背徳

◆第6話

学校からの帰り、ミクは安齋、佐々木、安藤の3人と共にゲームセンターに立ち寄った。
「ふ〜ん、3人もこんなとこ来るんだ〜」
「意外?」
安齋の問いに軽く首を振る。
「ううん、そう言う意味じゃないの・・ミクも前住んでたとこでは時々来ていたし、」
「結構こう言うのストレス解消に良いんだよな、」
「そうそう」
「うん、遊ぼう♪」
・・・・
・・・・
今、ミクはクレーンゲームと睨めっこしている。
「どうした?」
「ん〜、あのペンギンの縫いぐるみ欲しいんだけど、ちょっと難しいかなぁ〜」
「ん、どれどれ」
そのペンギンの縫いぐるみは、縫いぐるみの中に埋もれている
「そうだなぁ・・・」
佐々木はノートパソコンを取り出して、データを入力して行った。
「う〜む、何とかなるな」
佐々木は100円を2枚投入して、クレーンを動かして、正確に狙った場所で止めた。
「あっ、成るほど、そう言う手があったか」
ミクはその位置で佐々木の狙っている事に気付いた様だ。
クレーンは縫いぐるみの中におりていって、何とペンギンを含む3体纏めて吊り上げた。


ネルフ本部、総司令執務室、
(・・・ゼーレ・・・・やつらは再び事を起こそうというのか・・・)
(そんな事は許さない。今度こそ殲滅してやる。)
(・・・やりたい・・・だが、やつらのことはまるでわからない・・・)
『宜しいでしょうか?』
主席秘書官の蘭子の声が聞こえた。
「・・どうぞ、」
ドアが開き、蘭子が室内に入って来た。
「・・お久しぶりですね。どうされました?」
「ゼーレに関する調査の報告です。」
「・・それで、」
「日本の活動拠点と推測されるものを発見しました。」
蘭子はファイルを差し出し、シンジはそれを受け取った。
ファイルには大きな教会やその関連施設が映っていた。
「・・・なるほど、」
「今尚、カトリックなどへの影響力は大きいということですね」
「で、どうされるのですか?」
「会長は任せるとの事です。」
「・・・わかりました。」


夜、その教会やその周辺施設をシンジの私兵が完全に包囲した。
「完全包囲しました。いつでも攻撃可能です。」
シンジは軽く夜空を仰ぎ、そして溜息をついてから攻撃を指示した。
部隊が突入しそれぞれの施設に雪崩込んで行く。
銃撃戦が行われているらしく、銃弾を打ち合う音が聞こえる。
「・・行くぞ、」
シンジは選り抜きの兵士数名を連れ、中央の教会に向かった。
大きな扉を開く・・中は暗く、ステンドグラス越しに差し込む月光が唯一の光源である。
そして、一歩中に踏み入れた瞬間無数の銃弾がシンジに向かって発射された。
「無駄だな、」
軽くATフィールドを展開し、全ての銃弾を弾く、
恐怖・・で、あろうか、多くの者はただ遮二無二に銃を連射してくる。
シンジ達は落ち着いて、発射の際に出される光を目安に銃を撃つ。
ものの1分足らずで、銃声は消えた。
どうやら全て倒したらしい。
兵士の一人が何かに火をつけて、フロアの中央に向かって投げた。
数秒ほどするとそれはまばゆい光を放ち、教会の内部を照らし出した。
いくつもの死体が見える。
シンジ達は完全に中に入り、センサーで地下への入り口を探す。
「ここか、」
一番前の長いすを横にずらすと、その下から階段が現れた。
地下は所々に照明があり、視界は十分確保できる。
「行くぞ」
シンジ達は階段を下り、地下へともぐった。
通路は石造りで、大した技術でもない。
(・・何かの跡を再利用しているといった形か、)
ふっと、照明がいっせいに消え、視界が奪われた。
ATフィールドを展開してこれから来る攻撃に備える。
前方から無数の銃弾が飛んでくるが、全てATフィールドで弾く。
そして、こちらからの銃弾はATフィールドを素通りし次々に命中する。
ライトをつけると、前方に死体がいくつも転がっていた。
それらを乗り越え、先へと進む。
「・・これは、」
大きな空間に様々な機器が設置されている。
そして、その空間には多くの穴が繋がっていた。
人っ子一人いない・・・
「逃げられたか・・・」
恐らくはあの穴のどれかは外部に繋がっており、そこから逃げ出したのであろう。


東京、ユイのマンション、ミクの部屋、
ミクは明日行われる試験に備えて準備をしていた。
「う〜ん・・ここはこうだけど・・・」
どうも良く分からない問題がある。
「・・・佐々木に聞くかな?」
ミクはメールを作って佐々木に送った。
そして、メールが帰ってくるまで別の問題をすることにした。


翌朝、東京、ユイのマンション、
ミクはユイの作った朝食を一緒に食べていた。
今日はトーストにベーコンエッグ、サラダ、コーンスープである。
『昨夜の教会襲撃事件での死亡者・行方不明者は167人で、内158名の死亡が確認されました。』
「何なのかな・・」
「カトリックに敵対する宗教の過激派の仕業かしら?」
ユイにも情報は伝わっていない。
『公安当局は・・』
(・・・多分、ゼーレとシンジね・・・)
しかし、推測はついているようだ。


東京中学Aコース、選抜クラス
「佐々木君、昨日メール見た?」
「いや、すまん。見たのは朝だった。未だ解決してないなら教えるけど」
「お願い」
佐々木はノートを開いてミクにその問題の説明をはじめて暫くして安齋と安藤がそろって登校して来た。
「「おはよう」」
「お、おはよう」
「おはよう」
「ん?この問題?ああ、私も分からなかったんだ。」
「その問題は、確かにちょっと厄介だけど、気づけばそんなに難しくないわよ」
「その通り、で、それなんだが、」
佐々木は紙にシャーペンを走らせた。
「なるほど、そうすれば良かったのね」
「これは一本とられちゃったかな?」
「そうだな・・・で、安齋、ちょっとここの訳聞きたいんだけどいいか?」
「ええ、」


そして試験も最後の時限になった。
(これができたら終わりか、)
最後のテストの問題を次々に解いていく。
「ん?」
何か嫌な予感がする。
そして、その予感があたったのか携帯が鳴った。
皆がいっせいに表情を緊張させる。
ミクは教師に一言言って直ぐに屋上に向かった。
エレベーターで最上階まで上がり、そこから階段で屋上に出るとすでにネルフのヘリが待っていた。
「早く乗ってください!」
ミクはヘリに飛び乗りそれと同時にヘリは離陸した。


ネルフ本部、発令所、
メインモニターには外面から大きな甲羅のようなものが出ているのが映し出されている。
その他のものから得られる情報も統合すると、巨大な亀のようである。
ただ、その大きさが体長200メートルを優に超えている。
「大きいな・・」
「あの大きさで甲羅・・・梃子摺りそうね・・」
『衛島に誘導し、戦線を展開します。』
「ああ、」
各航空基地から航空機が次々に離陸し使徒に向かう。
「・・・シンジ、昨夜の事は」
「・・予想どおりですよ・・・逃げられましたが・・」
「・・そう、」
(・・ゼーレは未だ補完計画を起こそうとしているのかしら・・)
・・・
・・・
・・・
『誘導開始』
航空機から次々に攻撃が仕掛けられる。
ミサイルや機銃はATフィールドによって遮断される。
更に可視レーザーを加える。
ATフィールドで弱められるものの通過し、表皮を焼く。
そこで初めて使徒は航空機を標的と認め、首を海面から出し口を開いて火の玉を撃ち出して来た。
避けきれなかった航空機が爆発する。
航空機は衛島に向かい、使徒はそれに続いて追いかけてくる。
『引き付けられました。衛島到着まで1800』
『各機付属空港を離陸、衛島到着まで600』
『部隊展開完了まで1500』
『衛島防衛施設展開完了まで1200』


ウィングキャリアー、
『基本的にはATフィールドを中和した上での波状攻撃だ。』
ミクは頷いた。
横には01を搭載したウィングキャリアーが飛んでいる。
モニターに目を戻し、現在わかっている敵の情報を見る。


やがて、衛島に到着し、防衛施設、各部隊も展開が完了した。
初号機は新型ソニックグレイブ、01はスナイパーライフルを持って待ち構える。
『目標視界に入ります』
航空機の編隊とそれを追いかけてくる使徒が視界に入った。
『攻撃開始!』
部隊や防衛施設から次々に攻撃が仕掛けられ航空機が散る。
使徒はそのまま一直線に衛島、エヴァに向かってくる。
『目標到達まで60』
「よし・・」
訓練のパターンの一つと似たパターンである。
攻撃を受けながら一直線に向かってくる。
使徒は大きく水面から飛び出し、口を開いて炎の塊を吐き出してきた。
初号機と01はその場を飛び離れて交わす01はスナイパーライフルから新型ソニックグレイブに持ち変える。
ATフィールド中和距離に入り、攻撃が次々に突き刺さる。
しかしその巨体と固いであろう甲羅のせいなのか、たいしたダメージが見受けられないまま轟音を上げて衛島に着地した。
両機は左右に分かれ、ほぼ同時に襲い掛かった。
「え〜〜い!!!」
全力で新型ソニックグレイブを振り下ろしたが、甲羅に弾かれた。
直ぐにその場を離れる。
「ものすごく固い・・」
『手や足を狙うんだ』
日向の支持に頷き、目標を手に変える。
そして手に向けて切りかかった瞬間、手が甲羅の中に引っ込んで、甲羅を強打しただけに終わった。
「くっ」
「え?」
そして引っ込んだその穴から眩いばかりの光が現れた。
「きゃああ!!!」
初号機は吹っ飛ばされた。
「つぅ・・」
直ぐに体勢を起こす。
『ダメージ自体はたいしたこと無いけれど、気をつけて』
マヤの声に頷く、
01の方も一旦距離を取ったようだ。
使徒は頭を初号機の方に向けてきた。
口を開き炎の塊を打ち出してくる。
初号機は横へ飛んで交わす。
無数の攻撃が仕掛けられるが、直ぐに首を引っ込める。
「くっ」
『ソニックグレイブを穴に直接ぶち込んでみてくれるかな』
再び頭を出してきて、炎の塊を吐き出してくる。
跳躍して炎を交わし一気に間合いを詰める。
「ええ〜い!!」
新型ソニックグレイブで攻撃を仕掛けると直ぐに頭を引っ込めた。
初号機はそのまま更に踏み込んで穴をつく、
肉に突き刺さった感触がある。
直ぐにその場を離れる。
瞬間先ほどと同じ光が放たれ、後方にいた支援兵器が吹っ飛び爆発を起こした。
再び頭が現れると目と目の間辺りに傷ができて青い血が流れていた。
「よし」
『危ない!』
「え?」
01が空中をこちらに向けて飛んでくる。
「とっ!」
初号機は、01を受け止め地面に下ろした。
「大丈夫?」
『あ、大丈夫よ、ありがとねん』
ミサは大丈夫のようだ。
01は起き上がり、近くから射出されたプログランスを手にとる。
両機はそれぞれ構えを取る。
支援兵器が次々に攻撃をかけているが、大きく利くという事は無い。
『目標が口を開いときに、これを一気に突き刺せば』
『なるほど、』
ミサの案に日向は頷く。
「じゃあ、私がひきつけるね」
『お願いするわね』
両機は二手に分かれる。
初号機は一気に間合いを詰めて斬りかかる。
使徒は跳躍し上から押しつぶそうとしてきた。
「わああ!!」
初号機は全力でその場を飛び退く、直後轟音を上げて着地し、同時に左足に激痛が走った。
「ぐっ!」
初号機の左足は足首から先が使徒の巨体によって踏み潰されていた。
激痛を耐えながら何とか這ってその場を離れる。
使徒は首を初号機側に向け、口を開いた。
『どおりゃあああ!!!!』
一気に01が走りこんでくる。
使徒は少し首の向きを変えて01に向けて炎の塊を放った。
炎の固まりは01に直撃し01は炎に包まれるが、そのままプログランスを使徒の口の中へと突き立てた。
どんどん体の中へと入っていく、
そして、殆ど入った時、辺りが光に包まれ、使徒が大爆発を起こした。


ミクは、ベッドの上で目を覚ました。
「・・ここは?」
「気が付いたようだね」
傍にいた医師が口を開いた。
「あ、はい」
「痛むところや違和感があるところはあるかな?」
「ん?」
ミクは軽く体を動かしてみる。
特にそう言った場所は無い。
「特に、ありません。」
「そうか、それは良かった。特に異常は無いようだからいつでも退院できるよ。まあ、今日はこのまま泊まっていくことをすすめるけれどね」
「あ、はい、ありがとうございます」
ペコリと頭を下げる。


衛島の上空を飛んでいる大型VTOL機の窓から日向が衛島を見下ろしていた。
破損したパーツが取り替えられている。
それと平行して、砕け散った使徒の甲羅の破片などを回収しているのが目に映る。
「メガフロートはパーツの組み合わせだからこう言ったところは楽だな」
「そうですね」
職員が返す。
VTOL機は高度を下げ衛島に着陸する。
日向たちはVTOL機を降りて衛島に降り立った。
碧南が近づいてくる。
「御苦労様です」
「分析はどうですか?」
「そうですね、甲羅はかなりの強度の物質でできていました。詳しくは未だですが、」
「そうですか」
「ええ、サンプルをご覧になりますか?」
「ええ」
二人はプレハブ小屋の中に入った。
小屋の中では3人ほどの職員がサンプルを調べていた。
「これです。」
碧南は甲羅の欠片を日向に渡した。
日向は手にとって色々と見てみる。
黒っぽい破片で断面は鋭い、かなり固そうである。
「ふむ・・・ずいぶん固そうですね。」
「本格的な分析調査は、東京帝国グループの中央技術研究所の方でして貰います。ここで行うのはまあ、簡易的なものでしかありませんが、」
日向はしげしげと破片を見つめた。


シンジはユイと本部のケージを歩いていた。
大破した01が修復を受けている。
「これは、時間が掛かりそうですね・・・」
「ええ、コアを03に移してそちらを使うようにするつもりよ、作業は明日からはじめて、起動実験までには・・5日ほど掛かるかしら?」
「まあ、エヴァは余っていますからね」
「・・・そうね、」
二人は暫くしてその場を離れた。

あとがき
実に2ヵ月半ぶりの更新となってしまいました・・・
う〜ん・・ずいぶんと空いてしまったなぁ・・・
話のほうに移って、今回の使徒は巨大な亀でした。
ゼーレの動きが表に少しずつ出てきたようでもあり、これから色々と厄介な事がおきそうな感じですね。
次は年内にあげられるといいなぁ・・・では又、