立場の違い2A

第18話

◆力

1月29日(金曜日)、昼過ぎ、ネルフ中央病院、
シンジ、レイ、アスカの3人がトウジの見舞いにやって来ていた。
神経系統を痛めた物の外傷はかすり傷程度ですんだそうで、半月もせずに退院できるそうだ。
シンジは病室のドアをノックしてから、ドアを開ける。
トウジは、ベッドの上に横たわっていて、首だけ3人の方に向けた。
「おう、無事やったか」
「トウジこそ」
「済まんかったな、弐号機殴ってしもうて・・・止め様おもてもとまらへんかったんや」
「そんな事仕方ないわよ、使徒に乗っ取られちゃってたんだから」
「そう言ってもらえるとあり難いわ」
その後、暫く話を続けていたが、巡回がやって来たので退散する事にした。


ネルフ本部、総司令執務室、
「・・・今回の事、微妙な問題ね、」
「そうだね」
「・・・・」
「今後、どうするつもりですか?」
「フォースは現状維持、予備とする」
「・・・ある意味適切な判断でしょうね。しかし、子供達の精神面のサポートはどうするつもりですか?」
「・・・・・」
「・・・では、私に任せてもらって良いですね」
「・・問題無い、」
「分かりました。」


夜、ミサトのマンション、
出張から帰ってきたミサトは、ギプスと包帯をしていた。
「あっ、ミサトさん!大丈夫ですか!?」
「だいじょうぶだから、こうして歩いて帰ってきたんでしょうが」
「まね、心配かけたわね」
「いえ、無事でよかったです。」
「早速で悪いんだけど、何か食べさせてくれない?事後処理で忙しくて何も食べてないのよ」
「あっ、はい、直ぐに何か作りますね」
「ありがとねん」


ネルフ中央病院、
通路をユイとレイが歩いている。
「・・・ここね、」
鈴原ナツと書かれたプレートの病室に二人は入っていった。


1月30日(土曜日)、昼前、ミサトのマンション、
アスカが昼御飯を食べにやって来た。
「邪魔するわよ」
「いらっしゃい、御飯はもうすぐできるよ」
部屋に漂う匂いはカレーの匂いである。
「今日は・・・カレー?」
「うん、今日は」
シンジが何か言おうとした時、二人の携帯が同時に鳴った。
瞬時に二人は緊張した表情に変わる。


ネルフ本部第1発令所、
「第拾四使徒を光学で捕らえました。」
メインモニターに使徒が映し出された。
「目標、まもなく上陸します」
「各部隊に通告、食い止めろ」
「了解」
「1番から75番までの部隊展開完了」
「現在第3新東京市対空防衛力、92%です。」
「チルドレンは?」
「現在こちらに向かっています。」
ミサトが発令所に駆けこんで来た。
「遅いわよ」
「ごめん!現状は!?」
「ファーストチルドレンケージに到着!!零号機180秒で発進可能です!!」
「レイさん良い?」
モニターのレイは頷いた。
「二人は!?」
「未だ第3新東京市市内です!!」
二人はとても間に合いそうに無い。
「・・・赤木博士、ダミープラグは使えるか?」
リツコは六分儀を見上げた。
「・・未だ不安定です。実戦に耐えるかどうかは分かりません。暴走の危険性もあります」
「全対空システム攻撃開始!」
無数の攻撃が使徒に仕掛けられている
「問題無い、間に合わなかった場合の予備として準備しろ」
「分かりました。マヤ、」
「・・・はい」
マヤは嫌悪感を少し表情に出しつつも、仕事と割り切り操作をした。
ユイが発令所に入って来た。
「1撃で第17装甲板まで貫通!!」
日向が驚くべき報告をした。
「零号機出撃準備完了!」
「17枚もの装甲を一瞬にして・・・第伍使徒の加粒子砲並の破壊力ね」
「・・地上迎撃は間に合いません。零号機をジオフロントに配置してください」
ミサトはチラッと司令塔のユイを見た後、日向に指示をした。
「0、2、5、6、7、8、11、14、15、18、25、28、29エリアに被弾!!危険です!!」
施設に振動が走った。
「零号機ジオフロントに射出!」
「ジオフロント天井部破壊されました!!」
「零号機対空迎撃準備完了!!」
「目標ジオフロントに侵入!!零号機対空迎撃開始!!」


ジオフロント、零号機、
零号機は全ての火器を使徒のコアに正確に叩き込む、更にジオフロント中に配置されている迎撃兵器から一斉に攻撃が仕掛けられる。
「くっ・・・」
使徒はジオフロントに降り立つ。
中和距離まで近付き、ATフィールドを中和しそのまま攻撃を続ける。
「・・・・利いてない、」
現在の火力では全く歯が立たない。
レイはこのまま続けても意味はないと判断し、砲兵器を捨て、プログソードに持ちかえる。
使徒の顔の奥が光る。
「くっ」
零号機は横へと飛び、使徒の強力なビームを交わした。
「・・強い、」
これまで対決して来た使徒とは根本的にレベルが違う。
バルディエルもトウジがいなければ一人でいくらでも倒す方法はあった。
だが、ゼルエルは洒落にならない。
モニターに映る、ユイに視線を送る。
ユイは軽く目を閉じ、じっと考えているようだ。
レイは視線を使徒に戻し、一気に間合いを詰める。
そして、思いきりプログソードでコアを突く。
予想通り、凄まじい火花が散った物の、僅かにヒビが入る程度である。
直ぐに間合いを取る。その瞬間零号機がいた地点を使徒の帯のような触手が襲っていた。
プログソードを正眼に構え、間合いを維持する。


ジオフロント降下エスカレーターをシンジとアスカは走っていた。
ガラス越しに、零号機と使徒の凄まじい戦いが見える。
それを横目で見ながら二人はエスカレーターを駆け下りた。
そして、エレベーターに乗り、ケージに向かった。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
そして、漸くケージに到着した。
「二人が到着しました!」
碧南が嬉々とした声で報告している。
「行くわよ!レイを助けるのよ!」
シンジは頷き二人はそれぞれの乗る機体へと走った。


ジオフロント、零号機、
「くっ」
既にコアのヒビは修復されている。
今、零号機は防戦一方である。
学習し自己進化する使徒相手に長期戦は拙い、しかし、このままでは短期決戦に持ち込めない。
再びユイに視線を送る。
『今、二人が救援に行くわ』
レイは軽く首を振る。
この使徒相手に二人は足手まといにしか成らない。そう感じているからである。
『初号機弐号機出撃!!』
ミサトの声に顔を顰める。
使徒の帯状の触手が開いた射出口に向かっていく
「危ない!!!」
『え?』
射出された弐号機に一直線に向かっていく。
『『『アスカ!!』』』
「はあああ!!!」
強力なATフィールドの塊を触手に叩きつけその方向を僅かにずらす。
『きゃあああああああ!!!!!!!!』
アスカの悲鳴が響く渡る。
弐号機は右肩から脇腹にかけてを切断されていた。
切断された個所から紫色の血が吹き出る。
直ぐに弐号機は回収された。
『アスカ!!』
「初号機も下げてください!今の六分儀君では足手まといです!」
きっぱり言いきる。
ミサトは頷き、初号機も下げる。
その間も零号機は攻撃を避けつづけるだけである。


第1発令所、
「アスカは無事です!直ぐに中央病院に搬送します!」
「・・サードを下ろし、ダミープラグで初号機を起動させろ」
「・・その必要はありません。レイ、」
ユイが、碇の命令を遮った。
モニターのレイは頷く。
「零号機との全ての回線を切りなさい、」
ユイの命令に発令所内がざわめく。
「早く!」
「は、はい、」
マヤが、次々に回線を切っていく。


ジオフロント、
使徒の触手が零号機を襲った瞬間、その姿が陽炎の様に掻き消えた。
そして、次の瞬間、使徒の背後から零号機がプログソードで使徒の触手を切り落としていた。
更に連続して斬撃を加える。
瞬く間に血と肉片に変わって行く。
その後繰り広げられたのは、余りにもレベルの違い過ぎる戦い、一方的な虐殺であった。


夜、ネルフ中央病院、特別病室、
シンジはアスカが目を覚ますのをじっと待っていた。
只、それだけを、
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
ゆっくりとアスカが瞼を開き蒼い瞳が現れる。
「・・アタシ・・生きてる・・」
「アスカ!!」
シンジはポロポロと涙を零し、喜びで叫んだ。
「シンジ、」
アスカが上半身を起こすとシンジはアスカに飛びつき、アスカの胸で泣いた。
「や、ちょっと、シンジ」
「よかった、本当に良かった」
アスカは軽く息をついて、シンジの好きにさせる事にした。


総司令執務室、
「ユイ君、どうして零号機との回線を切らせたのかね」
「お答えする必要はありません」
「しかしだね・・・」
「どうしても、と仰るのでしたら、貴方方が使用しようとした、ダミーシステムとダミープラグのその意味を公表してからにしていてだけますか?」
二人は露骨に表情を歪める。
「・・・では、これで失礼します。」
ユイは執務室を出て行った。
「さて・・・いったい何なのだろうな」
「・・・わからん」


碇家、レイの部屋、
「・・レイ、」
ベッドに横たわっていたレイはユイに視線を向けた。
「・・大丈夫?」
コクリと頷く、しかし、辛そうだ。
「やはりそのままで力を使うには、余りにも強過ぎる、負担が大き過ぎるわね・・」
「・・・・・でも、」
「分かっているわ、他に方法は無かったでしょう・・・ダミープラグで起動したところで、なって囮、戦力にはならないわね・・」
「・・・」
「でも、レイ貴女は簡単に割り切り過ぎている・・いえ、自分の存在と言うものを軽視しているわ、もっと自分を大事にしなさい、たとえ、結果が同じでも過程が違えば又その意味は変わるわ」
「・・・それに、私にとっては只一人の娘なんだから・・・」
レイは暫く考えた後、軽く頷いた。

あとがき
アスカ「ふん♪ふん♪ふん♪」
YUKI「もはや、使徒戦での活躍はどうでも宜しいんですね」(汗)
アスカ「アタシはシンジとの愛に生きるのよ。
    使徒戦での活躍なんかファーストにくれてやるわ」
レイ 「む」
アスカ「さって、明日のシンジとのデートには何を着ていこうかな〜」
レイ 「・・・YUKI」
YUKI「は、はい」
レイ 「早く、2Rを書きなさい」
YUKI「い、いやその」
レイ (凍れる視線)
YUKI「ぜ、善処いたします」(汗汗)
アスカ「脅しはだめよ〜」
レイ 「くっ」
アスカ「シンジの恋人はこのアタシ、アンタはさっさとどっかいきなさいよ」
レイ (ダッシュ)(涙)
YUKI「・・えっと・・・」
アスカ「じゃあ、次回はシンジとのデートわかってるわね。じゃあね〜」
YUKI「・・・・えっと・・次回はとりあえずデートは
     ありません事を報告しておきますです。」
YUKI「それでは」