薔薇は薔薇は、気高く咲いて〜、薔薇は薔薇は、美しく散る〜。」
 「愛するシンジ君に鉄槌が下るとは。」  「カヲル君。」  「こんな形で罪を償う君を、僕は見捨てはしない。痛かったかい?」
 *「痛いですか〜?」
 「思ったより傷は浅いよ。」
 *「しっかりしろ、傷は浅いぞ!」
 「黒曜石のように美しい瞳。愛しているよ、シンジ君。」  「おいおい、男同士で愛を語っとんでぇ。」  「出たな、耽美男。」  「ヘンタイ。」  「不潔よ、不潔!」  すかさず、トウジ、アスカ、レイ、ヒカリがツッコミを入れる。  騒がしくなっていく中、ケンスケがやって来た。  「ハイ皆さん!今日のランニングはなんと!操縦者の適正訓練を兼ねているのです!」  妙に燃えているケンスケ。  「とうとう俺の時代が来た!相田ケンスケこそエヴァのパイロットにふさわしい!絶対!絶対!ぜーったい!」 【シンジの自宅・シンジの部屋】  アスカは黄色のワンピースで着飾った自分をシンジに見せていた。  「こんな服、どうかな〜。」  「洞窟探検なんだよ。」  「お出掛けなんだから、派手な格好したいじゃない。」  「泥で汚れるし、雨水で濡れるし、柵に引っ掛けて破れるよ。」  「シンジは女の子の気持ち、全然わかってな〜い。」  「だいたい、誰に見せるの?ケンスケ?トウジ?カヲル君?」  「もう、いじけちゃって子供なんだから。」  「帰んなくていいの?お家で心配するよ。」  「べーっ、だ!」 【第26番隧道・坑内】  幅5メートルほどの狭いトンネルで、弱い電球が所々に点いている。  ケンスケを先頭に歩く一同。  シンジ達は懐中電灯で足元を照らしている。  奥まで続く洞窟を見て、カヲルが感嘆の声を上げる。  「掘削した岩盤を支える構造物。まさに人類の英知だね。」  「巨大なジオフロントを作る為にこのトンネルを掘ったんだね。」  「こういうトンネルが大小合わせて、4096本掘ってあるんだ。」  「人間の力って凄い。」  「もっと明るくならないの?可愛いお洋服、見せたいのに。」
 *「入り口で全員に見せてるだろうが。」
【第26番隧道・坑内・800m地点】  歩いているうちにシンジは先頭から遅れ、カヲルと二人になっていた。  「人のうなり声みたい……。」  聞こえる音をシンジはそう感じた。  「探検とは危険を冒して実際の場所を調べる事也。」  「この先には何があるんだろう。」  「シンジ君の横顔が愛らしい。」  「ありがとう。カヲル君も綺麗だよ。」  「君の笑顔、草原の中のひまわりのようだ。」  「……。」
 *「そこは薄暗い筈だが?」
 「思わず抱きしめたくなる。」  「ダメだって、変な気持ちになるから……。」
 *「お前、意味わかって言ってるのか?」
【縦坑・エレベーター入り口】  「このエレベーターは定員2名。」  「二人ずつ乗って、ジオフロントまで降りよう。  「俺とシンジは別々に乗ろう。」  「僕が一緒に乗るのは……。」 【縦坑・エレベーター内】  シンジはカヲルと一緒に乗った。  カヲルはエレベーターに興味を示した。  「前時代的な昇降装置だね。」  「工事用のエレベーターだからね。」  「地球の中に進んでいる。」  「雄大な気持ちになるね。」  「目を瞑って。」  「え?」  「目を閉じるんだ、シンジ君。」  「うん……瞑ったよ。」  目を瞑るシンジの唇に自分の唇を寄せて、軽く口づけをするカヲル。  「僕からの友情の証……いいもんだろう?」
 *「カヲルはロシア系なのだろうか?」
 “不覚にも、感じてしまった……。”
 *「お前なあ……。」
アスカ「ちょっと待った!何勝手にキスしてんのよ!こんなの認めないわ!」 【第26番隧道・坑内・800m地点】  アスカがシンジにこっそりと耳打ちする。  「シンジ。」  「ん?」  「手をつなごう。」  「どうしたの?」  「ね?手ぇ、つなごう。」  「あっ。」  言うが早いか、アスカはシンジの手を握った。  「流石は男の子、手が冷たい。」  「地下は冷えるから、アスカの手は湿っぽいね。」  「デヘヘヘ、誰も気が付いてない。」  「アスカ……。」  「なんか、ドキドキしてきちゃった。」 【縦坑・エレベーター入り口】  「このエレベーターは(以下同文)」  「僕が一緒に乗るのは……。」 【縦坑・エレベーター内】  シンジはアスカと一緒に乗った。  「思ったより深いね。」  「耳が痛い。気圧が変わっている。」  「それだけ深く潜っている。」  「怖い。」  「我慢。」  「怖いよ。」  「我慢、我慢。」  「怖いのに!」  「訓練だと思えば?」  「女の子が怖いって言ったら、何かする事あるでしょ。」
 *「怖いと言ってたのは嘘か!」
 「する事?女の子とする事……。」  「変な事想像している。」
 *「それは自分が望んでる事だろ?」
 「こうかな?」  おもむろにアスカの肩を抱くシンジ。  「きゃっ。」  突然の事に一瞬びっくりするアスカ。  「こういう事?」  「抱かれたら安心した。」  「アスカはどこまで本気なのか、この僕にもわからない。」  「私はいつでも本気よ……。」  アスカは小さく呟いた。 トウジ「なあ、ワシにも出番くれや。」 【縦坑・エレベーター入り口】  「この(以下省略)」  「僕が一緒に乗るのは……。」 【縦坑・エレベーター内】  シンジはトウジと一緒に乗った。  「シンジ、お前、綾波と惣流、どっち取んねん。」  「取るって、取らないよ。いつも通りで楽しいし。」  「惣流やなあ、シンジはよお!」  「アスカとの付き合いは長いし、いい友達だけれど……何だよ、トウジは綾波さんに興味があるの?」  「綾波て、なんか大人やろ。」  「そうかなぁ?」  「体型が平均より上やで。」  「トウジって、委員長の事が好きなんじゃないの?」  トウジの脳裏に浮き上がるヒカリの微笑み。  “トウジ、好きよ……。”  「すまん!許してくれぇ、ヒカリ!」  「やっぱりねえ……。」  「なあシンジ、綾波の事云々は絶対秘密やぞ。」  「僕らだけの秘密だね。」  「シンジは男や!」
 *「お前は高田延彦か!」
 「トウジって、オーバーだな。」 【フォッサマグナの分岐点】  道は二手になった。  「……右に行ってみよう。」  だが、扉を開けた途端、警報が鳴り響いた……。  洞窟を探検中、シンジはネルフ本部に入ってしまい、諜報部によって拘束された。  ネルフ勤務、人造人間エヴァンゲリオン、サードチルドレン・碇シンジは機密保持の為、10日間拘留後、第弐新大阪中学校に強制転校させられた。 【第弐新大阪中学校・教室】  黒板の前で緊張気味に立つシンジ。  担任の金パチ先生がシンジを紹介する。
 *「パチはパチもんのパチか?」
 「第三新東京市から越してきた転校生を紹介します。碇シンジ君。」  「碇シンジです……。よろしくお願いします。」