ユウキの受難

◆第4話

ユウキは、自宅で電話を取った。
『ああ、ユウキ君、明日、時間あるかしら?』
「え?明日は、トウジやケンスケと」
いつの間にやら名前を呼び捨てに、
『ん、丁度良いわ、3人纏めて連れてってあげる』
「どこへ行くつもりなんですか?」
『良いところよん』


その頃、ネルフ本部、総司令執務室、
レイが碇と話をしていた。
「そうか、ユウキとはうまく行っているか」
「はい、碇君は色々と教えてくれてとても親切にしてくれます」
「うむ、ところで、ユウキの事は好きか?」
レイは僅かに頬を赤く染めて答えを返さなかった。
碇はとっても楽しそうににやりと笑った。
電話が鳴った。
「私だ」
「ああ、そうか」
「何?」
「そうか、葛城3尉を呼び出せ」
20分後、ミサトが来た。
「葛城3尉、対外的なものを考え、君の階級を3佐とする。」
ミサトは吃驚した。
3尉から3佐とはなんちゅう無茶苦茶な・・・
だが、これで降格前よりも給料UP、ハッピーなエビチュの山が戻ってくる。
「だが、これはあくまで対外的なものであり昇給は見送る」
ミサトはこけそうに成った。
「それと、明日の、弐号機、受け取り、レイも連れていくように」
「しかし、それでは本部の守りが」
「葛城3佐、明日君達が行く場所はどこかね?」
「それが何か?」
「空母は何を積む為にある?」
「・・・分かりました」


翌日、ネルフ本部へリポート、
「さっ、乗って」
「いや〜!ミサトはんからお誘いを受けるた〜この、鈴原トウジ男名利に尽きます」
ユウキは無視して乗り込んだ。
「はい、」
ユウキはレイからジュースを渡されそのまま口にした。
・・・・
・・・・
・・・・
「えええ〜〜!!!!!な、なんで綾波が!!!??」
「碇司令の命令よ」
「で、でも、本部の守りは!?」
「問題無いわよファントムかっ飛ばせば30分で戻って来れるわ」
「ファントム??」


そして、太平洋艦隊旗艦、オーバーザレインボーに降り立った。
ケンスケは早速カメラ片手に騒ぎまくり、既にいない。
檸檬色のワンピースを靡かせアスカが近寄って来た。
「ヘロ〜ミサト!」
「やっほ〜アスカ!」
ユウキはアスカと言う単語に反応してアスカの方を向いた。
一瞬ミクと見間違った。
本当に、髪の色が、茶色と赤みがかった金色である事くらいしか差が無い。
理由の一つに、ミクがあの髪留めをしていると言う事もあるのだが、
ミサトと2、3事言葉を交わしたアスカは、ユウキとレイを凄まじい視線で睨みつけた。
(あ、あは、は、ぼ、僕、アスカ母さんを、怒らせるような事、したのかな)
まさか、その原因がシンクロ率にあるとは、よもや、この時のアスカはその全てをエヴァにかけているとは知らないユウキに推測する事は出来なかった。
殆ど殺意に近いレベルである。
「アンタ等が、サードとファーストね!」
二人は頷いた。
「サード!」
ユウキは全身をビクッとさせた。
「ちょ〜〜っと、くらい、シンクロ率が高いからっていい気になんないでよね!!」
「何だそんな事か」
ユウキのその言葉は、アスカを激怒させた。
瞬間的に、アスカの全身が真っ赤になった。
ユウキは命の危険を感じ逃げようとしたが遅かった。
アスカの凄まじいビンタが炸裂し、横のレイ共々吹っ飛ばされ、海にダイブした。
「た!たすけっ!ウプッ!」
レイが手を差し伸びユウキは必死でレイにしがみ付いた。
上から、アスカをモンスターガールと言ってしまった兵士が落下してきた。
「わあああ!!」
2人は巻き込まれ、海中に沈んだ。


その後色々あってブリッジにやって来た。
「ほう、葛城3佐か、ボーイスカウトの引率のお姉さんではなかったんだな」
「3佐?3尉じゃ無かったんですか」
ユウキはそうつぶやいた瞬間、ミサトに凄まじい視線で睨まれた。
「・・・成るほど、対外交渉を考えて与えられた階級か」
ミサトは顔を顰めた。
「聞いた話では、日本では大卒ならば3尉から入隊するそうです」
「そうか、つまり、新米なわけだ」
流石に2連荘で降格を食らったとは言えなかったミサトは屈辱に甘んじながら凄まじい視線でユウキを睨んでいた。
更に先ほどからアスカにも睨まれ、気分は最悪だった。


輸送艦、
ユウキとレイは無理やり、連れて来られた。
「どうよ、これこそ、世界で一番最初に作られた実戦向きのエヴァンゲリオン、制式機、エヴァンゲリオン弐号機よ!」
アスカは弐号機に乗って演説している。
「ほいほい、アンタ等なんかと簡単にシンクロする機体とは違うわ!」
「・・・起動確率、0.000000001%の初号機を起動させた碇君と、起動確率が78.66%もあった弐号機にシンクロしている貴女とでは大きな開きがあるわ・・」
ユウキの悪口を言われて不機嫌なレイが反論した。
アスカの顔が赤く染まった。
「きいい〜〜!!!そんなの初号機のシステムがぼろいだけじゃない!!」
「・・でも貴女は、弐号機は簡単にシンクロする機体とは違うと言ったわ」
「きいい〜〜!!!!」
アスカは地団駄を踏み始めた。
エヴァの特殊装甲が僅かではあるが凹む。
その時、艦隊を衝撃が襲った。
「・・水中衝撃波・・」
「わっ、わっわ!」
バランスを崩したアスカがユウキの上にまっさかさまに落ちて来た。
「わああ!!!」
・・・
「どいて・・碇君が潰れている」
アスカはユウキを見た。
アスカのスカートの中にユウキの顔が隠れている。
つまり・・
「きゃああ!!!エッチ!!変態!!女の敵ぃいい!!!」
アスカの凄まじい鉄拳がユウキの鳩尾に突き刺さった。
「うごおおお!!!」
・・・・
・・・・
ユウキは目を覚ますと弐号機の中だった。
「・・気付いたのね」
レイが横でユウキの腕を握り締めている。
「アスカ、行くわよ!」
弐号機が跳躍し、いきなりGがかかり、ユウキは壁に頭をぶつけた。
「サード!このアタシの戦いを特等席で見せてやるわ!」
良いよとは言えなかったと言うより時既に遅かった。
弐号機はオーバーザレインボーに着艦し、戦闘態勢を取った。
・・・・
その後、海中に没し、言い争いの結果、鉄拳を数発食らったものの何とか、使徒殲滅に成功した。


ユウキは手すりに体を預け、海を見ていた。
(・・・アスカ母さんも問題なんだ・・・)
ユウキは気が重くなり項垂れた。
「やっ、サードチルドレンの碇シンジ君って君かい?」
加持が近寄って来て尋ねた。
(加持リョウジドイツ支部副司令、元々は世界トップクラスの諜報員だったっけ?)
「いいえ・・その弟の碇ユウキです」
「そうかい、お兄さんは?」
「・・・第1次直上会戦の少し前に行方不明に・・」
ユウキはそのせいで自分が出会う事になった境遇を考え凄く暗い声で言った。
「・・そうか、大変だろうが頑張ってくれ」
それが演技ではないと悟った加持はこのまま尋ねるのもどうかと思い、再び調べ直す事にした。


翌、月曜日、第3新東京市立第壱中学校2−A、
「惣流アスカラングレーです。宜しく」
アスカは愛想を振り撒いたが、トウジ、ケンスケには鋭い視線で釘をさし、ユウキとレイは殺意の視線で貫いた。
レイは我関せずと平気だが、ユウキはそうは行かない。
(うう〜〜、そんなに怨まないでよ〜〜!)


ネルフ本部総司令執務室、
「弐号機とセカンドも到着した事ですので、零号機の装甲を実験用から戦闘用に変更する許可を頂きたいのですが」
「反対する理由は何も無い、やりたまえ」
「はい」


数日後、ウイングキャリァー、初号機
『先の戦闘によって第3新東京市の迎撃システムが受けたダメージは現在までに復旧率52%、実戦における稼働率は大してないわ。従って今回の迎撃は上陸直前の目標を水際で迎え撃ち一気に叩く!』
『初号機弐号機で交互に目標に対し波状攻撃、接近戦で行くわよ』
「はい」
『分かったわ』


そうして海岸についた。
『二人掛かりなんて趣味じゃないわ、どうしてアタシの日本でビュー戦なのにアタシ一人に任してくんないのよ〜』
アスカはたらたら愚痴を言っている。
『しょうがないわよ、負けられないんだから』
『使徒なんかアタシ一人で十分よ』
『99%より100%よ』
『まっ、仕方ないわね、でも、足引っ張ったら、殺すわよ』
そのアスカの視線はマジだ。
「う、うん」
ユウキは汗を垂らしながら答えた。
『さあ、いつでもいらっしゃい』
弐号機はソニックグレイブを構えた。
海面に水柱が立ち使徒が海面に姿を表した。
「来た」
『アタシが先に行くわ!ちゃんと援護すんのよ!』
海面に現れた使徒に向かって初号機はパレットガンを発射した。弐号機は水中のビルを足場にして跳躍し、一気にソニックグレイブを使徒に振り下ろし真っ二つにした。
「・・・何か変だ・・・」
使徒戦に楽な戦いは無かったそう聞いている。この程度で終わるはずが無い。
『どう?サード?戦闘は常に美しく無駄なく華麗に』
弐号機が初号機を振り向いた瞬間、二つに分かれた使徒其々分離し2体になった。
『何てインチキ!』
モニターのミサトは手に持つ受話器を握り潰した。


ネルフ本部作戦部視聴覚室。
「本日午前11時7分、目標甲の攻撃により初号機沈黙」
マヤが説明を続けている。
初号機が海中に逆さになって沈んでいる写真が映し出された。
「同8分、目標乙の攻撃により弐号機沈黙」
地面に頭からめり込んでいる弐号機の写真が映し出された。
「午前11時11分をもってネルフは作戦指揮権を断念、国際連合第2方面軍に移行」
NN爆雷投下の映像が流された。
「同15分、新型NN爆雷により目標を攻撃」
「また地図を書き直さなきゃならんな」
冬月がぼやいた。
焦げた使徒の写真が映し出された。
「これにより目標の構成物質の28%の焼却に成功」
「E計画責任者のコメント」
『無様ね』
「死んでるんですかこれ?」
アスカがスライドを指差しながら聞いた。
「足止めに過ぎんよ、再度侵攻は時間の問題だな」
「君達の仕事は何かね?」
「エヴァの操縦?」
アスカはそう言った。
「・・・何故です?」
はっきり言って何故自分がこんな目に会わなければ行けないのか分からないユウキは聞き返した。
ただし、それは、前提は分かっている者の会話である。
「違う、使徒に勝つ事だ。もう2度とこんな無様な姿はさらすな」
「ユウキ君、その件に関しては仕方ないと思って諦めてくれ」
冬月にはそう答えるしかなかった。
アスカにはそれがユウキは贔屓に去れていると映ったのか凄まじい視線でユウキを睨んだ。


ユウキが家に帰ると、とんでもない量のダンボールが積まれていた。
(なんだこりゃ?)
荷物は廊下や部屋にも積まれ家が狭くなっていた。
ユウキは自分の部屋を空けると、部屋の中にはダンボールが山積みになっていた。
「なっ何だよこれ!」
「あ〜、帰って来たんだ。」
ユウキは後ろのアスカを振り向いた。
「今日からここにアタシが住む事に成ったから。」
「へ?」
「アンタはお払い箱って訳よ」
アスカはユウキをびしっと指差した。
「アンタの荷物片付けといたから早くどっかやってよね。」
「ああ!!」
ユウキの荷物はダンボールに詰められて廊下に転がされていた。
「にしても日本の家って狭いわよねぇ、それにこんなカギのついていない部屋でよく暮らせるわ。」
アスカは襖を開けたり閉めたりしながら言った。
「日本人の文化の根本が他人への思いやりだからよ。」
ミサトが登場した。
「早速だけど、これから共同生活をしてもらいます。時間が無いから命令拒否は認めません。」
・・・
「「えぇぇぇええええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!」」
二人の叫びが近所中に響き渡った。