立場の違い2R

第16話

◆四人目の適格者

 1月24日(日曜日)、
 ネルフ第2支部消滅の報が本部に入ってきて、大騒ぎになっていた。
「…詳細は未だ入ってこんが…どうやら跡形もなく消滅したらしい、」
「何があったんでしょうか?」
「今、タイムレコードを調べさせている」
 電話が鳴り、六分儀がそれを取った。
『赤木です。先ほど衛星写真を含む資料が届きましたのでそちらに送ります。更に詳細なものは今夜第1支部から届く予定ですので、その時に、』
「分かった。引き続き、こちらでも調査は行ってくれ」
『かしこまりました』
 六分儀が電話を切ると、プリンターが動作し始め次々に資料を印刷し始めた。
 それらに目を通す…衛星写真には第2支部があった場所が大きなクレーターになっている映像が映っていた。
「これは損害は随分大きそうですね」
「そうだな、数千人の技術者に様々な機器や施設…そして、四号機も消えたようだな」
「今は情報の収集が先決だが…この爆発妙だな」
 六分儀がクレーターの傍に立っている木々を指さしながら言う。
「本当ですね…これは単純な爆発ではないと言うことになりますね」
「こんな事はあり得るかね?」
「…いえ、普通ではあり得ないとは思いますが…ATフィールドが関わっているとすれば無いとは言い切れません」
「なるほど…確かにATフィールドが関係していれば無いとはいえんが…恐ろしく大きなATフィールドと言うことになるな…」
 

 夜、ミサトのマンション、
『あ、シンジ君、今日はどうも帰れそうにないから』
「はい、わかりました。仕事頑張ってくださいね」
『ええ、ありがと』
 シンジは電話を切った。
「ミサトさんから?」
「うん、仕事で今日は帰れそうにないって」
「大変なのね」
「そうだね…」


 そして、二人で映画を見ていたのだが…そのヒロインがレイと言う名前だった。
『レイ…』
 映像ではちょうどキスシーンが展開されているのだが…名前の一致からなのか…レイは顔を赤くしている。
 それを見てシンジの方も相手の方にどこか心情移入してしまい、なんだかこそばゆくなってきてしまった。
「……えっと、私お風呂入ってくるね」
「あ、うん、」
 映画が終わると直ぐに、レイは立ち上がり着替えを取るために部屋の方に戻っていった。


 暫くして、パジャマを着て風呂から上がってくる。
「お風呂空いたから、」
「うん、じゃあ入ってくるね…」
 今度はシンジがお風呂にはいることにする。


 やがてシンジもお風呂から上がるが、レイは未だリビングにいた。
「未だいんたんだ」
「うん…」
 シンジはレイの横に腰を下ろした。
「あのね…六分儀君…」
「何?」
「六分儀君って…キスってしたことあるの?」
「え?…あ、い、いや…ないよ…」
「じゃあ、あの時…ファーストキスをしようとしたんだ」
「あ、あう…」
 あの時のことを指摘されて真っ赤になってしまう。
「あ、あのね…あの時…未だ、ファーストキスあげるつもりはないって言ったよね」
「う、うん…」
 暫く沈黙が流れる。
「あ、あの、その……今、貰ってくれるかな?」
「……へ?」
 突然そんなことを言われ思考が停止してしまう。
「えっと…ね、うん…その…ね……」
「私六分儀君のこと嫌いじゃないし…むしろ…好きだし……私もやっぱり、キスって興味あるし…ね」
 恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めながら言う…
「…い、いいの?」
「う、うん……」
 シンジはレイの前に立つ…
「碇…じゃ、じゃあ…い、行くよ…」
「う、うん……」
「あ、ちょっと待って」
 シンジが顔を近づけようとしたところで…レイが制止した。
「な、何?」
 そして、止められたシンジは何かしてしまったのかと、焦りまくるが、そうではなかった。
「あ、あのね…名前で呼んでくれるかな?」
「…名前?」
 レイは真っ赤になりながら、頷く。
「あ…う、うん…じゃあ、行くよ…レ、レイ…」
「う、うん、来て…シ、シンジ君…」
 お互い真っ赤になりながら、レイは目を閉じ、シンジはゆっくりと唇を近づけていく…そして重なり合う…
 やがて、ゆっくりと離れた。
 お互いを見つめるが恥ずかしくなり…一層真っ赤になってしまう。
「あ、あの…その……ありがと…シンジ君…」
「う、うん…その…いか……その…レイもありがと……」
 そのまま暫く経ったが…どちらも赤くなったまま口を開かなかったが、漸くシンジの方から口を開いた。
「そ、そのさ…あの…そろそろ、寝るね」
「あ、うん…おやすみ」
「うん…おやすみ…」
 そして、その夜は二人ともなかなか寝ることは出来なかった。


 そして、次の日…学校へ行く途中でアスカと合流する。
「おはよ〜」
「「おはよう」」
 一言挨拶を交わしてから一緒に歩き出す。
 暫く…色々と軽い話をしていたのだが…突然アスカが口を止めた。
「ん〜〜〜」
 じ〜っと顔を近づけてくる。
「な、何かな?」
「…あんたら何かあった?」
「え!?な、何かって何が!?」
 昨夜のことが思い当たってしまい、思いっきり慌ててしまう…
「…何があったの?」
 更にぐぃ〜〜っと顔を近づけてくる…かなり迫力がある。
「え…えっと……そ、その……」
 もごもごと口ごもり何を言っているのか良くわからない…そこでアスカはレイに視線を向ける。
「えっと…」
 レイは顔を赤くして頬をポリポリと掻いている。
「……ひょっとしてそうなわけ?」
「う、うん……」
「ふ〜ん…そうなんだ。じゃあ、御邪魔虫は先に行くわね」
「そ、そんな邪魔だなんて」
「じゃ、遅れないようにしなさいよ〜」
 アスカはとっとと先に行ってしまった。
「え、えっと……いこっか」
 レイは恥ずかしげにコクリと頷き、二人で歩き始めた。


 今日はミサトも交えての夕食になった。
「はい、レイ」
「シンジ君、ありがとう」
 シンジから茶碗を受け取るレイ…その様子をじぃ〜〜〜〜っと言ったような視線でミサトが見つめていた。
「…ミサトさん何か?」
「…と・こ・ろ・で、二人の間に何があったのかなぁ〜?」
 にんまりと言ったような表情を浮かべながらそんなことを言ってくる…そして、その日は寝る前まで二人はミサトにからかわれることになった。


 1月26日(火曜日)昼休み、第3新東京市立第壱中学校、
『2年A組鈴原トウジ君、至急校長室まで来なさい。繰り返します…2年A組鈴原トウジ君、至急校長室まで来なさい』
「又、何かやったのか?」
「いや、覚えないなぁ〜」
 トウジは首を捻ったが、ヒカリが肩を怒らせて歩み寄ってきた。
「鈴原!貴方いったい何やったの!?」
「知らんわ!」
「…何があったのかな?」
「さぁ…」
 シンジとレイも分からなかったが、アスカだけはひょっとしたら…と言ったような表情をしている。
「アスカ、何か思い当たることでもあるの?」
「一応…屋上行く?」


 そして、屋上に上がってきて話を始めた。
「全くの勘なんだけど、参号機の事じゃないかと思うのよ」
「参号機?」
「確か…アメリカで作っていたわね」
「その参号機とトウジが何か関係あるの?」
「ん?あんたらひょっとして知らないの?」
「知らないって何が?」
「参号機が日本に来るって話よ」
「え?」
 声を出したシンジだけでなくレイまで驚いたと言ったような表情をしている。
「…ミサトに聞かなかったわけ?」
「えっと…そのあの…」
「…そだったわね…」
 アスカは軽くこめかみを押さえた。
「それで…鈴原君がフォースに選ばれたんじゃないかってこと?」
「トウジが?まさか」
「可能性はないとは言えないわね…」
「ミサトに直接聞いてみれば?今日もからかわれそうになったら、話を逸らす良いネタにも出来るわよ」
「そうしてみるよ」


 そして夜、夕食の席でミサトに尋ねてみた。
「……鈴原君のこと、貴方達の想像通りよ…」
「そう…ですか…」
「ええ、」
「…何故、トウジなんですか?」
「……さぁ…私に聞かれても分からないわ…ただ、鈴原君は一度エヴァに乗ったことがあるわけだしね…」
「あ…」
 あの時のことを思い出す…トウジはケンスケとともに初号機に乗ったことがあるのだ。
「…その時に何かあったのかもしんないともおもうけど…私には何にも知らされていないわ」
「……そう、ですか…」
「ただ、シンジ君に一つだけ言っておいた方が良いことがあるわね…」
 真剣な表情で何かと無言で尋ねる。
「明日、答えを聞かせて貰うことになっているけれど…鈴原君が色々と悩んで出した結論になるでしょう…それがどういうものであったとしても、それは彼の選択なんだから尊重しなければいけないわよ」
「……」
「でも、判断に迷って鈴原君の方から相談してきたときは、親身になってそれに乗ってあげて」
「…はい、」



 1月27日(水曜日)、第3新東京市立第壱中学校2−A、
 授業中も、ふと気付くと、自然にトウジに目が行ってしまう。
「……」
 トウジは今日もどこか思い詰めている様であった。
 しかし、シンジに相談してくることはなかった。


 夕方、シンジ、レイ、アスカの3人はネルフ本部でユイで出くわした。
「あら、貴方達、」
「あ、お母さん」
「「こんにちは」」
「ええ、こんにちは」
「お母さん少し聞きたいことがあるのだけれど…」
「何かしら?」
「鈴原君のこと…」
「分かったわ、私の部屋に来て」
 そして、4人はユイの執務室に移動し、それぞれソファーに腰掛けた。
「鈴原君の事ね…まず、彼はエヴァに乗ることを決めたわ」
 シンジとしては、トウジには載って欲しくなかった…だから、その事は余り嬉しい知らせではなかった。
「3人とも、余り嬉しくなさそうね…」
「ま、仕方ないんじゃないですか?」
「…それもそうかもしれないわね。ただ…私は少しでも戦力が増えればその分だけ貴方達が怪我をしてしまったりする危険性が下がるから、その点では嬉しいんだけれどね…」
 妙な沈黙に空気が包まれてしまう。
「そうね、夕飯は私が作ってあげるわね」
「お母さんが?」
「ええ、美味しい物作ってあげるからね、みんな何か食べたいものあるかしら?」
 そして、その後、ユイが作った夕食を4人で食べることになった…その時、色々と話をしていたが、参号機やトウジのことには触れなかった。

あとがき
レイ 「くすくすくす…」
レイ 「YUKI、良くやったわ」
YUKI「どうも」
レイ 「次はどんな話?」
YUKI「とりあえず参号機の暴走は決定事項だから、
     その戦闘とその前後のやりとり…+αと言ったところかな?」
レイ 「期待しているわ」
YUKI「う〜ん…しかし話的に…」
レイ 「期待、しているわ」
YUKI「う……」
レイ 「期待、して、いるから」
YUKI「…うう…」