リリン

◆第10話

8月11日(火曜日)、ネルフ本部、技術棟、
アスカ、トウジ&ヒカリ、ケンスケ、マナ、レイラがシュミレーションを行っていた。
漸く3機のエヴァも修復が終わり、ネルフ側の戦力も戻った。
カヲルは復活したが、六号機は未だに修復中だった。期間だけを考えれば1から作り直した方が早いが、予算の問題が大きかった。
カヲルはリツコとミサトが苦手だった。特にリツコ。
ミサトは凄まじい憎悪の視線で睨み付けてくるが、まあ、それは、仕方ないとは思っているが、リツコは、まるで飢えた犬が餌を見るような視線で見てくるのだ。はっきり言って怖い。
原因は勿論、委員会からの通告で、カヲルには手が出せない事に成っているが、実験したくてしたくてたまらないからである。
何とか委員会にばれない様に実験できないかとマギを使うほどである。それが、ネルフ技術部長としてでも、碇の計画に携わる者としてでもなく、一人の科学の使徒としてであるところが問題である。
シンクロ率は弐号機86.33%、参号機72.44%、四号機36.44%、伍号機41.22%、七号機46.33%であった。
「流石にアスカが群を抜いてるわね」
「格闘技能ですが、レイラさんはかなり高いですよ」
マヤがファイルを見ながら報告した。
「護身術として、一通り嗜んだと言うだけでこれ?」
ファイルを見せてもらったミサトはちょっと顔色が悪い。
「どのくらい凄いの?」
リツコが尋ねた。
「・・私と良い勝負?」
「・・それは凄いわね・・」
「正に、天才、ですか?」
「戦力的には、参号機を上回るわね」
「はい」
(しかし、リリンは何故零号機を使わなかったの?)
あれだけの技術力ならば、汎用コアくらい用意できるはず、では、何か、零号機を使う目的があるとでも言うのだろうか?初号機と対になるエヴァがいるのか、或いは・・・
シュミレーション空間で、対戦をしているがやはりアスカが圧倒的に強い、元々、アスカは、複数を同時に相手にする事になれている。
今、1対4で、アスカが勝利した。
「・・・」
「・・・で、レイラさんへの尋問はしないの?」
折角の情報源であるはずのレイラへの尋問が行われていない事を、最近知ったミサトはリツコに尋ねてみた。
「正式な職員じゃないのよ、いつでもリリンに戻れる以上、干渉できないわ」
「・・そう・・・」
「大体、彼女がどのくらいの地位の人間か知っているの?」
「地位?」
ミサトは良く分からないと言った顔をした。
「社会的重要性は、米国の大統領以上よ」
「「「「な!?」」」」
ミサトだけでなく周囲の職員の一部も驚いたようだ。
「世界経済の支配者、皇耕一の一人娘、正に世界経済のプリンセスね。受け継ぐ事に成る資産は推定で千数百兆といったところかしら?」
国家の国富を遥かに凌駕するその莫大な資産。
こんなところにいて良いような存在ではないのだ。
「もし、彼女にもしものことがあったら、私達は全員絞首刑ね」
リツコは半分冗談だったが、その可能性もありえる事は本当であった。


その頃、シンジのマンションでリリンのお姫様方は、何をしていたかと言うと、
レミは、テレビゲーム、レイはネット証券取り引き。
「シンジ!、今日こそ勝つわよ!」
「はいはい」
シンジはコントローラーを手に取った。
前回、アスカに徹底的にコテンパンに去れた対戦格闘ゲームである。
だが、シンジは滅茶苦茶強くなっていた。それこそ全国大会で優勝できるかもしれないクラスにまで、
「うきいいいい〜〜!!!」
レミの操るキャラは直ぐに劣勢、そして、敗北した。
「くすくす」
レイのノートパソコンに表示される金額は、既に5000億に達し、レイ一人の手によって株価が操作されるまでに成ってきた。
「むきいいいい〜〜!!!」
「ふっ」
どこかで、シンジはアスカと再戦する事に成ると思っていたのかもしれない。まあ、それが、アスカだったのか、レミだったのかは分からないが、


ネルフ本部、総司令執務室、
冬月が電話を受けた。
「なに!?」
「どうした?」
「ルシア会長婦人が明日来るそうだ」
「・・そうか」
冬月の表情には汗が見える。
「・・何を焦っている」
「いや、だが、しかしだな、彼女は」
「敵対勢力のトップと会うのに怖じ気づいてどうする?」
「彼女の場合、意味が違うぞ」
「変わらんさ」
これが、神の定めた、自然の摂理に真っ向から反抗している男と、所詮その男の協力者に過ぎない老人の差であろうか


8月12日(水曜日)、ネルフ本部へリポート、
1機の大型ヘリが降下してきている。10を超える護衛ヘリが周囲に展開されている。
ヘリを出迎える為に親衛隊が整列している。
ルシアを出迎えに来たリツコとミサトはかなり緊張している様子である。
ヘリが着陸し、ルシアが降りて来た。
ヘリの起こす強い風にルシアの長い黒髪が激しく靡いている。
リツコとミサトが進み出た。
「ネルフ本部技術部長赤木リツコ1佐です。」
「同じく作戦部長葛城ミサト2尉です。」
「ルシアです。宜しくお願いします」
肩書き無しで万国通用する。
世界で最も重要な人物の一人である。
耕一は全幹部の信用と信頼を集めているのならば、ルシアは、信仰を集めていると言っても過言ではない。
実際、ルシアを崇める宗教団体も存在する程である。
「御案内致します」
「お願いします」
ルシアに付き従っている親衛隊員の人数は12名、その他、秘書官9名、一般護衛63名、その他11名と言う大人数である。
こんな女性の娘が一応なりとも一般社会で暮らしている事の方が不思議である。


ネルフ本部、総司令執務室、
「赤木です。ルシア様を御案内致しました。」
ドアが開いた。
一般の付き人を其処に残し、上級秘書官ユナゼムラーのみを連れて、リツコ、ミサトと共に入った。
ルシアはこの執務室の中央に置かれたソファーに腰掛けた。
「ネルフ総司令、碇ゲンドウだ」
「副司令の、冬月コウゾウです。」
敬語を使わない碇にはらはらさせられているのが見て取れる。
「ルシアです。娘がお世話になっています」
ルシアは頭を下げた。
「いえ、そのような事は、」
「ユナ」
「はい」
「両司令官と内密の話があります」
「畏まりましたわ」
ユナ、ミサト、リツコが退室した。
暫く沈黙が流れた。
碇は兎も角、冬月の方は辛そうだ。
立場上は、ゼーレのキールと同じような者ではないかと考える者もいるが全く異なる。
キールは、所詮、12人の、ゼーレ最高委員の筆頭に過ぎない。
耕一やルシアはゼーレには存在しない、その上支配者である。
キールが、相対的権力者に過ぎないのに対し、此方は絶対的権力者である。
「お話と言うのは、ネルフとリリンの事です。」
「な、何でしょうか?」
「お互いに競い合い、切磋琢磨する事は非常に良い事だと思います。しかし、今のところ、対抗意識が敵対意識に変わっているように思えます」
その通りではない、幹部ははなから敵対意識である。
「そ、その通りですね・・」
冬月はハンカチで脂汗を拭いた。
「私としては、人類の未来を守る為に少しでも危険性を押さえ、そして被害を押さえる為にも、協力し合う事を望みます。それが被害を押さえ、飢餓や貧困に苦しむ者達を救う事になるのです」
「は、はい・・」
碇はさっきから一言も喋らずに冬月ばかりが返答している。
「貴方達、頂点に立つ者がそれ相応の態度を示せば、下に付き従うもの達の態度も改まる事でしょう」
「ごもっともで」
碇は余りにも卑屈になり過ぎている冬月にどこか呆れたような雰囲気である。
「碇財閥の件は知っています。しかし、そのような人類同士の愚かな争いによって、大衆に過剰な負担を強いる事は赦されません」
「し、しかしですね・・」
「分かっています。所詮、ネルフもリリンも人類が作り上げた社会システムの中に組み入れられている以上、正論だけで動くものではないと言う事は承知しています。」
「ですが、その正論に近付けると言う努力はすべきでしょう」
「は、はい」
「結果も重要ですが、その過程も重要です。初めから、諦めて放置しておけば、ますます正しい道から遠のいてしまいます」
雰囲気を変えてルシアはじっと碇を見詰めた。
凄まじい迫力である。
冬月は心臓を鷲掴みにされたかのような恐怖に襲われ、碇の方も余りの迫力に、汗を垂らしていた。
「碇司令、ここで、ネルフとリリンの関係改善の為に努力すると私と約束していただけませんか?」
別段そんな事は無いのだが、まるで、脅迫されているような感じにさえなってしまう。
碇はルシアを視界から外す為に目を閉じた。だが、その凄まじい迫力のようなものはいっそう強く感じられてしまう。
そして、碇が遂に発した言葉は
「分かった。善処しよう」
言い古された政治家のお決まりの文句を自分の言葉にして言っただけであった。
ルシアもそれが上辺だけの言葉でしかないことを悟ったのか更に強烈な威圧感を掛けた。
冬月は呼吸すら出来ずにいつ倒れてもおかしくない。
碇の方も完全に威圧され全身が恐怖で小刻みに震えていた。
「約束していただき有り難う御座いました。近い内に、両組織の関係が改善される事を期待します。」
ルシアはそう言った後に雰囲気を元に戻した。
冬月は巨大な恐怖から開放され、脱力しその場に見っとも無くしゃがみ込んでしまった。
碇の方もほっとしたのか汗を拭った。
「個人的にネルフに寄付をしたいと思います」
二人が反応した。
「私の立場上、明確に、ネルフを支援する事は出来ません。ですが、碇財閥、そして、ゼーレの支配から抜け出す為の準備に役立てて下されば嬉しいと思います」
「で、一体おいくらで?」
「今回、耕一さんにも内緒に動かす事が出来たのは、3兆円程でですが、これをお役に立てて下されば幸いです」
二人は飛び上がらんばかりに驚いた。
耕一に内緒で3兆もの予算を動かすとは・・・
「民衆の為にも、そして、もうひとつ、娘を宜しくお願い致します」
ルシアは深く頭を下げた。
ルシア退室後、二人は疲れ切っていた。
「・・碇・・・彼女は我々よりも高次な存在なのかも知れんな・・」
「・・ああ・・」
ルシアから感じた特殊な気配、単なる恐怖でもない、強いて言うなれば、畏怖、と言ったところか、それも、背景にあるものではなく、ルシア本人の発するものに対してである。


会談後、応接室でレイラとルシア親子だけに去れた。
本来ならば監視カメラや盗聴機を稼動させておきたかったが、ばれて予算を逃がすわけには行かないので全て切られた。
「・・お母さん・・・」
レイラは済まなさそうに俯いている。
「シンジ君の事、どう思っているの?」
ルシアはネルフに入った事を責めるのではなく、シンジの事を問うた。
「・・・好き・・・」
「・・そう・・当然ね・・・」
ルシアはカップの紅茶に口をつけた。
「・・・でも、シンジ君は、レイさんの事を・・・」
「・・・・」
「・・・それに・・シンジ君の世界のアスカさんも・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
ルシアはカップを置いた。
「・・レイラ、貴方の、好きとは如何言う意味?」
「え?」
「・・好きにも色々あるわ、」
レイラは少し考え込んだ。
「そして、もう一つ・・・恋と愛は似て非なるもの・・・レイラはシンジ君の事を愛する事が出来る?」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・分からない・・・」
「・・・そう・・まだ、暫くは考える必要がありそうね・・」
レイラはゆっくりと頷いた。
「・・・もう一つ・・何も、恋人や配偶者にならなくても、シンジ君のそばにいる方法はあるわ、いっしょに考えなさい」
ルシアは心当たりがある。リリンの司令を勤める蘭子。
耕一への慕情を寄せている、しかし、それはかなえられる事は無い。ならばせめて、側に、そして、耕一の為にと・・
「・・・・うん・・・・」


その頃、リリン本部の長官室では、シンジ、レイ、レミ、蘭子、榊原で、イスラフェルに関して話をしていた。
「ネルフは如何ですか?」
「恐らくは、先行して出撃するでしょう」
「まあ、無理もありませんね、ガギエル戦で失敗していますからね」
「アスカやレイラにはイスラフェルの事伝えたの?」
「いや、詳しくは伝えてないよ」
「・・・ユニゾンはどうするの?」
「僕が初号機で、綾波が零号機で、だろうね」
「そうね・・」
レイはシンジとのユニゾンの特訓を想像しほんのり頬を赤らめ、それを見たシンジも赤くなった。
「たくっ・・・」
レミがぼやいた。


8月14日(金曜日)ネルフ本部、第1発令所、
「警戒中の巡洋艦はるなより入電、我、紀伊半島沖にて巨大な潜行物体を発見、データーを送る、確かめられたし。」
青葉が報告した。
「解析終了、パターン青!」
「総員第一種戦闘配置」
碇は不在で、冬月が指揮をとっている。


東名高速道路、12式大型発令車、
「先の戦闘によって第3新東京市の迎撃システムが受けたダメージは現在までに復旧率72%、実戦における稼働率はいまいち。従って今回の迎撃は上陸直前の目標を水際で迎え撃ち一気に叩く!」
「弐号機をメインとし参号機七号機がサブ、四号機と伍号機がバックアップ、接近戦で行くわよ」
『『『『『はい』』』』』


海岸線、
5体のエヴァが武器を片手に並んだ。
まるである意味戦隊物である。
弐号機がソニックグレイブ、参号機がスマッシュホーク、七号機がアクティブソード、四号機と伍号機が新型パレットライフルを手にしている。
水柱があがりイスラフェルが姿を表した。
『攻撃開始』
ミサトの声と共に、四号機と伍号機が新型パレットガンを斉射し、弐号機参号機七号機が飛び出した。
最も早く到達した弐号機が一閃、ソニックグレイブで真っ二つにした。


第3新東京市上空を戦場に向けて飛行中の新型ウィングキャリアーに搭載されている、零号機のエントリープラグではレイが少し不満そうな顔で頬を膨らませていた。
理由は簡単。
レミが、出撃前に、一度試してみろと言った為に、ユニゾンを試しにしてみたらパーフェクト。
レイは嬉しかった反面それ以上に、ユニゾンの特訓が無くなった事が不満だった。
『綾波、機嫌直してよ、この埋め合わせはするからさ〜』
何故埋め合わせの必要があるのか?
前回の我が侭姫の御機嫌取りの経験からだろうか・・・
「・・・分かったわ・・・」
シンジは笑みを浮かべた。
『じゃあ、考えておくよ』
レイは頷いた。


海岸線では激戦中、
5対2で圧倒的に有利なのだが、如何せん再生能力が高過ぎる。
不毛な戦いはパイロットの士気と集中力を削いでいった。
今、伍号機が掴まりビームの同時放火を浴び沈黙した。
続いて四号機、参号機と、
戦場には弐号機と七号機が立つだけとなったが、両機とも、アンビリカルケーブルを切断され、もはや1分も動けない。


発令車、
ミサトは拳を握り締めていた。
「・・ぐっ・・・」
「リリン、ウィングキャリアーより入電、作戦指揮権を譲渡せよ」
「ざけんじゃないわよ!!」
そうこうしている内にも内部電源の残量は刻一刻と減っていく。
リリンのウィングキャリアーが上空で旋回している。
「再び入電、作戦指揮権の譲渡を要請しています」
「アスカ!レイラさん!ATフィールドを中和して!」
「中和し次第、NN爆雷投入」
オペレーター達は青くなった。
「どうしたの?」
「NN爆雷の投入と仰られたのですか?」
「そうよ、ATフィールドの中和が有効な内に、早くしなさい!」
戦場を光が包んだ。
7発ものNN爆雷が同時爆発したのである。
そして、煙が晴れた。
「・・・パターンブルー消滅を確認」
「被害報告、弐号機大破、参号機中破、四号機大破、伍号機中破、七号機中破です」
「現時刻を持って作戦を終了します。回収を急いで」
ミサトの焦りが生んだ大きな過ちであった。
これ以上リリンを活躍させるわけには行かない、だから多少の犠牲を払ってでも、ネルフが殲滅する必要があった。だが、これは、多少とは程遠い。


新型ウィングキャリアー初号機
シンジは絶句していた。
味方毎焼き払うとは・・・
自分は、前回こんなとんでもない人間の指揮で戦っていたのかと身を振るわせた。
「・・・・レイラ・・・・アスカ・・・」
シンジはモニターに映る両機を指で触れた。
「・・・」


アスカは、骨折等で全治1ヶ月、トウジは1週間、ヒカリは5日間、ケンスケは緊急手術を要し全治は2ヶ月、マナは全治2週間、レイラは全治10日となった。
これによって、ネルフの戦力はほぼ0となった。
被害金額は12兆に上った。


ネルフ本部、総司令執務室、
冬月が特秘回線で、出張中の碇と話をしている。
「碇、葛城2尉の暴走が行き過ぎておる」
『・・うむ・・』
「このままではネルフどころか国際連合そのものが危ない」
『・・・』
「新たな作戦指揮官が必要だと思うのだが」
『・・・今、直ぐに用意できる代わりはいない、』
「・・・そうか・・・」
『・・・碇財閥に尋ねる事にする』
「・・ああ・・」
『冬月副司令、東京より特秘回線で、お電話です』
冬月は真っ青になった。
『・・冬月・・』
「碇どうすれば良い?」
『・・・私がかわる・・・』
回線が繋げられた。
『おらあ!レイラ様を負傷させるとは何事じゃあああ!!!』
先ず名乗れと言いたいが、その後も数分間怒りに任せて機関銃のように文句を言われた。
後で分かった事だが、通常回線で文句をつけようとしたのだが取り次がなかったので特秘回線を使って司令部に直接文句を言ってきたのだ。
その日の内に、問い合わせ数が200万にも登りネルフ広報部や情報部の機能が麻痺した。


8月15日(土曜日)ネルフ中央病院、アスカの病室、
シンジ、レイ、レミが見舞いに来た。
「大丈夫?」
アスカは手や足を吊っている。
「・・・大丈夫なわけ無いでしょうが・・」
いくらなんでも自分たち毎焼き払うと言うのはあんまりである。
それも、既に、リリンの新型ウィングキャリアーは上空に待機していた。
その目的は、明らかである。
「ミサトさんにとっては、エヴァは只の駒のようだね・・・」
その呟きは淋しそうでもあった。


レイラの病室、
レイラは、ベッドの上で、シンジの事を考えていた。
過去の思い出を一つ一つ深く掘り返し、丹念に分析していた。
シンジの事をどう思っているのか、シンジを愛する事は出来るのか・・・そして、他の選択肢も・・・


技術棟、司令室、
「・・貴女・・無茶苦茶やったわね・・・」
流石にリツコも表情が暗い。
「・・・使徒に勝つために必要なことよ」
「あら?使徒にでは無くリリンにでしょ」
「さあてね」
「でも、早計ね・・・」
「どうして?」
リツコはこめかみを押さえてやれやれと言った感じだったが、ミサトは全く理解していないようだ。
「今回のエヴァの損傷を修復するのに掛かる費用は凡そ10兆、現在ネルフの予算のプールは4兆、修理費が下りないわよ」
「そんなの臨時予算組めば良いだけでしょうが」
リツコは大きな溜め息をついた。
「いったいどこから出すつもり?これ以上圧迫したら、国家の経済が崩壊するわよ」
「何いってんのよ、人類の命運を掛けた戦いに」
リツコはミサトの余りの愚かさに天を仰いだ。
「2012年までならば、その理論が通じたでしょうね」
「はい?」
「今は、リリンがあるのよ、ネルフが潰れても未だ人類は切り札をもう一つ持っているのよ、その意味くらい分かるでしょ」
ミサトは沈黙した。
リリンが如何言う組織なのか、敵対組織、つまり、ネルフを潰そうとしている組織としてしか認識していなかった。勿論これも外れているが、建て前、少なくともミサトが知る範囲では事実は、同じ目的を持つ組織なのだ。
使徒への復讐心、リリンへの敵対心でその極めて重要な事項を忘れていた。
「無様過ぎるわね」


司令部はミサトを懲罰会議に掛けたかったが、適当な後任がいない事、ミサトに与えられている最優先事項、使徒の殲滅を達成している事、他にも何点かが重なり、ミサトの責任は追及できなかった。

あとがき
40000ヒット&公開2ヶ月&合計100話達成!!
・・・ユウキの受難6、間に合いませんでした(泣)
このリリン10話も、修正が不十分です。
誤字や矛盾点、その他もろもろ、あると思うので指摘して下さい。

さて、内容に話を移して、前回は、ルシアボケバージョンだったので、今回はシリアスバージョンです。
ミサトそろそろ首ですかね(苦笑)
プールが尽きるどころか足らなくなったネルフ、今度はどう言った手段で金を集めるのでしょうか?
いい加減にしないと、世界が滅びますね。
今回、恋沙汰に関しては、レイラとルシアの会話がありました。

当てにならない次回予告 
レイラが、シンジに告白します。
スーパーサンダルフォンが出ます。
カヲルが苛められます。
シンジが悩みます。