贖罪

◆最終話表

今日は、ユイの命日か・・・
・・・もはや、本当に命日になってしまったな・・・
「サード、何暗い顔してんのよ?」
「・・・いや、命日だからな・・」
「命日?」
暫くして分かった様で黙って部屋を出て行った。
「・・・行くか・・」
家を出て、第3新東京市郊外の墓地に向かう。
途中で花を買っていく。


ユイの墓に花を供え、手をあわせる。
「・・・ユイ・・・・・・済まなかった・・・・」
・・・・
・・・・
「・・・結局、俺のやったことは無駄・・・いや、シンジやレイを犠牲にしたのだ・・・大きなマイナスでしかなかった・・・」
・・・・
・・・・
「・・・リツコ君達の事も含めて・・・」
・・・・
・・・・
「・・・・いずれにせよああ言った結果になるのであれば、それなりに準備を整え、もっと早くにゼーレと対立することもできた・・・」
・・・・
・・・・
「・・・結果はわからない・・・勝利する事は極めて難しいが、最悪の事態だけは防げたかもしれん・・・」
・・・・
・・・・
「だが、今・・・何故俺がシンジになっているのかは分からんが・・・こうなってしまってはどうする事もできん・・・」
・・・・
・・・・
「・・・これから、レイに少しでも人間らしい事をさせてやろうとは思う・・・だが結局の所、・・・今の俺には、レイを救う事は出来ないし、サードインパクトを防ぐ事も不可能だろう・・・」
・・・・
・・・・
「・・・・レイを呪縛から解き放つのも無理・・・ネルフの佐官とは言え、そんなもの何の役にも立たない・・・・」
「・・・シンクロ率が低い以上エヴァで十分に戦う事は出来ない・・・ゼーレ以前に使徒にも勝てないかもしれん・・・」
・・・・
・・・・
・・・・
「・・・今の俺は余りに非力だ・・・」
む・・目が潤んできた。
袖で拭く。
「・・・情けないな・・・」
ん?足音が聞こえる。
足音は近付いて来る。
・・・・・奴か?
・・・・そう言えば、あの時、シンジがいたんだったな・・・
あの時、シンジは・・・・・確か・・・・
・・・・・・
・・・・・・
そうだったな・・・・あれだけの事したが、依然としてシンジも私を求めていたのか・・・・
・・・愚か・・・愚か過ぎるな・・・・
・・・・・・
・・・・・・
足音は直ぐ傍で止まった。
はて?少し軽い感じがするが・・・
振り向くと、そこには小さな花束を持ったレイが立っていた。
「・・・レイ、」
驚きからか声が出た。
「・・どうかしたの?」
「い、いや、何故レイがここにいる?」
「・・・いては駄目なの?」
「い、いや・・とんでもない・・」
「・・そう、」
レイはユイの墓に小さな花束を供え、手を合わせた。
・・・・
・・・絵になるな・・・
しかし、本当に、どうしてここに来たんだ?
奴や赤木博士の差し金とはおもえんが・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
ま、まさか、記憶が戻っているのか!?
まさか・・・そんな事が・・・
・・・・・・・・
レイはすっと立ちあがった。
「・・・」
しかし、どうやって確かめれば良い・・・
レイ、思い出したのか?・・・阿呆だなそんな聞き方は・・・
むぅ・・・
・・・・・・・・
「・・どうかしたの?」
「む、い、いや、ちょっと考え事をな・・」
「・・そう、」
・・・・・・
・・・・・・
暫く、二人はその場で黙って立っていたが、やがてレイは先に帰って行った。
・・・・・・
・・・・・・
「・・・ユイ・・・・」
ユイの名を呼ぶが、それに答える者はいない・・・


そして、又通常の日々が始まった。
今はレイの家で紅茶を飲んでいる。
レイはこの前買ってやった私服を着ている。
静かに紅茶を飲み、私が持ってきたケーキを啄ばむ・・・
やはり、可愛いな・・・・
見ていると気持ちが穏やかに成ってくる・・・
「・・・どうかしたの?」
「いや、気にするな」
「・・・そう、」
私も紅茶に口をつける。
うむ、美味いな、


夜、自室でレリエルのことを考える。
あんな使徒を倒す方法は思いつかない・・・
と、言うか、考えるだけ無駄だな・・・
高次の力で粉砕するしかないだろう・・・
と、すると初号機か・・・・
初号機か・・・・初号機の暴走・・・ユイが私を護ると言うのは少ないだろう・・・と、成ると純粋に初号機の生存本能による暴走か・・・私の命は無い可能性が高いかな・・・
しかし、他に方法は・・・レイのリリス覚醒くらいしかない・・・
そんな本末転倒な事が出来る筈が無い・・・
と、するとやはり、これしかないか・・・
「・・・・ふぅ・・・・」
溜息を一つつく。
いよいよ、明日か・・・


そして、今、レリエルを3機のエヴァで包囲している。
「・・・むぅ・・」
影か・・・実体は、みえんな・・・
『1機が先行し、残りがそれをサポート、可能であれば市街地の外への誘導を行って』
・・・無駄だな
ゆっくりと距離を縮めていく、
むっ!零号機がスナイパーライフルを!
「待て!」
・・ぶっ放しおった・・
影か掻き消え、ビルが爆発する。
拙い、
零号機の元に急ぐ、
『きゃあ!』
「レイ!!」
『零号機の救出急いで!』
くっ、既にレリエルに足元が飲み込まれている。
「仕方ない、」
一気に加速をつけて、零号機に向かって飛び、体当たりで零号機を弾き飛ばす。
『きゃ!!』
むぅ・・手も足も動かん・・、完全に捉えられたか、
「・・レイは、」
零号機はレリエルの外まで吹っ飛んだ様だ。
「・・・ふぅ・・・」
これでレイは、大丈夫だな・・・
直ぐに、何も見えなくなった。
通信回線も切れたか・・・完全に取り込まれたな・・・
モニターを切る。
そして、次々に落として、生命維持モードにする。
「・・・さて、後、何時間かはしらんが、待つしかないか・・・」
初号機が自分の生存の危機を感じれば、勝手に暴走するだろう。
まあ、その時は、私は三途の川を渡っているかな・・・
ユイといっしょに渡れんのが残念だがな・・・
いや、共に渡った所で、ユイは天国、俺は地獄か・・・
・・・この後どうなるかは分からんが、最悪の結果だけは回避できると良いな・・・
目を閉じ、寝て待つ事にする。


・・・・
・・・・
目を開く、
随分とLCLが冷たく成ってきた。
そろそろ、電源が切れるか、
・・・・・
・・・・・
・・・・・
意識が遠く成っていく・・・
これで、終わりか・・・・
・・・・・
・・・・・
・・・結局最後まで、何故シンジになってやり直す嵌めになったのか分からなかったが・・・
もし、もう一度誰かに成って・・やり直すと・・言う事が・・あるのなら・・・今度は・・私・・自身になり・・たいな・・・・
・・・そう・・す・・れ・・ば・・・・・・・・


貴方、シンジとレイの事を宜しく頼みますよ
ユイの声が聞こえた気がした。 だが、もう・・・・? ん?ここは? むっ、激しい振動が、 「はははは!!どうだね!我々の切り札!NN兵器の破壊力は!」 ん? 「現在電波障害のため目標確認できません」 ・・・ここは? 「あの爆発だ、蹴りはついている」 発令所・・か? 「爆心地に高エネルギー反応確認!!」 「「「なにぃいい〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!」」」 むぅ・・・辺りを見まわす。 「光学、回復します」 サキエル戦? 「・・碇、どうかしたのか?」 冬月だ・・・ 自分の体を触る。 うむ・・・私だ。 「おい、どうした?」 「ふふふ・・・ははは」 思わず笑い声が漏れる。 今までのが全て夢であったのか、或いは、神のような存在にでも再びやり直すチャンスが与えられたのかは知らんが、 とにかく今は只嬉しい、 「くっ・・」 「碇、」 「ふっ・・気にするな、」 ・・・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・・・ 「・・・・・・・・・碇君・・・」 作戦権の委譲か、 椅子から立ちあがって司令塔の将軍達を見上げる。 「・・・はい、」 「・・・本部からの通告だ。これより、作戦の全権は君たちネルフに委譲された。しかし、君達ならば勝てるのかね?」 「ご心配なく、その為のネルフですよ」 ・・・・・・ ・・・・・・ 将軍達は帰って行った。 「目標、50分で第3新東京市に到達します」 「碇、」 「問題ない、予定通り初号機を使う」 「しかし、パイロットがいないぞ」 「問題ない、俺がシンジを説得する。」 「ここは任せた。」 「あ、ああ分かった・・・・だが、碇、今日のお前は何か変だぞ・・・3年ぶりに息子に会うからか?」 「かもしれんな・・・それと、赤木博士に直ぐに迎えに行かせろ」 軽くにやりと笑ってから発令所を出てケージに向かう。 ケージの司令室でシンジ達の到着を待つ、 葛城1尉と赤木博士と一緒に入ってきたシンジは、まあ当然のごとく初号機に目を奪われている。 「・・シンジ、」 呼びかけると、少しきょろきょろした後、こっちに視線を向けてきた。 『・・・父さん・・・』 シンジ・・・うむ・・・少し目が潤んできてしまった・・・ ・・・・・ 今度は決して過ちを犯さん、決してな・・・・ ・・・・・ 「・・・シンジ、済まなかったな・・・」