全てが

そう、全てが世界中のほとんどの人間にとって、理解の外で起きた。

そして、何も解らないままに終わった。

 

人々は、わけの分からないまま、それについてしばらく考えた。

空白の数時間に没頭した。

 

新たな知られざる領域について白熱した、しかし的外れな議論を繰り返した。

未知と言う恐怖を忘れようと、ひたすらそれをかき回し、もがいた。

 

 

事件より五週間後、国連の特務機関NERVから、事件の真相が語られるまで

 

裏死海文書

セカンドインパクトの真相と目的

ゼーレの存在

そしてアダムをはじめとする使徒達

関わる者達の思惑

人間・第十八使徒リリンの真相とその起源

 

またサードインパクトと、人類の補完にまでの非常に広範囲にわたる詳しい情報の開示だった。

 

 

この発表後、議論は一層白熱した。

 

特に、セカンドインパクトについての責任追及の声が大きく出た。

だが、ゼーレの全メンバーが補完されたまま返ってきていなかった。

事の当事者達のほとんどはもはやいなくなっていた。

そのため、どちらかといえば責任追及というより、情報を隠したことに対する非難のほうがメインとなった。

 

様々な情報が再び飛び交うようになった。

無責任なうわさが、もっともらしく語られた。

真相は、沢山のゴミのような情報によって埋もれ、隠されていった。

 

NERVは巧みにそれを操作し、自らの罪と責任を隠し、誤魔化し、沢山の政敵達にここぞとばかり押し付けた。

 

使徒撃退の功績

誇張な宣伝が彼らを正義のヒーローに仕立て上げた。

 

この中で、チルドレン達ついては、さらに巧みに情報が操作された。

特に、補完の中心的な役割を果たした二人、碇シンジと綾波レイについては、巧妙に真相を隠した情報操作がなされた。

当たり前である

NERVにとっても彼らのことが暴かれるのは困ることだった。

自分達の罪に直結することだから

 

この事の真相を知っていたのは、新たにNERVの司令となった冬月と、科学研究班の新主任の伊吹一尉だった。

 

とはいえ、とりあえず表面的な事実は語られた。

 

そして惣流・アスカ・ラングレーは、一躍スターあるいはヒーローとなった。

少なくとも、人類を救ったのだから、それなりの資格は有る。

マスコミは、まさに食いつこうとした。

 

もっとも、彼女はしばらくまだ公には出れない状況

精神的にも、肉体的にも弱っていたため

そして上手く偶像を作り上げ、操作するため取材攻勢は歯止めがかけられた。

 

これを推進したのは、NERVの新任司令の冬月とその直属の部下、青葉一尉だった。

冬月は、ある時マスコミに対してこういった。

 

「あの三人は、これまで非常に重いもの人類の命運そのものを背負って戦ってきた」

 

押し付けた当の本人の一人が口をぬぐってほざく

 

「そして、二人は未だ行方知れず、仲間を失いセカンドチルドレン・惣流・アスカ・ラングレー君も混乱している」

 

都合の良いよう情報操作

 

「使徒との戦い、そしてようやくそれから開放されたのだよ。せめてもう少しの間、静かにすごさせてあげようではないかね」

 

いかにもチルドレンを悼み、労わるような口調と内容

この言葉が効いたわけでもないが、NERVという特務機関の肩書き、存在もあって、それほどおおっぴらな報道はなされなかった。

 

 

やがて、三人と残る候補者達すべては、再びNERVの保護下に置かれた。

このことが、言葉より確実に、マスコミを締め出した。

 

問題の二人

シンジとレイをいつまで、どうやって押さえるか

冬月を始め、後ろに暗いことの多すぎるNERVの上層部はそのことばかり考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新世紀
第八話
偽り


 

 

 

 

 

 

 

 

REI

 

 

とりあえず、今後、これまでのように立て続けに使徒が襲ってくるという可能性がなくなった。

 

結果、NERVの組織は、大幅に縮小された。

 

もっとも、金のかかっていたEVAの開発もなくなった。

更なる金食い虫であった、使徒の後始末もなくなった。

第三新東京は、完成したその姿で存在する。

 

今、予算が縮小されようが、まったく問題はなかった。

 

NERVは新たに、人類が、補完後どのような能力を身につけたかの研究を始めることとなった。

 

そう、表向きは

裏ではワタシ達の殲滅でも考えているのだろう。

予算を削られたのはかなり苦しいに違いない。

 

このため、仕組まれた子供、チルドレン達を中心に調べることとなった。

また、もしものために、使徒に対する対抗手段の研究機関としての役割もはたしていった。

基本的には、研究のみに終始することとなったのである。

 

 

 

ただ、特に本部施設に関しては、かなり徹底した対人セキュリティーの整備や、職員の戦闘訓練が行われた。

 

予算の獲得にも、かなりの力が入れられた。

 

相手が使徒から、人へと移動したのである。

そして、ワタシ達に

 

 

こうして、日本、ドイツ、アメリカ、イギリスにあった多くの関連機関のうち、日本の本部と、他の三国の中心基地のみを残した。

 

これ以降、四個所のみを残した研究機関として動いていった。

あくまで表向きは

 

それぞれの国で見つけられていた

いや、仕組まれ、用意されていたチルドレンもまた、それぞれの国で実験に協力することとなった。

 

 

セカンドチルドレンもドイツに帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事件から二日後、ワタシ達はジオフロントで生活していた。

 

それからは、延々と暇な日が続いた。

NERVは、後始末や秩序の回復などが主な仕事となった。

よって当然ワタシ達は、出番が無かった。

 

いや、むしろNERVが表に出したがらなかった。

当たり前だろう

ワタシ達自身がNERVの罪の象徴だから

 

結局、医療センターで、毎日のように定期検診を受けた。

実際にはワタシ達の体を調べていることは明白だったが

彼らがばれてないとおもって誤魔化しているのだ。

しばらくはシンジと共に付き合うことにした。

 

適当に体力テストや反応テストを受ける以外、たいしたことはなかった。

 

ある日、引き続き世話係となっていた伊吹二尉が、とりあえずと、中学校の全カリキュラムをうまく分けて渡してくれた。

もっとも、補完のときの記憶を持っているシンジとワタシは、その様なことはすでに一通り頭の中に入っている。

望もうが望むまいが

 

結果、どちらかと言うと、確認といった形となった。

覚えるのではない

カリキュラムをこなすことで封印している知識、記憶達を掘り起こして行くのだ。

 

そして、中学校の全過程が、すぐに終わってしまった。

 

それ以後、様々な分野をより詳しく学んだ。

そのうちに、かなり広範囲の知識が頭の中に入っている事が分かってた。

そのことは、関わった人たちを驚かせた。

と、同時に、ワタシ達の特異性を際立たせた。

 

ワタシ達自身も、情報が漏れることをはそれなりに恐れた。

何も好き好んで敵を作る必要は無いのだから

 

だから、適当に誤魔化しつつ新司令や伊吹二尉に相談した。

彼らもまた、ワタシ達をどうすうか悩んでいるのだろうから

そして、決して力でかなわないことも

 

冬月司令は、伊吹二尉と共に懸命な隠匿操作と情報操作を行った。

 

発令所の面々さえ、ワタシ達の変化は知らなかった。

以後の対処は、もっぱら冬月司令と伊吹二尉に頼むことにした。

ワタシ達と彼らの間で、いくつかの契約が秘密裏に結ばれたのはこのときだった。

 

シンジとワタシが、かなりの量の記憶を持っていることは秘密だった。

他人の記憶を持っていることは、知られてはならなかった。

何より補完に関係することは、極一部の秘密にする必要があった。

何より、ワタシたち自身のために

 

そんな訳でワタシ達の面倒は、これ以後も、伊吹二尉がもっぱら勤めることとなった。

赤木博士の後のNERV研究班責任者で、尚且つワタシ達のことを多く知っているのが彼女だったから

 

そして、明らかにワタシを敵視している葛城三佐や弐号機パイロット

そして

 

彼女は気立てが良かった。

彼女はまじめで、信用できた。

そして、彼女がワタシ達二人に好意を持ってくれていることが助かった。

ただ、ワタシをあからさまに恐れているのが問題だった。

懸命に押し隠していたが

多分、大抵な者なら気付かないだろうが

しかし、ATフィールドを操るワタシには簡単にわかった。

心に直にふれることも出来るのだから

 

ともあれ、基本的にそれほどワタシ達に敵意を持っていなかったので

常識もそなえ、ワタシに対してダミーのことなどで罪悪感も感じていたようなので対応も悪くなく

なにかと弁を図ってくれるなど、良い保護者だろうと思う。

 

もっとも困ったこともあった

まじめすぎて潔癖すぎたの

 

やっぱり、ウブなところがほとんど変わっていなかったのが困った。

補完直後見せた柔軟性は、いわばショックで変だっただけかもしれない。

そう思わせるほど、以前と変わらなかった。

 

ワタシ達が抱き合うのに出くわす度に赤面していたが

最初のうちは、どんなに我慢しても小さな悲鳴を上げていた。

キスをしたときには、小声だったとはいえ文句を言ってた。

やっぱり不潔呼ばわりされた。

 

本人は聞こえてないつもりだったのだろう。



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