リリン

◆第17話

「綾波?・・・僕は、綾波を取るって言ったんだよ・・」
「・・・どうして・・・どうして・・・そんな事を言うの・・・」
レイは涙を零した。
「え?」
シンジは全く予想外の事に戸惑わずには居られなかった。
「・・・」
「ど、どう言う意味?」
シンジはうろたえていた。
何故、こんな状況になっているのか、自分が言った言葉のどこにレイを疵付けるようなものがあったと言うのか・・・全然分からない。
「・・・何故・・争わなくては行けないの?」
「・・・碇君も・・・レイラさんも・・・どうして争おうとするの?」
「・・・・」
「・・・どうして?・・・どうして一方を失わなければいけないの?」
レイの中では社会の風習と言うものが確立されていない。
男女一人ずつがペアに成ると言うのは、通識であり常識である。
レイはシンジとレイラ両方を手に入れたいのである。
なのに、争えば、誰かが脱落する・・・・それは嫌なのだ。
「・・・綾波?」
「・・・どうして、碇君と、レイラさん両方を求めては行けないの?」
シンジもレイラもレイも、お互いにそれぞれを求めている。
だが、シンジとレイラは、レイと違い、社会の一般的常識とでも言うべきものが身についている。
だからこそ、敢えて争おう、或いはどうにかして疵付かずに済む方法はないものかと探そうとしていた。
レイの提示した方法と言うか願望は、社会・・・そして、シンジの倫理観に反するものである。
「そ、それは・・・」
シンジは社会の一般常識として説明しようとしたが、レイがそんな事で納得するとは思えずやめた。
(・・会長は、綾波の気持ちを知っていたのか・・・)
耕一が考えろと言った事はこう言う事だったと言う事に気付いた。
しかし、それが分かったところでどうすれば良いのか・・・・
「・・・少し考えさせてくれるかな?」
レイは涙を拭いて、軽く頷き部屋を出て行った。
妙にドアが締まる音が響く・・・
・・・・・
・・・・・
そして長い間考え続けた結果、
耕一は、その社会そのものを変えられる力を持っている事に気付いた。
だからこそ、こう言った状態のまま放置したのであろう・・・
そうでなければ、もっと手を打っているはずである。
手遅れになる前に、・・・・それをしなかったと言う事は、そう言うことであった可能性が高い・・・
シンジはそれに気付き、耕一に電話を掛けた。
呼び鈴の音が妙に緊張させる。
『・・シンジか、やはり来ると思っていた。』
「・・・はい、」
『どうする?』
それは、耕一が、シンジの思考も判っていたと言う事を示している。
結局全て分かっていた・・お見通しだったのである。
自分達で解答を導く事を望んでいた。
まあ、結局はヒントが必要とはなったが、
「・・・レイラに話してから決めます。でも・・・・」
「・・・・本当に社会を変えられるんですか?」
『勿論だ。』
「・・分かりました・・・・レイラに話してみます。」
『結果を楽しみにしている。』
「・・はい」
シンジは電話を切り深い深い溜息をついた。
シンジもレイラも愚かな事で悩んでいたのだろうか・・・それとも・・・・
なんにせよ疲れた。
シンジは休む事にした。


東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、
耕一は、受話器を戻し、軽く目を閉じゆっくりと大きな息を吐いた。
「・・・卑怯かな・・・」
・・・・・
「・・・しかし、今は未だ、焦って答えを出そうとしては行けないと言うのも事実だろう・・・今、答えを出そうとしても何も良い事は無い・・3人ともが苦しむだけだ・・・」
・・・・・
・・・・・
「・・・レイラも含め3人が成長した時、もう一度事が起こるか・・・」
・・・・・
・・・・・
「・・・或いは・・・それまでに、答えを導くのか・・・」
・・・・・
・・・・・


10月11日(月曜日)、朝、シンジのマンション、レイの部屋、
シンジはレイが目を覚ます前に起きて、レイの部屋にやって来ていた。
レイが目を覚ました時に、話すつもりである。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
どれだけ待っていたのか、やがてレイは目を覚ました。
目は瞳だけでなく白目の部分も充血して赤くなっており、昨夜、泣き通していたと言う事が分かる。
「おはよう、綾波」
レイは視線だけ動かしシンジの顔を捉えた。
「・・おはよう、」
暫くしてレイが完全に覚醒した後、シンジは話を始めた。
「・・両方を求めては行けない理由は、社会の規範に反するからなんだ。」
レイの目が再び潤み始める。
「だから、レイラを、恋愛対象としては見ず、妹としてみるよう、自分を戒めてきた。」
「・・綾波を取り、なおかつレイラを失わない為に・・」
レイが何か口を挟みそうに成ったのでシンジは手で制した。
「・・・でも・・・昨日、あの後、会長に電話をしたよ・・・」
「・・・その社会の規範を変えられるのかって?」
「勿論だ。」
「会長はそう答えたよ・・・」
暫くその意味を考えていたが、その意味が分かった様でレイは少し笑顔を取り戻した。
「・・・僕達は愚かな争いをしていただけなのかもしれない・・・」
「・・・レイラにも話すよ・・・」
今度はレイは完全な笑顔を浮かべた。


第3新東京市郊外の展望公園でシンジとレイがレイラを待っていた。
「・・・レイラはなんて答えるんだろう・・」
シンジは第3新東京市を見下ろしながら呟いた。
レイはそれには答えなかった。いや、答えられなかった。
そんな事をは想像したくない。
嫌な結果を想像してしまえばそれだけで、良い結果を想像し期待してそれが裏切られてしまった時は、尚いっそう傷付く・・・
足音が3つ近付いて来た。
レイラとアスカ、そして、連れて来たレミであろう。
「シンジ、レイ・・レイラを連れてきたわ、」
「・・・シンジ君・・・」
レイラの表情は恐怖か不安に駆られている。
「アタシ達は離れたとこにいるから」
レミとアスカは離れたところに移動した。
レイラはゆっくりと二人の前に立った。
「・・・今日は、これからの3人の事で呼んだんだ、」
「・・・・」
恐怖だったのか軽く身を振るわせた。
「・・レイラさん・・」
「・・・私は、嘗ては人形と変わらなかった。」
「・・前回の歴史では、碇君が私を変えてくれた。碇君が私を人間にしてくれた。」
「・・今回の歴史でも、碇君が人への道を指し示してくれた。」
「・・・でも、レイラさんが私に色々教えてくれた・・・私が人間になるために必要な事を・・・」
レイラははっと顔を上げた。
「・・・・・・どうして争おうとするの?」
「・・・どうして?・・・どうして一方を失わなければ行けないの?」
「・・・どうして、碇君と、レイラさん両方を求めては行けないの?」
「・・・二人とも私の大切な人・・・」
「・・で、でも、」
今まで愚かな争いを繰り広げていたと言う事を認めたくないのか、レイラは反論しようとした。
「・・会長は、レイラさえ良ければ社会を変えると言っていたよ、」
「・・・・・お父さんが?」
シンジは頷いた。
「・・・・」
レイラはじっと考え始めた。
二人はじっとそれを見守り、結果を導くのを待つ。
レイがレイラも求めていた。シンジのみが全てではなかったと言う事は大変嬉しい。
しかし、レイラにとってレイが提示した案は一つの妥協案である。
シンジにとっても、レイにとっても、レイラは大切な存在であろう・・・しかしそれぞれに比べれば・・・・
レイ・レイラ、シンジ・レイラの関係はレイ・シンジの関係よりは細く薄い物なのだ。
その関係がどのような物に成るのか思い描く、以前の関係に、レイ・レイラ、シンジ・レイラの関係が強くなった形・・・
社会を変えると言った・・・重婚・・・
・・・レイが第1妻で自分が第2妻・・・
東京帝国グループの立場上、恐らく名目は自分が第1妻でレイが第2妻になるだろう。
だが、実際は・・・・
その関係はどのような関係になるのか・・・
自分も求める関係に近いだろう。だが、決して同一ではない。
レイやシンジにとっては理想かもしれないが、自分にとっては妥協なのだ。
それで納得できるのか?
だが・・・ここで、こう言った事を提示された以上、拒めば、相容れなくなってしまう。
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
いや、これがゴールなのではない。
未だ中間点ではないか、3人が3人とも望む関係を作るのは今ではなくこれから、これからではないか・・・
これを受け入れて、そして、それからこそが、自分の努力に掛かっているのではないか、
しかし、シンジ・レイラ間の絆を強めるのは当然だが、それでは、いつか必ずレイとの間に亀裂が生じてしまう。
レイが意識上で考えているかどうかは不明だが、少なくとも無意識では、シンジ・レイラ間の関係が存在する事によって、シンジの意識が多少分散するよりも、レイ・レイラ間の関係が存在し、レイラの意識も自分にに向けられる方が自分にとって良いと感じた・・・極めて打算的な結論であったとも考えられる。
大切なのは、レイ・レイラ間の絆を強める事である。
レイとの絆は強固なものにするために努力しなければ成らない。
・・・・
・・・・
「・・・ごめんなさい・・・」
レイラの謝罪の言葉がレイの目を潤ませた。
「・・・今まで、レイさんの気持ち・・考えた事無かった・・・」
しかし、それに続いた言葉によってレイとシンジの表情が変わった。
「・・私、馬鹿な事してた・・」
「それは僕もだよ、」
「・・・私も求めてくれて嬉しい、」
レイは泣き笑いを浮かべ、レイラも笑みを取り戻し、シンジは漸く長く苦しかった問題が丸く収まり心底ほっとした。


離れた場所からレミとアスカが3人を見ていた。
「・・どうやら、上手く解決したようね」
「そうね、でも、これで、アタシは一人暮しに逆戻りか・・・」
アスカは少し淋しそうである。
「アタシが行くわよ」
「レミが?」
「あんな3人と一緒にいたら溜まったもんじゃないわ」
「ふっ・・まあ、そうね・・・歓迎するわよ」


東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、
ミユキが先の使徒戦の報告に来ていた。
「・・・約8兆か・・・」
耕一はこめかみを押さえた。
「はい」
「・・・・」
使徒戦の被害としては小さい・・・だが、それは、ネルフが今まで出してきた被害が大き過ぎるだけで、マトリエルに対する想定予算を大きく超えている。
只、今までとの大きな違いはエヴァそのものの被害が軽微だった事であろうか、
エヴァを主力にするのは変わらないが、エヴァのみで戦う場合と、支援兵器を活用する場合の違い・・・とも取れるが、彼我ともに戦力が異なるのだから単純には評価できないだろう。
「ネルフのエヴァ2機は?」
「外部装甲版の破損のみです。エヴァの素体そのものには損傷はありません。」
「・・・余計な揉め事は起こしたくは無い、修理費は出してやれ」
「既に手配してあります。」
耕一は軽く表情を緩めた。
「ふむ、的確な判断だ」
「有難う御座います」


5人はシンジのマンションに戻り、レミの荷物を片付け始めた。
「ねぇ、本当に出て行くの?」
「そうよ、アタシは邪魔でしょ」
「そんな邪魔だなんて・・・」
「アタシがあてられて溜まったもんじゃないのよ!」
シンジは苦笑を浮かべるしかなかった。


そして、リリンの車を呼んでレミの荷物を積み込み、アスカのマンションへと向かい、荷物を運び込んでレイラの物を運び出して、戻って来た。
「じゃあ、お幸せにね」
シンジとレイラは苦笑を浮かべた。
レミとアスカは帰って行った。
「・・・そうだね、夕飯にしようか」
その後、3人で協力して夕飯を作る事にした。
・・・・・
・・・・・
「綾波、卵とって」
「・・はい」
「サラダできたわよ」
・・・・・
・・・・・
3人で協力して作った料理が食卓に並んだ。
「「頂きます」」
「・・頂きます・・」
久しぶりの3人の夕食は、非常に美味しかった。


アスカのマンション、
「「かんぱ〜い」」
二人はワインで乾杯した。
「う〜ん、良い味ね」
「良いワインでしょ」
「そうねぇ、どうやって手に入れたの?」
「榊原のところから黙って持ってきたの」
「良いの〜?」
「良いのよ良いのよ、一杯有ったんだから」
「ま、頂きましょう」
それは、一本うん百万円のワインであった。
暫くして、二人とも好い加減に成ってきた所で、アスカが尋ねた。
「ねぇ、レミィ〜」
「あに?」
「レミってさぁ〜、シンジの事どう思ってたの?」
「どうって?」
「だから、好きだとかさ〜」
「ん〜?・・・そうねぇ・・・」
レミはフライドチキンを咥えながら考えている。
「ど〜なの?」
「・・・わかんない、」
軽く笑みを浮かべながら言い、アスカは軽くずっこけた。
「わかんないって、」
「アタシ、あいつの事どう思っていたのか分からないのよ・・・本当のところ、」
神妙な顔をしながら言う。
「・・・」
「・・・色々と当ったり、扱き使ったりもしたけど・・・シンジの事が好きだったってのは、事実。でも、その好きって言うその中身が良くわかんないのよ・・・」
「中身?」
「そう・・・友人として好きなのか、家族として好きなのか、仲間として好きなのか、恋人として好きなのか・・・あるいはまた別の意味で好きなのか・・・アタシにはわかんないのよ・・・」
「・・・・」
「や〜ね、湿っぽく成っちゃったじゃないのよ、今日はめでたい日なのよ、ぱぁ〜っとやらなきゃ」
「付き合うわよ」
「あったりまえじゃない」
その後、二人は酔いつぶれて寝てしまうまで飲みつづけた。


東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、
ミユキが報告書を携えて入ってきた。
耕一は待ち兼ねていた様である。
報告書を受け取り、目を通し、ふっと表情を緩めた。
「これで、上手く行くな」
「はい」
「そうだな、今日はこれで上がる」
「はい、おやすみなさいませ」
耕一は席を立ち会長室を出た。


夜、第3新東京市、シンジのマンション、シンジの部屋、
3人で一つのベッドに寝ていた。
流石に3人で寝るには狭いと言うのもあるのだろうが、今まで離れ離れになっていた分、いっそうその、温もりを感じたいのであろうか、レイラはシンジに強く抱き着いている。
レイの方は密着と言うほどではないが身を寄せている。
シンジはレイラにがっちりロックされ身動きが取れない。
(う、トイレに行きたくなってきた)
「・・うう〜〜・・」
シンジの悲しいうめきが部屋に空しく響いた。
でも、その表情は少し嬉しそうであった。


10月12日(火曜日)、朝、第3新東京市立第壱中学校2−A、
シンジ、レイ、レイラがいっしょに登校した事にクラス中が驚いた。
そして、恋のゆくえ(賭けの結果)はどうなったのか物凄く気になっていた。
まあ、結論から言うと親(ケンスケ)の総取りなのだが・・・
3人はそれぞれ席についた。
暫くして、アスカとレミが登校して来た。
「また・・この状態なわけ・・・」
「見たいね・・・」
二人は級友たちの愚かさに溜息を零した。
「ほらほら、散った散った」
二人は人を散らして3人の方に近寄った。
「「おはよ」」
「「おはよう」」
「・・おはよう・・」
3人が良い感じになっていることを確認して2人は笑みを零し、5人で色々と話を始めた。
その光景をマナがじっと見詰めていた。
マナがじっとこちらの様子を伺っている事に何か嫌な感じを受けレミは眉をしかめた。
どこか、探るとでも言うのか・・そんな感じを受ける。
正史では、マナが戦自のスパイであった事から来る偏見であろうか?
「どうかしたの?」
「・・・何でも無いわ、」
アスカに尋ねられ軽く首を振って考えを散らした。
この時、マナは悩んでいたのである。
どちらが正しいのか・・・そんな事は分からない。
自分に与えられた情報でしか判断できない。
しかし、その情報は作為的であり、また嘘も混じっているであろう。
結局考えたところで答えなど出ないのだ、情報を集めるのか?
しかし、その集めた情報が正しいのかどうかなど分からない。
結局は流れに身を任せるしかないのか・・・
マナは自分が無力であるとはっきりと自覚していた。


学校が終わった後5人は、リリン本部にやって来た。
リリン本部の正面には、蘭子や榊原を初めとしてリリンの職員が出迎えに来ていた。
「レイラさん、おかえりなさい」
「レイラ様おかえりなさいませ」
皆に迎えられレイラは嬉しさを感じていた。
自分の我侭・・・それも、組織のみならず世界をも左右しかねないような我侭に付き合ってくれ、そして、それが終われば温かく迎えてくれる。
こんなにも良い人達に囲まれている事が本当に幸せであり本当に嬉しい。
「手続きの書類はこちらで作成しておきました。」
蘭子は書類の束が入った大きな封筒をレイラに渡した。
「じゃあ、このままネルフに向かうから、」
「はい、」


リリンの車に乗ってネルフ本部へと向けてジオフロントを走っている。
レイラは封筒を抱き抱えて色々な事を思い返していた。
結局は愚かな行動に過ぎなかったのだ。
その為にどれだけの人を悩ませ苦しめたか・・・今、自分にできる償いは、これからの使徒戦で全力を尽くす事しか出来ない。
今、実際に戦う必要のある使徒の襲来の間隔が開いている内に、リリンは零号機の大幅改造を行っている。
改造が済んだ零号機に乗り、全力を尽くす、それしか出来ない。
しかし、それでは到底足るまい・・・
自分は、東京帝国グループ総会長皇耕一の唯一の娘なのだ。
将来、自分がその罪を償い清算できるような立場になった時に、それを行おう。
そう心に決め、レイラはネルフ本部のピラミッド状の施設を見詰めた。


ネルフ本部の作戦部第1会議室では連絡を受けた日向とリツコの二人が待っていた。
レイラは緊張しながら封筒を日向に渡した。
日向は封筒を開け、中から書類の束を取り出してチェックしてリツコに見せ、何かこそこそと話をしている。
日向の表情には汗が見える。
レイラは不安に成って来た。
暫くして、日向が封筒に入った書類を渡して来た。
「ネルフ退職者に渡される物です、中には色々な注意点が書かれているので熟読しておくように、」
「違反した場合、ネルフ保安条例に従い罰せられると言う事もありえます。」
「はい」
レイラは笑顔で返事をした。
その後、アスカを残し4人はリリン本部へと戻って行った。
「さ〜てと、リツコ、シュミレーションやるんでしょ」
「・・ええ、準備して、」
「了解っと♪」
アスカは更衣室へと足を向けた。


リリン本部、司令執務室、
「漸くと言った感じですね」
「ええ、これで、取り敢えずは安心ですね」
「そうね、」
蘭子は一升瓶を取り出した。
「乾杯と行きましょう」
「そうですね」
「会長から頂いたお酒なんですが、まあ記念の日ですし」
榊原は顔を顰めた。
榊原の執務室においてあったワインで一番高価なワイン、耕一から拝領した特別のワインが消え失せていたのである。
「榊原さん、どうかしましたか?」
「・・・いえ、飲みましょう」
蘭子は2つの湯呑に酒を注いだ。


ネルフ総司令執務室、
「・・・手駒が減ったか・・」
「はい・・しかし、むしろ、リリンの戦力が増えた。そう見るべきかと、」
「確かに、9thが意識を取り戻せば、七号機を当てる事ができるのだからな」
「元々的な物がありましたし・・・」
「しかし、今、リリンの戦力が増すのは問題だ」
「現時点では未だ増えていません。現在リリンは零号機を大幅改造中です。」
「改造?」
「はい、元々実験機でしたから、戦闘用に作られているわけではありません。これを作りかえるつもりかと、」
「・・・どのくらい掛かる?」
「ネルフが行うとしたら2ヶ月、リリンならば1月以内で完了させる可能性もあります」
リツコの言葉は、ネルフとリリンの技術力の差を如実に表していた。
母ナオコとの差、資金力、投入できる技術者の数・・・全て・・・
「妨害工作は?」
「仕掛けますか?失敗した場合・・・」
「そうだな・・その場合は取り返しがつかなくなるな、」
「・・・」


10月18日(日曜日)、早朝、シンジのマンション、シンジの部屋、
3人が十分に寝ることができる大きなベッドに変え、3人は川の字になって寝ていた。
やはり、早起きが身に染み付いているシンジが一番最初に目を覚ました。
シンジはベッドをそっと抜け出し、朝食を作る為にキッチンへと向かった。
大体出来た上がった頃に二人が起きて来て、仲良く3人で朝食を取った。


昼前、東京第3デパートの婦人服売り場に3人の姿があった。
「シンジ君、この服なんかどうかな?」
「う〜ん、似合っていると思うよ」
「そうかな?へへ」
レイラは無邪気な笑みを浮かべた。
「・・碇君・・この服・・」
「ん?・・・なかなか良いんじゃない?」
レイも笑みを浮かべた。
結局レイラが3着、レイが2着新しい服を購入する事に成った。
二人の服は紙袋に入れてシンジが持っている。
(アスカの時は、30着くらい持たされたれたな〜)
「・・どうかしたの?」
苦笑を浮かべたシンジを不思議に思ったのか、レイが尋ねて来た。
「ん?いや、何でも無いよ、昼御飯は何にする?」
「そうね、」
「・・ラーメン・・」
最初に言った者勝ち、レイの意見によりラーメンになった。
昼食を取った後も、暫くぶらぶらと歩いていたら、レミとアスカに出会った。
「あら、奇遇ねぇ」
二人とも両手に一杯紙袋を抱えている。
シンジはそれを見てやはり苦笑するしかなかった。
荷物を5人に分散して暫く一緒に歩いた後、休憩する為に喫茶店に入った。
・・・・
「で、昨日の夜、レミがねぇ、」
「それは言わない約束よ!」
「ん〜、どうしよっかなぁ〜、聞きたい?」
「えっと・・・」
「アスカ!アタシに喧嘩売ってんの!?」
「や〜ねぇ、冗談よ冗談、うぷぷ」
「きいいいい〜〜〜!!!」
何があったのかは分からないが、思い出し笑いをしているアスカにとってはかなり面白かったらしく、顔を赤くして叫んでいるレミにとっては、かなり恥ずかしいものだったようである。
その後、色々と話をした後、それぞれ別れた。

あとがき
結局、こうなりました。
皆さんこの結果に付いてはどう思われますか?
さて、続き頑張るか、
それでは、