文明の章

第四話

◆刻み込まれた十字架

4月16日(土曜日)、第3新東京市、ネルフ本部、
ユイがシンジ、レイ、アスカの3人を連れて本部の中でユイに関係するところを案内していた。
「先ずここが、執務室ね、」
ユイの副司令執務室、冬月の執務室の隣に当る。
普通の執務室よりは広いが、当然総司令執務室のような物ではない。
上等の執務机とソファーセットが置かれている。
その他の物は、未だ殆ど入っていないようだ。
「何時でも尋ねに来てね、」
3人は頷いた。


そして、次は研究室にやって来た。
碇特別研究室と書かれたプレートが入っている。
「向こうは副司令としての部屋で、こちらが研究者としての部屋ね、」
研究室は未だ改装中で、機器は未だ完全には入っていないようだ。
しかし、その広さたるや、赤木研究室の数倍はあるのではないだろうか?
「ふ〜ん」
「広いわねぇ・・」
「こっちも何時でも来て構わないわ」


そして、プライベートルームにやって来た。
「ここがプライベートルーム、シンジやレイと一緒に暮らせれば良いんだけど、暫くは忙しいからとてもいっしょに暮らすのは難しいの・・・」
ユイは本当に残念そうな顔をしている。
シンジとレイも少し残念げな表情を浮かべる。
「いつでも来てね、泊まっていっても良いし、」
二人は頷きで返した。
「さっ、上がっていって、お茶でも出すわ」
3人は部屋に上がって、ソファーに座った。
ユイは紅茶の準備をしている。
・・・・
・・・・
紅茶をそれぞれのカップに注ぎ、良い香りが立ち込める。
色も綺麗に透き通った琥珀色である。
「良い香りですね、色も良いし」
「会長から貰ったお茶なの、さっどうぞ、」
「「頂きます」」
「・・頂きます。」
3人は紅茶を口の中に流し込んだ。
「美味しい」
「ホント」
レイも頷いた。
「そう、良かったわ」
ユイは自分も飲む事にした。
「あっ、忘れていたわ、」
ユイはソファーを立ち、お菓子を持ってきた。
「はい、」
その後、色々と話をして過ごした。


結構な時間になったので3人は帰る事にした。
その帰る途中、中央回廊で碇と出会った。
碇が前から歩いてくる。
「・・父さん、」
碇はシンジの前で立ち止まった。
「・・シンジか、どうだ・・ユイとは上手くやれているか?」
「あ、うん・・」
「そうか・・それは良かったな、」
「レイは?」
レイは頷きで返した。
ふっと表情を緩め、その後3人の横を通り去って行った。
シンジは、去っていく碇の後姿をじっと見つめていた。
どこか今までと全く違う雰囲気だった気がする。
「・・・父さんか、」
「どしたの?」
「あ、うん・・別に・・帰ろっか、綾波は御飯どうする?」
「・・・シンジ君の作った御飯が食べたい。」
「うん、じゃあそうしようか、」


夜、ミサトのマンション、
食卓をシンジ、レイ、アスカ、ミサトの4人で囲んで話をしながら食事を取っている。
話題はやはりユイの事で、色々と盛り上がった。
・・・・
・・・・
・・・・
食事が終わりレイも帰り、色々と後片付けを済ませて、シンジは今風呂に入っていた。
湯船に浸かりながら、色々と考え事をしている。
「・・・母さんに・・・父さん・・・綾波か・・・」
嘗ては、4人は家族であった。
こちらが積極的に聞こうとしないと言うこともあるが、あまり、ユイはその事について触れようとはしてない。
今が崩れるからであろうか?
よく分からない・・・・
・・・・・
・・・・・
そう言えば、碇の雰囲気の変化、あれはやはりユイが戻って来たからなのであろうか?
逆に言えば、ユイの事故が無ければ、あの写真のような仲の良い家族の父親として、優しくしてくれていたのであろうか?
・・・・・
・・・・・
なんとなくだが、そんな気もする。
「シンジ〜〜!!何時まではいってんの!!」
アスカの声が聞こえて来た。
「あっご、ごめん!すぐにでるよ!」
シンジは考えを中断して急いで風呂からあがった。


ユイはネルフ本部の職員食堂で遅めの夕食を取っていた。
シーフードピザを食べている。
(うん、なかなか美味しいわね)
「あ、ユイ博士、」
ユイは声の方を振り向くと、マヤがユイと同じシーフードピザをトレイに載せて立っていた。
「あら、マヤちゃんだったわね」
「はい、御一緒して宜しいですか?」
「ええ、」
対面の席を勧め、マヤはその席に座った。
「ユイ博士もこのピザですか」
「ええ、」
「・・・・・そう言えば、マヤちゃん、ちょっと聞きたい事があるんだけど、良いかしら?」
「はい、何ですか?」
ユイの視線はマヤの着ている白衣に注がれている。
「今、本部で、白衣を着ているのって、私とリツコちゃんとマヤちゃんだけよね」
そして、自分の白衣に視線を向ける。
「へへへ」
マヤは恥ずかしげな笑みを浮かべ、ユイは軽く首を傾げた。
「今、ネルフ本部で白衣を着ているのは、技術部を指揮する側の人間なんです」
人差し指を軽く頬に当て、少し考えて分かったようだ。
「ああ、そう言う事なのね」
「はい」
やはり、照れがあるようだ。
「ん〜、私は勝手に着ちゃってるけど良いのかしら?」
技術部の特別顧問も兼任しているので当然OKなのだが、冗談げに尋ねる。
「勿論に決まってます」
分かってるのに聞かないでくださいよ〜と言った感じが口調に表れている。
「そう、ところで、」
その後食事が終わるまでの間、二人は話をしていた。


シンジは、自分の部屋のベッドに横になっていろいろと考えていた。
「・・・でも、これからまだまだ、時間はあるんだ・・・」
使徒戦の様に何かあれば、即、命を落とす事になる・・・今はもうその様な事は終わった。
これからそれを確かめ、そしてそれを考え、更にそれを変えて行く時間も機会も十分にある。
何も今直ぐに答えを出す必要は無い。
シンジは今日のところはもう寝る事にした。


4月17日(日曜日)、人類補完委員会、
「・・ん?」
2名ほど委員が別人になっている。
「二人は事情があって委員会に出席する事はできない。その為に代理人に出てもらった。」
「「よろしく頼む」」
「分かりました。」
「さて、早速だが、碇博士のサルベージが実行されたわけだが・・・地球連邦統監府の直轄に置かれた事をあわせて、補完計画への影響は?」
「・・・統監も、ユイも補完計画の遂行には強くは反発しませんでした。」
「それは、どう言う事かね?」
「補完計画も、人類の取り得る選択の一つであると言う事は理解できるが、それが取るべき選択肢であるとは考えないと言う事らしいです」
「・・うむ・・」
「その為、協力は一切拒否されました。」
「現状では、さしたる影響はありませんが、計画の段階が進めば、どうなるかは分かりません。」
「・・・碇博士の協力が得られれば補完計画はより一層強固な物と成る。必ずや、説得するのだ。」
「・・努力はいたします。」
「努力では困る。結果を出してくれ」
「・・・良い返事は返せません。」
「本来この計画自身、ユイから見れば問題でしかないのでしょうから、完全に相反する以上説得は不可能です。」
「・・・やむをえんか・・・だが、計画の遂行には全力を尽くせ」
「畏まりました。」


第3新東京市、ネルフ本部、総司令執務室、
碇はいつものポーズで委員会の事について考えていた。
「アメリカとフランスの代表が代理人か」
「ああ、」
「・・・気に成るな、」
「・・・何か企んでいるな、」
「我々は既に切られたか・・・まあ、ユイ君のサルベージで我々はもはや、老人達に従う必要も無いし、又彼らもそれを分かっているのだろうな」
「うむ」
「・・・これからどうするかな?」
「調査を行う、先ずは情報が無ければ何も対応が取れないからな」
「そうだな」


4月18日(月曜日)早朝、ネルフ本部、技術棟、カヲルのプライベートルーム、
カヲルは、今日も実験の為に朝早くに起きた。
「う〜ん、早起きをすると快適だよ・・・でも、最近シンジ君と会えないなぁ・・・」
軽く愚痴りながら着替えをする。
「タブリスもどこ行っちゃったんだろ?」
・・・・・
・・・・・
キッチンに立ち、フライパンに火を入れて、卵を割って落とす。
「う〜ん、料理は良いねぇ、リリンの生み出した文化の極みの一つだよ」
最近覚えた曲を口ずさみながら、朝食を作っていく。
・・・・・
・・・・・
そして、自分で食べる。
「う〜ん、今日の出来は最高だね」
どうやら、良いできだった様である。


食事を終えて実験の為にその施設に向かう途中、タブリスをつれたリツコと出会った。
「タブリス、」
「あら、この子、タブリスって言うの?」
「そうだよ、」
「そう、タブリスね」
「みゃぁ〜」
2人と1匹は並んで歩き出した。
タブリスは、リツコの足元にぴったりついている。
「タブリスは、貴女の事が気にいったようだね。」
「そう、それは良かったわ、私にくれるかしら?」
「タブリスはペットではなくパートナーだよ。彼が貴女を新しいパートナーとして選ぶのなら僕にはそれを止める権利なんかないよ」
「そう、」
「みゃぁ〜」
リツコは軽く喜びを表情に浮かべた。


ネルフ本部作戦部長執務室、
色々と仕事が片付いて、時間が出来たミサトはゴミに包まれながら考え事をしていた。
どれだけ汚い環境下でも気にならないのだろうか・・・と言うよりも、30センチ以上ごみが積もっている。
更に、所々に未読の報告書の山が築かれている・・・そもそも、どうやってこの部屋に入ったのだろうか?


セカンドインパクト、地球が受けた災害としては、地球の有史以来、最大の大災害。
爆発、地震、津波などで直接地球人類の2割近くの命を消し、その後の飢餓や戦争、伝染病などで間接的に3割の命を消した。
地球連邦の首星であり、唯一無二の地球連邦経済全体の中心である地球を襲った大災害。
それによって引き起こされた政治的、経済的大混乱は、地球連邦全域に広がった。
経済の流通がストップし、餓死する者、僅かな食料を求めて殺し合いをする者、お互いを捕食する者達等、様々な者達が続出し、政治的崩壊によって発生した各地の種族紛争や、民族紛争、政治的国家間の戦争、地球連邦に対して反乱を起こした国、数字を把握するだけばからしいのテロ行為・・・それらの犠牲になった者は、地球連邦の全人類の4%、全高等生命体の13%にも達する。
そして、一部の急激に回復した国や地域が周囲の国や地域を引っ張り、全体的に回復し始めたように見えるまでの期間をセカンドインパクト期という。
主に、A.S.10年を切れ目とする事が多いが、A.S.7年やA.S.12年とする場合もある。セカンドインパクト期後半では、先駆けて復興を遂げた国や地域は、表面的にはセカンドインパクト以前に近い繁栄を見せるようにすら成っていた。
しかし、今尚、セカンドインパクトの爪痕は大きく、地球連邦の20%近くはその被害を受け続けている。
地球でも、セカンドインパクトの為に滅茶苦茶になってしまった民族分布図が、被害が深刻である地域の復興を妨げ、新たな民族紛争の火種になっている。
そして、復興を遂げ、繁栄を取り戻したと言う国でも、日本以外の国ではそれは一部の地域にしか過ぎない。
ドイツやアメリカでも貧民街、そして暗黒都市まで存在している。
セカンドインパクトの原因は隕石の南極への激突となっている。しかし、余りにもばからしい話である。ある程度の学がある者ならばそれが嘘であることなど直ぐに分かってしまうであろう。その様な隕石は、どこにも存在せず、大気圏バリアーは、内側から破壊されたのだから。
一部の者が知るセカンドインパクトの真相とは、第壱使徒アダムの調査中に発生した原因不明の大爆発と成っている。そして、その調査を行っていたのが、葛城調査隊、そして、唯一の生き残りが葛城調査隊隊長、葛城秀樹博士の娘である葛城ミサト、
しかし、漠然と、それもセカンドインパクトの真相は違う気がしているミサトであった。
無意識の奥底に封印された忌まわしき記憶。
その片鱗、それが、完全には一致しているわけではない事もあろうが、何よりも、無意識からの干渉とでも言うべきか・・・どうしても違う気がしてやまない。
使徒との戦い・・その存在事態を見直してからそれはいっそう強くなった。
ターミナルドグマの第壱使徒アダム、そして、そのアダムから作り出されたエヴァ・・・放置されたタブリス、謎の第弐使徒・・・ミサトに知らされている情報は余りに少ない、いや、そもそも、それが真実ではないのかもしれない。
だからこそ、自分の知っている筈の真実との差を無意識の内に感じ取ってしまうのだろうか・・・


A.S.0年5月、南極の調査基地付属空港に大型輸送機が着陸した。
物資と機材、そして、隊長の娘である葛城ミサトを乗せて、
空港には、葛城博士が迎えに来ていた。
大型輸送機は格納庫に入り、停止した。
防寒具を着込み、肌を刺す大気の冷たさに軽く震えながら輸送機から出て来たミサトは、父の姿を見つけると途端に喜んで階段を駆け下りた。
博士はミサトに駆け寄りミサトを抱き締めた。


8月、同所、1機の特別機が着陸した。
特別機には、既に名誉を欲しいままにしていたトップクラスの科学者、碇ユイや、秘密組織ゼーレの最高幹部の一人であり、ゼーレ内部の最大勢力の代表でもあるキールローレンツの姿も見受けられた。
しかし、そのときのミサトには、なにか偉い人たちが来たと言うことしか分からなかった。


ある時、隊長室を訪れようとしたミサトは、葛城博士と女性と男性が言い争っている声を聞いた。
因みに、男性は、六分儀ゲンドウ、女性は碇ユイ、恋人らしいのだが・・・
ミサトの六分儀への認識は、お父さんの側にいる怖い顔の人ぐらいでしかなかった。
勿論ユイの認識は偉い人の一人であろう。
邪魔をするも気の引けたミサトは、隊長室を離れた。


数日後、特別機は、来たときと同じメンバーで帰っていった。


9月12日、付属空港を六分儀を乗せた小型機が飛び立った。
複数のトランクに一杯、資料を詰め、服などは殆ど残して、
この後、六分儀はニュージーランドで、定期便に乗り、日本に向かう事になるのだが、
そして、一方で葛城博士がミサトを呼びに来る。
この後の記憶は断片的になる。
その殆どは意味をなさない物である。
ただ、光の巨人、第壱使徒アダムの姿だけは脳裏に焼き付いていた。


博士の血がミサトの顔に落ちミサトの気が付いたようだ。
「お父さん・・・?」
博士はレバーを引き救命カプセルの蓋を閉じた。
その直後、訪れた凄まじい衝撃にミサトは再び気を失った。
・・・
・・・
どれだけ経ったのか、カプセルの中で気が付いたミサトはカプセルの蓋を開けた。
南の方に天空にまで聳える巨大な光の柱が2本、目に入った。 


A.S.16年4月18日(月曜日)、ネルフ本部作戦部長執務室、
『ミサトちゃん、ちょっと良いかしら』
ユイの声で、ミサトは現実に引き戻された。
「あ、はい」
圧縮空気が抜け、扉が開くと共に発生したゴミ雪崩にユイは飲み込まれた。
「きゃあああ!!!」
流石のユイもこれは予想できなかったようだ。
慌ててミサトはゴミの中で遭難しかけたとまでは行かないが、ゴミに埋もれているユイを助け出した。
「・・・済みません。」
「・・・・これは・・・生命体として・・・拙いわね・・・・」
ユイの顔には盛大に縦線が入っている。
その後、暇な職員(主に作戦部の職員)が駆り出され、20人掛かりで片づけた。


2時間後、見違えった執務室、
殆どが本当にゴミだったため綺麗さっぱりと捨てられた。
「・・・ここ・・・どこ?」
余りの見違えりようにミサトは落ち着かないようできょろきょろしている。
「さてと・・・ミサトちゃんと話をしに来たんだけど疲れちゃった・・・・掃除当番決めといた方が良いわね」
まるで・・・、ミサトは顔を顰めたが、反論できるわけも無く、また、反論する理由も無いと言うよりもありがたい事なので、あっさりプライドを捨てた。
この後で、週2回、日向がミサトの執務室を掃除する役目に立候補する。
ユイは綺麗になったソファーに座り、それに続いてミサトも反対側についた。
「さてと、ミサトちゃん、私のこと覚えてるかな?」
「え?私ユイ博士に会ったことあるんですか?」
「ええ・・・やっぱり、覚えてなかったのね」
余り落胆した様子は無く、むしろ逆にどことなくほっとしたような感じにも見える。
それが、ミサトをどこか不安にさせた。
「あ、あの、いったいどこで?」
「・・・・・・南極よ・・・・・」
ユイの言葉にミサトの身体がびくっと震えた。
・・その意味は一つしかない。
「8月に基地を訪問した時よ・・・やっぱり覚えてなかったのね・・・」
ミサトは8月に来た訪問メンバーを思い浮かべた。
ユイの姿は思い出せない。
「・・・済みません」
「別に気にしないわ、それよりも、シンちゃんの事、ありがとう」
「いえ、どちらかと言うと、私が御世話に成っていましたから」
「そうでしょうね、」
あっさり肯定されてしまい、ミサトはこけそうに成ったが何とか堪えた。
「でもね、シンちゃんにとって必要だったのは、家事をこなして養ってくれる存在じゃなくて、優しく自分を包んでくれる家族だったのよ。」
「・・・そうですか、」
嬉しかったが、作戦部長として酷い命令を下しもした自分は、果たして胸を張ってそう言えるのか、更に言えば、十分に包み込む事が出来たのか・・・ミサトには自信は無かった。
「ええ、その意味では、ミサトちゃんは十分合格点に達していると言えるわ」
「・・・・そうでしょうか?」
「ええ、シンちゃんが貴方の元を離れ様としないのがその証拠じゃないかしら?」
その言葉の意味を考える。
「そう・・かもしれませんね、」
「その事に関しては、自信を持って良いわ」
ミサトは軽く表情を緩めた。
「さて・・・本当は色々と話したかったんだけど・・・掃除に時間を取られちゃったから、又今度ね、」
その言葉に関してはミサトは苦笑するしかなかった。


夜、副司令執務室(冬月)、
ユイと冬月がお茶を飲みながら話をしていた。
「冬月先生、」
「なんだね?」
「ミサトちゃんの執務室なんですけどね、」
「ふむ」
「ゴミがこんなに、」
手でゴミが積まれていた高さを示す。
「それは酷いな・・」
「ええ、いくらなんでも限度があります。」
暫くユイは冬月に色々と愚痴っていた。
それに対して、冬月は軽く苦笑しながらも、そのユイとの会話を楽しんでいるようだ。


4月19日(火曜日)、ネルフ本部中央回廊、
技術棟に用があったユイは、向かう途中でリツコと出くわした。
「あらリツコちゃん」
「ユイさん・・」
どうやらリツコも技術棟に行く途中らしい、
「途中までいっしょに行く?」
「・・はい、」
リツコはやはり複雑な心境のようで、それが表情によく表れている。
二人は並んで技術棟に向かって歩き始めた。
「リツコちゃん」
「・・・はい、」
碇との関係のことを尋ねられるのか・・・リツコは恐怖が混じった声で返した。
「マヤちゃんっていい子ね」
「は?」
思いっきり意外な言葉にリツコは少しぼうっとしてしまった。
「可愛いし、性格も良いし、その上仕事もできる。」
「ま、まあ、そうですが、」
自慢の後輩のことをユイに誉められてちょっと嬉しい。
それを切り出しに、技術棟につくまでとりとめもない世間話を続けた。
「じゃあ、私はここで、」
「あ、はい、」
二人は別れそれぞれの目的地に向かった。

あとがき
今回は、主にユイがらみの話でした。
色々と良い方向に進んでいる一方で、ゼーレの方が怪しい動きを表し始めました。
さて、これがどう関係していくんでしょうね。

今度から文明の章のアンケートを採ろうと思っております。
協力してくれた方には、本編中では殆ど触れられない第3新東京市立第壱中学校のメンバーやマナの話等本編のシーンの裏側などを書いた外伝を差し上げます。
よろしければご協力ください。
尚、外伝第壱話はマナに関する話です。

次回予告
学校は休校である。
しかし、子供たちは3年生になっおり、進学を意識し始める。
その一方でアスカは昨年使徒戦に備える待機の為に修学旅行に行くことができなかった代わりに、ゴールデンウィークに旅行に行くことを企画する。
そして、レイの服を買いに出かけた3人、その時にしたシンジの失言によって引き起こされることとは?
次回 第伍話 新学年