立場の違い2R

第7話

◆天才

9月21日(月曜日)、ネルフ本部、大会議室、
「では、正式に紹介します。」
ユイとレイの紹介の為に、作戦部と技術部員の他、各部長クラス以下幹部が勢揃いしている。
「ネルフ特別顧問、碇ユイ元帥です。権限は総司令と同等です。」
ユイは一歩前に進み出た。
「皆さん宜しく。階級などは気にしないで気軽に接して下さると嬉しいです。」
「続いて、御息女で、ファーストチルドレンの碇レイ1佐、作戦部の管轄ではなく特別顧問直属となります。尚、オブサーバーとして技術開発に関しても協力して頂きます。」
「宜しく」
アスカはレイを殺意に近いようなものをこめて睨んでいる。
その後、別室に移され、ユイ、リツコ、ミサトと、チルドレンだけにされた。
「綾波アスカさんね」
「・・・はい、」
「これから宜しくね。レイとも仲良くやってくれると嬉しいんだけど」
アスカはレイとユイの顔を交互に見詰め、しぶしぶ表面だけの了承の返事を返した。
それが分かりユイは苦笑した。


技術棟、実験ケージ、
零号機の機体連動試験が進められていた。
アスカは零号機を見詰めた。
レイの為にレイの為だけに作られた機体。
アスカはガラスを強く叩いた。
「なんで・・・なんでよ・・・」
「双方回線開きます」
次々に驚きの声が漏れた。
見るとグラフや数値は殆どがマックスかそれに近いものを示していた。
「シンクロ率99.89%です。」
「・・流石ね・・」
アスカは耐えられずその場を逃げ出した。


10月5日(月曜日)A.M.10:05、ネルフ本部第1発令所
「警戒中の巡洋艦はるなより入電、我、紀伊半島沖にて巨大な潜行物体を発見、データーを送る、確かめられたし。」
青葉が報告した。
「解析終了、パターン青!」
「総員第一種戦闘配置」
六分儀は不在で、冬月が指揮をとっている。


A.M.10:47、東名高速道路、12式大型発令車。
「先の戦闘によって第3新東京市の迎撃システムが受けたダメージは現在までに復旧率42%、実戦における稼働率は大してないわ。従って今回の迎撃は上陸直前の目標を水際で迎え撃ち一気に叩く!」
「初号機零号機で交互に目標に対し波状攻撃、接近戦で行くわよ、いいわね?」
『はい』
『問題ありません』


A.M.11:01海岸、初号機。
エヴァ両機にアンビリカルケーブルが接続された。
『・・大丈夫?』
「あ・・うん・・」
『生き残る為に目の前の敵に集中しましょう』
シンジは頷きで返した。
『目標接近、海面に出ます』
使徒が海面に姿を表した。
零号機はパレットガンを取りコアに向けてピンポイント射撃を仕掛けた。
凄まじい腕である。フルオートで毎秒数発発射されるがその反動を全て殺し完全にコアに向けて発射を続けている。しかし、全てATフィールドによって遮断され反応すらしない。
『零号機、直接攻撃して』
『了解・・援護、頼むわ』
「あっ、うん」
初号機はパレットガンを取り使徒に向けて放った。
零号機はプログソードを片手に一気に接近した。
接近を続けながらもパレットガンは撃ち続けている。
精度は悪いがそれでもシンジよりは上である。
零号機はパレットガンを捨て一気に跳躍し斬りかかった。
ATフィールドを消失させ一閃。
使徒は真っ二つに成った。
『よっしゃぁ〜!!』
シンジも安堵の息をついた。
零号機は一気に間合いを取った。
『「え?」』
その瞬間二つに分かれた使徒がそれぞれ単独の使徒になり、先ほどまで零号機がいた地点にビームを放った。
『何ていんちき!!』
零号機はプログソードで一体を細切れにするが直ぐに再生してしまう。
初号機は慌ててパレットガンを撃ち込み援護した。
一部零号機にも当たっているが・・・
零号機は2体の使徒を相手に果敢に戦っているが再生能力が高すぎる。
暫くした時突然零号機が初号機のところまで下がり新しいパレットガンを取った。
『撃って』
「あ、うん」
零号機と初号機がそれぞれ使徒に向けてパレットガンを放った。
着弾した点は殆ど再生してしまうが、一部だが再生されない点が出て来た。
『目標は、相互に補完しあっているものと推測、判断を求む』
『え?あ、うん』
ミサトはなんの事だか分からないようである。
本部の発令所からの回線が割り込んで来た。
ユイが通信モニターに映った。
『レイ、その通りよ、シンジ君コアに向けて撃ってみて』
初号機と零号機はコアに狙いを定めた。
表面で弾かれている。
『貫通力が足らないわ』
『分かったわ、現時点で同時に攻撃するのは不可能、足止めをお願い、ミサイルを発射するわ』
『はいぃ〜〜!!』
2分後、本部より発射されたNNミサイルによって使徒の構成物質の71%を焼き払った。


P.M.2:26、ネルフ本部作戦部視聴覚室。
「同15分、新型NNミサイルにより目標を攻撃」
「また地図を書き直さなきゃならんな」
冬月がぼやいた。
「・・時間が稼げただけでも良しとすべきですわ、本来使徒と戦いには後は無いのですから」
「・・だがなぁ・・」
ぼろぼろに崩れた使徒の写真が映し出された。
「これにより目標の構成物質の71%の焼却に成功」
「E計画責任者のコメント」
『無様ね』
「死んでるの、これ?」
アスカは、表情を歪めながら尋ねた。
「足止めに過ぎんよ、再度侵攻は時間の問題だな」
「君達の仕事は何かね?」
「エヴァの操縦」
アスカが答えた。
「・・生き残る事・・」
レイの言葉が沈黙を齎した。
アスカの言葉の後に違うと言おうとしていた冬月は言えなくなってしまった。
言ったら死ねと言っているかのように聞こえる。
そんな事、少なくとも彼女の前で言えるほど、冬月も愚かではなかった。
「マギは、再侵攻は10日後と推測しているわ、それまでに作戦を立てて当たりましょう、シンジ君、アスカちゃん今日は帰って良いわ、レイはちょっと手伝ってくれる?」
レイは頷きで返した。


P.M.3:01、作戦部長執務室。
机の上には書類が山積みになっていて更に机に乗らない分がダンボールに詰めて10箱ほど積んであった。
しかし、ごみはどこへ行ったのだろうか?
「関係各省からの抗議文と被害報告書よ」
「どうせやるならここでやれって言うんでしょ。見なくても分かるわよ」
ミサトは椅子の上の箱をどかせて座った。
「減俸のお知らせ、副司令激怒してるわよ」
その理由の一部にレイがあるのだが、まあね・・
「・・・は〜、でも六分儀司令がいなかったのは不幸中の幸いね。」
「いたら即刻首でしょうね。これを見ること無しに」
「使徒は?」
「現在自己修復中、第2波は10日後とマギは予測しているわ。」
「貴女の首が繋がる良いアイデアがあるんだけど・・要らない?」
リツコが出したフロッピーをミサトは直に受け取った。
「要る要る!要るに決まってるじゃない、流石は赤木リツコ博士」
「残念、私のアイデアじゃないのよ」
《マイハニーへ》
「・・・・」


夕方、特別顧問執務室、
ミサトとリツコが作戦の許可を取る為に訪れた。
本来ならば、必要は無いのだろうが、レイが関わる以上必要なのだ。
「これが作戦案ですが」
ミサトはファイルを差し出した。
ユイはレイといっしょにファイルに目を通した。
「ふふふ、私達が考えていた第1案と殆ど同じね」
「そうね」
「レイ、良いわね」
レイは頷いた。


夜、シンジがマンションに戻ってくると、複数のダンボールが詰まれていた。
「・・なんだろ?」
引越し会社のロゴが入っている。
「・・おかえりなさい」
レイが立っていた。
「あ、あれ、碇、来てたんだ」
ミサトがペンペンを抱いて現れた。
「さて、たった今から、作戦終了まで、貴女達二人はここで一緒に暮らしてもらいます」
「・・・・えええ〜〜〜〜!!!」

あとがき
レイ 「うふふ、これで良いの、全てこれで良いの」
YUKI「気に入られましたか?」
レイ 「ええ、勿論、でも、次が肝心なの」
YUKI「そうですね」
レイ 「期待しているわ」
YUKI「はいな」