立場の違い2A

第1

◆使徒襲来

7月1日(水曜日)昼過ぎ、神奈川県、
セミの声が響いている。
『本日12時30分東海地方を中心とした関東中部全域に特別非常事態宣言が発令されました。住民の方々は速やかに指定のシェルターに避難してください。繰り返しお伝えします、本日12時30分東海地方を中心とした関東中部全域に特別非常事態宣言が発令されました。住民の方々は速やかに指定のシェルターに避難してください。』
市内放送が鳴り響く中、駅前を一人の少年が歩いていた。他に人は一人も見当たらない。
少年は公衆電話の受話器を取ってテレカを入れた。
『現在、特別非常事態宣言発令の為、通常回線は使用できま』
少年は電話を切り、予想通りではあったが、軽く溜息をついた。
何故かは知らないが、少し前に、特別非常事態宣言が発令され、交通機関など全てが止まってしまっていた。
少年は父から送られてきた手紙を取り出した。
《来い》
3年ぶりの父との関係となる手紙の文面は1単語のみそれだけだった。
それで来る方も来る方なのだが・・・確かに、必要最小限度だろう、それが、他の事が手紙に書けないからか、書きたくないのか、ただ面倒くさかっただけか、それは、書いた本人以外にはわからないだろうが、
少年が先生と呼んでいる、少年が預けられていた父親の知人の話では、国際連合直属の特務機関に所属しているらしい。
人類の平和を守る立派な仕事だそうだ。
だからと言って、息子を9年間も知人に預けて、殆ど捨てたような状態にしておいて、突然来いの一単語で呼び寄せる言い訳にはならないが、少年自身が、父に会いたかったのかもしれない。
少年は、もう一枚、同封されていた写真を見た。
大きな胸をした長髪の女性である。齢30程であろうか
《シンジ君へ わたしが代わりに迎えに行くから待っててねゥ ↑胸の谷間に注目》
写真に書かれている言葉は、父からの手紙とは余りに大違いである。
(誰だろ?この人、葛城ミサトさん、て)
シンジは、ミサトの事を考えた後、結局のところ、考えても分からないと分かり、手紙と写真をしまった。
それから間も無く、辺りに凄い音と振動が走った。
「うわっ」
周囲一帯の電線が嫌な音を立てて揺れている。
辺りが静まり、シンジは耳を塞いでいた手を下ろした。
「な、なに?」
その時、地響きのような音が聞こえて来てその方向を振り返ると、山の影から複数のVTOL機が現れた。
「戦争?」
日本は、朝鮮との戦争以来、戦争らしき戦争には巻き込まれていない。しかし、今日の、特別非常事態宣言と避難命令、可能性は無いとは言い切れないだろう。
そのVTOL機に続いて、とんでもなく大きな怪物、緑を基調とした変形人型の怪物が山陰から現れた。
「何だあれ」
シンジのいる道路を巡航ミサイルが駆け抜け、怪物の方に向きを変え飛んで行き爆発を起こした。
「うわ!」
VTOL機が次々に攻撃を仕掛けた。民間人がこんな所にいることなど知らないのか、それとも知っていて無視しているのか、攻撃をしているのは、国際連合第2方面軍、陸上自衛隊と航空自衛隊のようだ。ほんの15年前までは、領空侵犯をした戦闘機に威嚇射撃をする事すらなかなか許可が下りなかった軍隊(・・・いや、軍隊ではないらしい)である。
次々にミサイルが飛び交い、怪物に直撃し爆発しているが、怪物には全く利いていないようだ。
重対空ミサイル機から発射された巨大なミサイルを、怪物は手で受け止め握り潰し爆発に包まれたが無傷で姿を表した。
シンジは、呆然と、半分怪獣映画か何かを見ているかのような気分で、その目の前の信じがたい現実を見ていた。
しかし、肌で感じる熱、衝撃波、それらが、間違い無く現実である事を示していた。
怪物の手が光ったかと思うと、VTOL機の一機が此方に落下してきた。
VTOL機が道路の反対側の店に突っ込み爆発を起こした。
その瞬間、シンジとの間に一台の車が走って来て、丁度シンジの前で急停車し、飛び散る破片からシンジを救った。
「早く乗って!」
女性がドアを開けて叫び、シンジが慌てて車に乗り込んだ瞬間、女性はアクセル全開で急発進した。
前方から複数発の巡航ミサイルが飛んで来た。女性はハンドルを切って横の道に入った。
その後、国道に入って女性はアクセルを少し緩めた。
女性は写真の葛城ミサトらしい。
「葛城、ミサトさんですよね。」
シンジは少し引き気味に尋ねた。
「ミサトで良いわよ、六分儀、シンジ君。」
ミサトは格好をつけてサングラスを取りながら言った。
戦場で助けられ、そして、その相手が、自分を迎えに来たミサトである事が分かり、シンジはほっと一息をついた。
「ミサトさん、あれは、あの、怪物は一体何なんですか?」
「あれは、使徒よ。」
聞いた事はあるがどうもその意味が思い出せないので、釈然としない顔でシンジが使徒の方を見ると、丁度、使徒の周りから航空部隊が離れて行っているところだった。
「ミサトさん、軍隊が使徒から離れて行きますよ。」
「嘘!まさか、NN兵器を使うつもり!?シンジ君シートベルトを締めて!早く!」
ミサトは突然慌てだし、アクセルを再び全開にした。
シンジは言われた通りにシートベルトを締めた。
「顔を引っ込めてショックに備えて!」
「へ?」
ミサトの言葉をシンジが理解し終わるよりも早く、後方で眩い光が起こり、直に辺りの空間が回転しだした。
「うわああああ!!!」
数秒で回転は横向きになって止まった。
二人は車を何とかして下りた。
車はガードレールに引っかかって斜めになって止まっていた。
「大丈夫?」
「え、ええ、口の中がしゃりしゃりしますけど」
砂が入ったようが、シンジは取り敢えず命は助かったと、半分微妙な笑みを浮かべて答えた。
「シンジくん、起こすの手伝って。」
「はい」
二人は何とか車を抜け出し、車を起こした。


30分後、ミサトは電話をしながら運転していた。
「あっ、リツコ、今からそっちに行くからカートレインを用意しておいて。」
リツコとは友人のようでもある。
ミサトは電話を切った。
(この新調したてのこの服もボロボロ、早くも一月で車ベッコベコ、はあ〜、後ローンが33回に+修理費か・・)
姿勢、雰囲気、明らかにミサトは暗く沈んでいる。
「こんな事しちゃって良いんですか?」
シンジは後方座席に積まれた十数個のバッテリーを見ながら言った。
「だって、車動かなきゃ仕様が無いでしょ、それに私、これでも国際公務員だし、万事オッケーよ。」
ミサトは明るく答えた。
「そう言う問題じゃないと、思いますけど」
シンジは真顔で返した。普通に考えれば、国際公務員が窃盗紛いの事をして良いはずが無い。
「可愛い顔して、可愛くない事言うねぇ」
女顔で線が細く中性的な服を着ていると、女に間違えられる事を気にしているシンジはムスッとした。
「あっ、怒ったぁ〜?おっとこの子だもんね。」
理由を何と無く感づいたミサトはからかい気味に言った。
「ミサトさんこそ、年の割には大人気無い人ですね。」
その一言が悪かった。
・・・プチ・・・
何かが切れたのか、ミサトが呟いたのかは分からないが、ミサトはアクセルを全開にしてハンドルを左右に切った。
「うわあああぁぁぁぁぁ!!」
車は左右に蛇行しながら加速し、トンネルの中に入った。


カートレインに乗るとミサトは何かパンフレットのような物を取り出してシンジに渡した。
「着くまでに読んどいて。」
《ネルフ江ようこそ》
ミサトは口紅を塗り直している。
「ネルフ?」
(NERV、英語じゃないな)
「そう、国際連合直属の秘密組織、特務機関ネルフ、私達のいる所よ。」
少し得意そうだ。だが、その反面、どこか、影のある表情だった。
「先生が言っていた、人類の平和を守る立派な仕事って言うやつですね。」
「何それ〜皮肉?」
「べつに・・・・」
「お父さんの事・・苦手?」
「・・・別に苦手ってわけじゃ・・・・良く分からないだけだと思います・・・」
シンジは目を閉じて父親の事を思い出しながら言った。記憶の中では直接会った回数は2桁に達しない。
9年前の、母親に事故の時のマスコミや警察などの追及、後から見直して気付いたが、誰も、核心に踏み込めていなかった。それ以前に、自分達が追及している男がどんな人間なのかすらも掴みかねているようだった。だからこそ、火の無いところにも煙を立てるような近所の噂話から、自分が苛められ、遠ざけられる理由になったのだ。そして、シンジ自身、父親の事を何も知らない事を再び自覚した。
「そっか〜」
それをどう取ったのか、ミサトは、少し明るめの声で言った。
暫くして、辺りが急に明るくなり、遥か下に大地や湖や森や建物などが広がっていた。天井からビルが生えているとでも言うのか?天井にビルが見える。
「凄い、本当にジオフロントだ。」
シンジは心からの驚きをそのまま言葉にしていた。
だが、そのどこかで、胸に引っ掛かる物があった。
「ここが、人類最後の砦、私達の町、第3新東京市よ。」
確かに最後の砦と言うだけの事はあって、見難いが、彼方此方に様々な兵器が備え付けられていた。


建物に入って車を下りて、歩いた。
数十分後、
「おっかしいなぁ〜。」
ミサトはまるで迷路のような地図を見ながら言った。丁度、先ほども通った所に出た。
100%迷子になっている。
「さっきも通りましたよ、ここ。」
不満が無いわけではないが、シンジはパンフレットを読みながらミサトについて歩いている。
「でも、システムは利用する為にあるのよ。」
ミサトは人差し指を立てて言った。
「苦しい言い訳ですね。」
「っ、本当に可愛げの無い事言うのねぇ。」
その時、後ろのエレベーターが開き、金色に髪を染め、白衣を着た女性が出て来た。
「何処へ行くつもり?葛城1尉」
後ろから呼び止められた。多少の怒気を孕んだ声である。
「リツコ」
ミサトは気まずそうな顔で先ほどの電話の相手の友人を振り返った。
「全く、時間も人も予算も足りないって事、分かってる?」
「ごみん」
全然悪そうに思っていると言う態度に見えない、むしろ・・・いや、言わない方が良かろう。
エレベーターに乗りながらもリツコの説教は続いた。
「処で、この子がサードチルドレン?」
「本当に父親似よ、可愛げの無いところなんか特に。」
(サードチルドレン?)
シンジは聞いた事が無い単語、分解して考えるとしたら、3番目の子供達、シンジ個人をさすとは考えにくい、暫く考えたが結局良く分からなかったので、何らかの固有名詞であると考えられる。
その後、エスカレーターやエレベーターに数回乗りどこかへと連れられて行った。


シンジは真っ暗な部屋に連れて来られた。
「暗いから注意して」
ライトが点き、シンジの目の前に紫色の巨大なロボットの頭部が現れた。
「ロボット!」
驚きシンジは慌ててパンフレットを調べた。
「探しても載ってないわ。」
リツコは1歩前に出た。
「人の作り出した究極の兵器汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオン。そして、これはその初号機。開発は超極秘裏に行われた。」
自信に満ち、得意になっているリツコがある意味、格好良く見えた。
「これも・・・父の仕事ですか?」
『そうだ』
男性の声がした。初号機の向こうに見える部屋のガラス越しに父、六分儀ゲンドウの姿が見えた。
赤いサングラスに髪と繋がる顎鬚、凶悪な人相、黒い服、はっきり言って善人とはおよそ離れた風貌である。これで人類の平和を守る大切なお仕事とは・・・逆の方が明らかに似合う。
『久しぶりだな』
「父さん・・・」
3年前の母、六分儀キョウコの墓参りの時以来である。その時、シンジは六分儀から逃げ出してしまった。
シンジは上目遣いに六分儀を見た。こんな所に呼び出してまともな言葉が聞けるとは思えないが、シンジは期待していた。
『出撃』
「出撃!?でも零号機は未だ、まさか初号機を?でもアスカは未だ動かせないし、パイロットがいないわ!」
ミサトが反論している。
「さっき届いたわ。」
「マジなの。」
ミサトの表情が真剣でそして多少のいらつきを含んだものになり、リツコは軽く頷いた。
「でも、あのアスカでさえ、エヴァぁとシンクロするには7ヶ月も掛かったのよ。今、今日来たこの子にはとても無理よ!」
「な・・・」
シンジは初めて自分の事が話の上に上がっている事に気付き。驚きから言葉が続かなかった。
「今は、エヴァと少しでもシンクロ可能と思われる者を乗せるしかないのよ。座っていれば良いわ。それ以上は望みません。」
シンジは六分儀を見た。
「無理だよ!こんな見たことも聞いた事も無い物にいきなり乗れだなんて。」
ちょっと考えれば、座っているだけではどうしようもないだろう事は分かり、少なくともその点は尋ねる必要がある事も、元々弱気のシンジが、ましてや気が動転していて、尋ねる事など・・・いや、それ以前に、全ての言葉を聞き取っていたかでさえ不安である。
『説明を受けろ、お前が適任だ』
シンジは怯える小動物のような顔でリツコとミサトの顔を見た。
「乗りなさい」
さっきまでシンジの味方をしていたミサトはきつい口調で言った。
シンジは六分儀の方を向いた。
「父さん・・・父さんは、僕がいらなかったんじゃないの!!」
シンジは不満を六分儀にぶつけ叫んだ。
『必要だから呼んだまでだ。』
それに対して、六分儀はあくまでシンジを突き放した。
半分泣きかかっているシンジは俯いた。
「そんなのって無いよ、折角来たのに・・・」
『乗るなら早くしろ、でなければ、帰れ!』
六分儀の声が大きな部屋に響いた。
シンジはやはり自分は要らない子供だったと、かなりのショックを受けた。
ミサトはシンジに顔を寄せた。
「何の為にここまで来たの?」
少なくともエヴァに乗るためではなかろう、知らなかったんだから。どうやら軍人らしいミサトとは全く思考形態が違うと言う事をミサトは認識していない、全て自分中心で考えている。まあ、それは、この場にいる者全てだろうが、せめてそれを押し付けないで欲しいものである。
「初号機のパーソナルをアスカに書き換えて!」
リツコは、もう諦めたらしく整備士達に声を送った。
『冬月、アスカを起こしてくれ』
周りはシンジに見切りをつけ事を進めていくが、シンジは俯いたままである。
「逃げちゃ駄目よ、お父さんから・・・そして、何よりも自分から」
ミサトはそうは言ったが、逃げではなかろう、常識的な意味では、死んで来いと言っているんだから
『何!?アスカが消えた!』
六分儀は何か驚いているようだ。
扉が開き、包帯と赤いスーツに身を包んだ赤みがかった金髪の少女が壁に寄りかかりながら入って来た。
「アスカ!!」
『アスカ、行けるな』
アスカと呼ばれた少女は頷いた。
その時、辺りが揺れた。
『奴め、ここに気付いたか。』
激しい衝撃と共に天井部の鉄骨が落下して来た。
「ぐうっ」
体制を崩して床に倒れ、アスカがうめき声を上げた。
シンジが思わず手を頭の上に翳した時、初号機の手が動きシンジや少女達に降りかかる鉄骨を弾いた。
鉄骨は六分儀の方に飛んで行き、強化ガラスに当たって軽く罅が入った。
六分儀は微動だにせず、見下ろしている。動けなかったわけでもない、明らかに動じていない。
整備士達が驚きの声を漏らしている。
「動いた!」
ミサトは叫び、リツコも驚いている。
(と、言うよりも守ったの?彼を)
「行ける。」
ミサトはシンジが初号機を動かせる事を確信した。
シンジはアスカの元に駆け寄り抱き起こした。
「あうっ、ぐっ」
アスカは苦痛を訴えている。
シンジは掌にアスカの血が付いている事に気付いた。
(逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ!)
シンジは六分儀の方を向いた。
「乗ります。」
「さ、こっちに来て。」
言葉を発し終わると、殆ど間を置かずにリツコはシンジを誘導した。
六分儀の口元ににやりと笑みが浮かんでいた。
直にリツコに連れられて、別の部屋に移動し、簡単な説明を受けた。


そして何か丸いカプセルか何かのような物に入れられた。
『冷却完了、ケイジ内全てドッキング位置。』
『パイロット・・・エントリープラグ内コックピット位置に着きました!』
『了解、エントリープラグ挿入』
『LCL排出開始』
周りが揺れてゆっくりと下に下りて行くような感じがした。
『プラグ固定完了、第一次接続開始!』
『エントリープラグ注水』
突然足元から液体が満たされ始めた。
「なっ!な、何だこれ!!」
驚き怯えるシンジを無視して液体は直に頭の上まで満たされた。
『心配しないで、肺がLCLに満たされれば直接酸素を取り込んでくれます。』
シンジは息を止めていたが、我慢できずに空気を吐いて液体を飲み込んでしまった。
確かに息は出来るようだが、
「・・・・ぎぼち悪い・・・」
『我慢なさい!男の子でしょう!!』
(男女差別だ〜)
『主電源接続、全回路動力伝達、起動スタート、シナプス挿入』
周りの壁に突然文字や幾何学模様や様々な模様が現れた。
『A−10神経接続異常なし、初期コンタクト全て問題無し。』
今度は、壁に回りの映像が映し出された。
『全ハーモニクスクリアー、シンクロ率42.63%、暴走、有りません。』
『エヴァンゲリオン初号機発進準備!!』
ミサトの声が響いた。
『第一ロックボルト外せ!』
『解除、続いてアンビリカルブリッジ移動!』
周りの物体が動いていく。
『第一、第二拘束具除去』
『第3第4拘束具除去』
『1番から15番までの安全装置解除。』
『内部電源充電完了、外部コンセント異常なし。』
『エヴァンゲリオン初号機、射出口へ。』
エヴァが移動し始めた。
そして止まった。
『進路クリアー、オールグリーン!発進準備完了。』
『宜しいですね。』
ミサトが確認を取っているようだ。
『勿論だ。使徒を倒さぬ限り我々に未来は無い』
六分儀の無常な声が再び響いた。
『発進!!!』
ミサトの声とほぼ同時にいきなり強いGが掛かった。
「ぐぅぅぅぅ」
少しして衝撃と共に止まり、都市の中に出た。
前方に使徒がいた。
使徒は、キリストの弟子達の呼び名である。そう言った意味では、六分儀のイメージは余りにも嵌り過ぎているのかもしれない。ひょっとしたら六分儀のイメージにあわせて誰かが皮肉ったのかもしれないが、
『最終安全装置解除!エヴァンゲリオン初号機リフト・オフ!!』
肩の安全装置が外された。
『死なないでね。』
ミサトの声は懇願のようにも聞こえた。
『シンジ君、先ずは歩く事だけを考えて。』
リツコの声が聞こえる。
シンジはレバーを取ってボタンを押した。
(歩く)
初号機が右足を前に踏み出し、その衝撃で傍の電話ボックスや商店のガラスが割れた。
(歩く)
そして左足も前に出し歩く事に成功したが、もう1歩踏み出した時に体勢を崩し、転倒する事になった。
「いつっ」
何か良く分からないが、痛い。
目の前に使徒が見え大きな恐怖を感じ、歯が振るえ出した。
『シンジ君戦って!』
喧嘩も出来ない少年には無理である。使徒に頭部の突起物を掴まれ吊り上げられた。
使徒に初号機の左腕を掴まれ引っ張られるとシンジの左腕に痛みが走った。
「ぐ!」
シンジは痛む手を押さえた。
『落ち着いてシンジ君、貴方の腕じゃないのよ!』
ミサトが叫んでいる。事実痛い物は痛い、そうシンジは言いたかったのかもしれないが、初号機の腕が更に引っ張られると嫌な音がして初号機の筋肉繊維が断ち切られ、シンジに腕を激痛が走り抜けた。
「ぎゃああああ!!!」
シンジの左手の、丁度初号機が破損した部分が、内出血を起こしたらしく赤く膨れ始めた。
使徒が初号機の頭部を掴んだ
『避けて!シンジ君!!』
ミサトが又叫んでいるが、掴まれているのにそれは無理である。
前が光ったと同時にシンジの右目に激痛が走った。
「ぎゃあああ!!」
数度光り、痛みが走った後、激痛が脳髄まで駆け抜け意識が途切れた。

あとがき
アスカ「手抜き」
YUKI「う・・・言い返せない・・・」
アスカ「でもまあ良いわ」
YUKI「ん?」
アスカ「これで、LAS確定ね」
YUKI「・・・誰がそんなこと言った?」
アスカ「確定でしょ♪」(目は怖い)
YUKI「・・・・くそ〜!!LAGに走ってやる〜〜!!うごっ!!!」
アスカ「LASよね♪」
YUKI「・・はい・・・・」(ガクッ)
レイ 「・・相変わらずね」
アスカ「何よ」
レイ 「・・・この話では私と碇君の間には何も制限は無いのね」
アスカ「はっ!まさか!おら!!起きんかい!!」
YUKI「・・・はい・・・」
アスカ「アタシはどうなってるわけ?」
YUKI「第1話で言えるか〜〜〜!!」
アスカ「こっそり教えなさい」
YUKI「・・・ごにょごにょごにょ・・・・・」
アスカ「で?どうするわけ?」(青筋)
YUKI「話の流れしだい、レイ登場までにどれだけ関係が進むかだな」
レイ 「・・・私はどうなるの?」
アスカ「そんな事知ったこっちゃ無いわよ」