立場の違い 改訂版

第5話

◆天才

双子山仮設基地、仮設司令部、
「じゃあ、作戦を説明するわね、」
スクリーンに箱根地方の地図が表示された。
「現在位置、つまり狙撃地点が、ここ、」
リツコは、指示棒で、スクリーンを指しながら説明をしている。
「そして、ここ、第3新東京市0エリアにいる使徒を撃ち抜く、」
地図上に使徒を取り囲むように赤いや青の点が現れた。
「ダミーと、無人兵器を配置、使徒の気を引いているうちに、狙撃よ」
「でもリツコ、陽電子と加粒子じゃ反発しあうじゃない、使徒が加粒子砲を撃っちゃ拙いんじゃない?」
アスカが尋ねた。
「計算のうちよ、狙撃時には、2通りの計算をするわ、」
リツコは使徒と現在位置を結んだ反対側を指した。
「ここの部隊に気を引いてもらうわ、成功すれば簡単、失敗して、ここを撃って来た時は、ガード役の盾に守ってもらい、狙撃、命中率は52%よ」
「では、作戦担当を通告します」
アスカは表情を緊張させた。
「オフェンスは、アスカ・弐号機、ディフェンスが、レイ・零号機よ」
「「了解」」
「では、作戦開始まで、2時間、準備をしておいてね」


仮設ケージ、
二人は灯かりが消えた町と美しく星が輝く空を見上げた。
「星が綺麗ね」
アスカは呟いた。
「・・ええ、シンジ君にも見せたい・・」
「本当、綺麗だね」
何時の間にかシンジがレイの横にいた。
・・・・
「な、ななななにやってんのよ!!」
「星を見に来たんだよ、」
「発令所はどうしたわけ!?」
「代わりは置いて来たよ」
シンジは悪戯っ子のような笑みを浮かべた。


ネルフ本部、発令所、司令塔、
シンジ1/1リアルフィギュアが司令席に座らせてあった。
話しかけるとサングラスが光る仕組みである。
「碇司令」
キラン
「し、失礼しました。」
(俺が何をしたって言うんだ〜〜!!)
青葉は涙を流した。
冬月はこれ良いな、ワシも作ろうかなと考えている。


双子山、仮設ケージ、
「そろそろ時間だね、頑張ってきてね」
レイは頷いた。
「任せなさい」
二人はそれぞれのエヴァに乗り込んだ。


シンジは車で、箱根を離れた。


新横須賀市郊外、
一台の大型リムジンが止まっていた。
その横にシンジは車をつけた。
中から竹下内閣総理大臣が降りて来た。
「碇君か」
「はい」
シンジも車を降りた。
「これが、ゼーレに関する情報です。」
シンジはディスクを竹下に渡した。
「うむ、我々も最大限協力させてもらう」
「有り難う御座います」
二人は分かれた。


双子山、山頂、弐号機、
『エネルギー充填率94.6%』
『第41次攻撃開始』
『目標第41射発射』
『エネルギー充填率97.8%』
アスカは舌なめずりをした。
「行くわよ、ママ」
『エネルギー充填完了』
『ダミー総攻撃!』
『目標ダミーを攻撃します!』
『誤差修正0.00001』
マークが中心に揃った。
「食らえぇ!」
弐号機が引き金を引き、青白い光の帯が使徒を貫いた。
『よっしゃぁ〜〜!!』


第伍使徒が倒された頃、ネルフ中央病院で六分儀が目を覚ました。
「俺は、ここで、何をしているのだ」
六分儀は頭を抱えた。
「ユイ、俺の罪は、そんなにも大きいのか・・・・」
涙がシーツに落ちた。


翌日、早朝、碇邸、
シンジはリツコから電話を受け取った。
『初号機パイロットをロストしました。』
「そうか」
『申し訳ありません。現在全力で捜索中です』
「そうか」
(そろそろ会わせてやるか)


六分儀は山の斜面の野原に腰を下ろした。
「・・・」
「・・・第3新東京市・・・・科学と兵器によって守られた要塞・・・臆病者の町・・・・」
「・・・・ふっ・・・その町すらからも逃げた・・・そして、又逃げ様としている私は、一体何なのだろうな・・」
六分儀は自嘲した。


第3新東京市郊外墓地、
シンジとレイはユイの墓に参っていた。
シンジはユイの墓前にもかかわらずサングラスを掛けたままである。
(そう・・あの人が来るの)
レイはその意味するところを悟った。
足音が近付いて来た。
足音は数メートルのところで止まった。
「どうした、又、逃げ出すのか?」
「私は、貴様を父とは認めないが、母さんは、貴様を認めていた。墓前に立つことくらい許してやろう」
シンジは横にのいた。
六分儀は顔を上げ、驚愕の表情を浮かべた。
「ああ、墓前でなんだが、紹介しておこう、零号機パイロット、綾波レイだ」
六分儀の表情から更に大きな驚きが読み取れる。
「どうした?」
「あ、ああ」
六分儀は墓前にしゃがみ手を合わせた。
暫くして六分儀は立ち上がった。
「初号機パイロット、これからもエヴァに乗るか?」
六分儀は俯き時間が流れた。
「・・ああ・・」
「それが聞ければいい、レイ、行こうか」
二人は六分儀をその場に残し、去った。
「・・・ユイ・・・・済まない・・・・本当に・・・済まない・・・・」
雫が地面に落ちた。


第3新東京市立第壱中学校、2−A
「遅れました」
「いや、構わん」
二人は席についた。


昼休み、屋上で、6人は昼食を取っていた。
「はい、アスカ」
シンジはアスカに弁当を渡した。
「へ?」
「ミサトさんの料理は有名だから」
アスカの顔色が悪くなった。
「あのカレー、もう二度と食べたくない・・・」
「お〜、碇ぃ、惣流の弁当作ってくるとはさてはお前」
「二股ねらってるな!」
アスカの回し蹴りが二人に炸裂した。
「何でこのアタシが、こんな変な奴相手にしなきゃなんないのよ!」
「シンジ君は変じゃない」
「まあまあ、落ち着いて、」
日常が流れていた。


数日後、ネルフ本部副司令執務室、
六分儀が冬月のもとを訪れていた。
「茶でも飲むか?」
「貰おう」
冬月は六分儀に湯飲みを渡した。
「どうだ?エヴァパイロットは?」
「・・・罪の償いだと考えている」
「そうか、シンジ君は、本気でお前を憎んでいるぞ」
「分かっている。この程度で償い切れるとは思ってはいない」
「・・そうだな・・」
「それよりも・・・冬月先生、息子と娘の事、有り難う御座いました」
六分儀は冬月に深く頭を下げた。
「ああ」


夕方、ネルフ本部、セントラルドグマ最深部、
シンジとレイはレベル7の部屋に入った。
部屋の中央には人がゆうに入れそうなサイズのカプセルがあった。
シンジはコントロールパネルを操作し、カプセルの外蓋を外した。
ガラス越しに、レイに良く似た大人の女性がLCLの中で眠っているのが見える。
白い布のようなものを体に纏っている。
「お母さん」
レイがユイをじっと見詰めている。
「後は、使徒を倒し、母さんを初号機から解放するだけだ」
流石に、今、ユイを復活させて人類を危険にする事はしないようだ。
シンジは再びコントロールパネルを操作し、外蓋を閉めた。
「レイ、僕は、委員会に出るから、レイは先に準備をしておいて」
レイは頷いた。


人類補完委員会、
「碇君、弐号機パイロットのシンクロ率の急上昇、真実を知ったのではないか?」
「ええ、セカンドチルドレンには、弐号機のコアに眠る人物を教えました」
「何故教えた」
「簡単ですよ。初号機の戦力が低い以上、弐号機の能力を少しでも上げて、使徒に対して優位に立ちたいからですよ」
「まあ、良かろう、今回の事に関しては、特には問わない、だが、君が新たなシナリオを作る必要は無い」
「分かっていますよ。全ては、ゼーレのシナリオ通りに」
(使徒を全て倒した時、その時が、貴様らの最後だ)


深夜、ケージ、
ケージ周辺の人間は全て退社しており、全ての観測装置の電源が切られ、マギをはじめとする全てのコンピューターにはダミーの情報が流れている。
ケージに繋がる全ての通路は厳重にロックされている。
レイが複数のモニターを見ている。
シンジはプラグスーツを着てレイの傍に近付いた。
「シンジ君、第14次機体連動実験を始めるわ」
「うん、宜しく頼むよ」
シンジは初号機に搭乗した。
「オールクリアー、起動」
初号機の目に光が点った。
『シンクロ率は?』
「100.00%よ」
『うん、上出来だね』
「ええ」
『もう上がるよ』
「うん」
シンジは初号機を降りた。


発令所、
マギの調子がどうもおかしいのでリツコが調査をしていた。
「あ〜あ、マヤが帰る前に言っておけばよかったわ」
「何やってるの?リッちゃん」
「あ、母さん、マギの調子が悪いのよ」
「どれ?見せてみて」
ナオコはモニターに表示されている情報を読み取った。
「マギがハッキングされているわね」
「え!!!嘘!!」
「本当よ、マギの演算ではありえない数値が出ているわ、どこか別のコンピューターが代わりに計算して結果を表示している」
「分かる?」
「ちょっと待ってね」
ナオコはキーボードをリツコよりも25%UPの速さで叩いた。
「流石ね」
「ええ」
「掴んだわ」
ナオコの表情が驚愕に変わった。
「どうかしたの?」
「リッちゃん、これどう思う」
《MAGI−0》
「マギ0?」
「何これ?」
画面が光った
「ばれた!逆ハックが始まるわ!リッちゃんも防壁を展開して!!」
リツコもキーボードを打ちまくった。
「どう言うこと?既にハッキングされているんじゃないの?」
「あれは単なる侵入よ、これからは、マギを制圧下に置こうとしているわ」
メインモニターの電源が入り現状が映し出された。
「拙いメルキオールが持たない!」
メルキオールの大半が制圧されていた。
「そんなバカな!如何してマギオリジナルが!」
「押されているなんてもんじゃない!計算速度が違いすぎる!」
ナオコの叫びは殆ど悲鳴である。
「如何して!?」
「私に分かるわけ無いじゃないの!せいぜいマギの新型って事だけよ!」
「母さん以上の電子工学の能力を持つ人なんかいるわけ無いじゃない!!」
リツコは叫びながらも指の動きが見えないような速度でキーボードを打ちまくっている。
二人で、普段のメンバー全員分くらいの入力速度を実現している。
ナオコが手を止めた。
「母さん!!!」
「いたわ・・・」
『メルキオール制圧されました』
『バルタザール制圧されました』
『カスパー制圧されました』
「マギが落ちたわ・・・」
「いえ、多分、証拠の隠滅だけよ」
5分後、全て解放された。
二人はチェックをしながら話をしている。
「誰なの?」
「ああ、私以上の電子工学の能力がある人ね」
「聞いた事無いわよ」
「本職は違うからね・・・知ってる人よ」
「誰なの?」
「碇ユイ博士よ」
「え?」
「彼女は全ての天才よ、生物学だけじゃない、物理学、数学から、法学、言語学に至るまでの」
「本当の話なの?」
「ええ」
ナオコの表情には、尊敬と劣等感とでも言うべきものが入り混じっていた。
「じゃあ、マギ0は」
「でもね、彼女が作れたはずが無いの」
「どうして?」
「私がマギの基礎理論を作り上げたのはリッちゃんがゲヒルンに入った年よ、ユイさんはとっくにいなかったわ」
「じゃあ何なの?」
「多分、ユイさんもマギの設計をしていたんだと思う。でも、エヴァのほうに力を注ぐために封印した、それを誰かが見つけマギ0を作った。このマギを参考に補完して」
「いったい誰が」
「委員会が怪しいとは思うけど、行動に理由が無い」
「そうね」
「司令には報告するの?」
「リッちゃんはどうした方がいいと思う?」
「・・・そうね、報告すべきだわ、マギ0、敵に回ったらどうなるか分からないもの」

あとがき
レイ 「・・・」
YUKI「あの・・・」
レイ 「・・・」(今にも泣き出しそうな潤んだ瞳)
YUKI「・・・・分かりました・・・」


追加シーン
夜、シンジとレイの部屋、
二人それぞれのベッドに潜り込んだ。
「お休み」
「おやすみ」
シンジはリモコンで照明を消した。
二人は安らかな眠りへと落ちて行った。


あとがき続き
レイ 「・・・これは何?」
YUKI「お二人の夜ですが」
レイ 「・・・何故ベッドが別々なの?」
YUKI「何か問題が?」
レイ 「あるわ」
YUKI「どうしてでしょう?」
レイ 「・・母親に先立たれ、父親に捨てられた二人の子供、お互いに身を寄せ合う方が自然・・」
YUKI「・・・しかし、」
レイ 「・・・」
YUKI「・・・取り敢えず今日のところは」
レイ 「・・・」
YUKI「あの・・・」
レイ 「・・・」
YUKI「で、では」
レイ 「・・さよなら・・」