立場の違い2A

第11話

◆奇跡の価値は

11月22日(日曜日)ネルフ本部、総司令執務室。
ミサトが呼び出されていた。
「葛城准尉、君のこれまでの使徒戦における指揮を評価し、3尉に昇格とする。」
「・・・有難う御座います。」
漸く士官に返り咲いたのか〜と思いながら、ミサトは襟章を交換した。
「我々が日本を離れる間、ここを任せたよ」
「はい」
「では、下がれ」
「はい」
ミサトは一礼して退室した。


11月24日(火曜日)、昼過ぎ、ミサトのマンション、
土砂降りの中、シンジはアスカ、トウジ、ケンスケの3人を連れて帰宅した。
「はい、タオル」
シンジは3人にタオルを渡した。
「ありがと」
「おお、すまんな」
「サンキュー」
「ミサトさん徹夜だったみたいで、帰って来たのは朝なんだよ。未だ寝てるかもしれないから静かにしてようよ。」
「せやな」
襖が開いてミサトが出て来た。
「邪魔してるわよ」
「「御邪魔してま〜す」」
二人が同時に言った。
「あら、いらっしゃい。」
ケンスケはミサトの襟章の星が1個に減っている事に気付いた。
「あれ・・・ミサトさん・・・?」
「ん?どうかしたの?」
「・・・1尉じゃなかったんですか?」
ミサトは表情を顰めた。
「ん〜」
「・・それ、3尉の襟章ですよね・・・」
「えっと・・・あの・・・その・・・」
「クア?」
戸惑うミサトを尻目に、我関せずといった感じで、ペンペンは冷蔵庫に入った。


夕方、ネルフ本部技術棟、
《EVA−00 99.991 EVA−01 67.425 EVAー02 59.163》
「シンジ君もアスカも伸びて来ましたが、流石に・・・」
「・・・そうね。」
「・・・次元が違うと言った感じですね。」
「ええ」


南極海、調査艦隊旗艦、展望室。
海は赤く、所々に塩の柱が立っていた。
15年たった今も尚、一部の微生物しか生息する事が許されていない。
セカンドインパクト以前の地球は、雲の白、海と空の青、陸の茶や緑が美しく混ざり合い、美しい星だった。しかし、南極海の禍々しい赤の為に現在では・・・・・。とは言え、僅かずつ赤い範囲は縮小しており、いずれは元に戻るのであろうか。氷点下にも関わらず全く凍る気配の無い海だが。
そして、この調査艦隊は第2次セカンドインパクト調査団であり、非公式に行われた表向きの理由は、第1次セカンドインパクト調査団の報告に偽りが有る可能性があり、公式に発表した報告に疑いを持たせるのは、国際連合の信頼に関わる為、非公式に行うとの事だ。しかし、第1次セカンドインパクト調査団団長の六分儀ゲンドウが指揮を取り、尚且つ、その副官の冬月コウゾウが同行し、ネルフ関係者で団員が構成されている以上、どう考えても嘘である事は明白である。
ガラス張りの展望室には、六分儀と冬月がいた。
「南極、如何なる生命の存在も許されない死の世界、まるで死海だな。」
冬月が呟いた。
「しかし、我々人類は生命として、ここにいる、生きたままな。」
「科学に守られているからな。」
「科学は人の力だよ。」
「その傲慢が、15年前の悲劇を生み出したと言う事を忘れたのか?その結果がこれだ、与えられた罰にしては余りにも大き過ぎる」
「ここは、世界で最も浄化された世界だよ。唯一人間の原罪から解放された世界なのだ。」
「俺は、罪に塗れていたとしても、人が生きている世界を望むよ。」
空母の飛行甲板には100メートルはある巨大な棒状の物がシートを掛けられて置いてあった。


11月25日(水曜日)、早朝、ネルフ本部第1発令所。
ミサトとリツコが発令所に入った。
「マヤ、現状は?」
「後42秒で目標と衛星の軌道が交錯します。」
・・・
主モニターに妙な物体が映った。
大きさは良く分からないが出鱈目にでかそうだ。
「これが使徒?常識を疑うわね。」
突然画面が乱れ、映像が消えた。
「ATフィールドの新しい使い方ね。」
別の衛星からの映像に切り替わった。
「司令達は?」
「使徒の放つ強力なジャミングの為現在回線は使用不可能です。」
使徒が体の一部を切り落とした。
「何?」
暫くしてスリランカの南海上に凄まじい爆発が観測された。
「・・・爆弾ね」
「ATフィールドの力まで使っているようです」
いつも通りリツコの解説にマヤが付け足した。
「・・・あれ、どのくらいの破壊力?」
マヤが計算した。
「映像からですが、あの破片で、NN兵器に匹敵します。」
「・・・本体が落ちてきたら・・・・・・考えたくも無いわね・・・」
「・・・・・」
ミサトはその頭脳をフル回転させた。


特別顧問執務室、
ミサトは、ユイに作戦案を提出した。
「・・・・2人との連絡は?」
「残念ながら、」
「・・・分かりました。作戦案を許可します。委員会と日本政府の対応には私が当ります」
「はい」


A.M.10:31、ネルフ本部、第6作戦会議室、
「作戦を通告します。」
「貴方達の仕事は、落下してくる使徒をエヴァ3体によって受け止め、コアを破壊する事です。」
・・・・
「え〜!!・・・受け止める!?」
アスカが叫んで手を見た。
「そう、それしかないの」
「作戦といえるの?それが?」
「・・・そうね、言えないわね。だから拒否することもできるわ。」
暫く4人とも黙っていた。
「一応、規定では遺書を書くことになっているけど、どうする?」
「別にいいわ」
「私もいいわ」
「僕も必要ありませんから」
「・・・・そう、作戦、成功したらこ〜んな分厚いステーキ奢ってあげるから。」
ミサトはノーマルモードに戻り、親指と中指で肉の厚さを示した。
「本当!?」
「ワァーイ」
「じゃ」
ミサトは部屋を出ていった。ミサトが部屋を出ると同時にアスカとシンジの表情が無表情になった。
「御馳走と言えば、ステーキで決まりか・・」
「本当、セカンドインパクト世代って、今時の子供がステーキで喜ぶと思ってるし。」
「しかたないよ」
「私・・お肉嫌いなんだけど・・・」
3人はかなり楽観視しているのかもしれない。


P.M.0:14、ネルフ本部、第1発令所。
「二人とも、もう避難して良いわ、ここは、私が引き受けるから。」
ミサトが言った。
「そんな、子供達だけに危ない目に遭わせる訳には行きませんよ。」
「そうですよ。ここにいても、シェルターの中にいても、サードインパクトが起こったらそれまでですから。」
「でも、ATフィールドがあるエヴァぁの中が一番安全なのよ。」
「私も付き合うわ」
「・・ユイさん・・・」


P.M.1:04、避難ラッシュも終わり、第3新東京市には、一般人はいなくなった。


P.M.1:32、使徒が遂に日本上空に到達した。
そして、ゆっくりと降下を始めた。


初号機、
『作戦スタート!!』
ミサトの声で初号機は走り始めた。
『高度3000まではマギが誘導します。その後は各自、目測で動いて。』
音速に達し、衝撃波が町を破壊しながら初号機は更に速度を上げた。
前方の高圧電線を飛び越え、使徒に向けて一直線に走った。
上空に巨大な使徒が見えて来た。
凄まじい大きさである。
零号機が落下点に到達し強靭なATフィールドを展開した。
使徒のATフィールドと接触し反発しあっている。
初号機は落下点に到着した。
空は使徒の巨体に隠れ見る事は出来ない。
「碇!」
『手伝って』
初号機も両手を上に上げて構えた。
ATフィールドが共鳴し更に強靭な物へと成っていく。
シンジの体に重圧が掛かった。
「く」
遅れて弐号機がやって来た。
『待たせたわね!』
弐号機も到着し、3体のエヴァが支える形になった。
『はあああ!!』
零号機が一気にATフィールドの範囲を広げ使徒の巨体を押し返した。
「今だ!!」
零号機がATフィールドを中和し、弐号機が跳躍し、プログナイフをコアに突き刺した。
火花が飛び散り、やがて、コアが輝き出した。
瞬間、全てが光に包まれた。


P.M.2:15、ネルフ本部第1発令所、
使徒は殲滅された。
副都市の一つが消え去ったが、この程度の被害で住めば御の字である。
「良くやったわ」
ユイとミサトは3人を笑顔で迎えた。
「南極の司令達と回線が繋がりました」
SOUND ONLYと書かれた小型の空中スクリーンが表示された。
『葛城3尉、任務遂行御苦労』
「はい」
『初号機パイロットはいるか?』
「はい」
『活躍は聞いた。よくやったなシンジ。』
『葛城3尉、事後処理は頼んだ。』
「はい」


P.M.7:32、第3新東京市新歌舞伎町4丁目の屋台。
ミサトは目をぱちくりさせていた。
「ミサトの財布の中身くらい分かっているわよ。それに、ラーメンならファーストも付き合うって言うし。ね、ユイさん」
「ええ」
4人は、右から、ミサト、アスカ、シンジ、レイ、ユイの順番で座った。
「ニンニクラーメンチャーシュー抜き」
「アタシは鱶鰭チャーシュー、大盛りね」
「ん〜、私は、塩バターラーメンね」
「あいよ」
食事中、
「ミサトさん、ユイさん」
「何?」
「今日初めて父さんに誉められて思ったんです。ひょっとしたら僕は父さんに誉められる為にエヴァに乗ってるのかもって」
笑みを浮かべながらそんな事を言うシンジにアスカは呆れていた。

あとがき
アスカ「これはどう言う事?」
YUKI「あにが?」
アスカ「アタシとシンジのラブラブは!?」
YUKI「そんなに毎回ラブラブしたいのかね・・・」
アスカ「言うまでも無い!」
レイ 「・・・見苦しいわよ」
アスカ「何よ!」
レイ 「そんなにラブラブラブラブって少しくどいし、見苦しいわ」
アスカ「あんですって!」
YUKI「まあまあ」
アスカ「ふん!」
YUKI「次回は、ありますから」
アスカ「ホント☆」
YUKI「は・・はい・・」
アスカ「よっしゃよっしゃ」