リリン

第4話

◆真実その訳

7月3日(金曜日)、早朝、シンジのマンション、シンジの部屋、
シンジは目を覚まして直ぐに違和感に気付いた。
(あれ?何だろ・・・暖かくて気持ちいい・・・すべすべしてる?何だろ)
シンジは目を開いた。
布団がどう見ても余分に膨らんでいる。
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、綾波が入って来ちゃったのか)
取り敢えず原因がわかり安心した。
(でも何ですべすべしてるんだろ?・・・・シルクとも違うような・・・・・)
「はっ!」
シンジはおそるおそる布団を捲ってみた。
裸のレイがシンジに抱き付いている。
「・・・碇君・・・」
レイが寝言で甘い声を出し、シンジは再び夢の世界に落ちていった。
そして、その状態は、お腹を空かせたレイラがシンジを起こしに来るまで続いた。


昼休み、第3新東京市立第壱中学校、屋上、
レイラが大きな溜息を付いた。
「どうしたの?」
アスカが尋ねた。
「・・シンジ君とレイさんのこと・・」
「どうかしたの?」
「・・昨日の夜、レイさんなかなか寝られなくて、シンジ君の部屋に行って、シンジ君のベッドに潜り込んだの・・」
「ふ、ふ〜ん」
「・・そこまでは良いのよ・・最初の問題は、シンジ君の暖かさをもっと感じたいってレイさんが思って、裸になってシンジ君に抱き付いた事なの・・」
アスカが複雑な表情をしている。
しかも最初の、である。
「・・で、朝シンジ君は起きて、すぐに夢の世界に逆戻り、私が起こしに行って、事情を聞いた後、最大の問題が起こったのよ・・」
「な、何なのよ」
「・・私が、そう言う、裸で抱き合うのは、好き合っている者同士が2人の時だけしか、してはいけないことなのよって、言ってしまったのよ・・・・・」
レイラは俯いた。
「・・・まさか」
アスカは何となく見当が付き顔をひきつらせた。
「・・そしたら、そうしたら・・・レイさん考え込んで、しばらくしたら、私が碇君に抱いている感情は好きという感情だと思う、碇君は私のことが好きではないの?ってシンジ君に聞いたのよ〜・・・」
そう言う告白ってありか?とアスカは更に顔を引き攣らせた。
「シンジ君は戸惑いながらもしっかり好きだって言うし〜、シンジ君、私も好きなのよ〜・・でも私には恥ずかしくてレイさんみたいな事は出来ない〜!」
泣きが入っていた。
アスカはレイラの肩に手を乗せた。


夕方、ネルフでの訓練が終わったアスカはリリン本部に寄ってみた。
そして、端末から東京システムにアクセスした。
『惣流アスカツェッペリン様ですね、貴女のセキュリティーレベルで閲覧できるデーターは7756万3664件です。』
アスカの顔がひきつった。
「まあ、良いわ、ネルフ主要メンバー、一覧」
ネルフの主要メンバーの一覧が表示された。
アスカのネルフでのセキュリティーレベルは2で、職員の情報は、氏名、所属、写真、電話番号だけであった。
《碇ゲンドウ ネルフ総司令兼本部司令 1将
  48歳  男  レベル7
 東洋の悪魔との異名をとり、人類補完委員会日本代表として国際連合の実質的最高決定権の一つを握っている。情報分析能力、統率力等は桁外れに高く、自身もエヴァの開発に大きく貢献しており、委員会をしてあの男でなければシナリオの進行は不可能だったと言わせるほど。だが、野心家と思われており、腹の底は読めない。委員会やゼーレからは何を考えているのか分からないし、扱いにくい男と思われている。だがその実体は、超が付くほどの愛妻家で小心者、人に意志を伝えるのも自分の本心を見破られないようにして伝えようとするために伝わりにくい。ネルフ総司令という役職に居座っている理由は、妻、碇ユイの復活のためである。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・以下延々と・・・・》
アスカの顔に縦線が入った。
「おいおい」
アスカは自分の情報を見てみた。
《惣流アスカラングレー ネルフ作戦部所属 准尉
  14歳  女  レベル1
 セカンドチルドレン、エヴァンゲリオン弐号機専属操縦者。13歳にして学士号を獲得した天才。身体能力も桁外れに高い。自尊心が極端に高くプライドの固まりのような少女。エヴァンゲリオンの操縦も他のチルドレンとは一線を画く。だが、実体は母惣流キョウコツェッペリンの自殺がトラウマとなっており、心の傷から逃げているだけの弱い少女。サードチルドレン碇シンジにシンクロ率を抜かれた頃からプライドが傷つき、トラウマを呼び起こしシンクロ率を低下させるという悪循環を繰り返し、第拾伍使徒アラエルの精神攻撃によって精神崩壊を始め心を閉ざし始める。更に、シンクロ率0%と言う現実に精神崩壊を引き起こし失踪。衰弱した状態で発見され、ネルフ中央病院に収容。戦略自衛隊ネルフ本部侵攻時に、弐号機に搭乗させられ、理由は不明ながら復活、シンクロ率178%と言う異常な状況の中、戦略自衛隊1大隊に相当をほぼ壊滅させる。その後、ネルフ本部を急襲した9機のSS機関搭載型の量産型エヴァとの戦闘で、一時は9体を破壊するものの、再生し復活した量産型エヴァにより攻撃を受け、ロンギヌスの槍のコピーにエントリープラグが貫かれたことから死亡と推定。》
「な、なによ・・・これ・・・・」
アスカはキーを押した。
《惣流アスカツェッペリン ネルフ作戦部所属 3尉
  13歳  女  レベル2
 セカンドチルドレン、エヴァンゲリオン弐号機専属操縦者。全国2位の学力を誇り。身体能力も桁外れに高い。自尊心が極端に高くプライドの固まりのような少女。エヴァンゲリオンの操縦も他のネルフのチルドレンや候補生とは一線を画く。だが、実体は母惣流キョウコツェッペリンの自殺がトラウマとなっており、心の傷から逃げているだけの弱い少女。友人は、候補生の洞木ヒカリを初めとしたチルドレンと候補生に限られ、交友範囲は狭い。》
「・・・・なによ・・・・いったい・・・リリンって何なのよ・・・」
アスカはシンジを選択した。
《碇シンジ ネルフ作戦部所属 準尉
  15歳  男  レベル1
 サードチルドレン、エヴァンゲリオン初号機専属操縦者。碇ユイ博士の事故以前の記憶は失われており、また、父親碇ゲンドウの知人の元に10年間預けられる。0−9システムと呼ばれる初号機を実戦にてシンクロ率42.63%で起動させ、第参使徒に対して初号機の暴走によって勝利する。以降、使徒戦における中心として活躍し、実質エースパイロットとなる。これが惣流アスカラングレーと衝突、自身も罪悪感を感じる結果となる。第拾参使徒ゼルエル戦にて、シンクロ率412%を出し、LCLに還元する。赤木リツコ博士の指揮の元サルベージに成功。第拾七使徒タブリスである渚カヲルと親友となり、最終的に初号機にて殲滅、それにより、巨大な罪悪感に囚われ心を閉ざす。その後、人類補完計画の依り代としてサードインパクトを起こす。結果、人の存在する世界を望んだが、力不足で中途半端な死の世界となる。そこで、過去への回帰を望み、過去へと飛ぶ》
「・・・・」
「まさか・・・タイムトラベラー・・・・・・・・」
アスカは、リリンの主要メンバーのシンジを選んだ。
《碇シンジ リリン長官 1将
  14歳  男  レベルD
 詳細閲覧には、制限解除を受けたレベルCかレベルDのIDが必要です》
「ち」
「どうかな?」
後ろからシンジの声が聞こえた。
「な!」
アスカは勢い良く飛び退いた。
「そんなに構えなくても良いよ、アスカは正規の方法でアクセスしてるんだから」
「あんたいったい・・・」
「ご想像の通り、タイムトラベラーさ」
「・・・・」
「・・・・」
「何でアタシに知らせたの?」
「アスカはアスカだからさ」
「どういう意味?」
「僕が知っているアスカと今のアスカは別の人生を歩んでいる。どちらかと言うと、今の方が良い人生かな?でも、別人じゃないよ、アスカには知らせる義務があると思ったから」
「・・レイには?」
「まだ知らせない、綾波の場合は、単純に行かないんだ。」
「・・・・で、アタシをどうするわけ?」
「特に、みんなには黙っていてほしいだけ・・・取り敢えず、リリンがネルフと同等の位置になるまではアスカにあんまり派手な活躍されると困るんだよね」
アスカは沈黙したまま答えを返さなかった。
「黙っててくれる?」
「・・・良いわよ、でも、アタシには色々と教えなさい」
「うん、そうだね、今日は遅いから又、次からは長官室で、アスカのIDで入れるから」


7月3日(金曜日)、第3新東京市、ネルフ本部、総司令執務室、
「碇・・・・リリンはいったい何を知っているのだろうな・・・」
「今日の模擬戦で分かる」
「マギを信頼しているのか?」
「役立たずは用済みになるだけだ」
「・・・・相変わらずだな」
まさか、ネルフの末端のパイロットが知っているとは思っていない二人であった。


その頃、技術部員総出で模擬戦に備えていた。
「いい、ネルフとマギの名にかけて負けられないのよ」
「「「「「はい」」」」」
「先輩!私も全力でがんばります」


リリン本部、
3人は、学校を休んで来ていた。
シンジはジュンコ達に混じって調整を進めている。
「どうですか?」
「人格も安定しました。流石ですね。悔しいですけど」
「でも、貴女以外では、これは作れなかったのですよ」
「まあ、そうなんですが・・・」
ジュンコは東京システムを見た。
先日までナオコの人格で動いていたが、今は、初号機からデーターコピーしたユイの人格に変えられている。
処理機能において46%上で、思考回路も優秀なのである。これにナオコがいれば、リツコさえいなければオリジナルを含めて世界中のマギ6体を全て同時に相手に出来る。
『模擬戦開始まで1時間です』
「ジュンコさん、頼みましたよ」
「ええ」
レイがジュンコに近付いた。
レイはジュンコの目をじっと見た。
「な、なに・・・」
レイはまだじっと見ている。
そして突然ぺこっと頭を下げた。
「ごめんなさい」
「は?」
「赤木博士、ごめんなさい」
「・・・あの事はもう良いわ、私も吹っ切れたの、それより、貴女も幸せになりなさい」
「・・・はい・・」
レイは頷いた。


ネルフ本部、第1発令所、
メインモニターにジュンコが映った。
『リリン技術部長飛龍ジュンコ2佐です。』
「ネルフ技術部長赤木リツコ1佐です。」
『今回はどんな結果になってもお互いに全力を尽くしましょう』
「ええ」
「先輩、時間です」
メインモニターにイメージ図が画かれた。
『これより、模擬戦を開始します』
そして、開始と同時にマギは全力で東京システムに浸食を開始した。今回、リツコはいかさまをしていた。松代のマギ2をバックアップとして同時に使用していたのだ。回線数や距離の関係上完全には生かし切れないが、それだけでも相当な戦力である。
(ふふふ、敗北の文字は初めからないのよ)


リリン本部発令所、
「あらあら、リッちゃんたら、卑怯な手段を使っちゃって、ま、それでないと面白みがないわね」
ジュンコはキーボードを叩いた。


ネルフ本部、第1発令所、
「東京システム!処理能力を28%上げました!!」
「なんですって!!」
「押し返されています!!」
「マヤ!!!」
「はい!!!」
リツコが二つのキーボードをマヤは一つのキーボードを猛烈な早さで叩いている。
リツコの指が50本くらいに見える。
「東京システムアメリカのマギ3をハッキングしています!!!!!」
「はあぁ!!??」
「マギ3、マギ2にハッキング開始!!マギ2防衛モードに入りました!!!」
「何ですって!!!!!!」
「押されています!!!メルキオールリプログラムされました!!!続いてバルタザールも!!!」
「第666プロテクト発動!!!!!」
「第666プロテクト展開しました。マギオリジナル全て制御下に戻りました」
「第666プロテクト防壁が破壊されていきます・・・・」
そして2分後、マギは敗北を喫した。完敗という形で
リツコは放心状態になった。


総司令執務室、
「碇・・・マギが完敗・・・しかもいかさましてだぞ・・・」
「拙い・・・ここまでの差があっては拙い・・・・」
「ああ、我々ネルフはリリンに明らかにかなわない」
「四号機と伍号機、本部に向けて輸送をさせた・・・だが」
「ああ、不利には変わりないか・・・せめてコアが採取できれば、SS機関が手にはいるが・・」
「もしもSS機関がリリンの手に渡れば、ネルフはそれまでだ」
「ああ、そうだな」


ゼーレ、
「ゼーレ最高委員の全員召集とは、ちと速すぎますな」
「リリンのコンピューターは、3体のマギを同時に相手に勝利した、これは余りにもゆゆしき事態だ」
「碇、あの男では、力量不足だったと言うのか」
「さすれば、我らの計画、無謀な試みだったと言わざるをえんぞ」
「もはや後戻りは出来ぬ、」
「全ての問題は、あの皇耕一と碇シンジにある」
「2人を消せばリリンをネルフに強制的に組み込める」


東京帝国グループ総本社ビル会長室、
吉若ミユキ主席秘書官代行が報告をしている。
「会長、早速ですが、ゼーレが動き出しました。」
「ふむ、で?」
「全く問題ありません。」
「では、その件は任せた」
「はい」
日本政府を完全に落とした耕一は次はアメリカをどうやって落とそうか考えていた。


7月4日(土曜日)、第3新東京市立第壱中学校、
レイはアスカに声を掛けた。
「アスカ、ネルフに行っても良い?」
「ん?アタシは構わないけど、シンジは?」
「良いって言ってたわ」


そして、レイはネルフの専用車で、アスカ達共に、ネルフ本部に向かった。
ジオフロントゲートには、シンジ親衛隊第1隊の女達が4人待っていた。
「レイ様のネルフ本部内での護衛をさせていただきます。」
「護衛って、あんたらネルフがそんなに信用できないの?」
「いいえ、レイ様の重要性がネルフにとって非常に高いそうです」
「そうですって・・・」
「シンジ様のご命令です」
「はあ・・」
そして、一行は、本部内に入った。
廊下でリツコと会った。
「あら?レイ」
「リツコ博士」
リツコはレイの呼び方の変化について考えた。
(何故変える必要があったの?赤木では問題があるの?・・・・あの東京システムの能力・・・・まさか・・・母さん???)
「レイ!飛龍ジュンコの正体は母さん?赤木ナオコ!?」
アスカ以下親衛隊員も含め理解できていない。
レイは頷いた。
「・・・そんな・・・・母さんが・・・・」


総司令執務室、
碇が大汗をかいていた。
「まさかナオコ君が生きていたとはな・・・いったいどうするつもりなんだ?」
「必要なら処分する」
「出来るのか?」
「・・・・・殺るしかあるまい」


リリン本部、ゲート、
「ネルフ技術部長赤木リツコ様ですね、外来用IDカードをお作りします。」
暫くして警備員は外来用の透明なIDカードを持ってきた。
「どうぞ、これは外来用なので、セキュリティーレベルを必要とする区画には入れませんので」
「結構です」
レイとリツコはリリン本部に入った。
廊下を進んでいる。
何の目的があるのか巨大な立体迷路のネルフ本部と違い、リリン本部は構造も分かりやすく、案内板も各地にある。
そして、発令所に向かった。
発令所からジュンコが出てきた。
「母さん!」
リツコが叫んだ。
ジュンコは驚いた表情をした後、レイを睨んだ。
「レイ、どうして喋ったの?」
「レイラさんが親子は仲良くしなければ行けないと言っていた。」
(でも、あの2人は無理)
「母さん!」
リツコがジュンコに泣きついた。
「あらあら、リッちゃんは泣き虫ね」
その後、2人は個室で長居は話をしていた。
(・・・・帰る)
レイは帰路についた。


長官室、
アスカは出されたケーキを食べ、珈琲を飲んだ。
「で、何から聞きましょうか?」
「今、話せることなら何でも」
「じゃあ、シンクロ率の高さの理由を聞かせてもらいましょうか」
手っ取り早くシンクロ率を上げるには答えを知っているものから聞けば良い。
「ああ、あれはね、僕はコアにシンクロして、綾波は僕にシンクロしてるんだよ」
「どう言う事?」
「綾波がコアにシンクロした場合、シンクロ率は50くらいかな?、でも、僕を経由させてシンクロさせれば100近くになる。言ってみれば、綾波は発電器、僕は、発電器と変圧器を兼ねてるって感じかな」
「それでパーソナルパターンが近い必要があったわけ」
「そうだよ、ネルフの同時シンクロとは、別の物なんだよ、理由はまだ話せないけど、綾波と僕だから出来る特技みたいな物だね」
「そうなの」
「実は、前の歴史でも一度だけ二重シンクロをしたことがあるんだ。」
「どうだったの?」
「アスカと僕で、結果、シンクロ率が60台から90近くに跳ね上がった。アスカと僕のパーソナルパターンを考えると、お互いに補完し合ったと言ったところになるのかな?」
「まあ、良いけど、シンジ一人でのシンクロ率はいくつなのよ?」
「う〜ん、測ってないけど、99.89%くらいかな?」
又その数字?とアスカは思った。
「あのさ、気になってるんだけど、その99.89%ってやけに多くない?」
「うん、これには、ちゃんとした理由があるんだよ、その原因は分からないけど」
「まあいいわ・・あの飛龍ジュンコ博士の正体は赤木ナオコ博士で良いのね」
「うん、理由があって、正体を隠さなきゃいけなかったんだけど」
「そりゃ、勝てるわけないわよね」
「うん」
「じゃあ、次、前の世界でのあたし達の関係は?」
「う〜ん、難しいな〜、まあ、似てたんだよ、2人とも、深層心理は、2人とも、親の愛情とは懸け離れた幼児期を過ごした。僕は、拒絶を避けるために初めから人と関わり合いを持とうとしなかった。対してアスカは、誰でも自分を拒絶しないだけの価値を自分に持たせて、他人を見下すことで自分を保とうとした。で、作戦上の理由から、僕たちは、ミサトさんちで同居することになる。」
「ミサトの家で・・・」
「誰が保護者なのか分からないよ」
「でしょうね・・・・あの料理はもう食べたくないし・・・・」
どうやらアスカは被害者の一人らしい。
「で、深層心理はよく似ているけど、表層心理と行動は全く逆の2人が同じ場にいきることになった。アスカの方が優勢だったときは本当に良い雰囲気だった。でも、僕がアスカに迫り、そして追い抜いたとき、同時にその良い雰囲気も崩壊した。その後も色々あって、耐えられなくなった僕はアスカに助けを求めた。それがアスカにとっては最大の屈辱だったみたいだね、自分を抜かし、自分の存在意義を奪い、自分の上にいる者が、自分に救いを求める。アスカにとっては耐えられるような物じゃない。そして、同じ傷をもつもの同士、舐め合い傷を癒やす関係から、お互いを傷つける関係になる。そして家族ごっこも終わった。」
「・・・・何となく分かるわ」
恐らく本当にそんな事が起こったら・・そうなってしまうだろう。
「でも、この世界の方がアスカの心の傷は小さいと思う」
「どうして?」
「惣流アスカツェッペリンのままだし、洞木さんやマナみたいな友達がいるからね。アスカの大卒という経歴は、プライドを満たすかわりに心の傷を大きくしていたからね」
「そう」
「じゃあ、あんたはどうしてリリンを作ったわけ?」
「一つは、ネルフでは末端のパイロットでは何もできない。だから自分が最高幹部になる必要があった。そして、もう一つ、ネルフは金を使いすぎる。予算を見てみれば分かるけど、ネルフはリリンの10倍以上の金を使っている。それがE計画のためならばいい、だけど、違うんだよ、ネルフが裏で進めている計画、人類補完計画。人為的に引き起こす一部の者にとって都合の良いサードインパクト、それを阻止するためなんだ。」
「サードインパクトって、爆発するんじゃないの?」
「違うよ、サードインパクトが起こると、全ての生命体がLCLに還るんだ。そして、サードインパクトの依り代になる存在だけが残る。そして、依り代の望む世界が構築される筈だったんだけど、失敗してね、残った力で過去に戻ったんだ。補完計画を阻止するために」
「因みに、セカンドインパクトは?」
「あれは、第壱使徒、アダムの力を解放させて、人が扱えるように卵まで戻した際に放出されたエネルギーだよ」
「で、でたらめなエネルギーね」
「そうだね・・・そろそろ時間だね」
「ん?じゃ、アタシも帰るわ」
「アスカってどこに住んでるの?」
「職員寮よ」
「ネルフの待遇悪いな・・・今度交渉しとくよ」
「・・・あんた外部の人間でしょうが」


夜、シンジのマンション、
シンジが作った夕食がテーブルの上に並んでいる。
レイは、少しずつ肉を食べる訓練をしている。
「シンジ君、今日、町でかっこいい男の人に声かけられたんだ」
レイラはシンジの嫉妬を煽ろうとしている。
「ふ〜ん」
「で、喫茶店で紅茶を飲んで、電話番号教えてもらったの」
「良かったね」
シンジは笑みを浮かべながら言った。
「う、うん・・・」
レイラは心の中では盛大な涙の滝を流した。
レイは黙々と食べている。


そして、風呂に入った後、レイがシンジの部屋に寝に来た。
シンジはレイに裸で抱き付くことを禁ずるかわりに、一緒に寝ることを許可することになった。
(・・・・なんか僕、綾波に頭上がらない気がする)
「碇君・・・」
レイがシンジの袖を引っ張った。
「あ、うん」
2人はベッドに潜り込んだ。


レイラの部屋、
「うう〜レイさんには絶対に勝てない・・・・うう〜〜」
レイラは涙していた。
「ふん、こうなったら・・・」
レイラはシンジに匹敵するような人間を思い浮かべた。
耕一しか浮かばなかった。
「・・うう〜シンジ君に匹敵するような人いないよ〜〜」
だんだん壊れてきたレイラであった。

あとがき
レイラが可哀想になってきました・・・
アスカは思いっきり引き込まれています。
しかし髭眼鏡は・・・全く・・・
リツコの動向が気になります。
読者の中の、レイラファンの方、レイラの待遇向上を求めるメールを送ってみては如何でしょうか?
しっかりとした内容ならば、話に何らかの影響があるものと思います。
神威さんの御協力でタイトルが決定しました♪