ゼーレ、 番号が整理され、01から10に成っている。 メンバーの補充は行われなかったようだ。 「日本政府がA−801を発動した」 「・・我らに刃向かうつもりか」 「面白い、ちっぽけな島国一つで何が出来ると言うのだ」 「70年前の戦争で何一つ学べなかったようだな」 「所詮、愚か者の集まりだよ」 「歴史は繰り返す」 「タブリスの一件は少々予定外であったが」 「セカンドとサードを潰す事が出来たのならば御の字と言ったところだろう」 「左様、もはや、参号機とフォースしか残っておらん」 「たった1機、それも、素人同然の者で何が出来るか」 「自衛隊は如何なる?」 「あのナショナリズムが強過ぎる国の軍隊だ、敵に回るだろう」 「いずれにせよ、我等の絶対的有利は変わりはしない」 「いよいよ最後の使徒が訪れる」 「最後の使徒と参号機が相討ちしてくれるのが一番ありがたい事なのだがな」 「だが、アルミサエルが勝てば如何なる?」 「本部最後の攻撃は、本部施設の自爆だよ」 「成るほど」 「さすれば労せず補完計画が発動できる」 「勝利と未来は我等にあり」 「碇、ネルフ、そして、日本には死を」 「終末の狭間へと誘ってやろう」 朝、ネルフ本部、 戦略自衛隊の面々が本部施設を占拠した。 但し、司令部と作戦部以外は通常業務の続行が命じられた。 総司令執務室、 竹下と碇・冬月が面していた。 数日前までならば竹下が碇の前に立っていただろう。 だが、今や完全に立場が逆転していた。 竹下はファイルを碇に投げ渡した。 そして、そのファイルを見た瞬間、二人の顔は驚愕に包まれた。 「人類補完計画、中間報告書か・・かなり計画が進んでいたようだな・・人為的なサードインパクト、それも、極一握りの者にとってのみ都合のよい計画・・そして、その為の代償は世界に生きる者全て・・・」 二人は黙って裁きを待った。 「だが、E計画を初め、動機は兎も角、人類を救ったと言う事実は動かない」 「それだけならば、英雄と褒め称えられるだろう」 「・・・だが、君達は、その為に、様々な下劣極まりない手段を使った」 「君達の処分は、全てが終わった後に通告する。それまで、かなりの自由は制約される。」 「理解し、言う事が無ければ退室したまえ」 二人は黙って項垂れ退室した。 続いて戦自の隊員に連行され入って来たのは、加持を初めとするゼーレと繋がっていた者達であった。 人数は20名弱か、 「君達は、スパイ行為が発覚すればどうなるかくらいは知っていると思う。」 「何か言い残す事は無いかね」 もはや全員生を諦めていた。 「加持1尉以外を連行しろ」 加持以外が連行されて行った。 これから、銃殺刑に処される。 「さて、内務省、調査部所属加持リョウジ君、君の話を聞こうか・・何故ゼーレについた?」 加持は目を伏せ、やや間を置いた。 「・・真実を知りたかったからです。隠された、作られていない真実をね」 「・・・その為には命を捨てても良いと言うのか?」 「ええ」 「外してやれ、そして、君は退室したまえ」 「はい」 戦略自衛隊員は加持の手錠を外し、退室した。 「これが、君が知りたがっていた。真実だ」 竹下は加持にファイルの束を投げ渡した。 セカンドインパクト、ゼーレ、ネルフ、アダム、使徒、エヴァ、様々な加持が知りたがっていた、いや、それ以上の情報だった。 加持は食い入るようにファイルを読み漁っている。 竹下はゆっくりと拳銃に弾を込めた。 半時間後、 加持は流し読みでだが全てのファイルを読みきった。 「す、凄い・・」 「どうだ、君が知りたがっていた事は知る事が出来たかね」 「ええ・・・しかし、何故?」 「こう言う事だよ」 竹下は拳銃を加持に向けた。 「な!」 加持の足枷は解かれていない。この距離では弾は外れないだろうし、攻撃に転ずる事も出来ない。 「この拳銃は、君がそのファイルを読んでいる時に弾を込めた。この机の上でな」 「君にとって真実を知ると言う事は、自らの命よりも、友人知人の命よりも、愛する者の命よりも重いのだろう。」 「ならば、もはやこの世に思い残す事はあるまい」 加持は驚愕の表情を浮かべ、1発の銃声がこのとてつもなく広い部屋に響いた。 最期の一瞬、彼は後悔したのかもしれない。だが、既に遅過ぎた。 セントラルドグマ、最深層、旧第1ケージに冬月が一人立っていた。 「・・・思えば・・あの日、あの時、この場所から、私は誤った道を歩き始めた。」 「そして、ユイ君の事故から、決して赦されざる道を選択してしまった。」 「・・・只、ユイ君との再会を望むばかりに・・・・」 「・・・ユイ君との再会が絶たれた今、私が犯した業は、私がこの世界でこれ以上生きていくには、大き過ぎる・・・」 冬月は拳銃をこめかみに当てた。 「・・・・」 京都大学、秋の山道、芦ノ湖湖畔、人工進化研究所、ゲヒルン本部・・・・ ユイとの出会い触れ合いを浮かべながら引き金を引いた。 前回、生を諦め、その罪の最大の被害者に殺される事を受け入れた老人は、今回は自らその命に終止符を打った。 翌日、第2新東京市、新千代田区、首相官邸、 ユイが目を覚まし周囲を見まわした。 そして、視界に入った者は、つきっきりで疲労から椅子に座りながら眠ってしまったレイと、同じくその横でレイに体を預けて眠っているシンジだった。 「・・シンちゃん・・レイちゃん・・」 ユイはそっと二人に手を伸ばした。 「ん?」 シンジの方が目を覚ました。 「母さん?」 ユイは二人を抱き締めた。 それでレイが目を覚ました。 レイは突然の事で状況が把握できていないのか、それとも、目の前の自分と同じ体にはユイが入っていると言う事を忘れているのか、目をぱちくりさせている。 「・・シンジ、レイ・・」 シンジは思わず感動の涙を流した。 そして、自分で驚いた。 前回、ユイとの再会を果たした時は殆ど嬉しく無かった。むしろ、レイを重ねて見てしまうしまう分、辛かった。 だからこそ、最も使える利用手段として扱った。だが、レイを取り戻したシンジは、ユイとの再会に涙を流すほどの感動まで覚えている。 レイは、唯一絶対的に愛した存在であり絶対的に必要な存在である。だが、彼にとって必要だったのは、レイだけではなかった。ユイも必要だったのだ。 そして、それは直ぐに、アスカ、そして、ミクを連想させた。彼女達を手段として扱った。絶対的に大切な存在、レイを失ったと言う辛さから少しでも目を背ける為に・・・・ 「母さん!」 涙を流してシンジはユイに抱き付いた。 レイはまだ状況が良く分かっていないらしい。 シンジはユイの胸で声を上げて泣き続けた。 1時間ほどで、シンジは落ち着き、ユイに全てを話した。 ユイはシンジが言い終わるまで黙って全てを聞き、そして、涙を流し、二人に謝った。 二人がもう良いと言っても尚、しばらく謝り続けた。 そして、ユイは、夫を救う方法を考える事を放棄した。 彼は死ぬまで、覚めぬ夢を見続け、朽ちていく事だろう。 そして、自分は、この二人を必ず幸せにすると心の中で決めた。 「・・私の事を知っているのは?」 「はっきりと知っているのは僕達二人とマヤさんだね」 「・・竹下さんには?」 「話してはいないよ」 「・・分かったわ、レイの双子の姉、綾波ユイとして、戸籍登録してもらいましょう」 「分かったよ」 3人は部屋を出た。 第1執務室に4人が入ると、竹下は目を擦った。 「徹夜続きで疲れたかな?」 「いえ、何も聞かずに、彼女を、綾波レイの双子の姉、綾波ユイとして登録してください」 竹下は、レイとユイ、そして、シンジに何度も視線をやった。 「・・・・・・分かった、聞いたところで教えてはくれまい」 「ええ」 警報が鳴った。 「・・・アルミサエルか・・・」 シンジとレイは前回のアルミサエル戦の忌まわしい記憶を思い出した。 直ぐに情報が集められた。 「・・どうするかね?」 ユイは顎に手をやって考えている。 「・・・アルミサエルの倒し方か・・・自爆ぐらいしか・・」 「まさか・・参号機?」 シンジの言葉にマヤが恐る恐る尋ねた。 「・・アルミサエルはATフィールドに反応するの?」 「恐らく」 「・・・初号機にしましょう」 「「「え!?」」」 ユイの言葉に皆が驚いた。 「どう言う事だね」 「リリスのダイレクトコピーの初号機ならば、ATフィールドを感知しなくても、目標にする筈よ」 「確かに、ラミエルの一件も初号機だったからとも考えられる」 「でも、初号機を・・・」 「コアに魂が込められていない今の初号機は危険よ、」 「・・・人類の手には余る・・・そう言う事かね」 「はい」 「住民の避難は?」 「ゼーレ戦に備え、既に第3新東京市には人っ子一人おらんよ」 「加賀さんに連絡を」 ネルフ本部、発令所、司令塔 「・・・分かりました。」 加賀は回線を切った。 「初号機を出し囮とし、自爆させる」 発令所が騒然とした。 だが、代替案は誰も思い浮かばず、実行された。 地上、 初号機がアルミサエルの前に射出された。 アルミサエルは、紐状に変化し、初号機の様子を窺っている。 暫くして、どうやら安全らしいとでも思ったのか、そろりそろりと初号機に絡み付き、そして、生態融合を始めた。 初号機のSS機関が起動し、凄まじい咆哮を上げた。 初号機は、アルミサエルを引き千切ろうとして気付いた。 今、人間が作った最終安全装置と言う名の拘束具が、自らを拘束している事を、 アルミサエルは更に生態融合を進め、各組織に侵食し始めた。 初号機は苦痛からか再び咆哮を上げ、凄まじい力で最終安全装置を破壊した。 そして、全てが光に包まれ、位相が反転し、虚数空間へと飲み込まれた。 存在が消えた時、初号機から半径数百メートルは何も無かった。天井都市の1部が消え、ジオフロントが顔を覗かせている。 発令所、 「使徒殲滅しました」 「御苦労、使徒が全て、いなくなった以上、ゼーレが動き出すはずだ。第1種警戒体制は解かずに待機、詳細は、現時刻を持って、レベル0とし、全て公開される。」 松代、実験施設、 白衣をはためかせ、マヤが正面ゲートに歩いて来た。 「・・・?・・・伊吹博士!」 「直ぐに本部に連絡を」 「は、はい!」 マヤは実験施設に入り、最終決戦の準備を行い、通信室に入り、本部に回線を繋げた。 モニターに映った面々は目が飛び出さんばかりに驚いている。 「お久しぶりです」 マヤは微笑みを浮かべた。 『生きていたのか・・』 加賀まで驚いている。どうやら情報は行き届いてなかったらしい。 「ええ」 『そうか、対ゼーレ戦に何か秘策はあるかね?』 「ええ、でも、秘密です」 マヤは悪戯っぽく笑った。 シンジ、レイ、ユイは、戦略自衛隊員に扮して本部に潜りこんだ。 目的は、零号機、 ケージ、完全に出入りが封鎖される中、3人は中へと入った。 「・・・弐号機、」 先ず視界に入ったのは、エヴァンゲリオン弐号機。 「・・・何か変・・・」 レイが弐号機の変化を感じ取った。 「変?」 「・・・精神場の揺らぎが無い・・」 3人は直ぐに司令室に向かった。 ユイは最上位アクセスコードで全ての情報を開ける状態にして、弐号機のチェックを行った。 弐号機のコアは空になっていた。 「・・・どう言う事?」 「・・キョウコさんが入っていたのじゃなかったの?」 ユイは直ぐに零号機をチェックした。 ユイ・ダミーと表示された。 「零号機には問題は無いわね・・・誰かがサルベージを行ったとでも言うの?」 「かあ・・いや、義姉さん、」 「ん?ええ、そうね、シンジ、レイ、搭乗を始めて」 二人は、プラグスーツに着替え、零号機に乗り込んだ。 ユイはその間ずっと弐号機のコアに関して考えていた。 そして、起動が進む中、ユイが考え出した結論は、正に的を射ていた、だが、ユイは二人にはそれは伝えない事にした。 零号機の中で二人はATフィールドで防御しながら神経を集中しお互いの自我境界を重ね合わせた。 シンクロ率は200%前後で落ち着いた。 「行けるね」 「ええ」 二人は微笑み合った。 『シンジ、レイ、もう良いわ、上がって頂戴』 夜、ネルフ中央病院、 碇はユイの抜け殻の手を握り話し掛け続けている。 出会い、プロポーズに始まり、良い思い出だけを語り続けたが、時々頷いたり相槌を打つだけで、何も感情らしきものは表れない。 そっと、ドアの隙間からユイは病室を覗き込んだ。 やがて、シンジの事、レイの事、補完計画の事、赤木親子の事、本当に思い付く限りの事を話し、何度も何度も涙を流しながら謝った。 ユイは、そんな碇にシンジを重ねた。 ユイを失い、全てを捨て追い求め、そして、遂に手に入れられなかった碇。 それは、レイを失ったシンジと似通っている。 レイを失ったシンジ、それが、彼の姿なのだ。 もし、今、レイを失えば、シンジは今の彼になるであろう。 (・・さよなら・・貴方・・) ユイはドアの隙間を閉め、その場を離れた。
あとがき 冬月が自殺しました。 そして、真実を追い求め、顧みる事が無かった加持は銃殺されました。 全てをユイとの再会に捧げた碇は壊れて来ています。 その一方で、ユイ復活が復活しました。 さて、いよいよ最終決戦です。 ・・・・戦闘シーン上手く書けるのかな・・・・ あと、少しで逆行編は終了です。 ああ、漸く連載の数が減る・・・ ・・・・減らなかったりして・・・と言うか増えそう・・・(超汗) では、又