チャオ マリーアッ!

 イタリア、ローマ近郊のある教会。
彼女は歴史ある建造物の中を静かな歩調で歩いていた。
手には、今まで練習のお手伝いをしていた聖歌隊の楽譜があった。
知名度としては、そこいらの音楽家など比べ物にならない聖歌隊だけにそのレベルは彼女の想像を越えていた。
同時に、自分の未熟さも思い知らされた。
彼らはその思い総てを神にこめて歌っている。
よどみない、まっすぐな歌声は彼女の心に突き刺さる。
(あんな風にまっすぐに神への愛を唱えられれば・・・・)
全てを幼い頃からの夢の為に捧げてきたつもりだった。
しかし、彼女の心の中には、どうしても捨てきれないものがあった。
高校時代、ずっとあこがれていた夢を、停めてまで一緒にいたいと思った人。
佐藤聖・・・・・
 未練が無くなったかというと、そうではない。
ただ、今は小さい頃からの夢をかなえている時なのだ。
過去に気をとられている場合ではない。
だというのに・・・・・・・
(ああ、小鳥たちがあんなに・・・・)
建物から出た彼女はその前にある噴水に目をやった。
その時、彼女はそこにありえないものを見た。
(聖!)
そこには彼女の頭から離れて消えない姿があった。
「!」
思わず駆け寄ろうとした時、その姿は一瞬にして消えた。
(私ったら、どうかしている・・・・・)
そこには確かにリリアンの制服を着た少女がいた。
しかし、改めてよく見るとその少女は聖とはまったく似てない。
聖と比べて背は低く、長い髪はふわふわの巻き毛で、西洋人形的な顔立ちも、そんなに彫りが深いとは言えない。
なんで自分はあの少女に聖の面影を見てしまったのか。
そんなに自分の心は聖を求めているというのか?
見ず知らずの少女に重ねてしまう位に・・・・
彼女は自分が少女の方に駆け寄ろうしていた事に気づき、苦笑して戻ろうとした。
その時

「やめて下さい!」
突然少女の方から悲鳴に似た声が聞こえる。
見るとチンピラ風の男が少女に付きまとっている。
「シニョリーナ!ミと一緒にそこのカフェテリアでカンターレ!」
「結構です!」
男から離れようとする少女を、しかし、男は執拗に食い下がる。

「妹に何をするーっ!」
突然!男の後ろから声と足が飛んできた。
ガスッ!
男は後ろから飛び蹴りを食らわされ、地面に叩きのめされた。
そこには怒りに燃えるシスターがいた。
「な、なんだナポリタン、神に仕えるシスターが暴力を振るっていいのかカルボナーラ!」
地面に倒れてわめく男を、彼女はかかとで思いっきり踏みつけた。
「グギャ、カルバッチョ!」
「やかましい!このくされ外道!
カトリックをなめるなよ!
キリスト教の歴史は闘いの歴史だ!
異端審問と異教弾圧で、屍山血河を築いてきた最強の世界宗教だ!
(と由美江先輩が言っていた。)
くらえ先輩直伝の島原抜刀流「秋水」!!」
シスター服の下から出た日本刀が男を襲う。

「ぐぎゃーっ!チェリッソ ペペロンチーノ!」  
彼女の一撃を受け、チンピラ風の男は彼方へと逝ってしまった。

「では、ごきげんよう・・・・」
さぞや男がこわかったのだろう。
いまだ怯える少女に優雅に挨拶した彼女が、去ろうとしたした時
少女が声をかけた。
「・・・・あの、あなたは?」
無言のまま視線を合わせる二人、しばらくして彼女が少女に声をかけようとした時、彼女の向こうにいたシスターから声がかかった。
「栞!早く来な、アンデルセンがお待ちだよ、なんでもヘルシングの・・・・・・」
「あ、はい、高木シスター、今参ります!」
声をかけられた彼女はそのまま先輩シスターの元に走る。
彼女は先程まで自分の心を占めていた聖への未練が薄れているのを感じていた。
思いは消えることはなくても、それは以前のような熟々たる思いではなく神への大いなる愛の一部分のように感じられるようになっていた。
なんでそんな気分になったのかは分からないが、なぜかあの少女を見た後、そう思う自分がいた。
大丈夫、聖は私がいなくてもきっと元気でいる!
そんな気になった。
もはや、彼女の心の中に過去への未練はなかった。
今は小さい頃からの夢をかなえるだけだ。
つまり
「悪魔共と異教徒共は皆殺し!」
の夢を



あとがき

仏も見捨てる仏血義理野郎どもの話からやっとやっとの八十八夜
試行錯誤の錯乱後
思索の末の4作目!
 こんにちわ、ユッケです。
えー、マリアさまがみているのSSを送ります。
というよりも「ヘルシング」のSSですか
新作の舞台がイタリアと聞いて、それならとと書いたSS
折角本来のリリアンメンバー、しかも志摩子と栞というこのままシリアスに持っていけたらどんなにすばらしいかというネタにも関わらず、結局、錯乱ものの内容にしてしまいました。
まあ、とにかくこれで本来のマリみてメンバーの話が書けました。
もはや思い残す事はありません。
では、私はこれから小便をすまし、神様にお祈りをすませ、部屋のすみでガタガタふるえていますので
遠慮なく罵倒・雑言・中傷を全弾ぶち込んで下さい。



黄薔薇放送局 番外編

令  「し、栞さんってこういう方だったんだね……(汗)」
由乃 「聖さまの前では猫をかぶ……(ふがふが)」
令  「由乃、だから人前であまり物騒な発言ばかりしないでってば(滝汗)」
乃梨子「でも、この話の世界の場合、私たちも何か一癖ありそうな感じがしますよね」
江利子「そんなこともあろうかと!」
令  「うわぁ!(驚)」
乃梨子「(目を丸くする)」
江利子「何よ、その態度は。 令は特にひどいわねぇ(ぷんすか)」
令  「お、お姉さま、突然大声を出されて現れたら誰でも驚きますよ……」
江利子「だって、一度はあのセリフは言ってみたいものじゃない♪」
乃梨子「……で、なにが『そんなこともあろうかと』なのですか?」
江利子「そうそう、乃梨子ちゃんがこの話の世界について話してたじゃない。
	だから、用意してみたわ。こんな感じじゃないかしら♪」
三人 「( ゚д゚)<……」
令  「って、なんですかこれは!」
由乃 「そうよ、令ちゃん! もっと言ってやりなさいよ!
	少佐はともかく私たちにあんな雑魚キャラを割り当てるなんて酷いって!!」
乃梨子「(そっちかい……)」
江利子「え〜〜、なかなかグッドチョイスだと思うのにぃ〜〜」
○○ 「へぇ、そうなの……」
○  「そうなんだぁ……」
江利子「(ビクッ!)ごきげんよう、紅薔薇さま、白薔薇さま……」
蓉子 「江利子ってそんな風に私たちのこととらえていたんだ……」
聖  「まさか、こんな風に思われていたとはねぇ……」
江利子「あ、まだ黄薔薇放送局は終わっていないのよ! 悪いけど後からに……」
蓉子 「ここに置き手紙があるわよ」
聖  「『放送局の方は私たちにお任せください』だって。 できる妹達をお持ちだねぇ〜」
蓉子 「さて、ゆっくりと付き合ってもらおうかしら」
聖  「今度は逃げられないよ」
江利子「うぅ……(汗)」

放送局では無敵だったはずの江利子さまの運命やいかに!?

……
……

令  「う〜ん、お姉さま放っておいて良かったのかなぁ……」
由乃 「いいのよ! たまには痛い目みると良いんだわ!」
令  「だから、そういうことはいっちゃいけないってば。 でもなぁ……」
由乃 「今回もすてきな作品を投稿してくださったユッケさんに
	感想を送ってあげてくださいね! それではまた次の機会にお会いしましょう♪」
乃梨子「(次回は休もうかな)」