リリン

◆第15話

9月30日(水曜日)、第3新東京市立第壱中学校、2−A、
どうも、昨日の一件は瞬く間に広がったらしく、皆の3人を見る目が変わっている。
完全に興味本位、ケンスケに至っては・・・どちらが勝つか賭けの元締めをやっている。
最近は面白い話題が無かった上に、3人が特別な人間達である為、皆普通の恋沙汰とは遥に違うのめり込み様である。そして、男子は、敗北した側に救いの手を差し伸べ、自分の女にする事を考えている。疵付いた女ほど口説きやすいものはない。そして、一方の女子は漁夫の利を狙っている。
レミを含め4人は窓際にあるレイの席の周りに集まっているが、先ほどから沈黙を守っている。いや、そうせざるを得ない。
一言一言、一挙一動にクラス中が反応してしまい、いくらなんでも話すことが出来ない。


昼休みになると半ば衆目から逃れるかのように4人は屋上に出た。
流石に興味本位で付き纏う事をあからさまにするのは避けられるのか、付いては来なかった。
ケンスケはどこかに潜んでいるのだろうが・・・
シンジから時計回りにレイ、レミ、レイラと座り弁当を広げた。
暫く黙ったまま食事が始まった。
レミは顔を顰め、何か当り障りの無い話題は無いか考えた。
「そうだ、学校終わったらアスカの御見舞い行かない?」
これならば問題無いだろう。
「そうだね、」
「・・そうね」
「うん」
取り敢えず、アスカの見舞いに行く事が決まり、その後はアスカに関する話がぽつぽつと続けられた。


放課後、4人は、ネルフ中央病院にやって来た。
病室のベッドでは、アスカが退屈そうにしていたが、4人の姿を確認するとパッと笑顔になった。
「お〜!よく来てくれたわね!」
「はい、御見舞い」
レミはフルーツが盛られた籠を棚の上に置いた。
雰囲気からアスカは、シンジ・レイ・レイラ間に何かあった事を敏感に感じ取った。
そして、レミとのアイコンタクトで凡その事を察した。
(このままじゃ両方とも拙いわね)
その後、シンジ・レイ・レイラ間にアスカとレミが入り話題を繋ぐ事で久しぶりに談笑する事が出来た。
帰る頃には少しではあるが雰囲気が良くなっていたので、シンジはアスカとレミに感謝した。
「明日退院だから、月曜日にゃ学校で会いましょ」
「そうだね」
「そうね」
レイも頷いた。
「じゃあ、明日迎えに来るね」
「お願いね」


10月2日(金曜日)、リリン本部、技術棟、
シンクロの実験が行われていた。
この心理状態にも拘らず数値は、195%を超えている。
「流石ね・・」
「ええ」
レミは過去に自分の心理状態によってシンクロ率が下降していった事を思い出した。
「・・あの二人って、シンクロ率って下がる事あるの?」
「え?」
「アタシの時はがたがた、最後には0になったわ・・・にも関わらず、二人は5%も落ちちゃいない」
ジュンコは顎に手を当てて考えた。
「そうね、貴女の場合は、エヴァに関する心理不安、二人の場合はレイラさんに関する心理不安、単純に比較は出来ないわ」
「・・そっか・・・でも、」
「ええ、このままでは拙いわね・・・でも結局、最後は、自分達で解決するしかない事なのよ・・・」


一方ネルフ本部、技術棟では四号機、伍号機の修復と平行して弐号機の修復が行われていた。
参号機と七号機は未だ修復は行われていない。
「・・先輩、ネルフは大丈夫でしょうか?」
マヤが不安げに尋ねた。
「・・分からないわね・・現状ではネルフの戦力は0、弐号機復活には未だ1週間以上掛かるわ」
「・・ロシアから、八号機が来ると聞きましたが・・」
「ええ、来月にはね」
(遂に八号機まで投入・・・計画モデルの必要数は9・・・使徒戦が終わった時・・・ゼーレに・・いえ、人類に・・それだけの力が残っているのかしら?)
ゼーレの計画は破綻しかけている。いや、恐らくは破綻するだろう。
では、ネルフ、自分達の計画は?初号機もレイもリリンに・・・だが、未だ望みはある。・・・まあ、最も、リツコは望んではいないが、
「まあ、9thが・・・そうだわ」
「何か?」
「中央病院に行くわ」


リツコはネルフ中央病院に到着するとカヲルの主治医に会った。
「赤木博士何か御用ですか」
「9thチルドレン、渚カヲルにこれらの検査を実施しなさい」
リツコは用紙を渡した。
「・・・これは・・・」
其処には検査と称した様々な実験が並べられていた。
「いいわね」
リツコは部屋を出ていった。
(そうよ、自分でやらなきゃ良いのよ、医者にやらせれば、医療上に必要な検査だといって誤魔化せるし、万が一の場合はトカゲの尻尾きりをすれば良いのよ、さあ、結果が楽しみだわ♪)
その表情は、玩具を見つけた子供のようであった。


10月3日(土曜日)東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、
耕一は先のイスラム勢力に関する追加報告書を読んでいた。
ゼーレの手は入っていない事が確認されたが、反東京帝国グループ系の勢力とは繋がりがあるようだ。
誕生した勢力は、他の二つの勢力に比べれば小さな物ではあるが、国の数が多い為、特に国連総会における影響は無視できない。東南アジアの石油を押さえている為中東からの石油を止められても危機的状況には陥らないが、価格が跳ね上がってそれなりに困る。
だが、困るのは、東南アジアのイスラム諸国がこれに加わってしまった場合であろう。もし、そうなれば、資源の方で何らかの圧力を掛けてくる可能性がある。さらに、総会での影響力もかなりのものにもなるだろう。
セカンドインパクト期に民族、宗教の分布が入り乱れそれを押さえた事や経済の再生を行った事などで、現時点では、殆どの国が日本人、若しくは日系人が経済と政治を支配しているが、革命が起きる可能性もある。
一方、ゼーレ陣営側のイスラム系勢力は大した事は無い。セカンドインパクト期、ヨーロッパの一部で起きたイスラム系住民の虐殺と言う正気の沙汰ではない行為は、このような事を見越しての事か、或いは只の偶然か・・・・
ミユキが報告書を片手に入って来た。
「会長、」
「どうした?」
「碇食品の株式の71%の購入に成功しました。」
「・・そうか・・・」
「碇財閥は多くの関連企業の株や資産の売却をかなり大々的に行っているようですが、他はどうなさいますか?」
「・・・いや、放っておけ、これ以上金を使うわけにも行かん、」
「はい・・・しかし、ルシア様には弱いですね」
ミユキは苦笑を浮かべている。
「ふっ・・・・そんなもんだ」
「それと、イスラムの事ですが、暫くは静観する様です。」
「そうか・・・ならば良い」


夜、耕一は、レイとレイラに関する報告書を何度も読み返していた。
「・・・どうかしましたか?」
紅茶を持って来たルシアが尋ねた。
「・・・いえ、皆、大きな勘違いをしていないかと思いまして」
ルシアは小首を傾げた。
「これを読んでもらえますか?」
「ええ」
ルシアは耕一から受け取った報告書の束に目を通した。
「・・・これは、確かに・・・」
「どう見ますか?」
「未だレイラより私の方が胸大きいですね」
耕一は盛大にずっこけた。
「くすくす、冗談ですよ。」
「いつつ、冗談きつ過ぎますよ・・・真面目な話をしているんですよ」
「ええ、でも、私達が言っても何にも成りませんよ、あの子達が自分達で気付くかどうか・・・社会の側の対策は講じないんですか?」
「いえ、法改正でしたらいつでも出来ます。既に何パターンかの草案は作らせてありますから」
「ん〜、シンジ君もレイさんも良い子ですから、私楽しみです♪」
ルシアは本当に楽しそうな笑みを浮かべた。


10月5日(月曜日)、第3新東京市立第壱中学校2−A、
「・・・何これ?」
アスカは教室を見渡した。
全員の視線が集まっている。
シンジとレミは溜め息をついた。
まあ、色々あったが、シンジ・レイ・レイラ間にレミとアスカが緩衝材として入ることで、微妙な関係が維持された。


10月10日(土曜日)東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、
二人が紅茶を楽しんでいた中、ルシアは何かを感じたようで、表情を変えてカップを置いた。
「どうしました?」
「・・感じませんか?」
耕一も気付いた。
巨大な気配が接近して来ている。
方角は、北東か・・・
「・・・まさか・・・」
警報が鳴った。
「使徒ですか」
「・・・まさかここに?」


使徒発見の報と共に北関東及び東関東の東京軍に緊急出撃命令が出され、水戸市の海岸線に集結し、攻撃準備を進めていた。
遠くの海面から足の一部のようなものが見えている。
どうやらマトリエルのようである。


第3新東京市、リリン本部、発令所、
作戦マップにマトリエルと東京軍が表示されている。
「シンジ君は!?」
「現在こちらに向かっておられます!あと、15分ほど掛かるかと!」
「初号機は!?」
「ウィングキャリアーへの搭載は10分で完了します!」
「・・蘭子さん、どうします?」
「・・・東京が直線上にあるわね・・・」
「ええ、通過させるわけには行きません」
「・・・榊原さん、最高司令室に」
榊原は少し考えてから頷き発令所を出た。


第3新東京市市内を高級車が凄まじい速さで走っている。
「・・マトリエル・・」
「・・順番が変わったわね」
「歴史に影響があったと言う訳?」
「・・・分からない、」


東京、東京帝国グループ総本社ビル最高総司令室、
「海岸で食い止めよ!」
「しかし、それでは被害が」
「・・・」
耕一の命令に幹部の一人が反論したが、耕一の重々しい表情にそれ以上は続けなかった。
「リリンとネルフの戦力は?」
「はい、リリンは初号機と零号機、ネルフは・・・四号機と伍号機です。」
「東京帝国グループ総会長権限で正式に、両組織に救援を求める」
「「「「「「「会長!!!」」」」」」」
今こそリリンがネルフを出し抜き、ネルフへの監察やその他様々な事を仕掛ける最大のチャンスである筈なのに、そんな事から叫んだのだろう。
メインモニターに蘭子が映った。
『先ほど、初号機に、シンジ君とレイさんを、零号機にレミさんを乗せて付属空港を発ちました。』
「蘭子、ネルフとの共同作戦を張れ」
『え?』
「会長!今、リリンが単独で使徒を破れば、作戦の優先権を維持できます!そうすれば!」
幹部の一人を手で制した。
「・・人類と言う種が危機に去らされているのだ。その、人類同士の対立で自らを破滅に導く可能性を上げるなど言語道断。使えるものを全て使い、人類の滅亡は絶対に阻止しなければ成らない」
暫く沈黙が流れた。
『分かりました。ネルフに出撃要請を出します。』


ネルフ本部、発令所、
「司令、リリンから、四号機と伍号機の出撃要請が出されていますが」
日向が碇に尋ねた。
「・・どう見る?」
「裏があるにせよ無いにせよ。出さんわけには行くまい、出撃させろ」
「了解」


付属空港、2機のウィングキャリアーに四号機と伍号機が搭載された。
そして、滑走路に向かい、離陸した。


水戸市、海岸線、
射程距離に入ったマトリエルに対して無数の砲兵器から一斉攻撃が掛けられた。
上空を数百機の航空機編隊が通過し、対空・対地ミサイルを放ち、海上の護衛艦がミサイル攻撃を行った。
マトリエルは凄まじい爆発に襲われている。
しかし、ATフィールドを貫く事は出来ない。
ダメージは無いはずである。
だが、エネルギー保存の法則に比べれば、運動量保存の法則の方が歪められ難いらしく、それなりに動きが止められる。そして、時々、着弾のタイミングを合わせその衝撃を増す事でマトリエルのエネルギーをATフィールドに集中させ、攻撃させないようにしている。
戦場に続々と軍隊が集結して来ている。
東京軍の艦隊が射程距離に入ると同時に一斉ミサイル攻撃を掛け、戦自や空自の航空機編隊も攻撃に加わった。
今回出されている命令は一つ、エヴァ到着まで時間を稼げ、上陸を阻止せよである。
そんな中、後方にレーザ砲部隊が並べられていた。


東京の上空をリリンのウィングキャリアーが飛行している。
『援護攻撃は、主に東京軍が行うから、任意に攻撃して良いわ』
「射軸上を逸らさなくても良いんですか?」
『元々援護の目的ですからね』
「・・・蘭子さん、何故会長は焦っているの?」
「・・そう言えば、」
シンジはレイの言葉で気付いた。
耕一にしては・・・この作戦は妙だ。
これでは東京軍の被害が余りに大きい。もっと有利な地点で戦線を展開した方が確実に良い筈である。
『・・マトリエルはアダムを目指している可能性が高いからよ』
当然の事を敢えて言う事で、その裏の意味を伝える。
その意味が分かったシンジの表情が変わった。
「・・そう、そう言う事なのね」
レイも納得したようだ。
「そう言う事だよ」


一方、新横須賀市上空をネルフのウィングキャリアーが飛行していた。
伍号機、
「相田君、」
『ん?なんだ?』
「何でリリンはネルフにまで出撃要請をしてきたのかな?」
『さあな、所詮自分達だけじゃ勝つ自信が無いんじゃないのか?』
「・・・そうかな?」
『じゃあ、どうだって言うんだ?』
「だって、私達じゃ、比較にならないことくらい承知でしょ、アスカさんやレイラさんなら兎も角も」
『・・・確かにそうだけど、まっ、俺達も漸く日の目を見れるかもしれない、チャンスだぜ』
ケンスケは楽しそうでもある。
「・・・」
マナはじっと考えた。
『霧島〜、何考え込んでんだ?』
「・・・」
「・・・使徒戦って、人類の命運を掛けた戦いなのよね」
ケンスケは呆れかえったかのような表情を浮かべた。
『おいおい、今更何を言ってるんだよ』
「・・・後が無い戦いなのに、どうして今まで総力戦をしてこなかったの?」
『何をバカな、ネルフはいつだって』
「違うわよ」
マナはケンスケの言葉を遮った。
「第参使徒戦、第四使徒戦、第伍使徒戦、第六使徒戦、第七使徒戦、第八使徒戦、第九使徒戦・・・一度だって、エヴァが全機揃った事は無いわ」
『なにを』
「リリンには零号機と初号機があった。第六使徒戦を除けば、その最初の段階では常に待機だった。」
『・・・』
「どうして最強の初号機が待機なの?」
『バカな事を言うなよ、そんなの初号機が参戦してきたらネルフの立場ってものが』
「負けたらそれまでなのよ、どうして組織の立場なんかに拘るの?」
『・・それは・・』
ケンスケは言葉に詰まった。
正論には返す言葉が無い。
「・・そう考えれば、リリンのしている事は当然の事じゃない、総力を上げて使徒と戦う・・・」
ケンスケはそれにも答える事は出来なかった。


東京、東京帝国グループ総本社ビル最高総司令室、
榊原が司令室に入ってきた。
「会長」
「榊原か、指揮は任せた」
「はいっ」
榊原は前に進み出て、各モニターに目を走らせ現状を把握した。
「12から22までの部隊は微速後退せよ!」
「東京防衛軍を80%回せ!」
「はい!」
「指向性NN兵器は!?」
「5分以内に22発の指向性NNミサイルが発射可能です!」
「良し、初号機到着にタイミングを合わせろ」
「了解!」
「ダメージは?」
「現在のところ未だ認められていません」
「目標、海岸線まで3000!」
耕一は最高司令室の後ろの席につきながら通信で蘭子と話をしている。
「・・どうだ?」
『ネルフの方は、上手く乗りました』
「まあ、乗らなければ乗らないで良いがな・・」
「侮るなよ」
『分かっています』
耕一は指令を飛ばす榊原に目をやった。
戦術家である。超一流の戦術家である。
だが、一流の戦略家ではないと思っている。
本当に極限られた者と、実行する者以外には教えていない。その主な目的は、最高幹部を吃驚させてやろうと言う、個人的な楽しみからだが、副の意味で、どれだけの者が何時、気づくのか計ると言う事もあるだろう。
恐らく耕一の作戦は気付いているものは殆どいないだろうし、例え気付いたとしても既に手遅れである。
あと、2週間程、それで作戦が発動する。
これからは気づく者もかなりの数出るであろう。
ゼーレが打った自らの計画への布石が逆に止めを刺すことに成る。
しかし、もしこの使徒がアダムに惹かれて東京までやってこようものなら、被害は泣きたくなるくらいでは済まないだろう。東京帝国グループに計画を完遂する力が残らない可能性も高い。
ゼーレの力は根強い。
更に其処まで行かなくても、万が一に備える意味でも、切り札の所在地が分かるのは拙い。
「ふっ」
『会長?』
「いや、気にするな・・・所詮私も組織同士の対立に身を投じている一人だと言う事だ・・」


水戸市海岸線、
2機のウィングキャリアーから初号機と零号機、そして、プログソードとソニックグレイブが投下された。
『やっぱこれよね』
レミ1番のお気に入りの武器ソニックグレイブ。
南東からから22発の指向性NNミサイルがマトリエルに向けて降下した。
瞬間凄まじい火柱が上がりマトリエルは完全に包まれた。
「行くよ!」
レイは頷き、空中に強力なATフィールドを展開した。
初号機と零号機はそれを足場に跳び一気に間合いを詰めた。
『離れろ!!!』
突然耕一の叫びが響いた。
『「「え!?」」』
目の前が光に包まれた。
「ぐあ!」
「きゃ!」
二人にほぼ均等に痛覚がフィードバックされた。
初号機は数百mほど吹っ飛ばされたようだ。
「一体何が?」
初号機は体制を立て直した。
レイは計器に目をやり味方の状況を把握した。
零号機は活動停止、レミは気絶している。
部隊も相当被害を食らったようだ。
『マトリエルは、全て迎撃した。火柱はマトリエルから逸れている!』
榊原の説明を聞き、良く確認すると、艦隊の方は未だに盛んに攻撃を掛けている。
「方法は?」
『あの無数の目からブラズマビームを発射した!』
「・・スーパー化か・・」
「碇君、」
爆炎を乗り越え此方側に表れたマトリエルに対して可視レーザー砲が一斉射された。
ATフィールドで歪められるが本体にヒットしすさまじい温度にまで過熱し、部分的にプラズマ化している。
が、マトリエルの方はATフィールドの性質をランダムに変えることで一点に集中できないようにしている。
この程度ならば一点に集めない限り致命傷には成らない。
『頭が良い様だな』
「どうします?」
『そうだな・・・死角は真上か・・・』
「・・・惹き付けます。ネルフのエヴァを真上に投下して下さい」
『むっ・・・分かった・・・いえ、分かりました、長官』
榊原はわざわざ言い直した。
それは上官の指示であると自分に言い聞かせたのであろうか?
・・・何かあったら責任はシンジにかぶせると言った意味ではないとは思うが・・・
「行くよ」
レイは頷き強力なATフィールドを展開した。
マトリエルは狙いを初号機に定めたようだ。
数個の目から初号機に向かってプラズマビームが放たれた。
ATフィールドで上空に弾き、一気に間合いを詰め、ウェポンラックからプログナイフを取り出し、目の一つに突き刺した。
マトリエルは突き刺された目から強力な溶解液を放ち、いや、吹き出し、初号機は間一髪でそれを避けた。
更にその部分を狙いレーザーが集中的に照射され、マトリエルは激痛でも感じているのか、不規則に暴れまわった。
「来たわ」
レイが、ネルフのウィングキャリアーの到達を知らせた。
「くっ」
初号機に向けて威力は小さいものの、無数のプラズマ弾が放たれた。
「「くっ」」
凄まじい圧力に、動きを止められた。
逸れたプラズマ弾は後方の部隊に次々に着弾し、部隊が次々に壊滅している。
無数のミサイルが着弾し爆煙がマトリエルを包み込んだ。


ウィングキャリアー、伍号機、
『投下』
伍号機は切り離され、マトリエルに向かって一直線に降下した。
同じように四号機も投下された。
そして、武器としてスマッシュホークが投下された。
伍号機はスマッシュホークに手を伸ばしたが、弾いてしまった。
「あああっ!!!」
スマッシュホークとの間隔が開いていく。
『霧島!』
「ど、どうしよう!」
『俺に言われても』
『受け取りなさい!!』
レミの声が響いた。
再起動した零号機が伍号機に向かってソニックグレイブを投げて来た。
衝撃波を撒き散らしながら、一直線に槍が飛んでくる。
「うわ!」
半分運だが、何とか受け取る事が出来た。
そして、その直線上にいた四号機に乗っていたケンスケは失禁していた。
「あ、ありがと」
煙の円筒の中に入っていく。
マトリエルはATフィールドを中和され、2機のエヴァの存在に気付いた。
しかし、上への攻撃方法を持たない、
マトリエルは必死で避けようとした。
その時、海上と陸上から一斉砲撃が掛けられ、マトリエルは動きを止められた。
そして、プラズマビームは、初号機のATフィールドで遮断された。
『「わああああ!!!」』
二人は叫び声を上げ、四号機はアクティブソードを振り下ろし、伍号機はソニックグレイブで突き刺した。
落下のエネルギーも加算され、切り裂き、貫ぬく。
凄まじい勢いで溶解液が噴き出し、両機の装甲板が溶けていく。
『うわああ!!!』
「きゃああああ!!!」
両機は転がり、そして、急いで海に飛び込んだ。
しかし、浅い・・・海面を転がり溶解液を落とそうとする姿は滑稽である。


初号機、
「はああ!!」
初号機はプログソードで、先程の攻撃で深刻なダメージを食ったマトリエルを切り刻んでいた。
更に各部隊からの一斉砲撃で、マトリエルの体が次々に肉片へと変わっていく、
そして、飛び散り、吹き出す溶解液はレイが展開した初号機のATフィールドによって遮断される。
間も無く、攻撃がコアに到達し、マトリエルはその動きを完全に止めた。

あとがき
脇役の使徒マトリエルに、脇役のケンスケが・・・まあ、どうでも良いですが、
先で行き詰まっている事と、最近忙しい事で更新が遅れています。
すみません。