リリン〜もう一つの終局〜

◆第6話

リリン本部発令所、
メインモニターには、第3新東京市上空にレリエルの影が浮いているのが映っている。
「さて、どうしますかね」
『避難、後7分掛かります。』
返す蘭子はいない。
「・・・」
当初の予定では史実通りシンジが初号機を暴走させて倒すつもりだったが、それは明かに不可能である。
と、なるとレイのリリスの力しかない。
「・・・・」
「エヴァの発信準備は?」
「間も無く完了します」
「ネルフ側エヴァ発進準備完了まで2分」
「・・・作戦指揮権はネルフか・・」
ネルフの作戦指揮下では、色々とやりづらい。
「上手く行けば良いですが・・・」


ネルフ本部、第1発令所、
「エヴァ各機発進準備完了しました」
「江風君、初陣だが、無理をする必要はない、」
『はい』
「弐号機のコアの取り外しをしていなくて本当に良かったわね」
「本当ですね。」
「日向1尉」
「はい」
「リリン側にもエヴァを発進させろ」
「分かりました。」
「リリン側のエヴァの状況は?」
『初号機にレイさんが、零号機にレミさんが搭乗しています。それぞれのシンクロ率は76%、32%です。』
「・・弐号機、参号機、初号機の順か・・・」
「初号機は近距離用、零号機は長距離用の武器を持たせて、こちらの指定するポイントに射出してください・・・」
『分かりました。初号機に新型プログソードを零号機にスナイパーライフルを持たせます』
大空が返した。
「エヴァ各機発進します」
エヴァがそれぞれ射出される。
「リリン側もエヴァを射出しました。」
零号機、初号機、弐号機、参号機、四号機、伍号機、七号機の7体で取り囲む、エヴァの数としては、使徒戦史上最大となっている。
しかし、戦力が最大かと言われた場合、そうもいかないかもしれない。


地上、初号機、
(碇君は私が守る)
レイは操縦桿をぎゅっと握り締めた。
レイのリリスの力を使ってレリエルを倒す。
その為には中に飛び込まなければいけない、近接戦闘用の武器新型プログソードを渡された。すなわち近接戦闘に当てられた事はその上では好ましい事である。


リリン本部、発令所、
レイラと郁美が入ってきた。
「・・どうぞ、」
榊原はレイラに席を勧め、レイラは席に座った。
メインモニターを見つめる。
自分も戦えるようになったと言うのは束の間の事、又、戦いをここで見る立場になった・・・しかも、その立場も変わってしまった・・
「・・・・」
レイラは様々な想いのこもった目で地上の様子を見守った。


地上、初号機、
先ずは初号機が一番最初にレリエルに接近できた。
『応援到着までそのまま待機してくれ』
「了解」
初号機はビルの陰に潜んだ。
「・・レリエル・・」
レリエルはゆっくりと市内を移動している。
「・・・」
・・・・
・・・・
・・・・
弐号機と参号機が配置に付き、他の機体も援護攻撃ができる位置に移動を完了させた。
「・・・」
『攻撃開始!!』
初号機、弐号機、参号機が一斉に飛び出し、零号機、四号機、伍号機、七号機が支援攻撃を始めた。
無数の攻撃が飛んでいき、そして着弾する寸前にレリエルの影が掻き消える。
レイは周囲に警戒を払う。
どこから来るのか・・・そして、どの機体が襲われるのか、
『きゃっ!』
アスカの声と共に弐号機が飛んできた。
「え?きゃ!」
初号機と弐号機は折り重なるように地面に倒れた。
「な、何?」
『不明!気をつけて!』
レイは初号機の体勢を起こした。
『どあ!』
『きゃ!』
参号機が弾き飛ばされる。
そこを見ると、黒い物体が動いていた。
物体はビルの影に入り、同化していく、
「何?」


リリン本部、発令所、
「・・まさか、能力が変わったのか?」
榊原の零した言葉にレイラは表情を暗くした。


ネルフ本部、第1発令所、
影から現れ体当たり攻撃を加え直ぐに影に戻っていく、その影に攻撃を加えても、無意味である。
「・・厄介な能力ですね・・」
「確かに、致命傷を与えられるような大きな攻撃力は無いわ・・でも、これは厄介すぎる・・・攻撃パターンの解析できる?」
「少しお待ちください」
時折子供達の悲鳴が聞こえる。
「マギはデーター不足により解析不能を提示しました。」
「・・困ったわね・・・」
それぞれのエヴァは反撃を加えようとするが間に合わない。
「・・日向1尉、一時撤退させろ、情報を収集し、作戦を立てろ」
「了解、回収ルートを」


総司令執務室、
冬月が戻ってきた。
「使徒は厄介なようだな」
「ああ、」
「・・・どうする?」
「今、リリンと共同で作戦を立てている」
「・・・リリンと共同か・・・葛城君をリリンが登用したと聞いたが」
「ああ、そのとおりだ」
「・・・どうなるかな?」
「・・・分からん。だが、役に立てばいい」


リリン本部、特別執務室、
榊原が作戦の許可を取るためにやってきた。
「・・榊原さん」
「・・・これを、」
レイラは榊原からファイルを受け取った。
そこには今回の作戦案がかかれている。
中心部から有る程度引き離しそこでNN兵器を使用しビル等を全て消し飛ばし、ありったけの照明弾等を撃ち影を全て掻き消し、隠れる場所を無くした上で、ネルフ・リリン両方のエヴァによる総攻撃により殲滅する。
桁外れの被害が出るのは確実である。
そして、その作戦の途中で、エヴァは数多くの攻撃を受ける。
それは、チルドレンが攻撃をされると言う事なのだ。
「・・・」
郁美が何か声をかけようとしたが榊原が手で制した。
「・・・・」
自分がチルドレンを傷付ける作戦を・・・自分が、命令する立場・・・いや、それよりも更に上の立場にいる・・・
「・・・・・」
つい先日までは、自分もその場にいて戦っていた・・・なのに・・・
そして、大切な人たちを・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
レイラはゆっくりとペンを取ってサインをした。
「・・・榊原さん・・・」
「はい」
「・・・休んでいも良いですか?」
「ええ、お休みください、私たちはこれで失礼しますので」
榊原はファイルを受け取り郁美と共に部屋を出た。
「・・・私って卑怯ね・・・」
「・・・シンジ君・・・」
自嘲しシンジの名を呟いた後、レイラは涙を零しながらソファーに横たわった。


ネルフ本部、チルドレン控え室、
「江風だっけ?」
アスカがヒロに近寄り声をかけた。
「あ、うん・・惣流さんだよね」
「そうよ」
「アンタさ、作戦は聞いたわよね」
「あ、うん・・・聞いたけど」
「成功するためには、わざわざ何度も攻撃を受けなくちゃならないのよ、シンクロシステムのフィードバックくらい知ってるでしょ」
「あ、うん・・」
「なんで、そんな作戦にわざわざ参加するわけ?アンタはまだろくに訓練も受けてない、ずぶの素人なのよ」
「あ・・うん、確かに、反応だって鈍いし、とっさに何か指示されても動けないと思う。でも・・・」
「でも?」
「単なる的にならなれるよ」
軽くはにかみながら答える。
「・・・」
「それで、皆への攻撃回数を減らせるよ、流石にさ、人の苦労を変わろうとは思わないけどさ・・・僕が、負担する事で、みんなの負担が少し軽くなればそれで良いんじゃない?」
「・・・」
「それに、いざとなったら逃げる事だってできるしさ、」
「ふふ、なかなか、面白い奴ね」
「そう?」
「まあね、そこそこ気に入ったわよ・・そろそろ時間ね、行くわよ」
「あ、うん」
二人はケージに向かった。


東京、東京帝国グループ総本社ビル最高総司令室、
蘭子が各部署や、各地の最高幹部に指示を下している。
「使徒戦で、混乱が起きている時こそチャンス、少しでも勢力を回復するようにあらゆる手を尽くすように伝えて」
「「「「はい」」」」
(・・・使徒と言う脅威が逆にいい方向に働くとは・・皮肉ね・・・)


ゼーレ、
「早くも東京帝国グループは、その指令系統を回復したようだ。」
「あれだけの混乱状況から考えれば、流石か」
「使徒と言う外的要因が一気に纏め上げるとはな・・・」
「まだ精神的に回復したわけではない。個々はもろい、」
「これからが正念場、バランスが大切だ」
「左様、全てにおいて細心の注意をかけなければいかんよ」
「敵は、東京帝国グループだけではないのだ。」
「複数の脅威と戦う時は常にバランスに気をつけなければならん」
「全ては、計画の達成の為に」


第3新東京市、ネルフ本部、第1発令所、
モニターには作戦が実行されている様子が映し出されている。
ただ、攻撃を受け、その場から後退するだけ、それで、作戦ポイントへと誘導していく、
「・・勝率は良い、この使徒戦は勝利を収めるだろう。だが、これからどうする?」
「・・・難しいな、」
「・・・現在の状況では、被害が出ればその半分以上をネルフ側が保障しなければならん・・・」
「・・・不可能だな。」
「ああ、リリン側も積極的に保障しようと言う余裕は無いだろうしな・・・」
「どうする?」
「・・・成り行きに任せるしかない・・・」
「・・そうだな、先が見通せない以上、一歩一歩足元を踏み固めていくしかないな」
「ああ、踏み外したものから脱落する。」


リリン本部、発令所、
榊原が司令席からじっとメインモニターを見つめながら考えている。
(・・・今回の、作戦・・・大きな被害が出る。)
(だが、それを埋めるだけの予算は無い・・・国際連合にも東京帝国グループにも・・・)
(・・・・会長・・・・)


リリン付属病院、
レイラは医師に、シンジの病室に入る許可を貰った。
医師も、東京帝国グループ新会長の要望を断るわけにも行かず入室を許可した。
レイラは病室に入った。
シンジは様々な機器につながれて、ベッドに寝ている。
「・・・シンジ君・・・」
レイラはシンジの手を取りぎゅっと胸に抱いた。
「・・シンジ君、私・・私・・・」
涙を流し泣き始めた。
レイラの泣き声が、病室に響く、
・・・・・
・・・・・
・・・・・
いつしかそのまま寝てしまった。


その時地上では作戦が発動され、第3新東京市の1部地区が消滅し、無数の証明弾が撃たれ、辺りの影を全てかき消した。
そして実体化したレリエルに向けて全機が一斉攻撃を加え、殲滅していた。


ネルフ本部、総司令執務室、
「とりあえず、上手く行ったか」
「ああ、で、碇グループはどうだった?」
「・・そうだな、難しいな。やはり、碇グループに対しては手持ちのカードが少ない」
「まあ仕方ないな、」
「・・どうする?」
「・・・そうだな・・・予算はどうだ?」
「・・・全く足りんというほどでもないが・・・なかなか難しいな、できればもう少し欲しいところだな」
「・・・ふむ・・・」
「・・・・」
「・・・あまり、手を広げすぎるのも問題だな・・・後は諜報部にやらせる」
「分かった。」


東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、
蘭子とミユキが色々と相談をしていた。
「・・今回の事でとりあえずの勢力は安定したわね」
「ええ、小さな動きは続くでしょうが、暫くは大きな動きは無いと思います」
「・・・次の問題は、アメリカをどうするかね・・」
「・・・最高議会を召集しましょう。」
「そうね・・・漸く最高議会が開けるわね」
中級秘書官達が書類の束を抱えて入ってきた。
「さて、片付けましょう」
「はい」

あとがき
ミサト「不死鳥のようによみがえってきたわよ♪」
リツコ「そんな上等な物じゃないわね・・・せいぜいゾンビ・・・おおまけで猫かしら」
ミサト「あによ〜それ〜友人がせっかく舞台に再登場したのに、
    ちったぁ〜祝おうって気はないのかしら?」
リツコ「自分で自滅しただけでしょ」
ミサト「ぐぐ・・・」
リツコ「まあ良いわ・・今日は久しぶりに飲みましょうか?」
ミサト「あんら?リツコの方から言ってくるなんて珍しいわね、なんかあったわけ?」
リツコ「いくら自滅でも、一応は友人である貴女が戻ってきたことととってもらえるかしら?」
ミサト「わざわざ嫌みな言い方しないでよ〜」
リツコ「そう?」
ミサト「まあ、おいておいて、飲みましょ、割り勘ね♪」
リツコ「い・や・よ!」
ミサト「うぐぅ・・なんでよ」
リツコ「飲む量を考えてご覧なさい、」
ミサト「・・仕方ないわね・・自分の分は自分で持つのね」
リツコ「当たり前よ、じゃ、早速頼みましょうか、」
そしてそれぞれが頼んだ酒が運ばれてきた。
ミサト「う〜ん、良いわね〜」
リツコ「そうね・・・あら?」
榊原と蘭子が店に入ってきた。
ミサト「あ、蘭子さんと榊原さん」
蘭子 「あら、二人で飲んでたんですか?」
リツコ「ええ、」
榊原 「う〜ん・・・良かったら同席して良いかな?なんならおごるが」
ミサト「本当ですか!?」
リツコ「ええ、」
榊原 「ああ、給料からしてそんなに良い酒を飲めないだろうから、
    今日は良い酒を飲んでもらおうと思ったのだが」
蘭子 「榊原さん良いんですか?経費では落としませんよ」
榊原 「ええ、かまいませんよ、(この店においてある酒の値段なんて)しれてますから」
蘭子 「・・そうですか、では失礼して、」
しばらくして二人の頼んだ酒と、追加の酒が運ばれてきた。
そして、とりとめもない話をかわす。
ミサト「ところで、お二人って、お付合いをされているんですか?」
蘭子 「はい?」
榊原 「え?」
ミサト「ん?二人っていい雰囲気になってるシーンも結構あったし、
    お似合いのカップルだって思ってたんですけど・・・・違ったんですか?」
リツコ「・・・蘭子さんがリリン本部からいなくなって寂しがってもいられるようでしたけど」
蘭子 「くすっ・・くすくすくす」
榊原 「ふふ、ははは」
二人は首を傾げた。
蘭子 「榊原さんは既婚ですよ」
二人 「「ええ〜〜!!」」
榊原 「そんなに意外だったのかな?親しい仲間がそばからいなくなれば、
    誰だって寂しく思うものだろうけどな、」
リツコ「まあそうなんですけど・・・」
リツコ(そんな家族構成までいちいちチェックしてなかったから恥をかいてしまったわ・・・
    まあ、それでネルフの諜報能力が低いと考えられるのならそれも良しだけど、)
ミサト「あによ〜私の時は違うって言いたいの?」
リツコ「誰もそんなこと言っていないじゃないの、」
蘭子 「まあまあ、おさえておさえて」
ミサト「そいえば、蘭子さんの好きな人って榊原さんでないとしたら誰なんですか?」
蘭子 「え?私?」
リツコ「そういえば・・良かったら教えてくれますか?」
蘭子はどこか遠い目をしながら答えた。
蘭子 「決してかなわぬ・・・いえ、かなってはいけない恋ですから・・・」
リツコ「・・そうですか・・・気持ちは分かります。」
リツコ(・・私もかなわないとわかっている恋だからね・・・)
リツコ「・・・まあ、ミサトはちゃんと適切な相手がいるからいいわね。」
ミサト「あれは、そんなもんじゃないわよ」
ミサト(あっちこっちをふ〜らふらしながら女の子にちょっかい出してるし・・・
    だいたい、最近どこほっつきあるいてんのよ、ほとんど顔見せないじゃないのよ)
蘭子 「・・・恋・・って悲しい物なのかもしれませんね・・・」
リツコ「そうですね・・・」
榊原 (なんか、意気投合してるな・・・)
榊原の携帯のバイブが作動した。
榊原 「ん?千歳からメールか・・なになに・・・早く帰ってきてね♪あ・な・た愛する妻より」
3人 「「「・・・・」」」
榊原 「ん?」
蘭子 「・・・今日は榊原さんがおごってくれるそうですし、
    みんなでおもいっきり飲みましょうか」
榊原 「え?」
リツコ「そうですね。せっかく榊原さんが良いお酒を飲ませてくれると言うことですし」
榊原 「はい?」
ミサト「マスター!これとこれとこれ、あとこれも追加ね♪」
榊原 「な、なにが??」(汗)
・・・・・・
・・・・・・
2時間後、
ミサト「今日は本当にごちそうさまでした。」
リツコ「ありがとうございました」
蘭子 「又機会があれば4人で飲みたいですね。」
榊原 「え・・ええ・・・」(かなり引きつっている。)
・・・そして会計・・・・
店員 「232万5633円になります。」
榊原 「に・・・ひゃく・・・さんじゅう・・・」
財布の中にはそんな現金はない・・・
店員 「ちなみに当店はカードは使えませんので、」
榊原 「・・・え?」
店員 「店長の方針でして、」
榊原 「・・・・えっ・・と・・・」