背徳 逆行編

◆第2話

シンジは、先生の家で目を覚ました。
右手には碇からの手紙が握られている。
「綾波もここに戻って来ている、行こう・・・ん?」
シンジは左手で白い鞄を持っている事に気付いた。
「何だこれは」
シンジは鞄を開けた。
中には、ノートパソコン、現金、拳銃、そして薄い青色の大きな封筒と手紙が入っていた。
「手紙?母さんからか」
要はがんばれという事と、封筒の中身のレポート用紙の束は、京都のユイの家に保存してあった使徒に関するディスクの中身であり、交渉に使うといいと言う事がかかれていた。


そして、シンジは、史実通り、駅前でミサトを待っていた。
(さて、私怨に身を染める愚かな無能者を待つか)
やがてサキエルが現れ、ミサトが現れた。
シンジは助手席に乗り込んだ。
ミサトは全力でアクセルを踏んだ。
(まあ、少々じゃ死なないが・・・流石にサキエル相手では分が悪い)
そして、国道を爆走している。
「碇シンジ君ね」
「・・・・葛城ミサトさんですか」
「私の事はミサトでいいわよ」
「そうですか・・・しかし、余り私に関わらないほうが良いですよ、表面的な付き合いならば利点も多いが、内面的な付き合いはお互いを疵付けるだけですから。」
「随分大人びた言い方するのね」
「そうですね」
(2つ年上だしな)


カートレインに乗った。
「着くまでに読んどいて」
ミサトはパンフレットを取り出した。
「いりませんよ」
「は?」
「パンフレットに記載されている事は外来用事項のみ、まあ、外来可能者そのものがVIPであるところから極秘マークがついているようですが、父が私を呼ぶ、しかも、使徒襲来のその日に、と言う事は、私に使徒を倒す手伝い・・・いえ、私に倒させるつもりなんでしょう」
ミサトの表情が見事に引き攣っている。
「非公開組織の内面を知るからには、私も、ネルフに加えられるという事ですね、内部者用の情報が欲しいですね」
「そ、そんなことを言っても、貴方が拒否したら」
「おや、良い事を聞きました。私には拒否権があったんですか、だったら、もし父が巨大ロボットを持ってきてこれに乗れ、そして使徒と戦えといった時は遠慮なく拒否させてもらいます」
ミサトはうろたえ始めた。
ジオフロントに入った。
「要塞都市ですか」
ミサトの顔が更に引き攣った。
「一見したところミサイルが全く効果を与えていないわけですから、通常兵器でダメージが与えられるとは思えませんね、とすると、ネルフは使徒に対抗するために作られた組織と思っていたけど、違うようですね」


ネルフ本部に入った。
「葛城さんいつまで不機嫌な顔してるんですか?」
「表情が固まっちゃったのよ・・・・」
「・・・そうなんですか」
現在迷子中、
「いや〜、非戦闘員て良いですね〜、戦闘中に迷子になっていられる」
ミサトの肩がぴくぴく動いている。
「あれ?葛城さんは私と違って戦闘員だったのかな」
ミサトは少し俯いた。
リツコが迎えに来た。
「ミサト貴女、ひっ!」
リツコはミサトの引き攣り過ぎた顔にびびっている。
(綾波を道具として扱い、あの男への復讐の為だけに綾波のコピーを殺した女)
シンジは感情を押さえ込んだ。
リツコはシンジに視線を変えた。
「私はE計画担当責任者、赤木リツコ博士よ」
「ああ、貴女が」
「あら?知っていたの」
リツコの中には、色々と思い当たる事が浮かんでいる。
「有名ですよ。猫好きだとか、ヘビースモーカーだとか、マッドサイエンティストだとか、偉大なる母の陰に隠れて功績が余り評価されない事とか、異性交友関係がかなり特徴的だとか」
「うっ」
リツコが一歩引いた。
「そうそう、後、噂だけど、第2東京大学の後輩の伊吹マヤだったかな?の方が優秀だとか」
「そんなバカな、マヤちゃんがリツコより優秀な筈が」
リツコの顔が引き攣りまくっている
「アンタまさか図星なの?」
「そうよ!マヤは僅か半年で、マギの操作からエヴァの調整技術まで身に付けているのよ!マヤの才能は母さんクラスなのよ!」
「そんな事は、どうでも良いんですけど、父のところに案内してもらえますか?」
どうでも良いと言われたリツコの才能・・・リツコの心境やいかに


ケージ、
初号機が目の前にある。
「人の作り出した究極の兵器汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオン。そして、これはその初号機。開発は超極秘裏に行われた。」
「何を得意そうに言っているんですか?自分で作ったわけでもないのに、10年以上前にできた機体に望みを託さねばいけないとは・・・科学者として恥ずかしくないんですか?」
リツコが全身を震わせている。
「リツコ・・・あんた・・・」
「久しぶりだな」
碇が司令室に立っていた。
『ああ』
「今回の呼び出しは、私を、初号機に乗せ、サキエルを葬ることか?」
リツコが反応した。
『サキエルだけではない、今後現れる使徒全てだ』
シンジは笑みを浮かべた。
「第拾八使徒リリンもか?」
リツコは驚いている。
『・・・何だその使徒は?』
(まだ18章の解読は終わっていないか・・・カヲルが手伝いでもしたわけか)
「条件がある」
『言ってみろ』
「正式な条件交渉は、後で行う。時間が無さそうなので、取り敢えず3点ほど要求しようか」
『何だ?』
「1点目、10億円の報酬」
「何ですって!!」
その一般常識的にはふざけた額にミサトが叫んだ。
「どうした?人類全てよりは遥かに軽いだろう」
『良かろう』
「2点目、後で行われる正式な契約交渉が決裂した場合、ネルフはいかなる理由があろうとも、私に一切干渉しないこと、無論、そちらが条件を飲めなかったわけだから、守秘義務も何も無い。ネルフからの暗殺者に狙われないように、戦自あたりに保護してもらうだろうけどね、その時に戦自にどんな情報が流れるかは保証しない」
『・・・・・』
「どうした何を迷っている?」
施設を激しい揺れが襲った。
『奴めここに気づいたか』
「シンジ君時間が無いわ!早く乗って!」
「葛城さん、邪魔をしないでください、私は、人類の未来を守る大切なお仕事をしている司令官と契約の交渉をしているんですよ、」
碇はシンジをじっと睨み付けている。
また揺れが襲った。
「どうしたのかな?要求は、3点あるんだよ」
全員が碇を見ている。
『・・・・良かろう』
「そうか、3点目は、簡単だよ、この荷物、勝手に中を調べないこと、この口を開くこと自体許さない。預かった物を勝手に調べるなんてのは常識的にも非道徳的なものだからね、当然飲めるよね」
『ああ』
「一応、仕掛けはしてある、もし、調べようとしたことが分かれば、ちょっと厄介な事になるよ」
シンジは不気味な笑みを浮かべた。
再び激しい揺れが襲った。
「では、契約成立、では、荷物は葛城さんに預けます。自分の興味本位で大事な契約を御破算にするような事無いようにね」
シンジは荷物をミサトに渡した。
「え、ええ・・・」
「さっ、こっちにきて」
リツコは別室に案内した。


エントリープラグに乗り込んだ。
『冷却完了、ケイジ内全てドッキング位置。』
『パイロット・・・エントリープラグ内コックピット位置に着きました!』
『了解、エントリープラグ挿入』
『LCL排出開始』
『プラグ固定完了、第一次接続開始!』
『エントリープラグ注水』
「これがLCLですか」
『ええ、そうよ』
『主電源接続、全回路動力伝達、起動スタート、シナプス挿入』
周りの壁に突然文字や幾何学模様や様々な模様が現れた。
『A−10神経接続異常なし、初期コンタクト全て問題無し。』
今度は、壁に回りの映像が映し出された。
『全ハーモニクスクリアー、シンクロ率・・・・・・・・・・』
『どうしたの?』
『98.63%』
『『『何ですって!』』』
「葛城さん荷物は?」
『ちゃんとここに持っているわよ』
「じゃあ、さっさと、進めてください」
『エヴァンゲリオン初号機発進準備!!』
ミサトの声が響いた
『第一ロックボルト外せ!』
『解除、続いてアンビリカルブリッジ移動!』
周りの物体が動いていく。
『第一、第二拘束具除去』
『第3第4拘束具除去』
『1番から15番までの安全装置解除。』
『内部電源充電完了、外部コンセント異常なし。』
『エヴァンゲリオン初号機、射出口へ。』
エヴァが移動し始めた。
そして止まった。
『進路クリアー、オールグリーン!発進準備完了。』
『宜しいですね。』
ミサトが確認を取っているようだ。
『勿論だ。使徒を倒さぬ限り我々に未来は無い』
(笑っちゃうよ、人類を滅ぼそうとしているのは、自分だろ、我々じゃなくて、我だけだろ)
『発進!!!』
ミサトの声とほぼ同時にいきなり強いGが掛かった。
少しして衝撃と共に止まり、都市の中に出た。
前方に使徒がいた。
『最終安全装置解除!エヴァンゲリオン初号機リフト・オフ!!』
肩の安全装置が外された。
『死なないでね。』
ミサトの声は懇願のようにも聞こえた。
『シンジ君、先ずは歩く事だけを考えて。』
リツコの声が聞こえる。
「阿呆」
初号機は一気に間合いを詰め、ATフィールドを無理やり消失させ、鉄拳一発で、コアを砕いた。
「作戦終了、何か言いたいことは?」
『取り敢えず戻ってきて』


ケージ
「さてと、」
「シンジ君、取り敢えず、検査を受けてくれる?」
「荷物を調べるための時間稼ぎじゃないでしょうね」
「そんな事は無いわよ」
「そうですか」


総司令執務室、
「碇、シンジ君の要求どうする?」
「・・・・ただの14歳の要求とはおもえん」
「しかし、彼を怒らすといずれにせよ厄介だぞ、多くの職員の前ではっきりと言っているわけだしな」
「・・・・」
「荷物の件どうする?あまりにも大事にし過ぎだぞ」
「・・・罠の可能性もある」
「うむ、それもそうだな」
「・・・・」
「碇、シンジ君とはいつ会う?」
「もう一度、シンジの過去を洗いなおす。それが終わってからだ」
「そうか」


翌日、ネルフ中央病院、
ミサトがやってきた。
「はい、預かってた荷物、」
シンジは中を開けて様々な装置を調べた。
「ちっ、あの親父本当に調べなかったか」
「シンジ君・・・それどう言う意味?」
「葛城さんのおかげでネルフの尊厳が守られたって事ですよ、あの親父、調べるように命令しなかったんですか?」
「ええ」
「そうか・・・、しばらく病院の中散歩してきます」
「ええ」
シンジは荷物を持って病室を出た。


レイの病室がある階、
エレベーターが開いた。
「これはこれは、碇司令殿、わざわざ、病院にまでお越し頂き有難う御座います。一言言われれば、こちらから伺いましたのに」
「ぐ」
「それでは、交渉はどこで行いますか?」
「・・・・」
「まあ、盗聴などがありえない、貴方の執務室が適当でしょうね」
シンジはエレベーターに乗り込んだ。
「まさか、交渉以外に司令殿がわざわざ病院に来るような大事な事は無いでしょうしね」
シンジは閉のボタンを押した。


総司令執務室、
「さてと、早速だけど、荷物は調べなかったようだね、ちょっとばかり残念だよ」
碇は内心喜んだ。
「搭乗にあたってだけど、先ず、報酬、いくらを予定しているわけ?」
「・・・・・」
「・・・大体、月100万円くらいかな」
冬月が代わりに答えた。
「・・・初号機に乗れる人は世界中探してもそうはいないはずだけど」
「1体に付き、1億」
碇が言った。
「ん〜、合計で、24億か・・・良いよ、それで、」
「次に、権限だけど・・・作戦の立案および、命令の拒否権、同様に、訓練や実験に関する物も」
「・・・・・」
「どうした訳?愚かな命令を下されて犬死するのも、命令違反で営巣行きも嫌なんだけどね」
「・・・・そちらは良かろう」
「じゃあ、実験や訓練は駄目だって?そんなに必要無いと思うけどねぇ〜、シンクロ率、いくつか覚えているでしょう・・・そんな無駄なことに大切な時間を取られたくないしね」
「・・・・・・仕方あるまい」
「じゃあ、次に、待遇ですが、まあ、先のことから考えても、作戦部長さんよりは上の階級が良いですね」
「3佐を用意しよう」
「で、監視および、警備だが、鬱陶しいからつけないように、ついた場合、無警告での攻撃をする。盗聴盗撮も同様」
「好きにしろ」
「じゃあ、次にセキュリティーレベルだけど」
「葛城1尉と同じ物を用意するが」
「ま、良いでしょう」
「大体こんなところかな、」
シンジは封筒を出し、封筒から書類の束を取り出した。
「次は、これの交渉、」
碇と冬月はその封筒にくぎ付けになった。
「これをどこで手に入れたかは、無能な諜報部の方に聞けば良いんじゃないでしょうかね、まあ、無駄でしょうけど」
「内容は、母さんのディスクの一部、先ずは、死海文書の翻訳とその分析、第参使徒サキエルから、第拾七使徒タブリスまでの情報、これの占有権、」
「本物だろうな」
「さあ、信じるも信じないも自由だけど」
「・・・・要求は何だ?」
「そうだね、私以外のチルドレンの待遇を同等の物にしてもらおうか、無意味な嫉妬は買いたくないのでね」
「・・・良かろう」
「じゃ、どうぞ、ご覧あれ」
シンジは、書類の束を机に置いた。
「で、次は、また次回ということで」
「どう言うことだ?」
「切り札は最後まで取っておく、命綱になるからね、そして切り札を見せるときはさらに奥の手を用意する。当然の事だろ・・・じゃ、今回はこれで失礼するよ」


本部某所、
「サードチルドレンの住居はF地区になります」
「ちょっち待ちなさいよ、あの広いF地区にこの子一人にするつもり?」
「偽善なら止めてください、」
「偽善ってシンジ君、お父さんと暮らすこともできるのよ」
「衝動的に殲滅するかもしれませんよ、」
「お父さんのこと苦手なのね」
「恨んでるから人として見ずに手段としてみてるだけですよ」
「シンジ君私の家に来ない?」
「それは、まさか葛城さんが僕の保護者をするって事ですか?」
「そうよん、どう言う意味だと思ったの?」
「いえ、生活無能力者が格好の主夫を見つけて利用しようと」
ミサトは青筋を浮かべている。
「ちなみに、葛城さんの家は綺麗ですか?ごみ散らかってませんか?自炊してますか?洗濯物溜まってませんか?」
「うぐぅ」
職員が必死に笑いを堪えている。
「保護者になるのは嫌ですよ」
「うぐぅ」
「・・・・で、住居のことですが、宿舎を用意してください、自分で探しますから」
「分かりました」


ネルフ中央病院、
「で、貴方のお仲間、ファーストチルドレン綾波レイがいるわ」
(綾波、ようやく会えるね)
(ええ)
「入院ですか・・・」
(怪我はどう?)
(問題無いわ、痛みも無い)
「え、ええ・・」
(一応演技してね)
(分かったわ)
ドアを開けた。
「レイ、調子はどう?」
「・・・・問題ありません・・・」
「綾波さんだね、僕は碇シンジ、宜しく」
「・・・宜しく・・・」
「どう?シンジ君気に入った?」
「ええ、綺麗で、可愛いですね、綾波さん」
「あんら〜初対面でそんなこと言っちゃってひょっとして〜」
「事実です。疑いを持つようだとすれば、葛城さんの美的感覚を疑います」
「うぐぅ」
「じゃ、今日はちょっと時間が無いから明日また来るね」
「あら〜やっぱり気に入ったんじゃないの〜」
「その質問には答えませんが、作戦部長としては、同じパイロット同士の親交を深めることによって意思疎通を潤滑にし、今後の作戦行動において大きな効果を齎す為と言う選択肢が思いつかないようでは・・・はぁ〜〜」
「な、何よ!」
「いえ、ただ・・・・・じゃ、また明日」
シンジは病室を出ていった。
「何よ何よ何なのよ〜!!」
「・・・葛城1尉、五月蝿い・・・」
「・・・はい、ずみばぜん・・・」


翌日、日本重化学工業、研究所、
「済みません、碇ユイ博士の息子が責任者に会いたいと伝えてください」
・・・・・
・・・・・
・・・・・
所長室、
時田が入ってきた。
「いや、碇博士の御子息がこんな所に何の御用で?」
「いえ、JAとか言う玩具の事を聞いたので、せめて、使えるぐらいにしてあげようと思いまして」
「ほう、我々の秘密兵器を玩具と言い切るのですか」
「昨日の使徒とエヴァの話既にお聞きだとは思いますが」
「ええ、まあね」
「使徒とエヴァの持つATフィールド、それがある限りNN兵器でもまともなダメージは与えられません」
「いつかは解明する」
「あのですね、いつかは解明すると言った時点で、まったく違う方向を探し出してるって事なんですよ」
「は?」
「根本的に間違っているんですよ、だから、解決策を教えに来たんですよ」
「何?」
シンジはレポートと設計図を出した。
「母の研究レポートの一部です。坑ATフィールド兵器の設計図です。これをいっしょに出撃させれば少しは役に立ちますよ」
「本当なのか?」
「ええ、じゃあ、失礼します」
シンジは去った。


ネルフ本部総司令執務室、
「シンジ君をロストしたそうだ、10人ほどの死体と引き換えにな」
「くっ」
電話が鳴った。
冬月がとった。
「何だ?」
「そうか」
冬月は電話を切った。
「レイのお見舞いに来たらしい、レイの監視から報告が入った。」


ネルフ中央病院、レイの病室、
「・・・・・父さんってどんな人かな?」
(退院したらどこに住む)
(あの部屋は嫌・・・碇君と同じところが良い)
(もちろんそうだよ、どこが良いかな〜、)
「・・・・分からない・・・・」
(探しておくね)
(うん)
「・・・・そう・・・・・」
(でもさ、やっぱり綾波って綺麗だよ)
(何言うのよ)
(いや、僕の理想像そのものだし)
(それは違うわ、私が碇君の理想像になったのよ)
「・・・エヴァって何?」
(う〜ん、否定はできないな〜)
(でも、早く退院したいわ)
(どのくらい?)
「・・・チルドレンが動かすもの」
(無理をすればもう退院できるけど)
(もう少し様子を見たほうが良いね)
「・・・分からないよ」
シンジは苦笑した。


人類補完委員会
「碇君、初号機のあの力なんだね?」
「・・・サードチルドレンの事で報告したい事があります」
「何だね」
碇はシンジが持ってきたレポートの束を要約と言う名の改竄を行った物を見せた。
「これは、サードがユイの研究レポートから手に入れたと言う情報の一部を要約した物です」
「・・・これは、死海文書の」
「翻訳と解説のようです。どこまで正しいのかは分かりませんが」
「これをサードが持っていたと言うのか!」
「・・・サードは、我々の目をこの10年間誤魔化しつづけていました。」
「いったい何が目的なのだ!?」
「バックの組織は!?」
「分かりません。サードはかなりの危険人物です。監視は、全て死体で帰って来ました。」
「・・・・」
「しかし、現時点において、唯一エヴァを動かせる存在であり、その戦力は、桁外れであり、現時点で、サードを敵に回すのは、使徒に対抗する唯一のカードを手放す事と同義です」
「うむ・・・」
「最低でも、サードと初号機抜きでも、使徒に対抗し得る戦力を本部に集めてからでないと、何も行動が起こせません」
「分かった。弐号機とセカンドを大至急送ろう、アダムもいっしょに送る。参号機と四号機の建造も急がせる」
「お願いします」


数日後、第3新東京市立第壱中学校2−A、
「碇シンジです。宜しくお願いします」
シンジは頭を下げた。
「質問!碇君彼女いますか?」
「・・・・一応」
女子の溜息がいっせいに漏れた。
・・・
・・・
《碇君があのロボットのパイロットだって本当?》
(また来たか・・・)
《当たらずも遠からずかな?》
・・・
《どう言う意味よ?》
《守秘義務って言葉知ってる?》
・・・
《知ってるわよそんな事、誰にも言わないから教えてよ》
《つまり、NOなら問題無いけれど、仮にYESならば、僕が答えた瞬間に、学校中の電源と回線が全て落ち、催涙弾が無数に撃ち込まれ、秘密警察の特殊部隊が学校に雪崩れ込み、気付いたときには、既にどこかの暗い施設で、手錠をされていて、白衣を着たマッドサイエンティストが入ってきて、「貴方は、人間が知ってはいけない事項を知ってしまいました。よって、これより、実験動物として暮らしてもらいます」とか言われて、体中に電極つけられて、様々な薬品を投与されて、人とは思えないような姿で死んで、最後は証拠隠滅の為にプラズマ焼却炉で文字通り消される。ってことが分かってるって事だよね》
シンジが送信キーを押した瞬間に、クラスの時間が止まった。
シンジはにやりと笑った。
この回線がクラス中に繋がっていると言う事は知っているからである。


昼前に早退して、ネルフ中央病院に行き、レイの退院を手伝い、用意していたマンションにやって来た。
シンジは一応、レイの衣服を初めとして一通り必要なものは全て揃えておいた。
「・・ただいま・・」
「お帰り」
レイは赤くなりシンジは笑顔で迎えた。


夜に、そのマンションのごみ捨て場に、瀕死の黒服の男が数人捨てられているのが発見された。


総司令執務室、
「碇、レイが、シンジ君のマンションに泊まるそうだ」
碇は拳を握り締めた。
「何を知っているんだ」
「それと、レイの警護の者が瀕死で入院した。」
「・・・・」


翌日、第3新東京市立第壱中学校、2−A、
シンジとレイがいっしょに登校した。
「綾波、はい、お弁当」
「ありがとう」
レイは顔を赤らめて弁当を受け取った。
教室中で心の絶叫が鳴り響いている。
「おい、碇、ちょっと来い!!」
シンジは男子生徒に連行された。


廊下、
「碇!綾波さんとはどう言う関係だ!!」
「相思相愛」
「「「「「なにぃ〜〜!!!」」」」」
「適当言ってんじゃね〜〜!!」
前の扉が開きレイが出てきて睨んだ。
「・・問題あるの?」
凍れる視線が怖い。
シンジ以外全員後退りした。
「じゃ、お昼食べようか」
レイは頷き二人は教室に入って行った。


更に数日後、
「えろう減ったんやな〜」
トウジが登校してきた。
「なあ、トウジ、転校生の噂聞いたか?」
「転校生」
「あいつさ」
ケンスケは窓際の席でレイと楽しそうに談笑しているシンジを指した。
「なんや、あいつ、綾波なんかと話しおってからに」
「それがな、あのロボットのパイロットだって噂なんだけど、おい!」
トウジはシンジに近付いた。
「転校生、ちょっと顔かせや」
シンジはトウジの目を見た。
「用件は?ここで済ませられるならば、そうしたいんだけど」
「おのれがロボットのパイロットやっちゅうんはホンマか?」
「もし、そうだと言ったら」
「わしはおのれをなぐらなあかん、なぐらな気が済まんのじゃ」
「理由は?」
「わしの妹がこの前の戦闘で怪我したんや」
「どこで?シェルターで、それとも、戦場で?」
「う」
「その様子だと、戦場に出て来てたみたいだね、わざわざ安全なシェルターに逃げないで危険極まりない戦場にいるなんて、君の妹さんは自殺願望かな?」
「ちがうわい!!」
「じゃあ、何なんだ?何故、君がパイロットを殴らなければいけない」
「ロボットが暴れたせいやからや!」
「暴れた?何が?格闘戦を前提とした機動兵器が、戦場で暴れなければ、どうやって敵を倒すのかな?」
「しるか!それで、怪我さして、どっちが味方かわからんわ!」
「おいおい、正体不明の怪獣と詳細不明の機動兵器、どっちが味方でどっちが敵かなんて君に分かるのかい?ひょっとしたら、悪の組織が作った世界制服のための兵器で、怪物の方が神から使わされた使いかもしれないのに」
(事実そうだしな・・・)
「う、せやったら、尚更!」
「それ以前に、都市にいる全ての民間人には避難命令が出されていた。そして、民間人はいないという前提で戦闘が行われている。既に、避難命令と言う形で、責任は果たした。後は、逃げる権利を放棄したものが悪い。更に、身長40メートル強と言う機動兵器から見て、身長たったの1メートル半の人間なんか、戦闘中に注意を払う事が出来るはずが無い、それに、それによって集中が途切れ、怪獣によって、機動兵器が破壊され、パイロットが死んだら、君の妹さんは、パイロットの遺族に殴られなければいけないのか?更に、怪獣が暴れまわった事による被害はどうする?市内で、NN爆雷でも使おう物なら、シェルターだって吹き飛ぶ、君の妹さんはそれらの責任取る必要があるのか?」
「あ、ああ、ああるわけ、ないやろ」
「じゃあ、パイロットも、君に殴られるいわれは無い、以上、何か質問は?」
「・・・結局、お前、パイロットなんか?」
「さあね、答える必要も無い、自分で調べ」
言葉の途中でシンジとレイの携帯が同時に鳴った。
「又後で、」
二人は鞄を持って立ち去った。
「なんなんや・・・」


そして、初号機はシャムシェルの前に射出された。
「民間人は?」
『避難は完了しているわ』
「間違い無いな」
『ええ』
シンジは舌打ちした。
「さてと、行くか」
初号機の姿が掻き消え、再び使徒の後ろに現れた瞬間、シャムシェルは真っ二つになった。
「ふん」
初号機は山の中腹に向けてプログナイフを投げつけた。
「これより、帰還する」


発令所、
「何かんがてんのよ、あいつは」
「マヤ、拡大して見て」
「はい」
メインモニターにプログナイフの傍で気を失っているトウジとケンスケの姿が映った。


待機室、
「シンジ君、どうして民間人を攻撃したの?」
「民間人?避難は完了している。間違い無い。そう言いましたよね、」
「う」
「では、あれは民間人ではない、ネルフ関係者でもない、ならば、どこかの組織の諜報員でしょう、何か問題でも?」
「分かっていたでしょ!」
「ええ、先の戦闘でも、避難しない者がいた。今回も、つまり、全て貴女達の管理体制の拙さです。そこで、私は、私なりの方法で、シェルターに避難する事の需要性を教えただけですよ。」
「もっと別の方法があったでしょう!」
「ありますよ、でも、これは、貴女達ネルフへの警告ですよ、完璧など存在しない、思い上がるな、以上です。では、新居への引越しもありますので今日はこれで・・・そうそう、両名とも、始末書を書いておく必要があると思いますよ」
シンジは出て行った。
「何よあいつは!!!」
「・・・気に入らないわね、チルドレンで無かったらキュッて」
リツコは首を締めるような仕草をした。


シンジの家、
「ただいま」
「・・お帰り・・」
レイが顔を赤くして出迎えた。
一応、レイがシンジの家に泊まりに来ていると言う形を取っているが、完全に同棲状態である。

あとがき
済みません。この後、下書きすら無いので、取り敢えず、続きが読みたいという人がいなければ続きは書きません。いたとしても、掲載は暫く経ってからに成ると思います。
では、