11月20日(金曜日)、第3新東京市、ネルフ本部、第11ケージ、 弐号機のコアを七号機に移す作業が行われていた。 コアが大きなクレーンに吊るされてゆっくりと運ばれてくる。 (・・惣流、キョウコ博士か・・・) リツコは、司令室からコアを見下ろし、じっと見詰めた。 弐号機を造り、そしてその弐号機に取り込まれた先人・・・ 確かに、エヴァを創り出した碇ユイやマギを創り出した赤木ナオコに比べれば、その能力や活躍は見劣りするかもしれない、しかし彼女もまた稀代の天才であり極めて高い能力を有していた。 「・・・」 科学者として尊敬し、女としては憎んでさえいたナオコ・・・彼女に近付きたい、彼女を超えて見せる・・・そうやって、努力を続けてきた。差は縮まっているとは思うが未だ追いついてはいない・・・キョウコと自分を比べたとしたらどうなるのであろうか? 「先輩?」 「ん?マヤ、」 「七号機への取りつけ開始しますよ」 何時の間にかコアは七号機の元に到着していた。 「ええ、初めて頂戴、」 第2ケージ、 腰にコルセットをつけているが退院したアスカは、弐号機が置かれているケージにやって来た。 アスカ以外の人がいないケージに固定されている弐号機は装甲が彼方此方が破壊されて素体が剥き出しになっている。 そして、腰の辺りで上半身と下半身に両断されている。 そして、胸部は大きく抉れ、コアが取り出されたままになっている。 実に痛々しい・・・ 「・・・ママ・・・」 実際にはキョウコがいたのはコア・・・今は七号機に取り付けられているため、キョウコがいるのは七号機と言う事になるが、それでも、長年弐号機が・・・ 「・・アスカさん、ママって?」 「え?」 何時の間にか、横にマナが立っていた。 「ママってどういうこと?」 「あ・・マナは知らなかったんだっけ・・」 「知らないって・・」 アスカは周囲を見まわした・・・誰もいない。 「・・どうしても聞きたい?」 ゆっくりと頷く、それに対してアスカは軽い溜息をついた後話し始めた。 「シンクロシステムって何だと思う?」 「え?」 そう言われてみても何にも分からない。 「シンクロシステムって言うのはね、エヴァを押さえ込み尚且つ操る為にコアに魂を宿らせてあるのよ・・」 「魂?」 「そう・・・死んだ人とかの魂をサルベージしてコアにこめてあるのよ」 「・・・死んだ人?」 マナはそこから連想をしてしまった様だ。自分の母が伍号機のコアに込められていると・・・ 「エヴァに関わってた人でね、事故死とか、病死とかした時にその魂を保存しておいて、その子供がチルドレンに選出された時にコアに込めるのよ」 「・・・じゃあ、」 「まあ、ある意味エヴァは親と同じなのかもしれないわね・・・」 「・・・そんな事聞いてない・・・」 「言えるわけ無いでしょ・・・シンクロシステムは機密中の機密・・・そんなものが流出したら世界中の兵器が一変するわ・・・そして、その為の犠牲者の数も膨大な数出る・・」 「・・・・」 「単純に一面だけを見たんじゃ駄目なのよ・・」 「・・・・」 「・・・これからシンジの退院の手伝いに行くけど、マナも来る?」 「え?」 東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、 耕一はゼーレに関する報告書を読んでいた。 「ふむ・・・」 「ゼーレを押さえたのはエリザベートローレンツ、キールローレンツの孫娘です。」 「裏で糸を引いているのは、キールか・・・」 「恐らくはそう思われます。」 「更に碇泰蔵の個人資産は次々に売却され、碇財閥も次々にゼーレ関連と思われる企業に乗っ取られています。」 一つ大きく息を吐く。 「調査を続けろ・・・後、金を流れを掴め、」 「はい、」 「・・・碇の資産・・・ゼーレ傘下の資産、どれほどのものがあるかな・・・補完計画発動に必要なエヴァを揃えられるかどうか・・・」 「SS機関も必要でしょうが、コアのサンプルが無いですからね、完成は出来ないと思いますが、」 「断言は出来ない、だが、現実に存在するものを作れないという保障はどこにも無い」 「・・そうですね、」 「それに、タブリスのことを考えれば既に完成していても不思議ではない、」 「・・・確かに、」 「・・・ところで、ネルフへの見舞い金だが、」 「本当に見舞い金になりますが・・・」 「仕方なかろう・・・」 「はい、」 第3新東京市、リリン本部付属病院、特別病室、 シンジとレイ、レイラの3人がシンジの退院の準備をしていた。 シンジの傷は完治していた。 一旦融解させて、それから再構成したのである。ある意味当然とも言えるが、 暫くは検査漬けであったが、それも終わり退院が決まって今日退院するのである。 「まあ、何にせよ良かったじゃないの、退院が結果的に早くなってさ」 一人、手伝いもせずに御見舞いのフルーツを食べているレミが言った。 「そうだね」 軽く苦笑しながらシンジが返す。 「お邪魔するわよ」 「お邪魔します」 アスカとマナが入って来た。 (マナ・・) 「あら・・・もう殆ど終わってたわね」 既に荷物の大半は纏められている。 「やあ、霧島さん、わざわざ来てくれて嬉しいよ」 「あ、うん・・ちょっとアスカさんに誘われただけだから」 「折角来たんだし、ちょっとシンジと話してなさいよ、なんか聞きたい事あるんでしょ、アタシ達は外で待ってるから」 レミが皆に出る様に誘う。 レイとレイラはチラッとマナを見た後、無言でそのまま病室を出る。 どこか恐い・・・ そして、病室には二人だけに成った。 「・・・」 「・・・」 沈黙が流れている。 「あの・・・聞きたい事があるんだけど・・・良い?」 「僕に答えられる範囲なら、」 「・・・シンクロシステムについて教えて欲しいの・・」 「・・・アスカから聞いたの?」 マナはゆっくりと頷いた。 「・・・エヴァのコアには人の魂が入れられているんだ。基本的には操縦者の母親になる。」 「・・・」 「霧島さんのお母さんは確か、何年か前に亡くなっていたよね」 「・・私が10歳の時に交通事故でね・・」 「死んだ人の魂をサルベージしてコアに宿らせる。そして、その子供などが操縦者として、その魂をかいしてエヴァを動かす。それが、今のエヴァのシンクロシステムの概要だよ・・・似たようなことアスカも言ってたんじゃないかな?」 頷く、 「現在の技術では残念ながら死んでしまった人を復活させる事は出来ないけれどね・・・」 難しいとは言え、技術的には復活させられるユイとは違う・・・ シンジは後ろめたい気持ちも感じていた。 ネルフ本部、第1ケージ、 零号機の修復が行われている。 リリンの職員だけでなく一部ではあるがネルフ側の職員も混じっての修復が行われている様だ。 現場の雰囲気は良い、これが人類の未来を護る行為であると信じて協力をしている。 榊原が司令室からケージを見下ろしていた。 日向が案内をしている。 「零号機の修復は順調の様ですね」 「ええ、」 「では、そろそろ」 二人は司令室を出て総司令執務室に向かった。 総司令執務室、 「直接来たか」 「ああ、パターンからすると見舞い金なんだろうが、流石に今回の事ではリリン、東京帝国グループの方も財政はキツイだろうからな」 「あてにはできんだろうな」 「ああ、」 『日向1尉です。榊原リリン司令補佐をお連れしました。』 ドアが開かれ二人が入ってくる。 直ぐに日向が退室し、3人だけになった。 「今回の事でネルフの多大な協力を頂いたことを先ず感謝致します。」 「ネルフの目的は使徒を駆逐し、人類の未来を護る事だ。今回の事は当然の行為だよ」 「・・・そうは言ってもリリン指揮下に置ける損害の発生です。本来でしたらその損害はリリンが持つべきではありますが、今回はその被害が余りにも大きすぎ、十分な保障が出来ない事は残念です」 「仕方なかろう、それにこちらもその事で不平を言うと言う事はせんよ」 「有難う御座います。尚、支払われる金額は2兆円前後になると思われます」 「エヴァの修復費用に当てさせてもらうよ」 「はい、それと、零号機の為にケージを貸していただいた事についてもお礼を申し上げます」 「ネルフ本部のケージはリリン本部と違って実際使われていなかったケージが複数あったからね、どうせ使っていないなら使ってもらった方が良いよ」 「有難う御座います。」 その後、今後の作戦などについて半時間ほど話をした後、榊原は退室した。 「・・・どうするかな・・」 「そうだな・・・」 「ゼーレの方は、キールの孫娘のエリザベートが組織の一本化に成功したそうだ。」 「・・・ゼーレにとってもはや我々は必要ではない・・・」 「だろうな」 「・・・冬月、少し頼む、」 「分かった」 碇は立ち上がり執務室を出て行った。 第3新東京市郊外、墓地、 碇は花束を片手に、ユイの墓を参った。 「・・・ユイ、」 「俺は、今までお前を追い求めてここまでやって来た・・・」 「その為には、何でもやってきた・・・あの、人類補完計画を利用する事や・・・・上手くは行かなかったが、シンジやレイをも利用し様とした・・・」 地面に雫が落ちた。 「・・・ユイ・・・俺はどうすれば良かった・・・そして、これからどうすれば良い・・・・」 だが、その問いに答える者はいなかった。 ネルフ本部第9ケージ、 伍号機が修復を受けている。 他のエヴァに比べればその損傷は軽微ではある。 マナはケージ上方の通路から伍号機を見下ろし、じっと見詰めた。 「・・お母さん・・か、」 母との想い出を思い出す・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ しかし、その思考は自分のお腹の音で中断された。 「あ・・・」 ケージにいる他の人達には聞かれていないと言う事は分かっているのだがやはり、恥ずかしい。 「しょ、食堂いこ・・」 マナは顔を赤くして食堂に向かった。 夜、シンジのマンション、 久しぶりにシンジがキッチンに立って夕食を作り、二人がそれを手伝っている。 「シンジ君の料理って久しぶりね」 「僕も作るの久しぶりだな」 レイも楽しみと言った表情を浮かべている。 やがて料理が完成し食卓の上に並んだ。 「「いただきます」」 「・・いただきます」 「やっぱり、シンジ君の料理美味しいね」 レイもコクコクと頷く。 「そう言ってもらえると嬉しいよ」 シンジも箸を伸ばした。 そして、その日は又これも久しぶりに川の字になって同じベッドで眠りについた。 11月21日(土曜日)、ネルフ本部、シミュレーションシステム、 トウジ・ヒカリ、マナ2組3人がマヤ指揮の元訓練を行っている。 「順調ね・・・」 しかし、修復の方は余り順調ではない。 次を考え、リリンを通しての東京帝国グループからの見舞い金も使いはするが、四号機の破棄が決定された。 ケンスケが複雑な表情でモニターを睨んでいる。 マヤはケンスケに視線を向けていたが、手元のモニターに戻した。 「あと3回行った後、今日の所は終わりにしましょう。」 その時、警報が鳴った。 「え・・・」 司令室に・・・恐怖が漂う。 第1発令所、 「・・・」 モニターには衛星からの映像が映し出されている。 光る鳥のような姿の使徒アラエルが地球をバックに映っている。 「早過ぎるな・・」 「・・・・・」 「赤木博士、現在使えるエヴァは?」 「・・・七号機を直ぐに試すしかないですね。マヤ、アスカをケージに呼んで、直ぐに起動を試みるわよ」 「はい」 「リリン側のエヴァも、初号機だけ・・しかしその初号機も危険ですか、」 東京、東京帝国グループ総本社ビル最高総司令室、 「アラエルのお出ましか・・・配備は完了しているか?」 「展開率は87%、稼働率は69%です。」 「・・69か、やむをえん発動しろ、」 「「「「「了解」」」」」 モニターに、無数の衛星が表示され、それらを結ぶ経路が示される。 「衛星移動開始、完了まで47分です。」 「さて、それまでじっとしていてくれるかな?」 第3新東京市、リリン本部発令所、 「アラエル用の兵器、果たしてききますかね?」 「使徒の侵攻の予定が繰り上がっていますからね・・・それに、スーパー化されているとなった場合は・・・」 リリンの発令所のモニターにも同じ映像が映し出されている。 「3人は?」 「現在本部に向かっています。」 ネルフ本部、第1発令所、 東京側からの連絡があった。 宇宙空間の使徒を迎撃する為に作った迎撃システム、宇宙空間に多数は位置されている特殊な衛星を介して弾を加速し標的にぶつける。 (東京は大気圏外の使徒への対抗策を作っていたのね・・・ネルフも当然何らかの手を考えておくべきだったかもしれないわね・・・東京が、死海文書のコピーを手に入れているかどうかは分からないけれど・・・当然予測されるべき事だったわね。予算の関係からそれが実現不能だったとしても・・・) 「先輩、七号機の起動準備できました。」 「・・・では、早速初めて」 「はい、」 第11ケージ、七号機、 (やっぱり・・弐号機とは雰囲気が違うわね・・) 『始めるわよ、良い?』 「ええ、何時でもどうぞ」 『プラグ固定完了、第一次接続開始!』 『エントリープラグ注水』 ・・・・・ ・・・・・ 『主電源接続、全回路動力伝達、起動スタート、シナプス挿入』 周りの壁に突然文字や幾何学模様や様々な模様が現れた。 『A−10神経接続異常なし、初期コンタクト全て問題無し。』 ケージの映像が映し出される。 『全ハーモニクスクリアー、シンクロ率74.33%、暴走、有りません。』 (・・・低いわね、) やはり、弐号機ほどの数値は出ないようだ。 『未調整だからずれが大きいわね・・・』 『未だ、使徒は動かないからそのまま待機、その間にできる限るの調整をするわ』 「御願いね」 アスカはモニターに映る使徒をじっと睨みつけた。 チルドレン待機室、 トウジ、ヒカリ、マナの3人のチルドレンが待機室で待機している。 (四号機はヤッパリ相田のお母さん・・・そして参号機は、多分鈴原のお母さんが入っているんだと思う・・・・) これが、もし生き返る可能性があると言うのなら、自分も知りたいであろうし、知らせた方が良いだろう。しかし、生きかえる可能性が無いとしたら・・・・使徒戦を無事勝ち抜いたとしても、いつかはエヴァも破棄される時が来るだろう。そうなれば再び別れを味わうだけ・・・それまでの間決して母と子として接する事も出来ぬままに・・・ マナはどこか、軽い後悔も感じていた・・・・ 大人達が物事を隠す中には、知らない方が良い・・・そんな配慮的な理由もある・・・ 「霧島さん、どうかしたの?」 何時の間にかヒカリがマナの顔を覗き込んでいた。 「あ、いやその・・」 「今私達が悩んでも仕方ないよ、私達に今出来ることは祈る事ぐらいだし・・」 「まあ、そうだけど・・・」 「せやで、霧島〜、惣流達に任せとけや」 確かに、悩んでもどうにか成る事ではない・・・だったら、何らかの形で思考の外においておいた方が・・・ (!) 閃いた。元々死者の魂が宿っているだけ・・・お墓か何かと思えば・・・ (あう〜〜エヴァってすんごく罰当たり〜) 突然頭を抱えたマナに一体どう反応すれば良いのか、二人は少し困ってしまった。 第1発令所では、技術部のオペレーターが七号機の調整に勤しんでいた。 「機体のフィードバックを0.03上げて」 「はい」 日向はじっとモニターに映る使徒と迎撃システムの準備画面を見つめた。 「・・・」 司令塔の二人は迎撃システムの準備画面のみを睨みつけている。 「一体何時から準備していたのだろうな・・」 「アレだけの衛星の数だ・・・少なくともサハクィエルの後からと言う事は無かろう」 「ではそれよりも前か・・・」 「・・・どうして、使徒襲来以前からあんな兵器を準備できる?」 「・・・何故だ・・・」 「考えてみれば、不可解な事は多いな」 「ああ・・」 「東京は一体何を知っている?」 「・・・分からん。しかし・・・今考えてみれば、皇耕一がシンジを引き取った事からして少し奇妙だ。」 「・・そうだな、ユイ君の関連からありえない事とは言えないが・・・確かに少し奇妙な事だ。そして、その後の、リリン設立も含めて・・・今考えれば奇妙な事が連続し過ぎている。」 「・・・・そんな昔に何を知り得たと言うのだ・・・」 「・・・・」 「・・・我々には到底見当がつかない何かか・・・」 東京、東京帝国グループ総本社ビル最高総司令室、 「準備完了まで5分です。」 「良し、全衛星加速器作動準備開始、」 耕一はモニターに映る使徒を睨みつけた。 「動きませんね」 「ああ、好都合だ。」 リリン本部、予備ケージ、 「無事に帰ってきてね」 見送るレイラに頷いた後シンジとレイがプラグに入った。 「初号機自体に問題は?」 『SS機関は現在停止しているから、問題無いと思われるわ』 「じゃあ、機動を始めてください。」 そうしていつもの通りに起動が進んで行き、いつもの通りに190%台のシンクロ率が弾き出された。 『では、暫くそのまま待機していてください。』 東京、東京帝国グループ総本社ビル最高総司令室、 「衛星軌道準備完了しました。」 「加速器も既に準備完了です」 「ロック完了。OKです。」 耕一は司令室を見まわした。 「よし、発射せよ」 「カウントダウン開始、」 「10」 「9」 「8」 「7」 「6」 「5」 「4」 「3」 「2」 「1」 「発射!」 人工衛星から電磁加速された弾が発射された。 弾は次の衛星に向かって飛んでいる。 ・・・・ そして次の衛星の加速器で方向を変えながら加速されて飛び出し、次の衛星に向かう。 「順調に加速されています。」 ・・・・ ・・・・ 3Dモニターに表示された地球の周回を加速しながら回っている。 弾を加速した衛星がその反動で逆方向に吹っ飛ばされる。 加速を重ねる後とにそれが大きく成っていき、衝撃で破損する。 「後120です。」 第3新東京市、ネルフ本部、第1発令所、 「マギの計算上では十分に第伍使徒クラスのATフィールドをも貫通できる速度を持っています。」 「・・動かないですね。」 「そうね、」 「このまま動かないと言いんですけどね・・・」 「ええ・・マヤ、調整は?」 「出来る範囲では、」 「目標移動を開始しました!!」 リリン本部、作戦立案室、 ミサトは他の職員達と共にモニターをじっと見詰めている。 今回作戦立案課は、この作戦が失敗した時の為にいくつもの第2案第3案を提出した。 それらが使われる事無くこのまま一撃の元に殲滅できれば良いのだが・・ 「ん?」 モニターの使徒が動き始めた。 ボールペンを握る手に力が篭る。 東京、東京帝国グループ総本社ビル最高総司令室、 「使徒が回避行動に入りました!!!」 「追尾開始!!!」 (・・いけるか?) 「使徒は高度を下げています!!このままでは地表に着弾します!!」 司令室に緊張が走る。 「目標大気圏内に侵入!!尚も高度を下げています!!」 「着弾まで20!」 使徒は更に高度を下げ、衛星の方も追っていく。 弾は凄まじいまでの速度に加速され通過した瞬間に衝撃で衛星が爆発する。 そして最後の衛星を通過し、一直線に使徒に向かうが、使徒は最後の瞬間に体をひねってずらし、直撃を避けた。 ATフィールドを貫通した後に赤い光が散っていく、一方プラズマと化した弾が地表に激突し瞬間凄まじい爆発が起こった。 「どこに着弾した?」 「・・・」 オペレーターの顔色が変わった。 「どうした?」 「・・・北京近郊です。」 司令室がシンと静まる。 「使徒は!!?」 耕一の一声で司令室に緊張が戻る。 「現在、落下中!」 「落下予測地点は・・・飛行を始めました!」 片方の羽のような部分がもげている為まともに飛べない、しかしそれでも何とか第3新東京市に向かおうとしているようだ。 「リリンとネルフに知らせろ!」 第3新東京市、リリン本部、発令所、 「迎撃システムは?」 「稼働率は2.3%です。」 「使い物になりませんね・・・初号機と、それとネルフの七号機を臨出撃体勢に、第3新東京市到着時に両機で総攻撃を」 「目標第3新東京市到達まで100秒!」 「・・・スーパー化しているでしょうか?」 「・・・現状を見る限り、単なる強化では意味が無いですね。」 「・・・そうですね、むしろ、能力変化の方が厄介ですね。」 地上、市街の端にアラエルが落下した。 射出口から初号機と七号機が飛び出した。 「とにかく動き回って、止まっちゃ駄目だ。」 初号機は激しく動きながらアラエルに向かって駆ける。 アラエルは初号機に向かって光を放って来た。 「「くっ」」 心に直接侵入してくる。 直ぐに横へと飛び光から出る。 七号機が長距離から陽電子砲をぶっ放す。 ATフィールドを貫き次々にヒットする。 自己修復や初号機に向けて放つ光などによって防御に回すエネルギーのようなものが減っているのか、簡単に貫ける。 初号機は新型プログソードをぎゅっと握り締め、そのまま跳躍する。 アラエルは再び光を放ってきて、初号機が完全に包まれる。 「「くっ」」 心に侵食される。 (ATフィールド!) レイがATフィールドを展開し、自分とシンジとを包み込む。 (レイ!!・・くっ) シンジは攻撃に集中する。 全体重を込めて一気にプログソードでアラエルを斬る。 するとアラエルの巨体が真っ二つに裂け、瞬間大爆発を起こす。 「きゃ!」 「うわ!」 初号機はその爆発で弾き飛ばされ地面を転がった。 ・・・・・ ・・・・・ 爆煙が晴れた後にはクレータが出来ていた。 「・・ふぅ・・・」 「・・勝てたわね・・」 かなり疲れたのか、二人は目を閉じそのまま眠りに落ちて行った。 七号機、 『二人は寝てしまったみたいなんだが・・・初号機を回収してくれるかな?』 「ええ、良いわよ」 七号機は初号機に歩み寄って初号機を抱え上げ、そのまま射出口へと戻った。 リリン本部、発令所、 蘭子がホッと息をついた。 「上手く行きましたね・・」 「ええ・・・被害は相変わらずかなりのものですが・・・」 「・・・北京の事が気に成りますね・・・」 ネルフ本部、第1発令所 「あと1つか・・・とても間に合わんな・・・」 「・・・ああ・・・」 「・・・どうすれば良いかな・・・」 「・・・・・」 リツコは司令塔の二人を見上げた。 (・・・計画を保持しようとするのか、計画を諦めるのか・・・二人はどちらを選択するのかしら?) 東京、東京帝国グループ総本社ビル最高総司令室、 中国華北部の衛星映像が映し出されていた。 北京近郊が大きなクレーターになっている。 北京も一部がクレーターに飲み込まれ残りの部分も衝撃波で甚大な被害を受けているだろう。 「死傷者は500万人に達するかもしれませんね・・」 「現地の東京軍を直ぐに向けさせろ」 「了解」 その後一通り指示を出した後、耕一は司令室を出て会長室に向かった。 ・・・・ 耕一は自分の椅子に座ると大きな溜息をついた。 ・・・極めて厄介な事態が起こってしまった。 「・・・・・・」 耕一は電話を取った。 「中国に飛ぶ、すぐに機の手配を」 『はい』
あとがき アラエル戦まで終了しました。 しかし、その一方で甚大な被害が発生してしまいました。 そしてこれまでも間接的にはすさまじい犠牲を出してきましたが、今回は直接的に多くの民間人の死傷者を出す結果となりました。 このことはどういう結果をもたらすのでしょうね。 今回マナが真実に一歩近づく結果になりましたが、マナ自身は若干の後悔を感じてもいます。 真実を知ると言うことは非常に重要なことでもありますが、それが幸福なことであるのか、又良いことなのかと、言うのは一概にはいえないのかもしれませんね。