再び

◆第18話

 ミサトはリツコの執務室で猛烈に渋い顔をしていた。今回の被害報告書を渡され読んでいるのだ。
「…はっきり言って洒落にならない被害ね…」
「ええ、エヴァも零号機は1月、弐号機は2週間、初号機も1週間は最低かかるし…予算もかなり厳しいわ、」
「…とりあえず、それまでの期間は大丈夫だと思うわ」
「そう…」
 リツコは煙草に火を付け、紫煙を燻らせ始めた。
「私は、初号機をもっと追い込んで暴走させた方が被害が少なかったんじゃないかと思ったんだけど…どうだったのかしら?」
 言外にどこか攻めるようなものがある…悩ませられることがよほど多いのだろう。
「…そうね、被害という意味ではあの時の方が明らかに少なかったわ、でも、シンクロ率が上がりすぎてシンジ君が溶けてしまった。危険でもあったわ、シンジ君にとって、それに他の二人にとっても」
 黙って煙を吐く…
「そうかも知れないわね」


 仕事が一段落した後、中央病院に3人の見舞いに向かった。
 ミサトが付いたときはちょうど夕食中で、半身が動かせないレイの食事を二人が手伝っていた。
「あ、ミサトさん」
「みんな調子はどう?」
「まあまあね、」
「僕はもう大丈夫だと思います。しびれもだいぶとれてきたし」
 レイはどう言うかちょっと迷っているようである。
「…気分はそれなりに良いです」
「そう、よかった。あ、これお見舞いね」
 途中売店で買ってきたフルーツの盛り合わせを台の上に置く。
「ありがとう」
 そのフルーツを切りみんなで食べながら話を切りだした。


 3人の病室からの帰り、ヒカリのことを思い出し、ヒカリの病室によって行くことにした。
 病室に到着しドアをノックすると、なかから男性の声で返事があった。
 ドアを開いたのはミサトの知らないネルフ職員だった。
「か、葛城作戦部長!」
「こんにちは」
「あ、こ、こんにちは…わざわざ娘のために済みません」
 どうやらヒカリの父親らしい。ヒカリの方を見ると、ベッドの上で上半身を起こしてお見舞いのフルーツを食べている最中だったようである。
「ヒカリさんが入院するはめになったのは作戦部のせいでもあるからね。迷惑だったかしら?」
「そんな、とんでもない!」
「そう、なら良かったわ、」
 ベッドの脇に立ちヒカリに話しかける。
「調子はいいようで良かったわ」
「ゆっくり休んでましたから…それより、碇君や綾波さんも入院したって聞いたんですけど」
「ええ、そうよ。シンジ君なんかは全然大したこと無いけど、レイは2週間くらいは入院することになったわ…良かったらお見舞いに行ってくれるかしら?貴女が行ってくれれば二人とも喜んでくれるから」
「勿論です。病室を聞こうとしてたんですから」
「そう、良かったわ。ああ、でも、もう一人チルドレンの女の子が同室で入院しているけれど」
「そうなんですか?」
「ええ、アスカって子、やっぱり、同い年の女の子。どんな子かは本人にあって確かめるのが一番だと思うわ。それで、アスカに対してどう接するのも自由だけれど、そう言う子が一緒にいることは教えておくわ」
「わかりました」
 ヒカリは本来アスカの親友だった。二人の間に大きな問題がなければ、友人になるれる気がする。そうなってくれれば嬉しいのだが…そう考えて3人の病室を教える。
「そう言えば…洞木さんっていつ頃退院するの?」
 ふと思い出し、聞いてみる。直ぐに退院できるという話だったはずだが…?
「あ、その事なんですが…」
 返事をしたのは父親の方だった。
 その後、父親が言うには、洞木家は先の戦闘で半壊してしまい、修理が必要なのだが、今町全体がそんな状況であり、修復は支援兵器を中心に置いて進めらるため、予定が立たず、仮設住宅や社員寮・寄宿舎への申し込みはしたが高倍率で抽選から外れてしまったため、今は帰る場所が無い状況なのだという。父親の方は、暫くの間だけなんだから、本部に泊まるという手があるというか、そもそも、今は帰宅する暇がないくらい技術部は忙しいので別に構わないらしいのだが、ヒカリの方はそうはいかない。
「で、今困っているわけね…任せなさい、ひとっ走りいってくるわ」
「え?ひとっ走り?」
 

 関係部署にやって来た。そして、作戦部長としての役職と権限、そしてミサト自身の迫力と押しの強さをフルに使って、場所を直ぐに確保〜♪…とは行かなかった。
 まず、ミサトの姿を見ただけで露骨に嫌な顔をされた。
 こういう大きな被害が出たときの対応なんかも仕事の範囲だったのだが…今回は被害が大きすぎたためその仕事が半端な量ではなくなって連日連夜の徹夜で処理をしている状況らしい…更に言えば、中には家を失った者もいたかも知れない。そして、逆恨みに近くはあるが、原因の一端がある作戦部に対しては強い反感を持っているようである。
 かと言っても、チルドレンの精神と身体の健康を保つためには絶対に必要なことだと、作戦部として要請すると流石に無下に断るわけにもいかず…他の関係部署に回されることになった。
 で、たらい回しの結果…流石にいらついてきたミサトは不機嫌をもろに顔に表し、こめかみの近くには青筋が浮かんでいた。
 次…同じ事をされたら思わず射殺してしまうかも知れない…今度の担当者はその気迫にビビリまくり、直ぐに何とかしようとしたのだが…実際に無茶な話だったのだろう。裏の方で汗をかきながら他の職員達となにやら相談している。
「あ、あの…」
「何?」
「あ、その…今フォースチルドレンは入院をしている訳なんですよね」
「ええ、そうよ、それがどうかしたの?」
「いえ…その先の戦闘ではけが人は余り出ていませんから…そのまま入院して貰ってたらどうでしょうか?」
「入院したまま?」
「あ、はい、手続きはこちらでさせていただきますので…」
「なるほどね、本人に聞いてみるわ」


 そんなことでヒカリが暫く入院したままになることが決まった次の日ミサトはリツコの研究室にやってきた。
「洞木さんのこと決まったみたいね」
「耳良いじゃない」
「マギは私の管理下にあるの、当然よ」
 ミサトはテーブルに置いてあったコーヒーカップをとった。
「それ冷めてるわよ」
「……」
 テーブルにカップを戻す。
「……、リツコ、私のことどこまで信じられる?」
 リツコは少し考えるような仕草をする。
「そうね、難しいわ…正直未来で何があったのか、それを確かめる術は、実際にそれが起きてみないと分からない、その上、話してくれたことが全て本当であったとしてもそれはミサトの主観でしかないから、真実を捕らえていない場合もあり得る」
「…つまるところ、結局私の判断として動くしかないわ」
「まあ、そうね」
「で?」
「…うん、リツコと司令とのことについてなんだけどね」
 リツコは黙ったまま煙草を取り出して火を付ける。一つゆっくりと深く煙を吐く、
「…たしか、レイが自爆した後…言っていたわね」
「ええ、」
「…簡単に答を出せる事じゃないわね…」
 何を考えているのかはどこか遠くを見ているような気もする表情から読みとれない。
「…もし、何か相談に乗れることがあれば乗るわ」
「ありがと…」
 その後は沈黙が続き、暫くしてからミサトは部屋を出た。


 ミサトは自宅に戻って一人でこれからの使徒戦に付いて考え事をしていた。
 次の使徒はアスカを精神汚染してきた使徒で、最終的にはロンギヌスの槍で倒した。
 精神汚染をさせるわけにはいかないのは当然だが、ロンギヌスの槍を最初から使うなんて事は絶対に出来るはずがない。
 正直、ロンギヌスの槍を使う以外に、有効と思われる手がない。時間と予算があれば手は打てるかも知れないが、1ヶ月少々ではとても足りないし、つい先ほど第3新東京市が壊滅的打撃を受けた段階では予算もでるはずがない。
「…どうすればいいのかしら?」
(リツコのお知恵を拝借するか、)
 機密を知っているリツコなら、ひょっとしたら上手い方法を思いつくかも知れない。
 では、その次の使徒…レイが自爆した使徒。
 これに関しては良くわからない…情報が余りない。が、しかし自爆させるわけには行かない。生体融合を仕掛けられないような作戦を考えなくてはいけない。


 翌日、リツコの研究室を訪れ、次の使徒への対策を相談した。
「そうね…宇宙空間の使徒に対する攻撃は、真っ当な方法では不可能でしょうね」
「陽電子砲で出力が足りないのなら、それこそ核ミサイルを雨霰と打ち込むしかないでしょうけど、それでも撃破できるかどうかは不明ね」
「やっぱり、そっか…」
「手段としては貴女が言った槍を使う方法が一番妥当でしょうね…でも、あの槍の意味は分かっている?」
「ええ、一応は…補完計画にとっても必要だったらしいわね」
「だとすれば、分かるでしょうけれど、そう簡単に使えるようなものじゃないのよ」
「……それってひょっとして、精神攻撃を受けさせろってこと?」
「さぁ、でも、少なくとも陽電子砲で攻撃しても無駄という事は示さなくては駄目でしょうね」
 それはおそらく誰かを精神攻撃に晒さなければならないと言うことに繋がる…そして、それに対して何か有効な防御手段をこうじることはできない…
「リツコはロンギヌスの槍が無くなっても良いの?」
「そうね、私はゼーレの補完計画はごめん被りたいから、無くなってくれた方が良いわ」
「そう…」


 事務処理を済ませた後、中央病院にやってきた。
 シンジももう退院できるのだが一緒に入院している…と言ってもレイの介護と言った感じが強いのだが、
 ドアの前に立つと、中から4人分の楽しそうな話し声が聞こえる。
 ドアノックして中に入る。…そこにいた4人目はヒカリだった。3人はレイのベッドの回りに集まって色々と談笑をしていたようである。ヒカリはちゃんとお見舞いに来ていたようである。
「あら、みんな楽しそうね」
「あ、ミサトさん、今日も来てくれたんだ」
「ええ、洞木さんも来てくれていたのね」
「昨日も来てくれてたわよ」
「あ、そうなの」
 あの後早速来てくれたのだろう。
「病室もそんなに遠くないですし」
 もうアスカとヒカリは打ち解けている様子である。ミサトが思った通り、色々とあったとは言え、本来親友になるような二人なのだから元々気が合う存在同士だったのかも知れない。
「そう、」
 ふと、以前ヒカリの病室を訪れたときに、何かヒカリが話したいことがあったのだったと言うことを思いだしたが…今は3人と喋って楽しんでいるし、急を要することなら向こうの方から来るだろうし、そうでないなら又機会があるから良いかと、今は忘れておくことにした。
「そう言えば、みんないつまで入院しているの?」
「僕は未だ暫く綾波についていようと思ってますけれど」
「そうねぇ…、アタシは多少不便なことを我慢すればもう直ぐ退院しちゃっても良いんだけど…どうしよっか…」
「我慢して退院することもないんじゃない?」
「それもそうね、ま、もう少し邪魔させて貰うことにするわ、レイは未だ掛かるしね」
 何となく言っている意味が良くわからずシンジは軽く小首を傾げる。


 見舞いを済ませた後は、本部の執務室に籠もって…使徒のことを考えていた。
 やはり、誰かを辛い目に遭わさなければならないだろう…手順からすると、陽電子砲による狙撃に落ち着くだろう。地上から撃つか、ウィングキャリアーを使い高空から撃つかという手があるが…ウィングキャリアーを使って、撃破できなかった場合、悲惨な目に遭う、高空から真っ逆様に落ちたら100%即死である。
「いっそ、自走砲徴発しちゃおうかしら」
 戦自の陽電子砲、更にヤシマ作戦の時と同じように日本中の電力を集めて、それならば貫けるかも知れない…が、まずその前に攻撃しなければいけないだろうから同じ結果になる気がする。
 誰にするのか選ばなければいけない…前回とは違い、3人、3機ともが使える。それに、アスカも前回ほど追い込まれていないから、前衛を強く主張することはないだろう。
「誰かを選ぶのって辛いわね…」
 3人の中から一人生け贄を選ばなければいけない…条件はみんな同じだから、尚一層困ってしまう。誰か一人に偏りがある条件なら仕方ないとして済ますことができるかも知れないが…そうでは無いというのも困りものである。
「どうすりゃいいのかしら…」
 精神攻撃を受けたら実際どうなるのか分からない…アスカの場合はある程度は推測はできる…が、他の二人は推測することができない。精神攻撃の具体的な物側からない以上、アスカよりも大きなダメージを受ける可能性も受けない可能性も等分にある。
「はぁ……」
 しかし、アスカの場合でも前回はやばいことになったけれど、今回はそれよりはアスカの状態はいいので大丈夫だろうという安易な推測が成り立つのかどうか…分からないことが多すぎる。直ぐに撤退できるようにして被害を限定することはできるかも知れないが…それでも、一瞬だけというわけには行かないから本当にそれで良いのかどうかわからない。
「なんか…考えても答えでそうにないわね…」
 こう言うときは変に考えずに勘に頼る方が良いかも知れない。
「…じゃあ、その次か…」
 生体融合をさせられないようにして殲滅する方法、中和距離を保ちつつ、その時にはある程度修復され機能が回復している支援兵器を最大火力で使用する。
 大まかにはこんなところだろうか?後は、それに対する訓練を多めにしておけばいいだろう。
 そして万が一に備え、エントリープラグの強制射出に備えておけばいいだろう。最悪エヴァ1機を引き替えにして殲滅する。…最も、後のことを考えると第3新東京市の中心で自爆させるわけには行かない。もっと郊外で無ければいけないが、それは先の前提と兼ね合わせるのは難しい。
 生体融合を仕掛けられた場合は、速やかに被害が少なそうな場所に移動し、そこで自爆装置を起動させてエントリープラグを射出する。
「そんなところね」


 夕方の会議では復旧計画について、限られた予算でいかにして復旧させるのかという事について話し合っていた。
「予算の承認は早かったですが…額がとても十分とは言えませんね」
「まずは、あの穴をふさぐのは確定ですね。わざわざ入り口を開けておくなんてのは馬鹿みたいですから」
「そうね、」
「でも、どうやってふさぎましょう?わざわざ他の場所のように装甲板を入れるとなると又予算が凄いことになりますし…」
「最低限にして、コンクリか何かでふさいでおけばどうでしょう?後2戦…同じところを狙われる可能性は低いでしょうし、」
「そうねぇ、耐久性はどうなの?」
「何枚か装甲板を入れておけば、通常の状態では十分だと思います」
「分かったわ、そうしましょう」
 その後、色々と決めていったのだが…その会議の中で、話を聞きながらミサトはちょっと考えていた。確かに一般的に言えば、使徒に対して良い配備なのだが…これから来るものが分かっているのだったら、もっと最適な配置はできないだろうか?更に言えばその後の戦自の侵攻まで考えたなら…
「ちょっと待ってくれる?」
「はい?」
「今思ったんだけれど、単なる修復じゃなくて、今までに置いてなかった物とか少なかった物とか持ってこれない?」
「え?できると思いますが、予算と時間が更に余分に掛かってしまいますよ」
「それでも、戦力が上がるなら検討する予知があるんじゃない?」
「そうですね…これまでの使徒を考慮に入れて、より有効性の高い兵器を導入しても良いかも知れませんね…」
「司令達何か言ってくるかしら?」
「配備が遅れる以上、許可がいるでしょうね」
「済みません、私は否定的です」
 一人挙手をして発言した。
「理由聞かせてもらえるかしら?」
「はい、新しい兵器を導入しても、実際にそれを有機的に運用するには、それ以上の時間が必要です…変更される程度が大きければ大きいほどその時間が掛かります。実際に有効と言えるような変更を加えると、逆にそれを有効に使えないと言う事態が発生してしまうかと」
「確かにそうね…どのくらい掛かるものかしら…」
 腕組みをして考える…
「マギのサポートや、管制をマギに任せることである程度までは比較的早期に持っていけると思いますが、それ以上はかなり掛かるのではないでしょうか」
「そっか…いくつかプランを組んでもらえるかしら?司令達に相談してみるわ」
「はい」


 早い物で次の日の午後には10通りほどのプランがミサトの元に届けられた。
 次の使徒は第3新東京市の支援兵器は必要ないからその次の使徒に間に合えばいい。
 最後の使者、渚カヲルについては…どうなるのか分からないが、これも支援兵器は必要ないだろうから…残る戦自の侵攻とゼーレの量産機に対して出来るかぎり有効な兵器を推薦すればいい。
 ここに上がっている物はどれも立派なプランで、そのままの修復した場合と比べて、タイミングの問題さえなければ決して見劣りする物ではないから、
「これね…リツコにも口添えして貰うか」
 10のプランの中から最適な物を選びリツコの元に向かった。


 リツコはケージの司令室で初号機の修復を指揮していた。
「どう?」
「順調よ、予算以外わね」
「やっぱり厳しいの」
「ええ、かなり…零号機の修復は遅れるかも知れないわ」
「そう…」
「で、今日は、この様子を見に来たの?」
「少し相談があってね」
「分かったわ、研究室で待ってて、これが終わったら行くわ」
「ありがと」


 2時間後リツコが研究室に戻ってきた。
「待たせたわね」
「立派に仕事をやって来てくれているんだから良いわよ」
「そう…コーヒー入れてくれる?」
「分かったわ」
 リツコのネコのイラストが描かれたカップをとり、コーヒーを入れる。
「今日来たのはね、それをリツコからも口添えして欲しいのよ」
 リツコは机の上に置かれたプランが書かれた書類にざっと目を通す。
「支援兵器の復旧計画ね」
「そう、これから支援兵器が必要になるのは、第拾六使徒とゼーレ戦だけだからそれに最適化しておこうって思ってね」
「で、この一番上のプラン?」
「そ、はい、」
 リツコはミサトからネコのカップを受け取り、コーヒーに口を付けながらそのプランをじっくりと見直す。
「良いわ、ミサトにしては美味しいコーヒーを入れてくれたことだし、お礼に適当な理由を付けて私からもこのプランを推薦しておくわ」
「一言余計だけど、ありがと」
「構わないわ」


 次の日にはプランに多少手を加えた物の実行がされ、早速、各部署に通達された。
 見てみると…ミサトが提出した物以上に対人戦闘能力が向上しているようである。これは、リツコの口添えの結果なのだろうか?
「ま、何にせよ、良い方向に持っていけそうね」
 あとは、コレに併せて訓練をしていけばいいだろう。第拾伍使徒に関しては、リツコが協力してくれるから何とかすることだけはできるはずであるし、もう余り深く考えないことにした。
「さ、病院に行くか」
 アスカが今日退院すると言うことで、ミサトが送っていくことになっている。
 

 中央病院の病室では、又ヒカリを含めた4人の姿があった。
「あ、今日も来てくれたたのね」
「アスカの退院の手伝いにも」
「と、言ってもそんなにすることはないんだけどねぇ〜、それでも手伝いに来てもらえるって嬉しいわね」
 二人は微笑みあう。本当に仲が深まる速さが早いようだ。
 

 荷物を後部座席に積みこみ、アスカを助手席に乗せてアスカのマンションに向かう。
「洞木さんと随分仲良くなったのね」
「そね、良いことでしょ」
「ええ良い事ね。でもホント言うと結構驚いているのよ、仲良くなるのが私が思ってたよりもずっと早くてね」
「ま、そんだけヒカリと性格があったって事でしょ。…環境もあんのかもしれないけどね」
「そうかもしれないわね…あの子のこと聞いた?」
「第四使徒戦で犠牲になったって奴のこと?」
「聞いてたのね」
「…あんまり詳しくは聞いてないけどね…」
「シンジ君やレイほどじゃないけど、あの子も色々とあるのよね…」
「何か、ホントに事情持ちばっかりねぇ」
「そうね…でも、アスカもそれなりに色々とあるでしょ」
「まね」
「私だって…かなり色々と事情があるしね」
「セカンドインパクトのこと?」
「そうね…それに、ゲヒルン、そして、ネルフに入ってからも本当に色々とあったわ……」
「私は人類の平和を守るんだ!って正義の旗掲げるだけでいるなんてそうそうできる事じゃないって事ね」
 アスカのマンションの駐車場に到着する。
「ありがと、ここまでで良いわ」
「そう?」
 アスカはドアを開けて車から降り、後部座席から荷物を引っ張り出す。
「ええ、作戦部長さん頼りにしてるわよ」
「任せといてよ」
 親指を立てて笑顔で答える。
「……ホントに色々とあったわね……」
 第3新東京市の町中を走り、今までにあったことを思い出しながら呟く。
「あと、もう少しか…」
 後残っている使徒は3体。それと戦自、量産機これらをクリアすれば全てを変えることができる。それらをクリアできる見通しは未だ立っていない。だけれど、そんなに先が真っ暗というわけではない気がする。何となくではあるけれど、