リリン〜もう一つの終局〜

◆第2話

第3新東京市、ネルフ本部、第1発令所、
遂に、スクリーンのバルターザールの表示が全て赤色に変わった。
「来た!」
「バルターザールが乗っ取られました!」
『人工知能マギにより自立自爆が決議されました。』
リツコとマヤは全速で操作し始めた。
『起爆装置は3機一致の後、0.2秒で行われます。自爆範囲は、中緯度深度−280、−160、0フロアです。特例、582発動可の為、』
「バルタザール更にカスパーに進入!!」
「押されてるぞ」
「何て計算速度だ。」
『自爆装置作動まで後20秒』
「いかん!」
「カスパー18秒後に乗っ取られます!」
『自爆装置作動まで15秒』
「くっ・・拙い」
リツコは露骨に表情を歪めた。
『自爆装置作動まで10秒』
『8秒』
『7秒』
『6秒』
『5秒』 
『4秒』
「マヤ!」
『3秒』
『2秒』
「いけます!」
『1秒』
「押して!」
『0秒』
二人のキーボードのリターンキーが同時に押された。
発令所中に緊張が流れた。
『人工知能マギにより自立自爆が否決されました。』
「「「やった!」」」
発令所が湧き上る中二人は理解できない状況に混乱していた。
マギは、完全に制圧された。
自立自爆は、使徒自身が解除したのだ。
何の為に?
そして、これから何をしようと言うのか、


リリン本部、発令所、
「プログラムの発動は成功しました。」
使徒を東京システムに引きつける事に成功した。
「来ました!!ネルフ、マギからのハッキングです!!」
ジュンコは猛烈な速度でキーを叩き始めた。
「・・・早いわね・・・でも、この程度なら、」
東京システムの力が注ぎ込まれ、押し返していく。
皆モニターをじっと見詰めている。
「・・・何かおかしい・・・」
暫くしてジュンコは違和感を感じ取った。
何か単調過ぎる。
その時、突然照明が一瞬消え、直ぐに点灯した。
発令所中の者が突然の事に戸惑った。
「・・・しまった!!」
突然ジュンコは悲鳴のような叫びを上げた。


手術室、
「ん?」
照明が消え直ぐについた。
「・・・何が?」
「先生」
「ああ、」
医師は手術を再開した。


手術室の前では、4人は少し戸惑っていた。
「・・何があったの?」
「・・・電源が予備に切り替わった・・・何があったの?」
「・・・・」
「・・・・」
レイは一瞬停電した事にも気づいていない様で、一心に祈りつづけている。


東京、東京帝国グループ総本社ビル最高総司令室、
情報の収集と平行して各勢力との連絡を取っている。
大きな混乱を引き起こさないように、ゼーレ側に取り込まれないように・・・
しかし、事態の収拾は、初動が遅れたために困難となっている。


第3新東京市、リリン本部発令所、
リリン本部の4系統の電源のうち3系統を支配され、更に、一般通信回線の大半を支配されてしまった。
今は、最後の電源系統を防衛している。
「万が一に供え、手術室に発電機を」
「・・分かりました。」
一瞬、大変な事になりかけたが、何とか持ち堪えられた。
「・・そう来たか・・・」
ジュンコは袖を捲り、軽く舌なめずりをした後、今まで以上の猛烈な早さでキーボードを叩き始めた。


ネルフ本部、第1発令所、
「松代に連絡取れる?」
「あ、はい、回線繋ぎました。」
「使徒め、見ていなさいよ、」
更にリツコは松代経由で世界のネルフ支部に回線を繋いだ。
「世界中のマギで一斉制圧、見ていなさいよ」
リツコが作ったマギ・コピー、その総力でマギ・オリジナルごと制圧する。
マギ・オリジナルに最高機密は置いていない、だからこそできる事では有るが、


リリン本部、発令所、
少しずつ押されている。
「・・・ネルフ頼みになるとは・・・」
ネルフがこのまま黙っている筈が無い、世界中のマギ・コピーを総動員する筈である。
ジュンコは思いきり顔を顰めていた。
やはり、どんな場合でも負けると言う事は屈辱である。


ネルフ本部第1発令所、
「準備できました。」
「何時でも直結可能です」
「始めて!」
リツコの声と共に、世界中の支部のマギ・コピーからここ、ネルフ本部のマギ・オリジナルにハッキングが開始された。
凄まじい早さで一気に防壁を侵食する。
「行けるわね」
使徒とマギ・オリジナルは東京システムともやりあっているのだ。
そこへこれだけの物を一気に投入したのだ行ける。
リツコはにやりと笑いを浮かべた。
瞬く間にマギ・コピ−達はメルキオールを制圧した。
東京システムも侵入を開始した。
「マヤ!」
リツコとマヤは自滅プログラムを送り込む準備をした。
「何時でも行けます!」
そして、後僅かでと言うところで一気に反転した。
「え!?」
「・・・第666プロテクト・・・」
第666プロテクトを発動し、マギ・オリジナルは完全防御体制に入った。


リリン本部発令所、
ジュンコは色々と裏コードを試していたが、既にリツコによって粗方潰されている様である。
「第666プロテクトか・・・まともに破るには・・・最低20時間は掛かりそうね・・・」
「でも、自己進化する使徒相手にそんな時間は待てないか・・・」
「そうね・・・結局私の切り札って、皆途中で使われちゃうのね」
少し愚痴を言う。


東京、東京帝国グループ総本社ビル最高総司令室、
早速ゼーレが動き始めていると言う事が確認された。
ゼーレはアメリカを失った。これは間違いなく大きな痛手である。
しかし、東京帝国グループがアメリカを手に入れたわけではない、そして東京帝国グループは皇耕一と皇ルシアの二人を失った。これだけでも信じられないほどの損失である。
だが、その混乱に乗じてゼーレが様々な手を仕掛けてきた。
間違いを起こせばわずかな時間で勢力比が一気に傾きかねない、


技術部長執務室、
ジュンコとリツコが対面していた。
「今回の事は、私のミスよ」
「そんな事は無いわ、使徒がこのような行動に出ると言う事は予測できる事ではないわ」
リツコは軽く息をついた。
「肝心なこれからの事だけど、」
「従来の裏コードは殆ど潰した様ね」
「ええ、かなり大変だったけれどね、」
ファイルをジュンコに渡す。
「これが、今のコード」
「最高機密は置いてないとは言え良いのかしら?」
「司令の許可は取っているわ、」
「そう、じゃあ第666プロテクトを無効化するプログラム、これを今のマギにあわせて組み直すわ」
「無効化する?」
「ええ、第666プロテクトには穴があるのよ、一応ね」
ジュンコは微妙な表情を浮かべて言った。
「・・・」
「東京システムには対マギ用として、東京システムにとって第666プロテクトを無効化する事ができるのよ」
「それって、」
「ええ、東京システムと使徒の一騎討ちに成るわ、但し、マギのシステムを完全に解読しているし、最初の時よりも強くなっているわ」
使徒は自己進化する。
リツコは眉間に皺を寄せた。
「これが、東京システムのコードとか設定とか」
ジュンコはファイルをリツコに渡し、リツコはファイルをぱらぱらと捲った。


15分後、リリン本部技術部会議室、
リリンとネルフの技術部の精鋭が集まった。
今リツコが説明を行っていて、ジュンコは東京システムの環境の設定を行っている。
「以上よ、理解したかしら?」
一旦息を吐く、
「使徒は自己進化を続け強く成っていく・・いい、これは、時間との戦いになるわ、では、急いで!」
リツコも含め一斉に会議室を出てそれぞれの配置に向かう。


発令所、
グランドフロアに機器が導入されてネルフ側の職員がキーを叩いている。
中央サブフロアには、ジュンコ、リツコ、マヤの3人の姿があった。
今は、プログラムを組み直している段階である。
「かなりの物ですね」
「ええ、第666プロテクトを破るには一筋縄では行かないわ」
「こっちは大体終わったわね・・リッちゃんは?」
「後少しって所ね」
「こっちは終わりました。」
数分後プログラムが完成し、チェックを行いそれも終わった。
「皆、いよいよよ」
皆は表情を引き締めた。
『東京システムマギシステムに直結完了、第666プロテクトを無効化プログラム発動』
メインモニターには東京システムとマギシステムの概略図が表示されている。
今は東京システムが全て青、マギシステムが全て赤である。
「行くわよ!」
ジュンコの声と共に皆一斉にキーボードを叩き始めた。
一気にマギシステムへと侵食を開始する。
瞬く間に30%ほどを制圧したが途端に抵抗が強くなった。
使徒も、防衛に必死に成ってきたようだ。
今の所一番制圧しているのはメルキオールである。
「メルキオールに集中して!」
バルタザールとカスパーへの攻撃をメルキオールに集中する。
それによってメルキオールの制圧が一気に大きくなり、カスパーとバルタザールが押し戻される。
しかし直ぐに反応して来る。
「リッちゃん御願い!」
「マヤ!」
「はい!」
リツコとマヤは席を立ち、大急ぎでネルフ本部に向かった。
ジュンコは更にキーを打つ速度を上げた。


ネルフ本部第1発令所、
3体のマギ全てが展開され、様々な機器に繋がれていた。
メインモニターにはリリンの物と同じく、勢力の概略が表示されている。
メルキオールはほぼ青、他の2体は完全に赤になっている。
リツコとマヤが到着し、メルキオールの周りに展開されている機器の最終準備をした。
今、制圧している速度は、徐々に遅くなってきている。
使徒が強くなってきているのだ。
「・・際どいわね・・」
皆、東京システムが勝つ事を祈っている。
そして、遂にメルキオールが全て制圧され、直ぐに開放された。
「行くわよマヤ!」
「はい!」
二人は猛烈な速度でキーボードを打ち始め、メルキオールがバルタザールにハッキングを仕掛けた始めた。
同様に東京システムも、
圧倒的な勢いで勢力を押し広げていく、
「行けるわ」
リツコはにやりと笑い更にキーボードを叩く速度を上げた。
そしてバルタザールも制圧したが、カスパーに侵入する頃には使徒の勢力がかなり強くなり、殆ど勢力が動かなくなった。
リツコは第666プロテクト解除のプログラムを起動させた。
『人工知能メルキオールより第666プロテクトの解除が提案されました。』
『賛成2反対1、可決されました。』
「よし!」
発令所の空気が一変してホッとしたものになる。
第666プロテクト解除と同時に世界中のマギ・コピーが一斉にハッキングを開始した。
僅かな時間で制圧しそして、マギ・オリジナルはを開放された。
その後、リツコは自滅プログラムを使徒に送り込み殲滅した。


数時間後、リリン本部、手術室前、
長かった手術が終わったのか、赤いランプが消えた。
4人は立ち上がって中から人が出て来るのを待った。
ややあって、扉が開かれて、医師達が出て来た。
そして、それに続いて医療カプセルに入れられてシンジが、
「手術は成功しました。もう、問題ありません。」
皆一斉に安堵の溜息をつき、長い緊張が解けたためが力が抜けて、座り込んでしまった。

あとがき
ユイ 「う〜ん、本編とあまり変わっていないわね」
ナオコ「そうね」
リツコ「まあ、本編にも言えることだけど、私たちの活躍が書かれた話だったわね」
ナオコ「ええ、最後の二人の会話が削除されたのが残念だけれどね」
ユイ 「あまり拘っても仕様の無い事はありますからね」
リツコ「あら?でも、司令がユイさんに拘っていなければ・・・」
ユイ 「あら、私は仕様の無い事もあるといったのよ、拘るべき事も有るわよ」
ナオコ「ユイさんの事はどちらでしょうねぇ」
ユイ 「さぁ、どうでしょうねぇ」
リツコ「そうですねぇ」
3人 「「「ふふふふふ」」」

YUKI「な、なにか、異様な空気が」(汗)
YUKI「と、とりあえず・・・次からは本編から分岐したストーリーを歩む事になります。」
YUKI「1周年期間中に第3話を更新できると良いなぁ・・・では」